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世界有数のコレクションを誇り、連日多数の入場者を迎えるフィレンツェ観光の顔とも言ってもよいウッフィツィ美術館。教科書で取り上げられるような珠玉の名品を時代と画家に分けて紹介する。
1444年頃、皮なめしの職人の息子としてフィレンツェで生まれ、15歳でフィリッポ・リッピの工房に弟子入りした。ルネッサンスの黄金期には第一線の画家として活躍したものの、サヴォナローラの出現とともに作風が一変。後年は人気が急落し、さびしい晩年を送ったと伝えられている。
西洋絵画のテーマとしてしばしば取り上げられる構図である。救世主イエス降誕の星のお告げを
受けた東方の3人の王が、ベツレヘムでイエスに礼拝する場面を描いた物。
ボッティチェッリが制作の途中にミラノへ行ったことから未完となった作品だが、独自の流麗な線
や金彩を用いた新しい表現法、広がりのある画面構成などに彼の特徴がはっきりと表れている。静
寂のなか、どこか不吉なことが起こるかとおびえるかのような不安げな人々の表情に注目したい。
また最も興味深いのが、当時、この町を支配した権力者たちが描き込まれている点だ。ロレンツォ・デ・メディチとボッティチェッリの親密な関係と、メディチ家との強いつながりを示すものといわれている。
メディチ家のカステッロの別荘に『ヴィーナス誕生』とともに飾られ、対をなす作品と考えられている。ボッティチェッリの絶頂期の作品で、『マギの礼拝』にも登場するポリツィアーノの「ヴィーナス」の詩から着想を得、当時称賛された理想的表現、新プラトン主義の完成形ともいわれる。
図象学的にはいろいろと解釈されるが、薄いベールをまといしなやかに踊る女神たち、さまざまな野の花で飾り立てた女性像、オレンジが実る森の風景や足元の植物など、「春の賛歌」にあふれ、音楽が聞こえてきそうな画面展開だ。描かれた200種もの植物は今もカステッロの別荘付近で見られる物も多いという。
右から、黒い影で羽の生えた妖精の風の神ゼフュロスは妖精クロリスを追って自分のものとし、後に結婚して彼女に花を芽吹かせる能力を与える(口元からは花が吹き出ている)。その横で、花を身に着けてたたずむのは、クロリスが姿を変えた春の女神フローラ。その奥、中央はヴィーナスとされ、この画面は彼女の庭園であると考えられている。
その上には目隠しされた愛の神キューピッド。その左下、手を取り合って踊っているのは、しばしば絵画に登場し、愛と貞節、美を表わす三美神で、自由の象徴だ。左の旅人のように帽子をかぶり、羽の付いた靴を履き、杖で雲を払っているのは、ゼウスのメッセンジャーのメルクリウス。
題名どおり、「海の泡から生まれたヴィーナスの誕生場面」と考えがちだが、多くの研究者は、新プラトン主義(神秘主義哲学。人間界の高みにある神の領域を合理化しようとする考え)の影響を受けた作で、ヴィーナスは人間性の誕生を示し、精神と物質の融合、概念と自然の均衡を表現しているという。
左には、大きな翼を広げて絡み合う風の神ゼフュロスと花の女神フローラが、貝殻の上に乗ったヴィーナスに祝福の風を吹きかけると、空にはバラが舞い、その波でヴィーナスは岸へと向かう。海から生まれたばかりのヴィーナスに、時の女神ホーラが衣をかけようとしている。
『春』に比べ、より透明感を増した清澄な画面は、薄められた卵黄と薄いニスを用いてキャンバスに
描かれた。一見テンペラ画のようだ。
フィレンツェに行くなら、絶対に訪れてほしい、ヨーロッパでも出色のコレクションを誇るウッフィツィ。建物自体も世界遺産ですが、本や映像でしか見たことがなかった世界的な絵画を1日で味わえる特別な体験になると思います。朝イチで入館すれば、団体の来館者も少なくゆっくり味わえます。有名作家にはそれぞれの展示室があるなど、新しい興味を発見する場になると思いますので、ぜひ時間をとってゆっくりご覧ください。
ウッフィツィ美術館
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