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ウッフィツィ美術館で見ておきたい絵画コレクション

地球の歩き方ウェブ運営チーム

地球の歩き方ウェブ運営チーム

更新日
2023年8月7日
公開日
2023年8月3日
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世界有数のコレクションを誇り、連日多数の入場者を迎えるフィレンツェ観光の顔とも言ってもよいウッフィツィ美術館。教科書で取り上げられるような珠玉の名品を時代と画家に分けて紹介する。

フィレンツェとトスカーナの早期および初期ルネッサンス絵画

  • チマブーエ/荘厳の聖母1280~1290年頃MaestàdiS.Trinitàサンタ・トリニタ教会の大祭壇に飾られ、信者がどこからでも眺められるようにと描かれた大きな板絵。聖母の青衣のドレープややわらかな表情に、やがて訪れるルネッサンスの息吹が感じられる。
  • シモーネ・マルティーニ/受胎告知1333年Annunciazioneシエナのドゥオーモのために描かれ、フェルディナンド大公によりウッフィツィに運ばれた物。細やかな描写と高い写実性、金の使い方、線描法などにシエナ絵画の特徴をよく表している。
  • マザッチョとマゾリーノ/聖母子と聖アンナ1424年頃MadonnacolBambinoeS.Anna初期ルネッサンスの展開における重要な作品。無原罪のままイエスを産んだマリアを守る聖アンナ。マントを広げたその姿は、教会のもつ慈愛に満ちた威信を表現しているともいわれる。
  • パオロ・ウッチェッロ/サン・ロマーノの戦1435~1438年または1456~1460年頃BattagliadiS.Romanoフィレンツェ軍がシエナ・神聖ローマ皇帝と同盟した、ミラノ軍に勝利を収めた戦いを描いた物。遠近法を用い、迫力ある画面が展開する。メディチ家のロレンツォ豪華王が熱望したという作品。
  • フィリッポ・リッピ/聖母子と二人の天使1465年頃MadonnacolBambinoe2Angeli修道士画家であったリッピが修道女と駆け落ちした逸話は有名だが、この絵のモデルはその修道女といわれる。清澄で優雅、清らかな画風はボッティチェッリやダ・ヴィンチにも影響を与えた。
  • ピエロ・デッラ・フランチェスカ/ウルビーノ公夫妻の肖像1467~1472年頃Ritrattideiduchid'Urbino古代のメダルを思わせる横顔のモチーフは当時流行していた様式で、バックには地平まで続くモンテフェルトロ家の領地が広がる。裏面の「勝利の馬車」には出産後に亡くなった妻への追悼文がある。
  • 同右上

中部イタリアの盛期および後期ルネッサンス絵画

トゥリブーナ(6角形の部屋の中)では、プラクシテレスの『クニドスのヴィーナス』に想を得たヘレニズム後期の彫刻『メディチのヴィーナス』VeneredeiMediciが目を引く。壁面には16世紀のフィレンツェ絵画が並ぶ。
  • ピエトロ・ペルジーノ/フランチェスコ・デッレ・オペレの肖像正確な顔面の表現や半身像の構図に、フランドル派の影響がうかがえる。すばらしい背景画は、ペルジーノの故郷、トラズィメーノ湖周辺を理想化して描いたもの。ペルジーノは、ラファエッロの師と呼ばれる。
  • フィリッピーノ・リッピ/東方三賢王の礼拝1496年AdorazionedeiMagi古代の廃虚と城をバックに聖なる場面が展開している。左の天体観測機を手にしたコジモ・イル・ヴェッキオの甥のピエルフランチェスコ・ディ・ロレンツォをはじめ、多くのメディチ家の人々が描き込まれている。
  • ルカ・シニョレッリ/聖家族1484~1490年頃SacraFamigliaコルトーナ出身のシニョレッリは、中部イタリアで活躍した。円形の画面の中心で書物を読む聖母と幼子キリスト。その横で敬けい虔けんなポーズをとる聖ヨゼフが荘重で際立っている。彼の首に巻かれた美しい色彩のスカーフに注目。
  • ヴェロッキオとレオナルド・ダ・ヴィンチ/キリストの洗礼1473~1478年頃BattesimodiCristoヴェロッキオの工房で働いていたダ・ヴィンチが左の天使と背景を描き、右の天使はボッティチェッリとの説もある。師のヴェロッキオはこの作品を見て、弟子が自身を凌いでいると感じ、筆を絶ったといわれる。
  • レオナルド・ダ・ヴィンチ/受胎告知1475~1480年頃Annunciazioneヴェロッキオの工房時代の若い頃の作品ながら、すでにスフマート(ぼかし技法)を用いた背景や遠近法に彼の特徴が現れている。聖母の右手の不自然さは、この絵が右下から見ることを前提に描かれた物だからといわれている。
  • ミケランジェロ・ブオナローティ/聖家族1506~1508年頃SacraFamigliaTondoDoniフィレンツェに残るミケランジェロの唯一の絵画。当時のままの額装にもミケランジェロのデザインの意匠が反映されている。力強さを感じさせる作風は、古代彫刻に多大な影響を受けた彼の特徴がよく表れている。
  • ラファエッロ・サンツィオ/ひわの聖母1505~1506年頃MadonnadelCardellino飾られていた邸宅が崩壊したため、20近くの断片になったという物。若きラファエッロの最初の作品で、聖母は知の象徴である本を手にし、これからの受難を思い憂い顔を幼子イエスに向けている。
  • ラファエッロ・サンツィオ/法王レオ10世と枢機卿ジュリオ・デ・メディチとルイジ・デ・ロッシ1518年頃Ritrattodelpapa,figliodiLorenzoilMagnifico,LeoneXconIcardinaliGiuliode’MedicieLuigide’Rossiラファエッロの大パトロンであったレオ10世といとこの枢機卿を描いた作品。レオ10世はメディチのロレンツォ・イル・マニーフィコの次男。左はロレンツォの弟ジュリアーノの息子で後のクレメンス7世、右はロレンツォの姉の息子と、血統の証のような肖像画。

盛期ルネッサンスとともに生きた画家ボッティチェッリ

1444年頃、皮なめしの職人の息子としてフィレンツェで生まれ、15歳でフィリッポ・リッピの工房に弟子入りした。ルネッサンスの黄金期には第一線の画家として活躍したものの、サヴォナローラの出現とともに作風が一変。後年は人気が急落し、さびしい晩年を送ったと伝えられている。

マギの礼拝AdorazionedeiMagi(1475年頃)

西洋絵画のテーマとしてしばしば取り上げられる構図である。救世主イエス降誕の星のお告げを
受けた東方の3人の王が、ベツレヘムでイエスに礼拝する場面を描いた物。

ボッティチェッリが制作の途中にミラノへ行ったことから未完となった作品だが、独自の流麗な線
や金彩を用いた新しい表現法、広がりのある画面構成などに彼の特徴がはっきりと表れている。静
寂のなか、どこか不吉なことが起こるかとおびえるかのような不安げな人々の表情に注目したい。

また最も興味深いのが、当時、この町を支配した権力者たちが描き込まれている点だ。ロレンツォ・デ・メディチとボッティチェッリの親密な関係と、メディチ家との強いつながりを示すものといわれている。

春/プリマヴェーラAllegoriadellaPrimavera(1481~1482年頃)

メディチ家のカステッロの別荘に『ヴィーナス誕生』とともに飾られ、対をなす作品と考えられている。ボッティチェッリの絶頂期の作品で、『マギの礼拝』にも登場するポリツィアーノの「ヴィーナス」の詩から着想を得、当時称賛された理想的表現、新プラトン主義の完成形ともいわれる。

図象学的にはいろいろと解釈されるが、薄いベールをまといしなやかに踊る女神たち、さまざまな野の花で飾り立てた女性像、オレンジが実る森の風景や足元の植物など、「春の賛歌」にあふれ、音楽が聞こえてきそうな画面展開だ。描かれた200種もの植物は今もカステッロの別荘付近で見られる物も多いという。

右から、黒い影で羽の生えた妖精の風の神ゼフュロスは妖精クロリスを追って自分のものとし、後に結婚して彼女に花を芽吹かせる能力を与える(口元からは花が吹き出ている)。その横で、花を身に着けてたたずむのは、クロリスが姿を変えた春の女神フローラ。その奥、中央はヴィーナスとされ、この画面は彼女の庭園であると考えられている。

その上には目隠しされた愛の神キューピッド。その左下、手を取り合って踊っているのは、しばしば絵画に登場し、愛と貞節、美を表わす三美神で、自由の象徴だ。左の旅人のように帽子をかぶり、羽の付いた靴を履き、杖で雲を払っているのは、ゼウスのメッセンジャーのメルクリウス。

ヴィーナス誕生NascitadiVenere(1484年頃)

題名どおり、「海の泡から生まれたヴィーナスの誕生場面」と考えがちだが、多くの研究者は、新プラトン主義(神秘主義哲学。人間界の高みにある神の領域を合理化しようとする考え)の影響を受けた作で、ヴィーナスは人間性の誕生を示し、精神と物質の融合、概念と自然の均衡を表現しているという。

左には、大きな翼を広げて絡み合う風の神ゼフュロスと花の女神フローラが、貝殻の上に乗ったヴィーナスに祝福の風を吹きかけると、空にはバラが舞い、その波でヴィーナスは岸へと向かう。海から生まれたばかりのヴィーナスに、時の女神ホーラが衣をかけようとしている。

『春』に比べ、より透明感を増した清澄な画面は、薄められた卵黄と薄いニスを用いてキャンバスに
描かれた。一見テンペラ画のようだ。

イタリア各地方のルネッサンス絵画とマニエリズム、バロック絵画

  • ヤコポ・ダ・ポントルモ/祖国の父コジモ1519~1520年RitrattodiCosimoilVecchioポントルモはブロンズィーノの師であり、初期マニエリスムを代表する画家で、メディチ家に重用された。コジモ・イル・ヴェッキオはメディチ家のフィレンツェ支配を確立した人物で、厳しいまなざしや固く組んだ手元に威厳を感じさせる。
  • アーニョロ・ブロンズィーノ/エレオノーラ・ディ・トレドと息子の肖像1545年RitrattodiEleonolaToledoconfiglioGiovanniコジモ1世の宮廷画家として活躍したブロンズィーノ。彼の肖像画傑作のひとつで、コジモ1世の妻エレオノーラと息子ジョヴァンニを描いたもの。エレオノーラはナポリ副王の娘、17歳で嫁ぎ、ジョヴァンニを含めて11人の子をなした。2歳の頃、ポッジョ・ア・カイアーノの別荘滞在中に描かれたもの。
  • パルミジャニーノ/長い首の聖母1534~1539年頃Madonnadalcollolungoルネッサンスからマニエリスムへ移行する時代の典型的な作品。自然で軽やかなルネッサンスの特徴はなくなり、聖母の不自然に長い首やくねる体など、誇張された均整から新たな美を生み出そうとしている。
  • ロレンツォ・ロット/スザンナの貞操1517年頃SusannaeiVecchioniベルガモで活躍したロレンツォ・ロット。徳の高いスザンナが入浴中に、ふたりの長老に付きまとわれるエピソードを表現した絵。漫画の吹き出し風の巻紙に、子細が語られている。
  • ティツィアーノ・ヴェチェッリオ/ウルビーノのヴィーナス1538年VenerediUrbinoウルビーノ公爵が若き妻に「お手本」を示すために発注したといわれる作品。豊かな肉体や乱れたシーツなどの質感が見事に描かれている。官能的な姿で愛のシンボルのバラを手にし、右には忠誠を表す子犬が描かれている。
  • カラヴァッジョ/イサクの犠牲1592~1604年IlSacrificiod'Isacco「光と影の画家」カラヴァッジョの特徴がよく表れた、ドラマチックな場面を描いた傑作。神の教示に従い最愛の息子を天にささげる父親の葛藤と断末魔の声を上げるイサク、その心理状況が見事に描かれている。天使の救済を指さす方向には、明るい世界が展開している。
  • カラヴァッジョ/バッカス1596~1600年頃Bacco酩酊して赤らんだ顔や若々しい肉体など、克明な写実主義のもと、秀でた静物画と人物を活写したカラヴァッジョらしい作品。哲学、宗教的な示唆に富んだ作品。
  • カラヴァッジョ/メドゥーサ1592~1600年Medusaギリシア神話から題材をとった作品で画家の自画像。見る者を石に変えてしまうというメドゥーサ。しかし、盾に写った姿には、その力が及ばないという神話のなかのアテナの助言通りに盾に描かれた。完成当時は鎧を着た人形に持たせていたといわれる。

イタリア国内で最大級の質と量を誇る美術館、時間をかけて楽しんで

フィレンツェに行くなら、絶対に訪れてほしい、ヨーロッパでも出色のコレクションを誇るウッフィツィ。建物自体も世界遺産ですが、本や映像でしか見たことがなかった世界的な絵画を1日で味わえる特別な体験になると思います。朝イチで入館すれば、団体の来館者も少なくゆっくり味わえます。有名作家にはそれぞれの展示室があるなど、新しい興味を発見する場になると思いますので、ぜひ時間をとってゆっくりご覧ください。

ウッフィツィ美術館

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住所
Piazzale degli Uffizi 6
電話番号
055-2388651
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