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1734年にナポリ王になったブルボン家のカルロ3世は、母エリザべッタ・ファルネーゼから受け継いだ美術品コレクションを収蔵するための館を建設したが、その建物が現在のカポディモンテ美術館だ。ファルネーゼ家出身の教皇パオロ3世が、ローマで始めた豪華な絵画コレクションが、パルマ公国を経てここナポリの地に移された。館内にはファルネーゼ・コレクションを中心にナポリ絵画、ナポリの教会から運ばれた祭壇画などを展示している。磁器で飾られた旧居室=磁器の間や舞踏室なども見事だ。
美術館の祖となったパオロ3世に敬意を払うかのように入室してすぐ、目立つ場所に展示。狡猾そうに描かれた姿に、人物の内面描写に高い技量を示したティツィアーノの面目躍如。
カルロ3世が望んだように、ファルネーゼコレクションの絵画は年代順に配置されている。ルネッサンスの先駆者マザッチョがピサで描いた多翼祭壇画の一部『磔刑』は美術館の至宝のひとつ。
マザッチョと同時代を生きた、20歳以上離れた師。遠近法を駆使したマザッチョと従来の国際ゴシック様式で描か
れたマゾリーノの作品を比べて見よう。ローマのサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂のコロンナ礼拝堂のために描かれたもの。
絵画のモチーフとしてしばしば用いられる「キリストの変容」とは、イエスが天で栄光の姿へ変容することを預言した場面を描いたもの。ベッリーニの最高傑作とも言われ、白く輝くイエスや丹念に描き込まれた風景は、厳かで清
澄、高い神性を感じさせる。
ラファエッロのライバルと評された、ヴェネツィア派のピオンボの描いたエレガントな聖母子。ファルネーゼコレクションには、各時代・各派の傑作が集まっている。
ティツィアーノはヴェネツィア派を代表するひとりで、同名の作品を複数残している。マッダレーナは、イエスと出会って娼婦であったことを改悛し、後に聖女となった女性。画面左にはイエスの体を清めた香油壺。その香油をぬぐったという長い髪がシンボル。
ローマのファルネーゼ宮の天井画として描かれた作品。岩の上に座るヘラクレスは、悪徳と美徳の擬人化である二人の女性の指さすどちらの方角に進むべきか、悩んでいる。