コインを投げよう! ローマで見たい迫力の噴水・トレヴィの泉(イタリア)
2019.11.30
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都市の代名詞の数で格づけすれば、間違いなく世界トップの永遠の都ローマ。「すべての道はローマに通ず」、まさに世界の中心だったといっても過言ではない時代を経て、今日も訪れる旅人を魅了し続けています。今回は、絶対に行きたい王道スポットを10ヵ所に絞ってご案内します。
古代の遺跡から中世の建築物や教会が残るなど、歴史が詰まっている永遠の都ローマ。まず一番に訪れるべき場所はコロッセオでしょう。西暦80年に落成し、2000年近い歴史を誇るこの闘技場は、かつて剣闘士が決闘を繰り広げ、ときには動物たちが犠牲になった、血なまぐさい人間の歴史そのもの。しかし過去の遺産から学ぶべく、永遠の都ローマの一大のシンボルとして、旅するものすべての心をつかんで離さない魅力があります。
元の名前は、フラヴィオの円形劇場(Anftiteatro Flavio)といいます。現在の名前になったのは中世で、コロッセオの近くに立っていた皇帝ネローネの巨像、「コロッソ・ディ・ネローネ」が名前の由来になったとされています。
この永遠の都の名声を持つローマでも、「コロッセオが存在する限り、ローマは不滅だ」という言葉があります。コロッセオがもし崩れるとしたらローマが滅ぶときだ、と中世の頃から言い伝えられています。
ぜひ、圧倒されるコロッセオの景観を見るだけではなく、コロッセオの中に足を延ばして、古代ローマ人の足跡に思いを馳せてみせてはいかがでしょうか?
古代ローマのシンボル、コロッセオに入場できれば、セットで訪れることができるフォロ・ロマーノ。「フォロ」は公共広場を意味し、市民の生活の中心となっていました。
初代のフォロ・ロマーノは紀元前46年頃にはすでに手狭になり、その後、歴代の皇帝たちの虚栄心を満たすべく900年にわたって拡大されていきました。2000年以上前から残る、永遠の都ローマを代表する古代の遺跡です。
現在は廃墟となり、遺跡のみが残っています。当時はふんだんに装飾された壮大な公共的な空間だったとされていますが、現在ではかなりの想像力を使わなければそれを実感できない場所になっています。ここフォロ・ロマーノでは、この地を訪れる前に文献を読んだりインターネットで調べたりして知識を蓄えるか、当日にガイド付きツアーで解説を聞きながら、古代ローマ人のようにフォロを歩いて思いを馳せるのがよいでしょう。
古代ローマの建築物のなかでもっとも保存状態がよいとされるパンテオン。2000年以上もここローマに堂々とそびえ立っています。この荘厳な神殿は、ギリシャ語の「パン(Pan:全能)」、「テオス(Theos:神)」に由来しており、その名前の通り全能の神を祀る神殿です。608年以降、カトリック文化がローマに入ったあとも宗教的な施設として利用されるなど、各時代でその役割を変えながらも現存し続けています。ローマを訪れたら必見の場所です。
外観だけではこの建築物の本当の美しさは分かりません。中に入ると、ローマの建築物のなかでも偉業といえる石造丸天井が出迎えてくれます。天井をゆっくりと眺めていると、古代ローマ人の英知をあらためて感じることができるでしょう。
またこのパンテオンは、何世紀もの間に略奪や毀損が行われてきたという歴史があるにもかかわらず、内部にはイタリアの国父ヴィットリオ・エマヌエーレ2世とルネッサンス期の偉大な芸術家ラファエロの墓が残されています。
バロック様式の宮殿と美しい噴水が堂々と鎮座し、大道芸人が集まるナヴォーナ広場は、ローマ屈指の広場とされます。
この広場の中で目を引くのが、ベルニーニの傑作「四大河の噴水(Fontana dei Quattori Flumi)」です。世界の4つの大陸の大河(ナイル川・ガンジス川・ドナウ川・ラプラタ川)を擬人化した噴水があるこの広場は、15世紀ごろ、西暦86年に建設したドミティアヌス帝の競技場の跡地につくられました。
古代は競技場として、中世には300年以上ローマの中央市場として役割を果たしたこの広場は、今もローマを訪れる人たちにとって魅力的な場所であり続けています。
フェリーニの映画『甘い生活(La Dolce Vita)』で知られるトレヴィの泉は、ローマでもっとも有名なバロック様式の噴水でしょう。イタリア語の3を意味する「トレ(Tre)」と道を意味する「ヴィレ(Vie)」を合わせた言葉が「トレヴィ」の由来でその名称となっています。1730年にニコラ・サルヴィという建築家によって設計されました。
世界中から観光客が集うようになったので、うんざりするような人だかりのなか、かき分けるようにコインを投げるのが定番になっています。
またこの泉の水は、なんと古代ローマ時代につくられた水道から引かれています。その様子は、古代ローマの住居や水道橋の遺跡が残るヴィクス・カプラリウス(Vicus Caprarius)で見ることができます。昔も今も変わらず水が流れ続けているさまは必見です。
トレヴィの泉に立ち寄ったら、コインを投げるだけでなく、ぜひ遺跡も見学してみてください。
フランスの外交官の寄付によって1725年に建設され、丘のトリニタ・ディ・モンティ(Trinità di Monti)に続くこの階段は、ローマに行ったらぜひ訪れたい観光スポットのひとつです。
「スペイン階段」として広く知られていますが、本来の名称は「トリニタ・ディ・モンティ階段(Scalinata della Trinità di Monti)」といいます。
階段の下には、ベルニーニの作品とされる「バルカッチャの噴水」があります。この階段と噴水はうっとりするような美しい景観で、訪れる人の脳裏にいつまでも刻まれることでしょう。そして、ローマの最高級ショッピングストリートもこの階段の近くにあります。
世界最小国家のヴァチカン市国にある「サン・ピエトロ大聖堂」。この大聖堂はカトリックの総本山とうたわれており、荘厳な姿に圧倒されることでしょう。
その巨大な建築物に目が行きがちですが、じっくり見ると建物の細部も壮麗です。多くの天才芸術家の技術を集結してつくられており、不朽の名作とされています。4世紀頃に初のキリスト教徒だったローマ皇帝コンスタンティヌ帝がこの聖堂の建設を進めたのが始まりで、何十世紀もの非常に長い年月を経て現在の姿になっています。
そして、大聖堂内も芸術の宝庫です。特に、ミケランジェロが25歳の時に制作した「ピエタ像(Pieta)」と主祭壇の上に立つベルニーニの傑作「青銅製の大天蓋(Baldacchino)」は必見です。
また、ローマ教皇だけがミサを行うことができる主祭壇の下には、聖ペテロの墓があるとされています。このようにサン・ピエトロ大聖堂もまた、ローマでぜひ訪れたい場所です。時間と体力が許せば、大聖堂のドーム(クーポラ)に登って、美しいローマの眺望を眺めるのも醍醐味です。
サン・ピエトロ広場からヴァチカン市国の城壁沿いを北向きに歩いていくと、ヴァチカン美術館にたどり着くことができます。このヴァチカン美術館は、歴代ローマ教皇のコレクションが集っています。あまりにも巨大で、1回訪れただけではすべての収蔵品を見ることはできないほどです。
この美術館にはミケランジェロの『最後の審判』があり、ヴァチカン美術館からの見学コースのなかで最後に訪れるシスティーナ礼拝堂の祭壇の後方に、壁一面に描かれていることでも知られています。
ヴァチカン美術館はいくつかの建物で構成された建築群で、全体ではヴァチカン宮殿と呼ばれています。なんと総面積5.5ヘクタールの規模を持ち、敷地内は値がつけられないほどの芸術品であふれています。
この広大な美術館を短時間でめぐるなら、絵画館→ラファエロの間→地図のギャラリー→システィーナ礼拝堂、という流れがおすすめです。そのコース内で興味があるものをそのつど見ていくと効率がよいでしょう。
たくさんの観光スポットであふれているローマ。滞在中にぜひとも立ち寄ってほしい場所のひとつに、ユダヤ人居住区とその周辺エリアがあります。ここではきっと、美しいローマのなかでも意外な側面に遭遇することができるでしょう。
紀元前2世紀以来、ローマに居住し始めたとされるユダヤ人ですが、1555年に教皇パウルス4世の回勅(ローマ教皇が全世界のカトリック教会の司教・信者へあてた手紙)が発布されてユダヤ人がゲットー(強制居住区)に追い込まれたとされ、第2次世界大戦中にはナチスが復活させた悲劇の場所でもあります。この界隈は、建物が密集しているにもかかわらず、驚くほど静粛です。現在はユダヤ系ローマ料理のレストラン、ユダヤ系の教会(シナゴーグ)、ユダヤ系の学校が建ち並び、ユダヤ人街として発展しています。
またこの周辺を歩けば、共和制ローマ末期の政務官ユリウス・カエサルの都市構想によって、紀元前13世紀頃にアウグスティヌス帝が建設したマルケルス劇場(Teatro di Marcello)があります。16世紀頃に2階建てのアーチ形劇場だったマルケルス劇場の上に宮殿が建てられ、古代と中世が混在した姿となっています。
さらにこの周辺には、世界的に有名な真実の口、そしてテヴェレ川の中州に浮かぶ世界最小の有人島ティヴェリーナ島もあります。時間があれば、ぜひ立ち寄りたい場所のひとつです。
ローマでもっとも絵になる地区トラステヴェレは、ローマでもっとも活気のある下町です。アメリカやほかのヨーロッパ諸国からの観光客や若いローマっ子が入り混じる場所です。
かつては貧しい労働階級の人々が暮らす地域でしたが、今では趣きのあるカフェやバーが建ち並び、ローマ市内でもおいしいレストランが集まるエリアになっています。ローマ人だけでなく、観光客の胃袋を満たし、心ひかれる場所へと変貌しています。
この下町の中心となるのが「サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂(Basilica Santa Maria in Trastevere)」がある広場。教会は金色に輝くモザイク画が施されており、ひときわ目を引きます。聖母マリアに献じた教会のなかではローマ最古(創建は337年)とされ、12世紀に施されたその見事なモザイク画はまさに必見です。余談ですが、ここは絶好の人間観察の場所としても知られています。
この下町トラステヴェレ地区は、軽い散策にも最適。ひと通りローマ観光を終えたら、おいしいローマ料理に舌鼓を打ってみてはいかがでしょうか。
いかがでしたでしょうか? ローマには、この王道スポット10選以外にもまだまだ見所がたくさんあります。この街に滞在するなら最低でも3日、可能なら4日以上あればよりローマに対する見識が広がると思います。慌ただしくローマで過ごすのではなく、ゆったりとローマ人のように過ごせば、永遠の都の魅力を大いに体感できるでしょう。
監修:地球の歩き方