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ニューヨークNo.1の日本人酒蔵「カトサケワークス」!『地球の歩き方』がつないだ縁
2024.6.14
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ニューヨークはアートの街。建物の外壁に自由な発想で大胆に描かれたグラフィティは、無料で鑑賞でき、SNS映えすることから旅行客に人気です。旅好き女子から愛されている『地球の歩き方 aruco 2024~2025年版』にも、「話題のエリア・ブッシュウィックでアート巡り」として特集されています。今回はその人気エリアであるブッシュウィックを、現地在住ライターが取材してきました!
目次
ブルックリンのブッシュウィックは、かつてはドラッグと貧困の深刻な問題があり、犯罪が多く治安の悪いエリアでした。現在のようなグラフィティの街として有名になったのは、「ブッシュウィック・コレクティブ(The Bushwick Collective)」というストリートアートのプロジェクトがスタートしてからです。
ブッシュウィック・コレクティブの創設者であり、アート・キュレーターでもあるイタリア移民のジョセフ・フィカローラ氏は、かつて麻薬、貧困、暴力で荒廃したブルックリンのブッシュウィックで育ちました。1991年ジョセフ氏の父、イグナツィオ・フィカローラ氏は仕事から帰宅途中、彼の財布と安物のネックレスを狙った強盗にナイフで殺害されました。ジョセフ氏がわずか12歳の時です。2008年には母親に脳腫瘍が見つかり、闘病の末3年後に亡くなりました。両親を失った地元には良い思い出がなく、塗りつぶしてしまいたい悲しい過去ばかりでした。
家族経営の鉄鋼業を営むジョセフ氏は、近所のビルのオーナー達にストリート・アートのための壁の提供を募り、ストリート・アーティスト達にメールで招待状を送りました。その後、2012年にアーティストのコミュニティであるブッシュウィック・コレクティブを設立、提供された壁のキャンバスを求めて、アルゼンチン、ロシア、シンガポール、南アフリカなど世界中からアーティストが集まりました。グラフィティのテーマは自由ですが、子供、女性、地元企業に対して不快でなく政治的でないアート、そして無給であることがルールです。
犯罪の巣窟だったブッシュウィックは、国内外のアーティストにより、壁と共に街の雰囲気も塗り替えられていきました。無断で乱雑に描かれていた落書きは、テーマを持つアートに変わり、噂を聞いて人が集まり出したのです。
グラフィティを見に、ブッシュウィック・コレクティブへ行くには、地下鉄Lトレイン(グレイのライン)のジェファーソンストリート駅が最寄駅です。マンハッタンのユニオンスクエア(14丁目)駅から、ジェファーソンストリート駅まで、乗車時間は約20分です。
ほとんどのグラフィティが12ヵ月ごとに塗り替えられ、訪れるたびに違うものが見られるのも楽しみです。
セントニコラスアベニューとトラウトマン通りの交差点が壁画の中心地。SNS用に写真を撮っている人も多く見かけられます。
ビルディング全体がアートになっているものもあります。
それぞれのグラフィティは、ビルや壁の所有者からアーティストのキャンバスとして提供され、許可を得て描かれています。決して真似して落書きしたり、手を加えたりしないでください。過去には日本人が無断で壁に落書き(所有物損壊で違法)をして、警官に逮捕された事例があります。
グラフィティはアーティスト名とともに、ブッシュウィック・コレクティブのプロジェクトであると署名が添えられています。
夏には毎年恒例のブロックパーティが開催され、グラフィティ、ストリートアート、音楽、フードトラック、地元のベンダーが集合して盛大に催されます。
地下鉄Lトレイン(グレイのライン)のジェファーソンストリート駅を出てグラフィティを追っていくと、途切れることなく鑑賞することができます。所要時間は、写真を撮りながらでも小1時間あれば十分ではないかと思います。
もともとこのエリアは工場・倉庫街だったので、人が少ない、荒れた印象の場所は避けましょう。クラブやバーが多いので、グラフィティは見やすく明るい日中に見に行くことをおすすめします。
ブッシュウィック
詳細をみるグラフィティ鑑賞のついでに寄りたいお店4つをご紹介します。
日本人のオーナー加藤忍氏による、Sake(サケ)醸造所。カフェ感覚で入りやすく、値段も手頃で、気軽においしいSakeが飲めます。
かつてブッシュウィックは「北東部のビールの首都」と呼ばれていました。1800年代後半にはドイツ移民人口が多くブリュワリー産業が盛んで、14ブロックエリア内に14ものビール醸造所が営業していたそうです。その後、禁酒法などで醸造所はなくなりましたが、40年ぶりに復活したのが「キングスカントリー ブリュワーズ コレクティブ」。
筆者はこちらのIPAビールを飲んだことがありますが、フルーティで飲みやすくおいしかったです。奇抜なデザインの缶が特徴で、日本にも輸出されています。Sake醸造所カトサケワークスの隣です。
ブッシュウィックは古着屋が多いエリアで、人気の「L Train Vintage」もあります。古着屋「アザーピープルズクローズ」には、おみやげによさそうな小物やチョコレートも置いてあります。
古着は種類が多く人気のようですが、筆者の見た限り、あまりコンディションがよくなく、クリーニングされていないものもあるようでした。お値段は高め。
日本人にとっては見逃せない、あんぱんやカレーパンなどの日本風のパン、コロッケや唐揚げの惣菜、サンドイッチ、寿司などが各種揃っています。実は手頃なスナックとして、アメリカ人にも人気。
グラフィティを見に行く時間帯としては、観光客が多い昼間がよさそうです。ブッシュウィックの治安は改善してはいるものの、ドラッグと貧困の深刻な問題があったエリアであることを頭の片隅に入れてお出かけください。ニューヨークの地理に詳しくない、または女性ひとりで不安という方は、日系旅行代理店の日本語ツアーを利用するのもいいと思います。
もうひとつ覚えておきたいことがひとつ。ブッシュウィックの治安は改善してきましたが、別の問題が起こりました。人気観光地になったことで不動産開発が行われ、クリエイティブ層が流入し、家賃が上がる「ジェントリフィケーション」が進んだ地域になったのです。急速に地価が上がり、従来の地元住民が住めなくなる問題は、ニューヨーク市で「クール(かっこいい)」と呼ばれるようになった各エリアで起こっています。ドキュメンタリー「No Free Walls」は、クールな街に変わってしまったブッシュウィックには、もう自由(に描ける壁)がなくなってしまったことを意味しています。
グラフィティ好きな方は、ぜひブッシュウィックに足を運んでみてくださいね。最新のグラフィティに出合えますよ。過去にあった背景も重ねてみると、より興味深いものになると思います。
ニューヨークでお待ちしています!
TEXT:ニューヨーク特派員 青山 沙羅
PHOTO:Hideyuki Tatebayashi
*Do not use images without permission.
監修:地球の歩き方
掲載情報は2024年5月時点の情報です。価格や商品構成などは変更になる場合がありますので、事前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
2024年6月現在、1ドル:約156円です。