- スイス
- スポット
【5日目】グリンデルワルトのもうひとつの展望台・フィルストとインターラーケン
2024.3.12
キーワードで検索
山あいをぬって上る登山列車がもうすぐグリンデルワルトに着こうかという頃、急に視界が開けたと思うと、右側に巨人のごとき山塊がぬっと現れる。アイガーの登場だ。左の痩せた稜線が大正10年(1921年)に槇有恒が初登頂したミッテレギ稜。中央から右側、冬でもねずみ色の肌をさらしているのが北壁である。アイガーだけではなく、村の奥には黒々とした岩壁をさらしているヴェッターホルンが迫力ある姿を見せている。
アルピニストの夢が詰まったグリンデルワルトはハイカーたちのパラダイス。雨雲が切れたらロープウエイに飛び乗ろう。村の通りを飾る花も、山の斜面を埋め尽くす高山植物の群落にはかなわないし、アイガーも、山に上ればきりりと引き締まったイイ顔を見せてくれる。グリンデルワルトの醍醐味はハイキングにある。
心地よい疲労感とともに村へ戻ったら、眺めのよいレストランのテラス席で夕食。デザートを食べ終わる時分には山々が茜色に染まり出す。エピローグを飾るのはやはりアイガーだ。この頂が光を失い、すべてが闇に溶ける頃、日に焼けた顔の男たちが大きなザックを背負って山を下りてくるだろう。
グリンデルワルトはアイガーの村だ。インタラーケンとは逆に、この村からユングフラウは望めない。
インタラーケンが軽井沢なら、こちらは上高地といいたいところだが(上高地のある長野県の松本市とは姉妹提携を結んでいる)、村の規模は上高地よりはるかに大きく、明るい。標高4000m近い山々に囲まれた村がなぜ明るいのかというと、リュチーネ川から70mほど上った南斜面に村が開けているためと、谷が東西に延びていて日照時間が長いため。もちろん陽光を反射する万年雪と氷河、そしてホテルの窓という窓に飾られた色鮮やかな花々のおかげでもある。
30分で端から端まで歩けるほどの小さな村を訪れる観光客は、年間100万人以上。レストランだけでも約50軒ある。古くから多くの日本人登山家に愛されてきた村で、今でも日本人観光客が多い。
村のメインストリートであるドルフ通りDorfstrasseは、駅から谷の奥(東)まで1kmほど続く。駅を出てすぐ右側にある駐車場はバスターミナル。ホテルの無料直通予約電話もここにある。その並びにある大きな建物がスポーツセンターで、1階にグリンデルワルト村の観光案内所が入っている。
さらに東に進むと、両側にはアーミーナイフの店、登山&スキー用品店、時計店、みやげ店などがずらりと軒を並べる。
通りの先にそびえるのは、北側がざっくりと切れ落ちた姿が印象的なヴェッターホルンWetterhorn(3692m)。この山にかかった雲で天気を占うことから“お天気山”の名がついた。アイガーとヴェッターホルンの間で白い稜線を見せる岩峰はフィーシャーヘルナーFiescherhörner。昼間は目立たないが、村に夕闇が迫る頃、紅に染まって存在を主張する。
10分も歩くと、左側にフィルスト行きロープウエイ乗り場があり、その先に絵はがきによく登場する教会がある。このあたりまでがグリンデルワルトの中心だ。
黄色い車体に村花エンティアンを描いた村内バスは、グロッセ・シャイデックやブスアルプへ行く際や、駅から離れたホテルへの移動などに便利。グリンデルワルトは徒歩で巡ることもできるが、バスを使えばメインストリート沿いの目的地までほんの数分でアクセスできる。グリンデルワルトに滞在する場合、村内バスに乗車できるゲストカードをもらえるのでバスは無料で利用できる。時間が合うときは積極的に使おう。駅から東へ歩いてすぐ右側がバスターミナル。バスの番号と行き先を確認して乗車しよう。
インタラーケン・オスト駅から登山鉄道で34分。1890年に開業したこの路線(BOB)は、前半分の車両がラウターブルンネン行き、後ろ半分がグリンデルワルト行きとなっている。車内で前後の行き来はできないので車体の行き先表示で行き先を確認してから乗ろう。2つ目の駅ツヴァイリュチーネンZweilütschinenで分離される。
グリンデルワルトはユングフラウヨッホへの乗り換え駅でもある。クライネ・シャイデック行きの列車(WAB)は、到着ホームのすぐ隣から発車する。
観光パンフレット、地図などの資料が豊富。ホテル予約も可能。