
【イタリア・ナポリ】カゼルタ宮殿近くでナポリ家庭料理ランチ
2024.2.2
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ナポリから内陸に約30㎞、肥沃な平野に広がるカゼルタの町。駅を出れば、ほぼ正面に1997年に世界遺産に登録されたレッジャReggiaと呼ばれるナポリ王家の王宮がその威容を見せる。1751年、ブルボン朝のシャルル王がヨーロッパの王国、特にヴェルサイユ宮殿に匹敵するような宮殿を望んで建てさせたもの。豪壮な宮殿に豪華な部屋が続き、その裏手には3㎞に渡る広大な公園、美しい彫刻をあしらった噴水や滝……。建造物と緑がすばらしい調和をもたらす、まさに「王にふさわしい」場所であり、ため息が出てしまうほどの壮大なスケールで設計された王宮だ。また敵の侵入に備え、ダメージの少ない内陸に本拠地を構えるという意図もあった。王宮の窓からはナポリへ続く並木道を見渡すことができ、その思いを実感できる。ナポリ王国が当時ヨーロッパで強大な権力を振るい、莫大な富と財産に恵まれていたことが容易に想像できる。広い宮殿見学後は時間の許すかぎりゆっくりと庭園の散策を楽しみたい。庭園には観光馬車や小型バスが走り、自転車のレンタルも可能なので、楽しみ方はさまざまだ。ナポリから列車で約1時間、日帰りでタップリ楽しめるスポットだ。周辺の世界遺産を訪ねるなら1泊するのがおすすめ。
ナポリ王国がヨーロッパで偉大な権力を振るっていた頃、カルロス3世は、敵の攻撃を直に受けない所に政府の本拠地をおこうと考えた。海からの攻撃を避けるため内陸であり、ナポリからそれほど遠くない肥沃な土地、という条件を満たしたのがここカゼルタであった。建設の指揮を命じられたのは建築家のルイジ・ヴァンヴィテッリLuigi Vanvitelli。彼はフランスのヴェルサイユ宮殿を参考に、ナポリから続く並木道から宮殿の内部をくり抜いたアーチをくぐり、庭園、大滝を一直線に結ぶ長大な透視図を用いた図面を1751年に披露した。工事は翌年から始まり、1773年ルイジ・ヴァンヴィテッリの他界後は息子のカルロ・ヴァンヴィテッリが引き継ぎ、1780年にほぼ完成した。19世紀にはブルボン家の貴族たちが春と秋の離宮として利用した。
ゲーテをはじめとする著名な旅行者をもてなし、有能な音楽家たちには宮殿内の劇場で演奏させ、優雅な時を過ごしていた。また、年に一度復活祭明けの月曜日には庭園を開放し、庶民にお菓子をふるまっていたともいわれている。新市街が拡大したのは19世紀後半のことであるが、現在でもその美しい庭園は観光スポットとしてだけでなく、市民の憩いの場所として大切にされている。1997年、ユネスコの世界遺産に登録。
カゼルタの18世紀の王宮と公園、ヴァンヴィテッリの水道橋とサン・レウチョ邸宅群
詳細をみる4つの中庭を囲んだ田の字型の王宮は5階建てで1200の部屋がある広大さ。公開されているのは主に1700年代と1800年代翼面(入口から中庭を抜けた左右)の2階部分。大階段入口の向かいにあるのはファルネーゼ・コレクション由来のヘラクレス像だ。左右に勇ましいライオン像が置かれた大階段Scalone d'onoreを上がろう。壁面には色石が多用され、天井にはフレスコが輝く。階段の途中、壁面正面の王冠を被りライオンに乗るのはこの宮殿に着手したカルロ7世だ。
階段を上がった大きな空間はエレガントな玄関広間Vestibolo superiore。イオニア式の柱が八角形の束ね柱でまとめられ、ドーム状の天井へと続き壮大さを実感する。正面がパラティーナ(王宮)礼拝堂Cappella Palatina。半円の高い天井は黄金に色付けされ、壁面を柱が飾り、床は色大理石の象嵌模様、奥に主祭壇が弧を描き、輝くような空間だ。2階には王宮居室Appartamenti realiが並ぶ。当時の家具やシャンデリアをはじめ、壁は金色に輝く漆喰やサン・レウチョの絹布で飾られ、床には華麗な象嵌細工と、ロココ様式と新古典様式の華やかな空間が続く。
宮殿を出るとすぐに緑が美しい庭園が広がる。並木道と並行して、頂点の大滝まで3㎞にわたり緩やかな傾斜を水が流れ落ち、途中に小さな滝、噴水、彫像が配置され、その整然とした透視法的な奥行きの深さが実に印象的だ。
町なかにもかかわらず、うっそうとした森や池が広がり、この水のために山中から約40㎞にわたり水路が築かれたというのも、驚きだ。
まずは、水路に沿って坂道を上がろう。
緑地帯のほぼ終わりのマルゲリータの噴水Fontana Margheritaの奥から水路がはじまり、長さ475mの人工池のペスケリア・スーペリオーレPescheria Superiore、上部のイルカの滝Cascata dei Delfiniから水が流れ落ちて来る。さらに傾斜を上がると29体の風の精などが置かれたエオロの噴水Fontana di Eolo、農業の神ケレスの噴水Fontana di
Cerere、ヴィーナスとアドニスの噴水Fontana di Venere e Adone。ヴィーナスと彼女に愛されたアドニスが天使や動物に囲まれたダイナミックな彫刻で装飾されている。さらに上部、小山の下、豪快に流れ落ちる大滝を受け止めるのは(月の女神)ディアナと(鹿に姿を変えられた)アクタイオンの噴水Fontana di Diana e Atteoneだ。
ディアナの噴水に向かって右側からイギリス庭園Giardino Ingleseがエオロの噴水近くまで広がっている。イギリス庭園は当時のヨーロッパで流行しており、マリア・カロリーナ女王が望み、その代金は彼女の莫大な相続財産から支払われたという。英国からアンドリュー・グリファーを招き、世界中から珍しい植物が集められ、ゆったりとした起伏が広がる庭園に自然の風景が美しく広がっている。入ってすぐ左奥にはイタリア風神殿、坂を下るとピラミッド、ローマ時代風の廃墟を配置した池、小神殿、礼拝堂などが点在している。
最初のマルゲリータの噴水の奥へ進むと、大養魚場Pescheria Grande。王宮の食卓への魚が飼われ、時には王がボートを浮かべ釣りに興じたという。ここからさらに森の中を進むとかつてはお茶を楽しんだという東屋風のカステルッチャCstellucciaがある。