キーワードで検索
バロックの町、レッチェ。華麗で壮大なバロック建築が町を彩り、サンタ・クローチェ聖堂をはじめとするファサードを飾る彫像は圧倒的なスケールでこちらに迫って来る。強い太陽の下では白や砂色に、夜の灯りには金色に輝いて神々しく、そしてロマンティックだ。これらのバロック建築に用いられているのが「蜂蜜色」と称される、近郊産のレッチェ石。水分の多い石灰石で軟らかく細工が容易なことから、華麗な彫刻を生んだのだ。
レッチェは県庁所在地であり、南イタリア有数の町。紀元前から商業都市として栄え、ローマ時代には円形闘技場が築かれ、その後ノルマン朝、アンジュー、アラゴン家、16世紀のスペイン支配を経て、各所に歴史の残り香が漂う美しい町だ。見どころへ通じる道筋にはおしゃれな店も多く、市民公園はよく整備された緑のオアシスでそぞろ歩きも楽しい。
ほとんどの見どころは円形闘技場から続くサントロンツォ広場周辺に集中している。まずはこの広場を目指そう。fs駅からは徒歩で7~8分、バスターミナルからは10分程度だ。
細い路地の左右に豪壮なバロックの館が続くレッチェの町。紀元前12世紀からの歴史を誇り、アッピア旧街道の終点ブリンディシとはトラヤヌス街道で結ばれ、商業都市として栄えた。長いローマ帝国時代の後、紀元1000年以降500年ほどの間にはノルマン、ホーエンシュタウフェン、アンジュー家、アラゴン家、スペインとさまざまな支配者がこの地を支配したのだった。バロックが花咲いたのは、スペイン統治の時代16世紀から17世紀にかけてのこと。カルロ5世がトルコ軍の来襲に備えて、城塞と城を築いたことが発端だった。
続いて、迫力あふれるサンタ・クローチェ教会、サンティレーネ教会をはじめ、ドゥオーモ周辺が整備された。豊かな装飾で飾られたバロックが発展していったのはスペインの影響が色濃いほか、建物やその装飾に多用された細工の容易な凝灰岩が近郊から採石されたことも特筆される。ゆっくりと散策気分で歩いて、建物やそこここに残るバロックの残り香を感じたい町だ。
周辺にはカフェやホテルが並ぶ、町の中心広場。ひときわ高くそびえるのが、町の守護聖人のサントロンツォの円柱。17世紀にペストの終焉を祝って建立されたもので、ブリンディシにあったアッピア旧街道の終点を示す円柱を利用したもの。広場下には2世紀に完成し、2万5000人を収容したという円形闘技場を見ることができる。
レッチェ・バロックの傑作がサンタ・クローチェ聖堂だ。隣に建つ県庁(旧修道院)と美しい調和を見せる。1548年に建設に着手し完成は1646年のこと。ファサードを見れば、長い歳月が必要だったことが実感される。バラ窓の上には華麗な三角破風、左右には円柱、下には女性柱像とグリフォン(ワシとライオンの獣像)ら、さらに帯状彫刻が刻まれ、扉口は聖人像が飾る……。
圧倒されるほどに華麗で壮大だ。内部もレッチェ石で華麗に飾られている。各礼拝堂の草花や天使を刻んだ柱飾りなど、重厚かつ軽やかで繊細な彫刻装飾が美しい。とりわけサン・フランチェスコの礼拝堂や十字架の礼拝堂は必見だ。
カルロ5世により1539~1549年に建造されたもの。当時たびたび襲来したトルコ軍からの防御のために町の東側に築かれた堅固な城砦。今も中世の塔が残り、中庭からもその雰囲気を知ることができる。内部にはレッチェの伝統工芸品であるカルタペスタ美術館Museo della Cartapestaが置かれている。
ローマ時代にはフォロ(市場)が置かれた広場で、入口には彫像が飾る門、左に鐘楼、正面に一段高くドゥオーモ、右に旧神学校Antico Seminarioが置かれ、バロック様式で飾られた広大な中庭の風情だ。
ドゥオーモは、1659~1670年に建立。サンタ・クローチェ聖堂の建設にも携わったジュゼッペ・ジンバロの傑作と称され、バロック様式で華麗。ファサード上部に鎮座するのは、町の守護聖人サントロンツォだ。内部は抑制されたバロック様式で、一部金色に彩色されたレッチェ石や大理石の象嵌細工で装飾されている。
ドゥオーモに向かった右はかつての旧神学校(セミナリオ)で、現在は司教区博物館が置かれた建物の中庭にあるのがセミナリオの井戸。レッチェ石の華麗な彫刻で飾られ、時が止まったような中庭の
風情とともに印象的な空間だ。
城壁外の町の北西、豊かな緑が広がる墓地の敷地内にある教会。
手前に広いスペースが広がる教会と塔の姿は、町中のバロック建築とはまた異なった趣で、伸びやかで荘厳な雰囲気だ。教会のファサードを飾るバラ窓は12世紀の創建当時のまま、その後バロック様式の豪華な彫刻が18世紀の改築の際に加えられた。特に、扉上部の繊細なフリーズに注目したい。
教会左側からは墓地へと通じている。この地ならではの凝灰岩に彫刻を施した豪華で華麗な墓碑は、この町の歴史と豊かさを感じさせてくれる。
ら旋を描くようにスロープが配され、サレント半島で発掘された青銅時代からローマ時代の遺物を展示。とりわけ紀元前6~3世紀の壺のコレクションが充実している。また。1階奥の2世紀頃のトルソーはバックに再現シーンが描かれ、当時の様子を知ることができる楽しい展示となっている。
教会や邸宅などを眺めながらのそぞろ歩きが楽しいレッチェ。このほか、サントロンツォ広場とドゥオーモの間にある、重厚な装飾で中も外も飾られたサンティレーネ教会S.Irene、サントロンツォ広場の南にある、曲線使いが美しいサン・マッテオ教会S.Matteoなどを訪ねてみよう。
張り子/紙粘土細工のこと。
厳しい生活のなかから生まれた民衆芸術のひとつ。誕生は17世紀頃にさかのぼり、麦わらと針金で枠組みを作り、そこに紙を貼り、キリスト像などを作ったのが始まりといわれている。貧しさのなか、身近にある素材と敬虔な心から生まれたものだ。現在も町なかには、カルタペスタの工房があり、現代的な作品も生まれている。
多くの商店が13:00~16:00は昼休み。昼休みでもバールやカフェは店開きをしている。ゆっくりお昼を食べたり、外観見学にあてよう。