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4000m峰にロープウエイで一気に上れてしまうアルプスにあって、標高2000mに満たないリギ山は特筆すべきものではないかもしれない。しかしこの山は、観光地としてのアルプスのさきがけとなった重要な山なのだ。
ルツェルンからリギへ行くには次の3つのルートがある。いずれのルートで訪れても料金は変わらないし、所要時間にも大きな差はない。行きと帰りでルートを変えて1周するのがおすすめ。
❶湖船+赤い登山鉄道
ルツェルンから湖船でフィッツナウ Vitznauに向かう(所要約1時間。1日7〜14便)。フィッツナウ駅前に待機している赤い列車は、ヨーロッパ最古、世界でも2番目の歴史を誇る登山鉄道だ。これに乗って山頂Rigi Kulmへは30分ほど。ほぼ1時間ごとの運行。
❷湖船+ロープウエイ+赤い登山鉄道
ルツェルンから❶と同じ船に乗り、フィッツナウよりひとつ手前のヴェッギス Weggisで降りる(所要約40分)。ここからロープウエイに乗ってリギ・カルトバート Rigi Kaltbadへ(所要10分。30分ごと)。そこでフィッツナウから来た登山列車に乗り換えて山頂ヘ(約10分)。
❸SBB+青い登山鉄道
最も早い方法。ルツェルンからルガーノ方面に向かう列車かS3に乗り、リギの北の麓にあるアルト・ゴルダウ Arth-Goldauへ(所要約30分)。この駅はチューリヒとミラノを結ぶアルプス縦断ルートに位置し、チューリヒからは約50分。
アルト・ゴルダウ駅からは、立体交差で接続している登山鉄道駅から青い車両に乗り込む。ツーク湖を右側に森とアルプを抜けて、山頂駅まで所要40分。
1871年、リギにヨーロッパ初の登山鉄道が建設された。自分の足で、あるいは馬に揺られてしか山に登ることができなかった当時の人々にとって、座っているだけで山頂に行ける夢のような登山鉄道、そして麓からは想像できない山頂からのパノラマは、きっと別世界をのぞくような感覚だったのだろう。そのすばらしさはヨーロッパ中に広まり、以来リギ山はスイス有数の人気スポットになって現在にいたっている。
まずは登山列車の終点から小道を上って、1816年開業の歴史あるホテル、リギ・クルムへ。レストランに眺望抜群のテラスがあるので、ここでゆっくり食事でもしながら周囲のパノラマを楽しむのもいいが、山頂はホテルから数分で行けるので、せっかくなら360度のパノラマを楽しんでみたい。
周辺に高い山がないため、山頂からの景色は本当にすばらしい。南のフィアヴァルトシュテッター湖側は、なだらかな斜面の眼下に湖が広がり、目を上げると氷河と万年雪を頂いた山々が連なるアルプスを遠望できる。最高峰のフィンスターアールホルン(標高4274m)からユングフラウ、アイガーまでずらりと並んだベルナーアルプスが壮観。一方、北のツーク湖側は切り立った断崖で迫力満点だ。
時間に余裕があれば、雄大な景色のなかでぜひハイキングを楽しんでみたい。山頂から湖畔のフィッツナウまでのコースは、距離は長い(約8.2km)がずっと下り道で、尾根道、牧草地、森と景色も変化に富んでいるので飽きることはない。また線路沿いを歩くのでわかりやすいし、疲れたら途中から列車に乗ってしまうこともできる。