キーワードで検索
イタリアとの国境にほど近い人口1500人余りの小さな村、ミュスタイア。鉄道はなく、スイスでいちばんの秘境といっても過言ではないこの村は、世界的に注目されている。それは村外れに1983年に世界遺産に登録されたベネディクト派の修道院、聖ヨハネ修道院があるからだ。サン・モリッツから列車とバスを乗り継いで、スイスに残る最も古い建物のひとつといわれる修道院を訪ねてみたい。
サン・モリッツから直通またはサメーダン乗り換えでツェルネッツまで列車で42〜45分、1時間に1〜2本。ツェルネッツ駅からポストバスで1時間強。
ツェルネッツZernezからのバスは、スイスで唯一の国立公園の中を走り抜ける。標高2149mのフォルン峠Pass dal Fuornを通り、歴史のある宿場町サンタ・マリアSanta Mariaを過ぎると、やがてミュスタイアに到着する。
“ミュスタイア”という名前は、もともとは“修道院”という意味なので、修道院そのものが村の名前になったといえる。その聖ヨハネ修道院Kloster St. Johann Müstairは村の外れにあり、ツェルネッツから行くとミュスタイア・ポストの次にバスが停まる。このほかに大きな建物はないので、すぐにわかるはずだ。
780年、フランク王国のカール大帝の命により造られたと伝えられているこの修道院を世界的に有名にしたのは、内部に描かれていたフレスコ画だ。
1100年以上も前のもので、旧約・新約聖書の物語から82の場面が描かれている。これらはその後描かれた新しいフレスコ画に覆われていたために、1950年代に入りようやくその存在が確認された。ロマネスク様式以前のカロリング様式のオリジナルの建物が良好な状態に保たれていること、さらに偶然とはいえ、中世初期の貴重なフレスコ壁画が保存されていることが評価されて、1983年に世界文化遺産に登録されている。
修道院では現在でもベネディクト派の修道女たちが昔ながらの生活を送っている。また併設されている修道院博物館Klostermuseumには修道院内のフレスコ画の一部が展示されている。院内ではそれほど近くでは見ることができない壁画だが、ここでは繊細なフレスコ画の細部をすぐ近くでじっくり鑑賞できる。ぜひ立ち寄っておこう。
ミュスタイアにはもうひとつ聖セバスチャン教会という小さな教会があり、こちらも約800年の歴史がある。