招かれ方の上手下手

公開日 : 2004年09月28日
最終更新 :

9月半ばに学校が始まる。欧米と同じで新学期が9月だから、進学や転校で学校が変わった子も多い。バカンス気分が抜け、子供たちが新しい学校や新しい友達にやっに慣れて、親たちはほっと一息。寂しがりやでおしゃべり好きなトルコ人たちは、バカンス中会えなかった友人たちを、お互いにお茶に食事にと招きあいはじめる。都会では少なくなりつつあるが、元来トルコ人はお客好きだから旅行者でも家庭に招かれる機会は少なくない。私が初めて旅行者としてトルコへやってきたのはもう10数年も前のことになってしまうが、最初の3日間お金を使うチャンスがまったくなく一体どうなるのかと思ったものだ。お茶から食事にいたるまで、あちこちに招待されたり奢られたりで、インフレのせいでちょっと両替しただけでも札束になってしまったトルコリラが鞄を膨らませているのに、ちっとも出すチャンスがない。そのうち人が支払いをするタイミングや招待の断り方がわかってきて、ちゃんと自立(?)できたものの、今でも誰かに奢られるとあの時の戸惑いを思い出す。さて、友人が遊びに来てイスタンブールで数泊した後、アナドールをぐるっとまわて旅してきた。途中長距離バスで知り合った家族に夕食に招かれ、家に遊びに行ったのだという。「そりゃいい体験ができたね」というと、「でも本当に行ってよかったのかなと思って・・・」という。どうしてと聞くと、「夕食は多分家族分しか用意していなかったところへ急に行ったから困ったんじゃないかな。夕食に、っていわれたと思ってたんだけど、全然出てこなくて手振り身振りでお喋りしながらずっとナッツを食べててね。9時半になったし、もうそろそろ帰ろうと思って立ち上がったら、止められてさ。なんか僕たち催促したみたいだったかな?とにかく食事になって、食べたらすぐお開きみたいになっちゃったんだよね。」そうか、あらかじめ言っておいたほうが良かったか。トルコ人は別に何の用意もなくても人を呼ぶ。家族分だけの料理しかなくても家庭料理のほとんどは煮込みだから、汁気を少し多くしてパンを多くしてみんなで分けることができるから、あんまり気にしない。もちろん時間的余裕を持って招待されたときは、これでもかというくらい用意してくれるのだが。そして夏の日は長い。8時過ぎまで日が暮れないのだからそれ以前に食事にはしない。何かをつまんでいたのなら夏の夕食は10時になってしまうのもそんなに珍しくない。レストランが満席になるのもたいてい9時半ごろなのである。食事を始めたってトルコ料理では前菜をつつきながらおしゃべりとお酒ちびちびが続き、メインが出るのはお開きの合図というべき時間になる。

だから彼らを招待した家族も、迷惑ではなかったと思う。招待は社交辞令ではなく、珍しい外国人の客を楽しませようと彼らはおしゃべりに熱中しただけだし、夕食時間もなんとなく寝に入る時間も普通通りだったのだ。食事時間まえに帰ると言い出した客を前に、退屈させてしまったのかと彼らも仰天したことだろう。

習慣が違うと招くも招かれるも難しいものだなあ、と思いながら、私は今日も友達の家に出かけていく。

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子供の誕生日会みたいなお呼ばれなら、誤解も生まれないけれど。

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