【2022年10月 ウズベキスタン 旅の最新情報】ウズベキスタン南部で日本にゆかりの深い仏教遺跡を見る

公開日 : 2022年11月17日
最終更新 :

10月にガイドブック改訂版取材のためウズベキスタンを訪問しました。最新の入国情報と、西遊記の三蔵法師のモデルである玄奘三蔵も通った仏教遺跡の残るテルメズを紹介します。

日本からのフライトは窓側を確保したい!

ウズベキスタン航空機内モニターに映されたルート
ウズベキスタン航空機内モニターに映されたルート

2022年8月から成田~タシケント路線に再就航したウズベキスタン航空(11~3月中旬は冬季のため運休)。日本からのフライトは日中の便で、乗るときには、ぜひ窓側を確保しましょう。

日本海を越え韓国のソウル、黄海、中国の北京を通ったあと、西安からゴビ砂漠、タクラマカン砂漠、天山山脈を通ってタシケントへというルート。西安(かつての長安)から先は、まさに玄奘三蔵がインドへ向かったシルクロードの天山北路そのものです。窓側の席から眼下に、荒涼としたゴビ砂漠や、夏でも雪を抱く天山山脈を望みながら、この厳しい大地を玄奘三蔵が〈仏教を学ぼうという強い意思〉で歩いたのかと、思いをはせてみるのも楽しいものです。

天山山脈を越え中央アジアへ
天山山脈を越え中央アジアへ

なお冬季のウズベキスタン航空運休中でも、日本からのウズベキスタン旅行によく利用される大韓航空やアシアナ航空ソウル経由便なら、同様のルートをたどります。

タシケントの空港では現地SIMを手に入れよう!

タシケント空港のSIM販売所
タシケント空港のSIM販売所

コロナ禍の2年間で、ウズベキスタンではいろいろなことがアップグレードされました。タシケント国際空港もそのひとつ。入国時の預託手荷物受け取りエリアでも、空港タクシーサービス・カウンター、ツーリストインフォメーション兼SIMカード販売所、両替カウンター、ATM(VISA、MASTERカード利用可)がリニューアルされていました。ウズベキスタンの場合、両替レートは空港、銀行、ホテルでもすべて同じ。ホテルによっては両替を受け付けてくれないところもあるので、空港である程度両替する、もしくはATMでお金を引き出しておくのがおすすめです。

また現地での旅を充実させるために、SIMカードも手に入れておきましょう。空港内で手に入るのはウズベキスタン大手通信会社Beelineの旅行者向けSIMカード。ウズベキスタン国内通話無制限付きで8GB利用可40,000so'm(約520円)、15GB利用可60,000so'm(約780円)と格安です。現地SIMがあることで、ライドシェア配車アプリのYandexGOやmyTaxi.uzなどが利用できるようになり、現地でのタクシー料金交渉が不要になります(ウズベキスタンのタクシーは、いわゆる白タクがメインです)。

サマルカンドの新空港は本を開いた斬新な外観
サマルカンドの新空港は本を開いた斬新な外観

なお例年4~10月に成田空港から週1便の割合で運航されるウズベキスタン航空チャーターフライトの到着地サマルカンド国際空港も、2022年に新しくなっており、税関を抜けた到着ロビーにSIMカード販売ショップ、タクシーカウンター、両替所、ATM(VISA、Masterカード利用可)ができました。

ウズベキスタン最南部の町テルメズ

テルメズにある考古学博物館
テルメズにある考古学博物館

日本ではまだあまりなじみのないウズベキスタン最南部の都市テルメズ。2022年10月現在タシケントからウズベキスタン航空が週3便フライトを持っています(所要1時間20分)。紀元前6世紀のバクトリアの頃から町が築かれ始め、アレクサンダー大王東方遠征時には交易都市として、そして1~3世紀、中央アジアからインド北部にかけて隆盛を極めたクシャーナ朝時代に、テルメズの町では仏教文化が花開いたといわれています。当時町があったのは現在のテルメズの西側のアムダリヤ川沿い(オールドテルメズと呼ばれています)。この一帯に当時の仏教遺跡や、アムダリヤ川沿いの港町の遺跡などがいくつも点在しています。こうした遺跡見学はかなり広範囲に散らばっているので、現地旅行会社の英語ガイドツアー、もしくはタクシーをチャーターして観光するのがおすすめです。

テルメズの仏教遺跡群

カラテパの大仏塔跡
カラテパの大仏塔跡

1~3世紀といえば玄奘三蔵(602~664年)が訪れるはるか前のこと。クシャーナ朝治世下で黄金期を迎えたパキスタン北部ガンダーラ王国の仏教スタイルが、テルメズにも大きな影響を及ぼしていました。玄奘三蔵の見聞記『大唐西域記』では〈呾蜜〉という名称で記録されており、「伽藍は十余ヶ所、僧徒は千余人いる」と書かれています。クシャーナ朝時代にはそれ以上に多くの伽藍、そして数え切れないほどの僧院があり、そこで修業する僧も数え切れないほどだったと推測されています。しかし、クシャーナ朝後のイスラム勢力の台頭で、7世紀前半には僧院の大部分は焼け落ちてしまいました。それでも仏教復興にかけた町の様子を、玄奘三蔵はこの地で見ていたのかも知れません。

この地域の仏教遺跡は、元国立民俗博物館名誉教授の文化人類学者・加藤九祚(1922-2016)氏がウズベキスタンの考古学者と共に、生涯を捧げて発掘を行ったところで、数多くの貴重な発見がなされています。また2014年からは立正大学の仏教学部・文学部が共同で学術調査隊を派遣しており、継続的に発掘作業をしている、日本にもひじょうにゆかりの深い場所なのです。こうした事情もあり、テルメズの町の人たちは親日家の多いウズベキスタンの中でも特に日本人に優しく感じます。
見逃せない遺跡をいくつか紹介しましょう。

●ファヤズテパ 

仏塔脇には僧院跡があり、僧房の様子を知ることができる
仏塔脇には僧院跡があり、僧房の様子を知ることができる
釈迦如来像(タシケント国立博物館オリジナル)
釈迦如来像(タシケント国立博物館オリジナル)

まず見逃せないのが1世紀頃に建造されたとされる仏塔(ストゥーパ)と僧院からならファヤズテパ。保護のため仏塔は丸いドームで覆われていますが、かつての僧院がどのように機能していたのかを知ることができる重要な遺跡です。またここからは美術的にも世界最高レベルの貴重さをもつ釈迦如来像が出土されており、タシケント国立博物館にオリジナル(2022年10月現在、フランスのルーブル美術館へ貸し出し中)、レプリカがテルメズの考古学博物館に展示されています。

●カラテパ

砂岩の丘をくりぬいて僧房が造られている
砂岩の丘をくりぬいて僧房が造られている
アムダリヤ川越しにアフガニスタンを望む
アムダリヤ川越しにアフガニスタンを望む

ファヤズテパ近郊にあるカラテパ(黒い丘という意味)は3つの緩やかな丘からなる中央アジア最大の仏教遺跡(8haの広さがあります)。2~3世紀頃の建造とされ、砂岩の丘をくりぬいた15以上の横穴式僧房が並んでいます。またここに残っている巨大仏塔の基壇の上には、加藤九祚氏が私費を投じた保護のためのトタン屋根が付けられています。カラテパのすぐ脇にはアフガニスタンとの国境であるアムダリヤ川が流れており、カラテパからその様子を眺めることもできます。

●ズルマラ

修復が進むズルマラ
修復が進むズルマラ
仏教伝来前の都市跡カンピルテパはユネスコ世界文化遺産候補
仏教伝来前の都市跡カンピルテパはユネスコ世界文化遺産候補


このふたつの遺跡から少し離れたところに、中央アジアに残る最大の仏塔ズルマラがあります。クシャーナ朝カニシカ王の時代に作られたと考えられている仏塔で、現在畑の中で露出している部分は13mの高さを持っています。ただ長い年月の間に盗掘穴が開けられ、素材が日干し煉瓦のため傷みが激しいことなどから傾き始めており、現在は修復作業が行われています。

なおテルメズから約30km北西には、アレクサンダー大王が東方遠征の際に住居を構えたアムダリヤ川港湾都市跡のカンピルテパ遺跡もあります。

旅のバイブル「地球の歩き方」ガイドブック

古来、シルクロードの要衝として繁栄してきたウズベキスタンの諸都市。サマルカンドは“青の都”と称えられる世界遺産。同じく世界遺産のブハラ、ヒヴァも歴史的景観を誇っています。本書は、ウズベキスタンの魅力を満喫するための必携ガイドです。旅行情報・観光案内はもちろん、歴史・文化もわかりやすく解説しています。

※当記事は、2022年11月17日現在のものです

TEXT: 『地球の歩き方Platウズベキスタン』編集担当 伊藤伸平   
PHOTO: 伊藤伸平

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2022年11月17日現在、国によってはいまだ観光目的の渡航が難しい状況です。『地球の歩き方 ニュース&レポート』では、近い将来に旅したい場所として世界の観光記事を発信しています。渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
旅したい場所の情報を入手して準備をととのえ、新型コロナウイルス収束後はぜひお出かけください。安心して旅に出られる日が一日も早く来ることを心より願っています。

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筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

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