【イギリス】ロンドンから日帰り!ハンプトン・コートで歴史ロマンと自然と…ゴーストに浸る?!

公開日 : 2023年06月12日
最終更新 :
筆者 : kaede

ハンプトン・コート宮殿をご存じですか?16世紀初頭のヘンリ8世(離婚するためにカトリック教会を離脱してイギリス国教会を設立したエリザベス1世の父、6人の女性と結婚したイングランド国王)の時代から18世紀前半までロイヤル・ファミリーが居住した宮殿で、現在は国王チャールズ3世の所有となっています。王室の栄華を今に伝える立派な建物、美しい庭園、イギリスらしいゴースト・ストーリーと見どころが多い宮殿を擁するハンプトン・コートは、ロンドン中心部のウォーター・ルー駅から電車で36分ほど。簡単に日帰りできる距離です。日帰りと書きましたが、実はハンプトン・コートはロンドンとサリー州の境界にあり、宮殿は一応ロンドン側に所在しているのです。今回は歴史ロマンと自然に囲まれたハンプトン・コート周辺をご案内します。

ハンプトン・コート宮殿-歴史ロマンとゴーストと

噴水の中庭
噴水の中庭

ハンプトン・コート宮殿はいくつかの建物の複合体で、前述の通り一番古いテューダー朝のヘンリ8世のアパートメントとキッチンに加えて、スチュアート朝やハノーヴァー朝の建物から構成されています。加えて、いくつかの中庭とロイヤル・チャペル、そして大きな庭園があり、それぞれの時代の特徴を今に残しています。

ヘンリ8世の大広間・鹿の角の剥製がブリテン風味
ヘンリ8世の大広間・鹿の角の剥製がブリテン風味
ヘンリ8世の家族の肖像画。王の近くにいるのが最愛の妻ジェーン・シーモアと息子のエドワード(実際にはジェーンは息子を生んですぐに死去)、左側に立つ女性がメアリ1世、右側に立つ女性がエリザベス1世。リアル「ハウス・オブ・ドラゴン」の世界
ヘンリ8世の家族の肖像画。王の近くにいるのが最愛の妻ジェーン・シーモアと息子のエドワード(実際にはジェーンは息子を生んですぐに死去)、左側に立つ女性がメアリ1世、右側に立つ女性がエリザベス1世。リアル「ハウス・オブ・ドラゴン」の世界

とはいえ、やはり見どころはヘンリ8世のアパートメントでしょう。ヘンリ8世周りのゴシップを理解しておくと、ハンプトン・コート宮殿が10倍楽しめます。ロンドンのウェスト・エンドで2022年にトニー賞のオリジナル楽曲賞を受賞した「Six(シックス)」というミュージカルがあるのですが、ヘンリ8世の6人の妻が現代に蘇ってガールズ・バンドを組むという奇想天外なストーリーとなっています。「Divorced, beheaded, Died, Divorced, Beheaded, Survived」(離婚、斬首、死亡、離婚、斬首、生存)というのがこの6人の運命を覚えるためにイギリスの子供たちが学校で習う語呂だそうです。(口に出してみると、リズムがいいので覚えやすいです)

このハンプトン・コート宮殿で重要なのは3番目と5番目の妻と言えるでしょう。3番目の妻ジェーン・シーモアはヘンリ8世に最も愛された妻として有名です。というのも、彼女は娘しかいなかったヘンリ8世に男の世継ぎを与えているのです。しかし、男児出産の12日後に死亡。彼女は6人の妻の中で唯一、ウィンザー城でヘンリ8世の隣に眠っています。また、宮殿のヘンリ8世のアパートメントの中に、彼女に捧げられた一室があります。

ジェーンの死後、次の王妃を見つけるためにお見合いをしたヘンリ8世はアン・オブ・クレーヴズと結婚しましたが、肖像画と顔が違う、思ったより美人じゃなかったという理由でまもなく離婚。その後、5番目の妻となる19歳のキャサリン・ハワードに夢中になり、再婚しました。しかし、彼女はまもなく王の不在中に姦通を行ったとして死罪になります。同じく斬首された2番目の妻アン・ブーリンは政治的に嵌められたという冤罪説が強いようですが、キャサリン・ハワードは有罪説が有力だそうです。宮殿内で姦通罪を言い渡された彼女は衛兵の拘束をふりほどき、慈悲を乞うため、叫びながらヘンリ8世がいる礼拝堂(ロイヤル・チャペル)へとつながる廊下を走りました。しかし、チャペルに辿り着く前に衛兵にあえなく捕まり、再びヘンリ8世の顔を見ることなくロンドン塔で斬首されます。ロイヤル・チャペルにつながる廊下では、今もキャサリン・ハワードのゴーストが叫びながら走っているところが目撃されるといいます。

キャサリン・ハワードの他にも、ハンプトン・コート宮殿はゴーストの噂に事欠きません。Silverstick Stairsではろうそくを持って歩く悲しげなジェーン・シーモアの幽霊の姿が見られると言われています。この階段はかつて彼女が男児を出産し、そのまま死去した部屋につながっているそう。また、有名なゴースト「Gray Lady(灰色の婦人)」は4代にわたるテューダー朝の君主に仕えた忠誠心の厚いシビル・ペンという看護婦で、エリザベス1世が天然痘にかかった際にも献身的に看護した人です。しかし、看護の甲斐あって女王は回復したものの、彼女はその直後天然痘がうつって亡くなってしまったのだそうです。 彼女はState Apartmentsとクロック・コートをつなぐ通路を歩き回るのが目撃されています。

ハンプトン・コート宮殿を歩いていると、明るい場所はとても明るいのですが、ところどころ日光が入ってこない影の深い場所があって、中世さながらの建物の中で周りに誰もいない瞬間など、ゴーストを信じていなくても少々背筋がひんやりした気持ちになります。人がいるところまで、ちょっと早歩きしてみたりして…。

女王の階段、ゴーストが出るとされる廊下のすぐ隣にある。美しい階段だが、薄暗い
女王の階段、ゴーストが出るとされる廊下のすぐ隣にある。美しい階段だが、薄暗い
死罪となったキャサリン・ハワードが慈悲を求めて走ったとされる廊下。場所が定かではなかったので係員の女性に聞いたところ、「ここがまさにその廊下よ。キャサリンのゴーストは奥の階段の方向から礼拝堂(この写真の中心付近)に向かって走るの」とのこと
死罪となったキャサリン・ハワードが慈悲を求めて走ったとされる廊下。場所が定かではなかったので係員の女性に聞いたところ、「ここがまさにその廊下よ。キャサリンのゴーストは奥の階段の方向から礼拝堂(この写真の中心付近)に向かって走るの」とのこと
  • ハンプトン・コート入口

    ハンプトン・コート入口

  • ヘンリ8世のキッチン。驚くほど広い

    ヘンリ8世のキッチン。驚くほど広い

  • 当時の王侯貴族のドレス

    当時の王侯貴族のドレス

  • ヘンリ8世の大広間

    ヘンリ8世の大広間

  • 衛兵の制服

    衛兵の制服

  • 宮殿内のカフェテリア

    宮殿内のカフェテリア

ハンプトン・コート宮殿の広大な庭園で最古の迷路に迷い込む

フォーマル・ガーデン正面
フォーマル・ガーデン正面

ハンプトン・コート宮殿に来たら庭園を散策するのも忘れずに。東京ドーム5個分のサイズのフォーマル・ガーデンは見事な眺めです。更に、庭園内には1700年頃に作られた世界最古の生垣の迷路があります。筆者も一人で迷路にトライしましたが、殆ど人がいないひっそりと静かな時間帯だったので、生垣の中で行き止まりになったり迷っているうちに「私は一体に何をしているのだろう」と若干情緒不安定になりました。この迷路は家族や友人とワイワイ賑やかに挑戦することをおすすめします。また、出口近くにあるローズ・ガーデンも美しいです。通常ガーデンに入るのには宮殿の入場券が必要ですが、年に数回無料の日もありますので、チェックしてみてください。

宮殿をバックにした大きなローズガーデン
宮殿をバックにした大きなローズガーデン
  • ミュージック・フェスティバルの準備が進む庭園の噴水

    ミュージック・フェスティバルの準備が進む庭園の噴水

  • 最古の生垣の迷路

    最古の生垣の迷路

  • ローズガーデンで見つけた綺麗なバラ

    ローズガーデンで見つけた綺麗なバラ

  • ふと見つけた散歩道

    ふと見つけた散歩道

ハンプトン・コート宮殿の楽しみ方は多様!

ハンプトン・コート宮殿はもちろん重要な歴史的観光地なのですが、実は沢山のイベントの会場にもなっています。筆者が訪問した6月初旬にはミュージック・フェスティバルが開催されていましたし、8月上旬にはガーデンでナイト・シネマのイベントも行われるようです。また、クリスマス・シーズンには宮殿正面にスケートリンクがオープンします。日中もいいですが、夜に幻想的にライトアップされた宮殿を背景にスケートするのもロマンチックでいいですよ。

また、ハンプトン・コート宮殿には「Royal School of Needlework(王立刺繍学校)」が入っています。生徒になると、宮殿内の観光客がアクセスできないプライベート部分にある教室で刺繍が学べるそうです(冒頭の噴水の中庭の写真に写っている一室だそう)。王立刺繍学校スタジオでは伝統的に戴冠式で使用されるローブなどの刺繍も担当しています。2023年のチャールズ国王の戴冠式でも9点の刺繍作品が作成されたのだとか。筆者のお友達はこちらの刺繍学校に通っており、次回の戴冠式には間に合うように刺繍の実力を蓄えたいとのことでした。頑張ってほしいです!(チャールズ国王と友人のどちらも)刺繍に興味がある方はぜひ調べてみてください。

Hampton Court Palace

住所
Hampton Ct Way, Molesey, East Molesey KT8 9AU
電話番号
+44 (0)20 3166 6000
アクセス
Waterloo駅からSouthwestern RailwayでHampton Court駅まで36分、Hampton Court駅から徒歩11分

フレンドリーな鹿に癒される公園

女神ダイアナの噴水
女神ダイアナの噴水
アルビノの白い鹿を発見
アルビノの白い鹿を発見

ロンドンで鹿といえばリッチモンド・パークが有名ですが、実はもう一か所、こちらの「Bushy Park(ブッシ―・パーク)」でも見ることができます。こちらの公園はハンプトン・コート宮殿のすぐ裏手にあり、ロンドンの8つのロイヤル・パークの中で2番目の広さを誇りキングストン方面まで広がっています。

ブッシ―・パークは1529年にヘンリ8世が家臣からハンプトン・コート宮殿を譲り受けた際に合わせて贈られ、それ以降ロイヤル・パークとなっています。ハンプトン・コート宮殿に水を安定供給するために1630年代に12マイル(20キロ弱)の水路が作られ、それが景色に溶け込んで特有の景観を作り出しています。大きな道路がないせいか静かな雰囲気で、水辺で心をからっぽにするのがおすすめです。

こちらの鹿はワイルドなリッチモンド・パークの鹿に比べると比較的フレンドリーで、歩道の近くで草を食べているのが見られますし、人が近づいてもあまり警戒しないようです。また、平坦で見通しがいい公園なので、どのあたりに鹿がいるか遠目でも探しやすいです。今回、たまたま白いアルビノの鹿を発見しました。最初は鹿の群れにヤギが混ざっているのか?と思ったのですが、よく見るとやはり鹿でした。何だか神々しいですよね。

  • バンビ柄の小鹿も

    バンビ柄の小鹿も

  • 池の水面を見ていると心が癒されます

    池の水面を見ていると心が癒されます

  • テムズ川からつながる小さな水路

    テムズ川からつながる小さな水路

Bushy Park

電話番号
+44 (0)30 0061 2250
アクセス
Hampton Court駅から徒歩11分
URL
https://www.royalparks.org.uk/parks/bushy-park

ハンプトン・コート・ビレッジを散策

ハンプトン・コート・ビレッジ
ハンプトン・コート・ビレッジ

ハンプトン・コート駅に到着すると、ついつい橋を渡ってハンプトン・コート宮殿に直行してしまいがちなのですが、川の手前にはハンプトン・コート・ビレッジがあります。ローカルな雰囲気のビレッジには味のあるカフェやアンティーク・ショップがあり、散策せずに帰るのは少々もったいないのです。まず紹介するのは地元の方にお勧めいただいた「Dish(ディッシュ)」というカフェ。駅の向かい側にある独立系のカフェで、毎日朝の6時からオープンしているので自転車のお客さんにも人気があるそうです。店は細長いのですが、店頭にはテラス席のテーブルが、奥にもガーデン席があるので意外とテーブル数が多いです。フードのメニューは、朝食、ブランチ、パニーニ、サンドイッチ、ジャック・ポテトにサラダなど。筆者はガーデン席で冷たいピーチ・ティーを頂きましたが暑い日なので最高でした。ハンプトン・コート宮殿観光の前後の休息や軽食におすすめのカフェです。

ポップでアーティスティックな店内
ポップでアーティスティックな店内
  • 店頭にはテラス席が

    店頭にはテラス席が

  • 奥にはガーデン席があります

    奥にはガーデン席があります

  • 暑い日だったので、冷たいピーチ・ティーが美味しかったです!

    暑い日だったので、冷たいピーチ・ティーが美味しかったです!

Dish

住所
3 Bridge Rd, Molesey, East Molesey KT8 9EU
電話番号
+44 (0)20 8941 1095
アクセス
Hampton Court駅から徒歩1分

アンティークショップでお土産探し

ハンプトン・コート・ビレッジを歩いていると目にとまるのがアンティークのお店です。今回はその中から「Hampton Court Emporium(ハンプトン・コート・エンポリアム)」というお店に突入。40以上のトレーダーからアンティークのアイテムを集めているというこちらのお店では、幅広い種類の商品が並べられています。ラインナップは家具、陶器、ガラス製品、銀器、装飾品、絵画、食器、洋服など様々。店内はお店を2軒つなげた形になっているので、とても広く、ディスプレイもガラスの棚に博物館のように展示されているスペースもあり、見ごたえたっぷりです。歴史あるこの街だからこそ見つかる掘り出し物もあるかも?ぜひ少し時間をとってこちらのお店を覗いてみてくださいね。

  • 堂々とした店構え

    堂々とした店構え

  • ジュエリーのコーナー

    ジュエリーのコーナー

  • 2軒つながった形なので思いのほか広いです

    2軒つながった形なので思いのほか広いです

Hampton Court Emporium

住所
Bridge Rd, Molesey, East Molesey KT8 9HA
電話番号
+44 (0)20 8941 9032
アクセス
Hampton Court駅から徒歩5分
こちらはまた別のアンティーク・ショップです。こちらも素敵そう
こちらはまた別のアンティーク・ショップです。こちらも素敵そう

いかがでしたか?今回は宮殿で有名なハンプトン・コートの魅力をお伝えしました。訪問したい日が決まったら、オンラインで宮殿のチケットを予約してお出かけください(開いていない日や混んでいる場合もあるので事前予約しておいた方が無難です)。緑が多く新鮮な空気を感じることができますよ。

筆者

イギリス特派員

kaede

アフタヌーンティーやロイヤルファミリーだけではない、多様性あふれる、ダイナミックでゆるーいロンドンの姿を紹介していきます。自分の友達が遊びに来たら連れていきたい、真のおすすめスポットのみ掲載していくのでぜひご覧ください。

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