山形県が取り組む「ユニバーサルツーリズム」を体験レポート! 誰もが旅行を楽しめる地域を目指して

公開日 : 2023年01月24日
最終更新 :

山形県では現在、高齢であることや障害等の有無に関わらず、誰もが旅行を楽しめる「ユニバーサルツーリズム」を推進しています。今年度、「地球の歩き方総合研究所」が事業の一部を受託し、受入態勢の強化や取り組みをPRするためモニターツアーを実施しました。

※この記事では「障害」と表記しています。「障がい」と表記すると、視覚障害のある方が利用するスクリーン・リーダーなどでは「さわりがい」と読み上げられてしまう場合があるためです。「障害は人ではなく環境にある」という考えのもと、漢字の表記のみにとらわれず、誰もが住み良い社会の実現のため、社会における「障害」と向き合っていくことを目指します。

目次

「誰もが旅行を楽しめる地域」を目指す山形県

蔵王連峰の美しい紅葉
蔵王連峰の美しい紅葉

山形県では、蔵王地域を通年型の観光地として確立していくことを目指す「世界の蔵王プロジェクト」を展開。その一環としてユニバーサルツーリズムを推進しています。今回のモニターツアーを催行したのは紅葉が残る11月中旬。群馬県と岩手県から参加した車椅子利用者と介助者による2組のモニターが山形市、上山市を巡りました。

生産量日本一を誇る「紅柿(べにがき)」のカーテンが上山の秋の風物詩
生産量日本一を誇る「紅柿(べにがき)」のカーテンが上山の秋の風物詩

旅のスタートは「かみのやま温泉」駅。「東京」駅からは山形新幹線で約2時間30分、「山形」駅からはJR山形線で約15分、「仙台」駅からはバスで約1時間30分の場所に位置しています。「かみのやま温泉」はもちろん、蔵王のシンボル「お釜」への玄関口です。

モニターツアーの移動に使用した専用車両
モニターツアーの移動に使用した専用車両

移動には電動車椅子がリフトで乗り降りできる専用車を利用します。所有するのは今回の旅程のアドバイザーでもある「山形バリアフリー観光ツアーセンター」。自身も車椅子利用者である加藤健一さんが代表を務めているため、細やかな配慮をしてくれる心強い存在です。

「車椅子利用者と言っても、手動で車椅子を動かせる人、つかまり立ちができる人、まったく立つことができない人などさまざまです。体の状態によって、求められる情報は異なってくるので、その方に合わせた情報を提供できます」と加藤さん。

モニターの木暮奈央さん(左)の記念撮影をする加藤さん(右)
モニターの木暮奈央さん(左)の記念撮影をする加藤さん(右)

山形県を旅する際には、まずは「山形バリアフリー観光ツアーセンター」への問い合わせが安心です。今回のモニターツアーで訪れた場所以外にも、山形県内にはバリアフリー対応の宿泊・観光施設が多くあり、お客様に合わせた様々な提案をしてくれます。
加藤さんはじめ「山形バリアフリー観光ツアーセンター」のスタッフは、今回のツアーにも同行し、山形県の魅力を伝えてくれました。

■山形バリアフリー観光ツアーセンター

住所
山形県南陽市若狭郷屋589-2
営業時間
8:30~17:30(日曜祝日、第2・4土曜定休)
アクセス
山形鉄道フラワー長井線 南陽市役所駅から車で約2分

ハードのバリアフリーよりも心のバリアフリーが大切

簡易スロープを使用して「七右ェ門窯」の建物へ入ります
簡易スロープを使用して「七右ェ門窯」の建物へ入ります

2泊3日のツアーで印象的だったのが、バリアフリー対応の設備が整っているということよりも、受け入れる気持ちが大切であること。

山形市の「七右ェ門窯」では、七代目の高橋正さんの高いホスピタリティが全員に伝わり、生き生きと陶芸体験をする様子を見ることができました。

体験者に合わせて高橋さんがアドバイスをしてくれます
体験者に合わせて高橋さんがアドバイスをしてくれます

「七右ェ門窯」は、山形市平清水で200年の歴史をもつ平清水焼(ひらしみずやき)の窯元。平清水焼は、鉄分の多い地元・千歳山の陶石を使用してつくる陶器と磁器で、平清水は、明治の最盛期には30以上の窯元から成る「陶芸の里」と呼ばれた土地でした。現在この地に残るのは3窯元のみ。使う釉薬や技法は窯元により異なりますが、「七右ェ門窯」では青みがかった梨肌が特徴の「梨青磁」や、つや消しの釉薬を使用した陶器が人気です。

陶芸体験では、見本を参考に好きな形をつくることができます
陶芸体験では、見本を参考に好きな形をつくることができます

「七右ェ門窯」の建物の入口には段差がありますが、取り外しできる簡易スロープを用意しているため、車椅子でも出入りすることができました。かなり急な坂でしたが、介助者に加えて高橋さんが出入りをサポートすることで、安心して移動ができたようです。

急な段差もみんなでサポートすれば越えられます
急な段差もみんなでサポートすれば越えられます

また、陶芸体験では、体験者の得意不得意に合わせて、臨機応変にアドバイスをしたり、道具を準備してくれました。

テーブルも各々力が入りやすい高さのものを用意してくれます
テーブルも各々力が入りやすい高さのものを用意してくれます

「バリアフリーの設備が整ったところだけを旅するのではなくて、バリアがあるところも楽しめるのが真のユニバーサルツーリズム」と加藤さん。
大切なのは、ハードの設備が整っていることよりも、相手が何を求めているかを的確に察知し寄り添う思いやりの心。そして、少しの工夫と、「ようこそ」と迎える気持ちがあれば、障害の有無に関わらず誰もが楽しめる場をつくることができるのだと気づかせてくれた体験でした。

■七右ェ門窯

住所
山形県山形市平清水153
営業時間
9:00~17:30(陶芸体験は15:00受付終了。月曜定休。年末年始、連休等の休業日は公式ウェブサイト等をご確認ください)※完成品は後日七右ェ門窯で受け取りまたは郵送
アクセス
JR山形駅から車で約15分
料金
陶芸教室 粘土500g 1,650円、粘土1kg 3,080円

車椅子に座ったままできる体験を満喫〜動物との触れ合い〜

山に囲まれた乗馬クラブで動物と自然に癒されました
山に囲まれた乗馬クラブで動物と自然に癒されました

今回のモニターツアーでは、「七右ェ門窯」以外にも、車椅子に座ったままできる体験プログラムを提供している施設を複数訪問しました。

「ZeN Riding Club」は、「馬にとって居心地の良いクラブ」をモットーに3500坪の敷地で全頭放牧を行っている乗馬クラブ。砂利道や坂道はありますが、車椅子のまま敷地内を見学し、馬と触れ合える餌やり体験を行いました。
「馬は、医療、教育、スポーツ・レクリエーションの3つの要素を併せ持っています。心身両面への直接的セラピー効果もあると言われているので、今後はホースセラピーとして車椅子利用者でも乗馬が楽しめるようにしていきたい」と加藤さん。
動物と直接触れ合う機会はあまりないとのことで、みなさん癒されているようでした。

馬が顔を近づけてくれるので車椅子に座ったまま餌やりができます
馬が顔を近づけてくれるので車椅子に座ったまま餌やりができます
手も車椅子に座ったまま洗えるので安心です
手も車椅子に座ったまま洗えるので安心です
猫とも触れ合えます。写真を撮るのはモニターの宍戸かつ子さん
猫とも触れ合えます。写真を撮るのはモニターの宍戸かつ子さん
敷地内にはヤギもいます。見ているだけでセラピーに
敷地内にはヤギもいます。見ているだけでセラピーに

■ZeN Riding Club

住所
山形県上山市蔵王堀切山2555-1
営業時間
9:00〜12:00、13:00〜16:30(受付時間:8:00〜18:00、火曜定休)
アクセス
JRかみのやま温泉駅から車で約20分
料金
入場料100円(2歳未満無料)、餌やり体験(馬、うさぎ、ヤギ)200円、餌やり体験(猫)100円

車椅子に座ったままできる体験を満喫〜絵付け〜

人気旅館「日本の宿 古窯」へ
人気旅館「日本の宿 古窯」へ

「日本の宿 古窯」では陶器への絵付けを体験しました。

敷地内から奈良時代の登り窯跡が発掘されたことにその名が由来する「古窯」。来館者にも焼き物にまつわる体験をしてもらおうと、宿泊の有無に関わらず絵付け体験ができます。

旅館入り口にはスロープがあり、館内の通路も広いため体験会場までの移動もスムーズでした。絵付けも車椅子のまま体験ができます。

6色の絵具を自由に使い絵や文字を描きます
6色の絵具を自由に使い絵や文字を描きます
花瓶や置物、お皿などから好きな陶器を選び絵付けします
花瓶や置物、お皿などから好きな陶器を選び絵付けします
左から宍戸さん、木暮さん、加藤さんの作品
左から宍戸さん、木暮さん、加藤さんの作品
出土した土器の破片が館内に展示されています
出土した土器の破片が館内に展示されています
館内に多数展示されている著名人による絵付け作品も必見です
館内に多数展示されている著名人による絵付け作品も必見です
多目的トイレも整備されていました
多目的トイレも整備されていました

■日本の宿 古窯_らくやきの体験

住所
山形県上山市葉山5-20
体験時間
①16:00〜18:00(受付は17:30まで) ②19:30〜21:00(受付は20:30まで) ※完成品は翌朝売店での受け渡しまたは郵送
アクセス
JRかみのやま温泉駅から車で約10分
料金
絵付けをする陶器により異なる(1,220円〜3,150円)

車椅子に座ったままできる体験を満喫〜アロマトリートメント〜

「高源ゆ」ではアロマトリートメントを体験
「高源ゆ」ではアロマトリートメントを体験

また、今回のモニターツアーで、トライアルで実施したアロマトリートメントがとても好評でした。

訪れたのは、上山市の坊平高原に2020年にオープンした「高源ゆ」。坊平は、ナショナルトレーニングセンター高地トレーニング強化拠点に指定されている場所で、数多くのアスリートが合宿に訪れています。「高源ゆ」は、そうしたアスリートのリカバリー施設として開業。温泉やサウナのほか、スタジオや、流水装置が完備されたプールでトレーニングやリハビリができる設備が整っています。

この施設で、リンパトリートメントスパの施術を行なっているのが、「アロマ&植物療法kamikobuchi」の笹渕美香さん。今回は特別に、「高源ゆ」でできる車椅子利用者向けのアロマトリートメントメニューを用意してくれました。

プールの足湯で足を温めます
プールの足湯で足を温めます
車椅子に座ったまま足とデコルテや頭皮をマッサージ
車椅子に座ったまま足とデコルテや頭皮をマッサージ

「車椅子ではトリートメントを受けられないと思っている方も多くいらっしゃいます」と加藤さん。車椅子利用者は、足が冷たくなりやすく、むくむことも多いそうで、こうした経験ができるのは貴重なことなのだそう。

「足だけであれば車椅子に乗ったまま施術を受けられるので負担が少ないですし、状態により異なりますが、気持ち良いという感覚がある人もいるし、感覚がない方もむくみが取れるのが見た目でわかるのでうれしいものです」と教えてくれました。

施術を受けてうれしそうな宍戸さんと介助者の佐々木かよさん
施術を受けてうれしそうな宍戸さんと介助者の佐々木かよさん

入口のスロープや多目的トイレなど、設備が整っている施設であることもうれしい点。上山市はパラリンピックのポーランド選手団の受け入れ地で、実際「高源ゆ」がアスリートに使用されました。

入口には広いスロープがあります
入口には広いスロープがあります
多目的トイレも完備。建築は山形市に事務所を置く渋谷達郎氏
多目的トイレも完備。建築は山形市に事務所を置く渋谷達郎氏

今回はトライアルでしたが、今後定番化したいと考えているそうなので、興味のある方は「アロマ&植物療法 kamikobuchi」笹渕さんに問い合わせをしてみてください。

■アロマ&植物療法 kamikobuchi

■高源ゆ

住所
山形県上山市蔵王坊平国有林241林班
営業時間
11:00〜19:00(土・日曜・祝日〜21:00、月曜定休。1月〜3月は13:00〜18:00、月・火曜定休)※利用には予約が必要
アクセス
JRかみのやま温泉駅から車で約30分

文芸と美術、建築を楽しむ〜山形美術館〜

モネの「睡蓮」など近代絵画を展示する山形美術館の展示室
モネの「睡蓮」など近代絵画を展示する山形美術館の展示室

体験に加え、今回のツアーでは、ここでしか見ることができない貴重なコレクションを有する美術館と記念館も巡りました。

ひとつは山形市にある「山形美術館」です。1964年に開館した民間主導の美術館で、当時の山形新聞・山形放送社長 服部敬雄氏が中心となり財団法人を設立。山形県と山形市が運営補助を行なっています。

山形出身作家の作品はもちろん、山形銀行の長谷川吉郎前会長より寄贈された重要文化財の与謝蕪村「奥の細道図屏風」を含む日本美術、山形県南陽市の吉野鉱山で石膏原石の採掘を行っていた吉野石膏株式会社により寄託されたモネ、マティス、ピカソ、シャガールなど、フランス近代絵画の貴重なコレクションを有しています。

「奥の細道図屏風」与謝蕪村 山形美術館 長谷川コレクション
「奥の細道図屏風」与謝蕪村 山形美術館 長谷川コレクション

1985年に建設された現在の新館は、風土と文化の融合を意識した、山形県鶴岡市田麦俣地域の多層民家を連想させる三角屋根が特徴の建物。新館開館当初より車椅子ユーザーがアクセスしやすいように意識して設計されたそうで、駐車場から入口まではスロープがあり、多目的トイレも各階に整備されていました。

三角屋根が特徴の外観。設計は山形市の本間利雄設計事務所
三角屋根が特徴の外観。設計は山形市の本間利雄設計事務所
駐車場から続くスロープを通って入口へ
駐車場から続くスロープを通って入口へ
主任学芸員の白幡菜穂子さんの解説でより興味が深まります
主任学芸員の白幡菜穂子さんの解説でより興味が深まります

■山形美術館

住所
山形県山形市大手町1-63
営業時間
10:00~17:00(入館は16:30まで。月曜定休。12月28日〜1月3日は休館。展示替えのための臨時休館あり)
アクセス
JR山形駅から車で約6分
料金
企画展により異なる

文芸と美術、建築を楽しむ〜斎藤茂吉記念館〜

斎藤茂吉と親交のあった日本画家・安田靫彦氏による表札
斎藤茂吉と親交のあった日本画家・安田靫彦氏による表札

もうひとつのスポットは、上山市にある「斎藤茂吉記念館」。
上山は、近代短歌を代表する歌人・斎藤茂吉生誕の地で、氏が残した業績や生活の様子を伝える多くの資料が収蔵・展示されています。

開館は1968年。50周年の2018年にリニューアルが行われ、車椅子利用を意識したスロープの開設やエレベーターの増築が行われました。展示エリアにあった段差も改められ、車椅子でも鑑賞しやすくなっています。

展示スペースは車椅子で鑑賞できます
展示スペースは車椅子で鑑賞できます
エレベーターも車椅子利用を想定して改築。ボタンも届きます
エレベーターも車椅子利用を想定して改築。ボタンも届きます
エレベーターからの通路も車椅子が2台並走できるほど広々
エレベーターからの通路も車椅子が2台並走できるほど広々
多目的トイレも整備されています
多目的トイレも整備されています

創設時、建築を手がけたのは谷口吉郎氏。1980年代後半に増築・改修が行われた際は、子息である谷口吉生氏が、2018年には、山形県出身で、谷口建築設計研究所の高宮眞介氏がそれぞれ設計に携わったという歴史をもちます。

増築計画が持ち上がった際、当初は2F、3Fとビルのように建築を重ねる案もあったそうですが、父・吉郎氏の意思が尊重され、地下をつくる設計がなされたそう。展示資料に加え、建築も必見です。

1Fから見えるラウンジは地下からつながっています
1Fから見えるラウンジは地下からつながっています

■斎藤茂吉記念館

住所
山形県上山市北町字弁天1421
営業時間
9:00〜17:00(入館受付は16:45まで。水曜定休。祝日の場合は翌日、7月第2週の7日間、12月28日〜1月3日は休館。)
アクセス
JRかみのやま温泉駅から車で約15分
料金
大人 600円、高大生300円、小中生100円 ※団体・障害者割引:500円(大人)、250円(高・大学生)、50円(小・中学生)

日本有数の古湯・蔵王温泉も堪能

蔵王温泉は開湯1900年。共同浴場や温泉付き宿が建ち並びます
蔵王温泉は開湯1900年。共同浴場や温泉付き宿が建ち並びます

蔵王観光と言えば、温泉。強酸性の硫黄泉が特徴で、「美肌の湯」として知られています。モニターのみなさんは、バリアフリー対応の大浴場・露天風呂のある宿と、貸し切り風呂のある宿に宿泊し、温泉を楽しみました。

1日目に宿泊した「蔵王四季のホテル」
1日目に宿泊した「蔵王四季のホテル」

1日目に宿泊したのは「蔵王四季のホテル」。大浴場の脱衣所までは車椅子で入ることができ、露天風呂には手すりがあるので、介助者のサポートがあれば温泉に入浴することができます。

また、バリアフリー対応の客室が6部屋あることも特徴。スライドドアで、簡易スロープを利用して入ることができ、車椅子のまま客室を利用することができます。車椅子から移乗しやすい高さ45cmのベッドが設置されるなど、過ごしやすい環境が整っていました。

ベッドの高さやスペースの広さが工夫されています
ベッドの高さやスペースの広さが工夫されています
洗面台の下に足が入ることも快適さの一因
洗面台の下に足が入ることも快適さの一因

■蔵王四季のホテル

住所
山形市蔵王温泉1272
アクセス
JR山形駅から車で約40分 ※JR山形駅から無料送迎あり
2日目に宿泊した「蔵王国際ホテル」
2日目に宿泊した「蔵王国際ホテル」

2日目に宿泊した「蔵王国際ホテル」には3種類の貸し切り風呂があり、なかでも「里の恵み湯」はバリアフリー対応。車椅子から移乗しやすい高い湯船で、「腰掛ける場所もあったので安心して入れた」とモニターの木暮さんも話していました。

バリアフリー対応の「里の恵み湯」
バリアフリー対応の「里の恵み湯」

■蔵王国際ホテル

住所
山形県山形市蔵王温泉933
アクセス
JR山形駅から車で約40分 ※JR山形駅から無料送迎あり

旅の醍醐味・ご当地グルメ〜こんにゃく番所〜

山形名物玉こんにゃく
山形名物玉こんにゃく

旅の醍醐味であるご当地グルメは、宿泊施設で米沢牛などを楽しんだほか、3つの施設を訪れました。

1軒目は、かつて参勤交代の大名行列が通った宿場「楢下宿(ならげしゅく)」近くにある「こんにゃく番所」。番所内から湧き出るカルシウム豊富なアルカリ性天然水を使用しこんにゃく造りを行なっています。

秘伝の醤油ダレが染み込んだ「玉こんにゃく」はもちろん、こんにゃくでつくる「懐石料理」が名物。前菜からお造り、煮物、お蕎麦までこんにゃくを使用した新感覚のコースをいただくことができます。

宿場町を彷彿とさせる建物
宿場町を彷彿とさせる建物
こんにゃく尽くしの懐石料理の一部
こんにゃく尽くしの懐石料理の一部
玉こんにゃくを模した照明もお見逃しなく
玉こんにゃくを模した照明もお見逃しなく
こんにゃくのスイーツもおみやげに人気
こんにゃくのスイーツもおみやげに人気

■こんにゃく番所

住所
山形県上山市皆沢字諏訪前608-1
営業時間
9:00〜16:30(土・日曜〜17:00。食事処は11:00〜15:00L.O.、土・日曜〜15:30L.O.。火曜定休、祝日の場合は営業。1月1日は休業)
アクセス
JRかみのやま温泉駅から車で約10分

旅の醍醐味・ご当地グルメ〜シべール ファクトリーメゾン〜

ラスク工場も併設する「シべール ファクトリーメゾン」
ラスク工場も併設する「シべール ファクトリーメゾン」

2軒目は、おみやげ品として特にラスクが人気の「シベール」の本店「シべール ファクトリーメゾン」。パンや洋菓子を製造するメーカーで、山形と宮城に店舗展開をする人気店です。

「シべール ファクトリーメゾン」は、ラスク工場を有する唯一の店舗。敷地内はバリアフリー対応で、多目的トイレやスロープがあり、工場見学やショッピングを楽しむことができます。カフェも併設し、パン工房でつくられるパンがセットになったモーニングセットや、ピザが人気だそう。ピザは自社で手づくりの生地をつくり、カフェの窯で焼き上げています。

スロープを利用して工場内へ
スロープを利用して工場内へ
ラスク製造の一部を見学できます
ラスク製造の一部を見学できます
カフェモーニングセット600円。コーヒーのおかわり自由
カフェモーニングセット600円。コーヒーのおかわり自由
色彩りラスクファクトリーメゾン店限定パッケージ1,080円
色彩りラスクファクトリーメゾン店限定パッケージ1,080円

■シべール ファクトリーメゾン

住所
山形県山形市蔵王松ケ丘2-1-3
営業時間
9:00〜19:00(工場見学は〜17:00、カフェは9:00〜11:00モーニング、入店は18:00まで)
アクセス
JRかみのやま温泉駅から車で約15分
料金
工場見学は無料

旅の醍醐味・ご当地グルメ〜蔵王ブルワリー〜

「蔵王ブルワリー」は山形市初のクラフトビール醸造所
「蔵王ブルワリー」は山形市初のクラフトビール醸造所

3軒目、最終日には、「蔵王ブルワリー&クラングダイニング」を訪れました。

蔵王の湧水で醸造した、「SNOW MONSTER」、「YAMAGATA さくらんぼ ALE」、「MATSUNOMORI ALE ~Re-fresh~」、「ZAO CLASSIC IPA」の4種類のクラフトビールを定番で販売しているほか、併設するレストラン「Crang Dining」で、造り立てのクラフトビールと一緒に、山形県産食材を使用したピザなどを楽しむことができます。

県産舟形マッシュルームと黒トリュフソースのピザ1,480円
県産舟形マッシュルームと黒トリュフソースのピザ1,480円
印象的な鳥居のそばに店があります
印象的な鳥居のそばに店があります
定番のクラフトビール4種。飲み比べできるメニューもあります
定番のクラフトビール4種。飲み比べできるメニューもあります
入口には段差がありましたが介助者のサポートで乗り降りできます
入口には段差がありましたが介助者のサポートで乗り降りできます

■蔵王ブルワリー&クラングダイニング

住所
山形県山形市蔵王上野 字南坂1096-18
営業時間
10:30〜17:00(L.O.16:30)
アクセス
JRかみのやま温泉駅から車で約15分

バリアの情報を知り、迎える気持ちをもつことが最初の一歩

旅の終わり、「かみのやま温泉」駅に虹がかかりました
旅の終わり、「かみのやま温泉」駅に虹がかかりました

木暮さんは温泉と紅葉が、宍戸さんはアロマや馬との触れ合い体験が印象に残ったという2泊3日のモニターツアー。同行を通じて気づかされたのは、お迎えするという心をもつことはもちろん、バリアフリーの情報を伝えることよりも、バリアの情報を伝えることが大切であるということ。

「ちょっと歩ける方、まったく歩けない方、いろいろな状態の方がいるので、段差があるからバリアフリーではないですという情報を載せるのではなくて、ここにはこのくらいの段差がありますよ、トイレは車椅子に対応していないので、公共の多目的トイレを使用してくださいね、というような細かな情報があると、介助者がいたらこの段差は越えられるなとか、トイレは別のところで済ませてから行こうとか、各自が状態に合わせて判断することができて旅行できる場所が広がります」と木暮さん。

新幹線への乗車は事前申請すればJR社員がサポートしてくれます
新幹線への乗車は事前申請すればJR社員がサポートしてくれます

実際、食事処で訪れた「こんにゃく番所」も「蔵王ブルワリー&クラングダイニング」も、バリアフリー対応のハード設備があるわけではありませんでしたが、介助者がいれば段差も移動することができ、スタッフのみなさんが快く迎えてくれたので、食事や買い物を心地よく楽しむことができました。

宍戸さんも「全部が平らである必要はないのです。やはりハートが大切。『七右ェ門窯』さんのように、建物がバリアフリーでなくても、あるものでできることを用意してくれる、『アロマ&植物療法kamikobuchi』さんのように、体の状態を勉強して、それに合う香りや施術を提案してくれる、そうした受け入れる気持ちがあれば、心のバリアフリーになりますよね。山形に来て良かったのは、みなさん気持ちが暖かくて、接してみよう、バリアフリーの取り組みをやってみようと思っている方がとても多かったなと感じたことです。うれしいなと思いました」と話します。

冬は美しい樹氷を目当てに世界中から観光客が集まります
冬は美しい樹氷を目当てに世界中から観光客が集まります

障害の有無に関わらず、迎えるという気持ちをもった人が従来から多いからこそ、快く受け入れてくれる施設が多かった山形県。「ユニバーサルツーリズム」の推進事業を通じて、ハード面でもソフト面でもよりバリアフリーな場所が増えていくと期待できます。何より「山形バリアフリー観光ツアーセンター」があるのが強み。旅に出ることを躊躇している方も、まずは山形県からスタートしてみるとよいかもしれません。山形の魅力はもちろん、旅する楽しさを体感させてくれるはずです。

※当記事は、2023年1月24日現在のものです

PHOTO &TEXT: 佐藤春菜

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筆者

地球の歩き方観光マーケティング事業部

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