【イギリス】まるでホグワーツの世界?!我が最愛の街ケンブリッジの魅力-入門編

公開日 : 2023年07月10日
最終更新 :
筆者 : kaede

ケンブリッジ大学はオックスフォード大学と並ぶイギリスのトップ私立大学です。ケンブリッジとオックスフォードは同じ大学都市でも似て非なるもので、オックスフォードの方が都会的、ケンブリッジの方がビレッジ感があり親しみやすい雰囲気です。ロンドンのキングス・クロス駅から直通電車で48分、今回は筆者のイギリスの「心の故郷」ケンブリッジの見どころをお伝えします!日帰りもできますが、できれば一泊して、のんびり散策してほしい素敵な街です。

トリニティ・カレッジのグレート・コート
トリニティ・カレッジのグレート・コート

ケンブリッジ大学豆知識

ケンブリッジ大学の歴史は古く、中世の1209年に遡ります。その成り立ちは街の人々と対立したオックスフォード大学の一部の人々が、ケンブリッジに逃げて研究・教育を始めたのに端を発しています。ケンブリッジを訪れる人によく聞かれるのが、「ケンブリッジ大学はどこにあるの?」という質問です。実はアメリカや日本の大学組織のように、ケンブリッジ大学というまとまったキャンパスは存在しません。ケンブリッジという街の中に、それぞれの学部に所属する建物と、31のカレッジに所属する土地が点在している形です。カレッジというのは、簡単に言うとハリー・ポッターに出てくる「グリフィンドール」「ハッフルパフ」等の寮のようなもので、ケンブリッジの全ての学生や研究者たちはケンブリッジ大学に所属しながらも、同時に必ずいずれかのカレッジに所属しています。カレッジは専門の学部以外のもう一つのコミュニティとなっており、異なる学部の人たちと寝食を共にしたり、スポーツ・イベントに参加したり、また卒業後は就職のためのネットワークとなったりします。カレッジの中でも特別とされるのが、トリニティ・カレッジキングス・カレッジで、広大な敷地に美しい歴史的建造物を有しており、観光客が沢山訪れます。私が修士号をとったクラスには150名程度の生徒がいましたが、トリニティやキングスに所属している人は誰もいませんでした。入るには相当特別なコネクションが必要なようです。(ちなみにニュートンやチャールズ国王はトリニティ・カレッジ出身、経済学者のケインズはキングス・カレッジ出身です)これらの有力カレッジは莫大な土地を保有していて、そこから生みだされるとんでもない財力も有しています。セント・ジョンズ・カレッジも前述の2つのカレッジと匹敵するほど倍率が高いようですが、こちらに所属する人はクラス内に数人いましたし、日本人もいたので、比較的オープンなカレッジなのかもしれません。ちなみに全てのカレッジはハリー・ポッタ―の映画で見られるような長いテーブルが置かれたダイニング・ルームを有しており、学期中には週に何度か、正装またはガウンを着て「フォーマル・ディナー」と呼ばれる伝統的なディナーを行っています。(食事自体の値段は安く、カレッジに所属する人の招待があれば外部の人も参加できます)メニューが特別なわけではないのですが、キャンドルに照らされた歴史あるダイニングホールでガウンを着た学生に囲まれて食事をするという、浮世離れした雰囲気が何とも言えません。最古のカレッジはピーターハウス・カレッジで、1284年に創設され、現在も現役のカレッジとなっています。尚、筆者の所属していたカレッジは学部生なし(有力カレッジには必ず学部生がいます)の比較的新しいカレッジだったので、街の中心部の川沿いにあり、こじんまりとしていて可愛らしいですが、残念ながら特に有名な建物はありませんし、ダイニング・ホールは近代的でした。31のカレッジも、ポッシュなものから庶民的なものまで様々なのです。

まずは絶対に外せない、パンティング!

ケム川から見たセント・ジョンズ・カレッジ付近
ケム川から見たセント・ジョンズ・カレッジ付近

ケンブリッジを訪れて、天気が悪くなければ夏でも冬でもぜひトライしてほしいのがパンティングです。パンティングというのは小さなボートを5メートルほどのポールで操縦する川遊びのことで、ケム川沿いに沢山のパンティングの看板が出ています。中心部や川沿いを歩いていると勧誘されることも多く、少々鬱陶しいと思うこともあるかもしれませんが、このアクティビティは必須です。理由は3つありますが、一番はパンティングでしか見ることができない景色があることです。イギリスの建物の特徴として、綺麗な庭などは裏側にあるので、川から見ると閉ざされた正面玄関からは見えないたくさんのカレッジの美しい建物や景色が満喫できるのです。訪問客を受けいれていないカレッジや入場料が必要なカレッジもありますが、ボートの上からなら関係なし。二つめの理由は、歩かないで多くのカレッジを見ることができるので体力を温存できることです。(自分たちで漕ぐ場合は、当然操舵する人は疲れますけど)三つ目の理由は、ボートのスピードです。ゆーったりしたスピードでそよ風を感じながら水面近くからの目線の高さで四季折々の自然を楽しむというのはとてもリラックスできます。ということで、絶対におすすめです。船頭さんがケンブリッジの説明をしながら漕いでくれるツアー型と、自分たちで漕ぐ貸し切り型があり、どちらも楽しいです。ツアーは通常、行って戻って40-45分程度となっています。友達同士で行く場合は自分たちで交代で漕ぐのがいいと思います。パンティングは慣れればそれほど難しくなく、基本的にはポールで川底を押して進む形です。慣れるまでは他のボートにぶつけたり、ポールを川に落としたりしないように気を付けてくださいね。(それはそれで旅の思い出ですが!)

水面近くの目線から四季折々の景色を楽しむ
水面近くの目線から四季折々の景色を楽しむ
キングス・カレッジ中庭
キングス・カレッジ中庭

  • 最近は飲み物を販売するボートも(昔は見かけなかった気がする)

    最近は飲み物を販売するボートも(昔は見かけなかった気がする)

  • 自分たちで操舵して橋をくぐる時はちょっとドキドキ。補助のオールも貸してくれる

    自分たちで操舵して橋をくぐる時はちょっとドキドキ。補助のオールも貸してくれる

  • 白鳥も近い!

    白鳥も近い!

  • Laundress Green付近には特に沢山のボートが

    Laundress Green付近には特に沢山のボートが

キングス・カレッジ

キングス・カレッジ全景、正面の教会から撮影
キングス・カレッジ全景、正面の教会から撮影

キングス・カレッジは1441年に創設された、上記の通り最も伝統的で由緒のあるカレッジの一つです。一般公開しています。チケットは現地でも購入できますが、オンラインで入手しておくとより楽でしょう。キングス・カレッジはヘンリ6世がイートン・カレッジの姉妹校として設立しました。当初はイートン校からの生徒しか受け入れていなかったそうです。キングス・カレッジ訪問の一番の見どころであり、イギリス・ゴシック建築の傑作の一つとして有名なのがチャペルです。このチャペルは1446年に着工して、1544年のヘンリ8世の時代に完成しています。BBCで世界中に放送されるクリスマス礼拝はこちらのチャペルで行われています。まず、チャペルに入ると天井の高さと荘厳な雰囲気に圧倒されます。とても広い空間です。尚、このチャペルのアーチ状の天井は世界最大とのこと。祭壇にはルーベンスの名画「東方三博士の礼拝」が飾られています。こちらの絵画は1959年にアルフレッド・アーナットという実業家が27万5000ポンドで購入したものを1961年にキングス・カレッジに寄贈したそうです。太っ腹!チャペルの横には小さな博物館スペースがあり、チャペルの構造や歴史を詳しく説明しています。チャペルを見終えたら広い中庭に出ましょう。広大な中庭では今後の気候変動やサステナビリティへの取り組みとして、水が少ない土地で育つ野生の花々を植えているそう。ワイルドですが、綺麗です。少し歩くとケム川沿いののどかな川辺からパンティングのボートを眺めることができます。石橋を渡って反対側の敷地に足を延ばすのもいいでしょう。目を凝らすと牛が草を食んでいたりします。

キングス・カレッジのチャペル内部。天井の梁やステンドグラスにご注目を
キングス・カレッジのチャペル内部。天井の梁やステンドグラスにご注目を
キングス・カレッジ・チャペルのルーベンスの絵画「東方三博士の礼拝」
キングス・カレッジ・チャペルのルーベンスの絵画「東方三博士の礼拝」
  • 聖歌隊や重鎮の席。格式高い雰囲気

    聖歌隊や重鎮の席。格式高い雰囲気

  • チャペルの横には小さな博物館スペースが

    チャペルの横には小さな博物館スペースが

  • 中庭から橋を渡って反対側にも敷地がある

    中庭から橋を渡って反対側にも敷地がある

  • 博物館の中に見つけたゆるキャラ

    博物館の中に見つけたゆるキャラ

  • 中庭は今後の気候変動やサステナビリティへの取り組みとして、水が少ない土地で育つ野生の花々を植えているそう

    中庭は今後の気候変動やサステナビリティへの取り組みとして、水が少ない土地で育つ野生の花々を植えているそう

King's College

住所
King's Parade, Cambridge CB2 1ST, United Kingdom
電話番号
+44 012 2333 1100

その他のおすすめカレッジ

キングス・カレッジをご紹介しましたが、その他にもケンブリッジには魅力的なカレッジがいくつもあります。中でもおすすめはセント・ジョンズ・カレッジです。コロナ以降長らくクローズしていましたが、なんと2023年7月3日から再び一般公開を再開したそうです!セント・ジョンズはキングスと並んで見どころが多いカレッジで、1511年に設立され、テューダー朝様式の美しい建物が残っています。最も有名なのは「ため息橋」と呼ばれる飾り橋です。パンティングをする際には必ず通る場所になります。ベネチアの元祖と異なり、囚人ではなく学生がテスト前にため息をつくのが由来というのは少々出来すぎですね。たくさんの中庭もうっとりするほど美しいです。ケンブリッジには「メイボール」と呼ばれる、6月に各カレッジで行われるパーティーがありますが、セント・ジョンズ・カレッジのメイボールは世界で7番目に素晴らしいパーティーだと言われています。出所は不明ですが、それだけ立派なロケーションということですね。キングスと共にセント・ジョンズも聖歌隊が有名で、晩祷が行われる際にはチケットなしでチャペルに無料で入ることができます。しかし、これはあくまで神聖な儀式なので、写真を撮ることはできず、歩き回れる範囲も限られています。カレッジ観光目当ての方はチケットを購入しましょう。逆に聖歌隊好きの方には、美しいチャペルに天使の歌声が響き渡る晩祷はおすすめですので、ウェブサイトで日時を確認してお出かけください。

その他、美しいグレートコートやレン図書館、美しい並木道で名高いトリニティ・カレッジもコロナ前は個人で訪問できたのですが、現在は2023年6月28日から7月19日までの期間中にガイドツアーに事前予約した人のみ入れる、とのことです。(2023年夏以降の情報はホームページでご確認ください)ただし、有名なニュートンのリンゴの木(正確にはその子孫)はカレッジの中に入らなくても正門側から見ることができます。また、こちらも以前はオープンしていたクレア・カレッジは、現在メンテナンスのため訪問者は受け入れていないようです。残念。

いずれのカレッジも特色があり2つとして同じカレッジはありません。受け入れ状況は時期によっても変わりますので、訪問者を受け入れているカレッジを探して、お気に入りのカレッジを見つけてみて下さいね。

クレア・カレッジのダイニング・ホール。ハリーポッターの世界
クレア・カレッジのダイニング・ホール。ハリーポッターの世界
セント・ジョンズ・カレッジのメイボール
セント・ジョンズ・カレッジのメイボール
セント・ジョンズ・カレッジ
セント・ジョンズ・カレッジ
トリニティ・カレッジ
トリニティ・カレッジ
クイーンズ・カレッジの数学橋(カレッジに入らなくても見られます)
クイーンズ・カレッジの数学橋(カレッジに入らなくても見られます)

St John's College

住所
St John's College, St Johns St, Cambridge CB2 1TP, United Kingdom
電話番号
+44 012 2333 8600

Trinity College

住所
Trinity College, Cambridge CB2 1TQ, United Kingdom
電話番号
+44 012 2333 8400

ケンブリッジ3大メジャー・パブ

ケンブリッジにはイギリスらしくたくさんのパブがありますが、筆者が勝手にケンブリッジ3大メジャー・パブと呼ぶのが「The Anchor(ザ・アンカー)」「The Mill(ザ・ミル)」、そして「The Eagle(ザ・イーグル)」です。ザ・アンカーとザ・ミルはパンティングのボートが多く停泊するLaundress Greenの近くにあります。ザ・アンカーで川を眺めながらテラス席で飲むのもよし、ザ・ミルでビールを購入して、Laundress Greenの川べりに座って牛と一緒に飲むのもよしです。(ケンブリッジの学生はザ・ミルで友達と野外飲み率が高い気がします)

また、キングス・パレードの近くにある「ザ・イーグル」は1667年に開業した歴史あるパブで、建物も古くて雰囲気がありますが、このパブが有名なのはとてもケンブリッジらしい理由からです。というのも、1953年にケンブリッジの研究者がDNAのらせん構造を発見したと発表した場所だから。(研究所が近かったためによくこのパブでランチをしていたそうです。)現在もザ・イーグルの一角にはこの世紀の大発見を記念したゴールデンのプレートが残されています。また、ザ・イーグルには第二次世界大戦にまつわるエピソードもあります。当時アメリカとイギリスの空軍パイロットが自由時間を過ごす場所だったこちらのパブでは、キャンドルやライターを使って自分の名前を天井に焼き付けるのが流行ったそう。その後天井の汚れで見えなくなってしまっていたそうですが、清掃した際に「再発見」され、現在は歴史として保存されているそうです。また、ゴースト・ストーリーもあり、ガーデン側の二階の窓は常に開けっぱなしにしないといけないとか。というのも300年ほど前に火事で逃げ遅れた子供たちの幽霊が住み着いていて、窓が閉じていると奇妙なことが起こるから、なんだそうです。さて、今日はどのパブにしましょうか?

ザ・アンカー
ザ・アンカー
ザ・アンカー内部
ザ・アンカー内部
ザ・ミル
ザ・ミル
Laundress Greenでは牛が見られることも
Laundress Greenでは牛が見られることも
ザ・イーグルのDNAのらせん構造発見の記念パネル
ザ・イーグルのDNAのらせん構造発見の記念パネル
ザ・イーグルの天井、空軍パイロットたちが焼き付けたサインがびっしり
ザ・イーグルの天井、空軍パイロットたちが焼き付けたサインがびっしり

The Anchor

住所
Silver St, Cambridge CB3 9EL, United Kingdom
電話番号
+44 012 2335 3554

The Mill

住所
14 Mill Ln, Cambridge CB2 1RX, United Kingdom
電話番号
+44 012 2331 1829

The Eagle

住所
Bene't St, Cambridge CB2 3QN, United Kingdom
電話番号
+44 012 2350 5020

大学の街が誇るフィッツウィリアム・ミュージアム

正面から見たフィッツ・ウィリアム・ミュージアム
正面から見たフィッツ・ウィリアム・ミュージアム

ケンブリッジのメジャー観光スポットの最後はフィッツウィリアム・ミュージアムです。こちらの博物館は1816年にオープンし、ロンドンの多くの博物館と同様に入場料は無料です。正面エントランスは大きな天窓と金色が基調の天井、多くの彫像がありゴージャスです。見どころはエジプト・ローマ・ギリシャなどの古代遺物やイギリス・ドイツの中世の武器・甲冑など。また絵画でモネの絵「ポプラ」「春の頃」も置いています。(2023年7月初旬現在はモネの絵がある部屋は一時的にクローズしていました)更に陶器のアンティークなども充実しています。日本の陶器も数多くあり、有田焼などが展示されていました。エジプト展示にも力が入っており、16,000点のコレクションがあります。(イギリス国内で第3位、世界で16位のコレクション数)大型の遺物も見ごたえがありましたが、木製の人形など小さなものも4500年もの時を越えてはっきりと色が残っていて驚愕しました。キングス・パレードのエリアから徒歩5分程度なので、お時間があればのぞいてみてください。

  • エジプト展示にも力が入る

    エジプト展示にも力が入る

  • 鎧や甲冑類が充実

    鎧や甲冑類が充実

  • 豪華な正面エントランス

    豪華な正面エントランス

The Fitzwilliam Museum

住所
Trumpington St, Cambridge CB2 1RB, United Kingdom
電話番号
+44 012 2333 2900

いかがでしたか。まだまだ紹介できなかった場所がたくさんあります。フルに満喫するには日帰りではもったいない理由がお分かりいただけたかと思います。次回はケンブリッジ「上級編」で、在住の人がおすすめする、ちょっとひねったスポットをご紹介します。お楽しみに!

時を食べるバッタを表す、コーパス・クロックの夜景
時を食べるバッタを表す、コーパス・クロックの夜景

筆者

イギリス特派員

kaede

アフタヌーンティーやロイヤルファミリーだけではない、多様性あふれる、ダイナミックでゆるーいロンドンの姿を紹介していきます。自分の友達が遊びに来たら連れていきたい、真のおすすめスポットのみ掲載していくのでぜひご覧ください。

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