【スコットランド】ハイランドで最も美しい嘆きの谷「グレンコー」

公開日 : 2024年02月24日
最終更新 :

グレンコー(Glencoe)は、スコットランドの西部、ハイランド地方の南西部に位置する、美しくて雄大な渓谷です。「グレン(Glen)」というのは「渓谷」という意味です。山岳地帯が比較的多いハイランド地方には、あちこちに「グレン」が存在します。
その中でも最も有名なのがこの「グレンコー」。スコットランドの北部にあるハイランド地方は、元々、山、丘、湖、川、海、と自然の景観が大変美しい地方なのですが、その中でもグレンコーはゴツゴツした岩肌の山々と川や滝が織りなす自然の絶景が有名で、毎年世界中から多くの観光客を集めています。
今回、1泊2日のグレンコーの旅を満喫してきましたので、その雄大な自然と歴史、ホテルやアクティビティーについて紹介していきたいと思います。

グレンコーの虐殺事件

グレンコーの旅を紹介する前に、この地で起こった、忘れてはいけない悲劇を書き留めておきたいと思います。

自然の景観に恵まれた美しいグレンコーですが、1600年代には勢力争いに巻き込まれ、悲惨な事件の舞台にもなりました。
1600年代のスコットランドは、イギリス軍がスコットランドに侵攻し、激しい勢力争いが起こっている真っ只中でした。そんな中、1692年にスコットランドにおいてイギリス側に味方する勢力であったキャンベル氏族が、グレンコー村のマクドナルド氏族(スコットランドの氏族)を突然攻撃したんです。
これはマクドナルド氏が王に忠誠を誓う書類を提出するのが遅れたことが原因だと言われています。当時グレンコーに滞在中であったキャンベル氏族の兵士たちは、村の人たちから手厚いもてなしを受けていたにもかかわらず、イギリス軍からの命令で突然攻撃を始めました。マクドナルド氏族は無防備な状態で襲われ、女子供も老人も皆殺しとなり、火を放たれて氏族は全滅しました。
キャンベル氏族のあまりにも残虐なやり方に人々は反発し、結局はその後キャンベル氏族が勢力を伸ばすことはありませんでしたが、当時の残酷な虐殺事件によってグレンコーは「嘆きの谷」と呼ばれ、その悲しい歴史は現在でも語り継がれています。

グレンコーのあちこちに慰霊の像が建てられています。
グレンコーのあちこちに慰霊の像が建てられています。

グレンコーの旅。一日目のルート。

グレンコーを訪れるのには、やはり車が一番便利だと思います。夏には多くの人がキャンプカーでこの地を訪れるので、グレンコーまでの道路は交通渋滞が起こることもしばしばですが、まだまだ寒いこの時期(私が訪れたのは2月後半。)は混雑もなくスムーズでした。
今回私たちはエジンバラ(Edinburgh)の北側、セントアンドリュース(St Andrews)辺りから出発し、パース(Perth)、スターリン(Stirling)を通り、A84からA82という大変わかりやすいルートを使っておよそ2時間半の旅でした。このルートは道路の幅も広くて運転しやすく、山や草原地帯の真ん中を突っ切り、道中絶景を楽しめるのでかなりおすすめです。
ちなみにスコットランドのもう一つの都市グラスゴー(Glasgow)からは、やはりA82を使って2時間ほど。エジンバラからは3時間ほどかかります。

グレンコーが近づくにつれ、自然の景色がどんどん壮大になっていきます。
グレンコーが近づくにつれ、自然の景色がどんどん壮大になっていきます。

グレンコーに近づくにつれ、自然が織りなす絶景がどんどんと迫力を増していきます。ゴツゴツした岩肌むき出しの山々からは、雪解けの水で自然にできたいくつもの滝が流れ落ちています。湿原地帯であるこの辺りの地盤には家を建てることも不可能なのでしょうか。辺りに人工的な建物はほとんどなく、そこにあるのはただただ息をのむばかりの自然が広がっているのみです。
山の天気は移りやすく、さーっと雲が降りてきて雨が降ったかと思えば、雲の間から陽が差して山頂を照らします。大きな虹がかかったかと思えば、今度は霧で全く何も見えなくなったりもします。
ただそこに立っているだけで、この土地の様々な表情を見ることができ、全く飽きることはありません。
大きな自然の中では人間は本当に小さい。自然を畏れ、敬うことを改めて思い知らされるような、本当に素晴らしい景観に身を置かせてもらいました。

果てしなく広がる湿原地帯。遠くには雪山が見えて、息を呑むほど美しい。
果てしなく広がる湿原地帯。遠くには雪山が見えて、息を呑むほど美しい。
グレンコーに入りました。これはスリーシスターズと呼ばれる三連山。ものすごい迫力です。
グレンコーに入りました。これはスリーシスターズと呼ばれる三連山。ものすごい迫力です。
これはグレンコー滝。これまた辺りの景色と溶け合って大迫力。
これはグレンコー滝。これまた辺りの景色と溶け合って大迫力。

ベンネビスとフォートウィリアム

この日私たちはもう少し足を延ばし、スコットランドで最も高い山「Ben Nevis(ベンネビス)」の入り口の町「Fort William(フォートウィリアム)」にも行ってみることにしました。

ベンネビスはスコットランドで、いえ、実はイギリスで最も高い山なんです。その高さは1344m。最高峰なのに1344mとは、(その低さに)かなり驚きました。それでも近くで見るとかなりの迫力で、ここは年間12万人もの人が登山する人気の山だそうです。
その入り口の町であるフォートウィリアムには、多くの宿泊施設、レストラン、カフェや店がありました。

目の前にどーんとそびえるベンネビス。なだらかに見えますが、スコットランドの最高峰です。
目の前にどーんとそびえるベンネビス。なだらかに見えますが、スコットランドの最高峰です。

ハリーポッターで有名となったグレンフィナン

フォートウィリアムからA33を使って海辺の方角へ少し足を延ばすと、グレンフィナン(Glenfinnan)があります。
ここには映画ハリーポッターで撮影された、有名な鉄道橋があります。山と山の間に架かる、背が高い石造りのカーブがかかった石橋です。
ここにはビジターセンターと駐車場が完備されていて、ピクニックをしながら橋の景観を楽しむことができます。そして橋の近くまで歩いて行くこともできるようです。今回私たちは時間の都合で橋を遠くから眺めるのみでしたが、時間をかけて辺りをハイキングしたり、蒸気機関車が走る時間を調べて写真を撮ったり、あるいは実際に蒸気機関車に乗ってこの橋を渡る、という楽しみ方もできる、と思いました。

これが有名なグレンフィナン橋。かなり高さがありますが、辺りの景色と溶け込んでいて美しい。
これが有名なグレンフィナン橋。かなり高さがありますが、辺りの景色と溶け込んでいて美しい。

おわりに

私たちのグレンコーの旅はまだまだ続きますが、今回はここで終了します。
スコットランドはどこを訪れても、その自然の美しさに感動しますが、その中でも特にこのグレンコーの自然は、人々を惹きつける魅力に溢れていると感じました。
もしもスコットランドを訪れる機会があれば、ぜひグレンコーまで足を伸ばしてみてください。おすすめします。

次回は宿泊先のグレンコーイン、そして私たちが見つけた秘境のゴルフコースを紹介します。

筆者

イギリス特派員

ベイトマン明子

2023年に引っ越してきたばかりのスコットランドのあちこちを訪れ、皆様に報告できることを楽しみにしています。

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