【イギリス】カオスな刺激がたまらない、多文化の街ブリクストンを遊びつくす

公開日 : 2023年07月31日
最終更新 :
筆者 : kaede

ロンドン南部に位置するブリクストンはビクトリア線の南の終点です。アフリカ系カリビアンの住民が多い地域で、特に元々イギリスの植民地だったジャマイカの人が多いそうです。その影響もあり、この街はロンドンの他のどの地域とも違う独特の空気感を持っています。治安が悪いので評判でしたが、近年はだいぶ改善してロンドン内外の多くの人々を惹きつけています。バーやクラブなど若者に人気のナイト・スポットも多く、米歌手テイラー・スウィフトの曲でも「You know I love a London boy I enjoy nights in Brixton, Shoreditch in the afternoon(ブリクストンで夜遊びを楽しんで、ショーディッチで午後を過ごすの)」とある通り、ショーディッチと並ぶトレンド・スポットとなっています。週末に歩いていると、そこかしこから軽快な音楽が聞こえてくる、多文化の街、ブリクストン。今回はカオスな街ブリクストンのおすすめスポットをご紹介します!

週末のエレクトリック・アベニュー
週末のエレクトリック・アベニュー

まずはブリクストンに親しみを持ってもらうために豆知識から始めましょう。

①ミュージシャンのデビット・ボウイが生まれたのはブリクストン、俳優チャーリー・チャップリンもブリクストンに住んでいたことがある
- それもあって、ブリクストンの駅の近くにはデビット・ボウイの有名なグラフィティがあります(冒頭の写真参照)。

②ブリクストンには独自の通貨B£1、B£5、B£10とB£20がある。
-2009年から始まった、ブリクストンのみで使用できる通貨「ブリクストン・ポンド」。通常の英ポンドとのレートは常に1:1。何と、ブリクストン通貨専門のATMも存在するとか。ローカル経済の振興を意図したよう。(ブリクストンでしか使用できなかったら、率先してブリクストンで買い物しますよね)B£10の顔はデビット・ボウイ。自由な国…。

③1880年代、エレクトリック・アベニューは電灯に照らされた初のマーケット・ストリートだった
- それもあって、ブリクストではよく「エレクトリック」関連のネーミングが使用されます。例えば後述のブリクストン醸造所のビール名など。

④ブリクストン・テート図書館はロンドンで初めての無料の公共図書館の一つで、1893年にヘンリー・テート卿から寄贈された
革新的な砂糖精製業技術で、一代で巨万の富を築いたヘンリー・テート。テートモダンやこの図書館は砂糖でできているとっても過言ではありません。

多文化のメルティング・ポットにようこそ

ブリクストン・ビレッジ入口付近にはバーやパブが多数
ブリクストン・ビレッジ入口付近にはバーやパブが多数

まずは、ブリクストン・ビレッジに向かいましょう。ブリクストン・ビレッジは100軒を超えるトレーダーが店を構えるマーケットで、そのルーツは50か国以上にのぼり「ロンドンで最も多様性があり、活気があるマーケット」と言われています。カリビアン・ストリートフードからビンテージの洋服、手作りアクセサリーにインドの衣服、アフリカの布まで本当に幅広い商品を目にすることができます。お酒を提供する場所を含め、飲食店が多めの印象ですが、雑貨店や鮮魚店などもあります。天井は天窓になっており、日中はとても明るい雰囲気で、スペースも広々としていて、清潔です。警備員も巡回しており、安心してショッピングや食事が楽しめます。(ただ、スリ被害などはあるようなので、携帯や荷物からは常に目を離さないように)夜になると音楽が流れて、アーケードの中で踊る人々も見られます。若者が多く、いつも活気に溢れています。

今回気になって入ってみたのが「Cheese +Fizz(チーズ+フィズ)」というお店。フランス・チーズとシャンパンの組み合わせを全面に押し出したフレンチ・ビストロです。看板商品のチーズは期待通り充実していて、盛り合わせに焼きチーズ、ラクレット(プレーン、トリュフ、鴨などと共に)、チーズ・フォンデュなど。チーズ好きにはたまらないラインナップです。チーズ以外の小皿料理もあります。そしてシャンパンは50種類以上がボトルとグラスで飲めるというから有難いです。シャンパン以外にも赤・白・ロゼワインに世界のビールも揃えているということなので、お酒好きな人は今すぐブリクストンに向かいましょう。ちなみにチーズやソシソンは店頭販売もしているので、お持ち帰りも可能です。

モダンでポップな店内
モダンでポップな店内

そして、特筆せずにはいられないのが、お好み焼き屋さん「Okan(おかん)」。こちらのレストランはおそらく在ロンドンの日本人なら殆どの人が知っているであろう、本格的な大阪風お好み焼きのお店です。ちゃんとした日本食を食べようとすると高くつきがちなロンドンで、リーズナブルな本物の日本食はとても有難い存在。大阪出身のプリーストマン玄子さんが23年前にオープンしたお店です。そして、素晴らしいのが、日本人やアジア人のみならず地元のロンドン子に愛されている点です。私の友人(ヨーロッパ人)にもファンは多く、彼らに誘われて食べに行ったことも何度もあります。お店はいつもローカルの人々で賑わっています。お好み焼きの他にも、おつまみや丼、鍋焼きうどんなどもあります。こちらのお店が本店で、ブリクストンにもう1店舗とサザークにもお店があります。たまたま求人広告を見つけたのですが今度キングス・クロスにも新しいお店ができるようで、「寿司」と「ラーメン」に続く第3の日本食、「お好み焼き」の躍進が止まりません!

ちゃんとした、お好み焼きが嬉しい
ちゃんとした、お好み焼きが嬉しい

たまたま、お店のチョイスがあまりブリクストンらしくない感じになってしまいましたが、この2店の他にも面白いお店やレストランが沢山あるので、ぜひご自分のお気に入りを見つけてみて下さい。

  • 路地は広くて明るい

    路地は広くて明るい

  • アフリカン・アクセサリー

    アフリカン・アクセサリー

  • 美味しかったクッキーのお店

    美味しかったクッキーのお店

  • 雑貨店や食料品店も

    雑貨店や食料品店も

  • おかんの前にはよく順番待ちの人々が並んでいる

    おかんの前にはよく順番待ちの人々が並んでいる

  • 地元の客でにぎわうおかん(冬)

    地元の客でにぎわうおかん(冬)

Brixton Village

住所
Coldharbour Ln, London SW9 8PS, UK
アクセス
地下鉄ビクトリア線ブリクストン駅から徒歩4分

Cheese+Fizz

住所
Brixton Village, 10 and 11, Coldharbour Ln, London SW9 8PR, United Kingdom
電話
+44 20 7095 8504
アクセス
地下鉄ビクトリア線ブリクストン駅から徒歩4分

Okan Brixton Village

住所
Unit 39, Brixton Village, Coldharbour Ln, London SW9 8PS, United Kingdom
電話
+44 20 7326 1180
アクセス
地下鉄ビクトリア線ブリクストン駅から徒歩4分

ブリクストンならではの場所でワイワイ楽しむ

「Pop Brixton(ポップ・ブリクストン)」はブリクストン・エリアのベンチャーを応援するというコンセプトの場所で、若手起業家たちに店舗やオフィス・スペース、スタジオなどを提供しています。以前ショーディッチの回でご紹介した「ボックス・パーク」と基本的に似たコンセプトですね。現在は55の独立系ビジネスが利用しており、レストランや、小売、ストリードフード運営企業、デザイナー、ラジオ局やチャリティ団体などが入っています。とはいえ、筆者のような単なる来訪者からすると基本的にはフード・ドリンク・マーケットのような感じです。好きなスタンドで飲み物や食べ物を買って、ブリクストンらしい活気のある空間でワイワイ友達と飲んだりするのに最適なスペースです。コンテナを使っているのはボックス・パークと同じですが、ポップ・ブリクストンでは受賞歴のある建築家のカール・ターナー氏が指揮をとったこともあり、もっと味のあるクリエイティブで小洒落た空間になっています。イベント・スペースもあり、音楽ライブやオープン・シネマなどが開催されることもあります。

冬場のポップ・ブリクストン。オープン・スペースなのでストーブが必須
冬場のポップ・ブリクストン。オープン・スペースなのでストーブが必須

Pop Brixton

住所
49 Brixton Station Rd, London SW9 8PQ, United Kingdom
電話
+44 20 3879 8410
アクセス
地下鉄ビクトリア線ブリクストン駅から徒歩3分

ブリクストンにこだわり続けたビール醸造所

味のある高架下の入口
味のある高架下の入口

ブリクストンには10か所ほどのビール醸造所がありますが、興味深いサクセス・ストーリーを持つのがこちらの「Brixton Brewery(ブリクストン・ブルワリー)」。その始まりはたまたまブリクストンのバーで飲んでいた2組のカップル。初対面ながらビールと地元ブリクストンへの愛をきっかけに意気投合して、ビール事業を始めたそう。2013年にブリクストンに初めての醸造所をオープン、地元に愛されながら瞬く間に成長しました。ブリクストンの取引先を中心に販売していましたが、次第に遠方からもオーダーが届くようになり、生産規模を拡大しつつも常に供給が追い付かない状態に。どうしてもブリクストンの外には製造を移したくない、と悩んでいたところ2018年に巨大ビール企業ハイネケンとのパートナーシップが成立し、ハイネケンがブリクストンに新しい巨大工場を作ってくれたそうです。最終的に2021年にハイネケンに事業譲渡しましたが、創業者は今もブリクストン・ブルワリーを独立して経営中。こちらの醸造所はいわゆる電車の高架下にあるのですが、明るくて清潔、とてもウェルカミングな雰囲気です。筆者はHazy Pale Aleを飲みましたが、爽やかでとても美味しかったです。地元の人たちが友達同士で集まって飲んでいましたが、BGMの音量もちょうどよく、純粋に仲間とビールを楽しむ場所として愛されているのが伝わってきました。入りやすくておすすめです。

  • 中はとても明るくて気持ちのいい空間

    中はとても明るくて気持ちのいい空間

  • 本日のおすすめ、タップから

    本日のおすすめ、タップから

  • Hazy Pale Aleを注文

    Hazy Pale Aleを注文

  • 見覚えのある缶ビールも

    見覚えのある缶ビールも

  • 印象的な天井

    印象的な天井

Brixton Brewery

住所
Arch 548 Brixton Station Rd, London SW9 8PF, United Kingdom
電話
+44 20 3609 8880
アクセス
地下鉄ビクトリア線ブリクストン駅から徒歩6分

まさにこの街ならではの組み合わせ!ジャマイカン・ブリッティシュを味わう

Roasted Golden Beets
Roasted Golden Beets

前述の通り、ブリクストンはジャマイカ系の移民が多い土地柄。それなら気になるのがジャマイカ料理ということで、今回は人気の「Wood+Water(ウッド+ウォーター)」に行ってみました。こちらのお店はジャマイカン・ブリティッシュのレストランです。カクテル・バーとしても営業しているようなので、食事なしでも大丈夫です。食事はタパス・スタイルでスナック・前菜・メインから一人2-3皿ずつ選ぶのが適量とのこと。前菜はバナナに似た甘くないプランテンやビートルーツを多く使っているのが興味深かったです。また、メインのオックス・テールのコロッケやエビのチミチュリ・ソースもとても美味でした。これまでジャマイカ料理を食べる機会がなかったので、どのお皿も味の想像がつかなくてワクワクして新鮮でした。ドリンクも充実していて、この日はノンアルコールのカクテルを注文したのですが、煙を閉じ込めた凝ったカクテルが出てきて驚きました。確かビートルーツ・ベースのジュースのようなものだった思うのですが、燻製のようなスモーキーさのおかげで、アルコールが入っているかのように感じました。美味しかったです。お店では中南米らしい音楽が流れていて、ちょっと旅行しているような感じでよかったです。
そして、帰宅してからお店の成り立ちを見てみたところ、オーナーが興味深い人物でした。April Jacksonというジャマイカ出身の女性オーナーなのですが、何と元ミス・ジャマイカです。更に、コロンビア大学で勉強した起業家・シェフであり、イギリスの人気番組であるアプレンティスというビジネス系リアリティ番組に出演していたこともあるそうです。そんなパワフルな彼女がお届けする渾身のジャマイカン・インスパイヤ―ド・レストラン、ぜひお試しあれ。

  • プランテンという甘くない調理用バナナ

    プランテンという甘くない調理用バナナ

  • スモークを閉じ込めたカクテル

    スモークを閉じ込めたカクテル

  • 店頭。窓側にも1席ある

    店頭。窓側にも1席ある

  • 店内は落ち着いた雰囲気

    店内は落ち着いた雰囲気

  • Eton Mess、ちょっと想像していたのと違った

    Eton Mess、ちょっと想像していたのと違った

Wood+Water

住所
412 Coldharbour Ln, London SW9 8LF, United Kingdom
電話
+44 20 3910 1870
アクセス
地下鉄ビクトリア線ブリクストン駅から徒歩3分

(おまけ)ブリクストンの歴史ある映画館で噂のバービーを鑑賞

バービー人形のパッケージに入って写真が取れるコーナーがどの映画館にも設置されています
バービー人形のパッケージに入って写真が取れるコーナーがどの映画館にも設置されています

こちらの映画館「Ritzy(リッツィ)」は1911年にエレクトリック・パビリオンとしてオープンした100年以上の歴史を持つ建物です。イギリスで最も古い映画館の一つで、1929年から音声映画の提供を始めたというから、本当に映画の歴史と共に歩いてきた映画館ですね。1954年に改装され、現在はピクチャーハウス・シネマズが所有しています。さて、こちらの歴史ある映画館で見てきました、話題の映画「バービー」。日本での公開は8月だと思いますが、イギリスでは大変な人気になっています。私の周りの女性(大人です)もかなりの割合で観に行っていて、若者の間ではピンク色のファッションで着飾って友達と観に行くのが一大ブームのようになっています。普段映画館に行かない層がかなり動員されているようで、当日観に行こうとしたらチケットが売り切れ、なんてことも多発。

ネタバレしないように感想を…既に観た人から聞いた通り、テーマは女性のエンパワーメントです。金髪碧眼で完璧なスタイルのバービー人形が白人至上主義やルッキズム、セクシズムを肯定しているというこれまでのネガティブなイメージを、この映画によって180度跳ね返したのは快挙と言っていいでしょう(もちろん昨今の様々な体型・人種のバービー人形の開発などの地道な積み重ねもありましたが)。マテルという会社の懐も深いのだと思います。こういう子供でも観られるようなキャッチ―な映画が深いジェンダーの問題を提起している(そしてそれを実際に映像として見せてくれる)というのがすごいし、これがメジャー映画として世界中でヒットしているというのがとても意味があることだと思いました。今後、日本で公開された時の反応がイギリスと同様なのか、もしくは地域差が出てくるのか個人的にすごく興味があります。子供の頃から人形遊びを一切しなかった筆者としては、ピンク色すぎる画面に少し眩暈がしましたが、そんな大人や男性でも色んな意味で楽しめる映画になっていますので、公開されたらぜひご覧ください。

  • フロントにもテーブルがあり、飲食ができます

    フロントにもテーブルがあり、飲食ができます

  • 映画館には特別なバーが

    映画館には特別なバーが

  • 可愛らしいボックスオフィス

    可愛らしいボックスオフィス

Ritzy Cinema and Cafe

住所
412 Coldharbour Ln, London SW9 8LF, United Kingdom
電話
+44 20 7326 2649
アクセス
地下鉄ビクトリア線ブリクストン駅から徒歩3分

最後に注意喚起を少し。前述の通り、ブリクストンは安全なロンドンの中では比較的治安が良くない方だと思います。(上記のおすすめスポットはどれも安全なものを載せています、念のため。)海外だとどこでもそうですが、日本にいる時のように完全に気を抜かないことが重要です。スリなどもいるので荷物や携帯から目を離さない、夜中に一人きりで寂しい場所を歩くのを避けるなどの最低限の警戒を忘れずに、ブリクストンのナイト・アウトを楽しんで下さい!

筆者

イギリス特派員

kaede

アフタヌーンティーやロイヤルファミリーだけではない、多様性あふれる、ダイナミックでゆるーいロンドンの姿を紹介していきます。自分の友達が遊びに来たら連れていきたい、真のおすすめスポットのみ掲載していくのでぜひご覧ください。

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