【ラグビーW杯2023】ワイナリー巡りも楽しい南仏プロヴァンスの休日

公開日 : 2023年09月05日
最終更新 :

フランスで開催されるラグビーワールドカップ2023は、日本戦の舞台となるトゥールーズ、ニース、ナントの3都市を含む計9都市で開催されます。大会期間は約2ヵ月。選手の体力や健康を考慮して、試合は中5日以上の間隔を空けて開催されるため、現地に赴くファンは観戦の合間にフランス観光も楽しみたいもの。なかでも南仏らしい美しい風景とグルメが待つプロヴァンス地方のおすすめスポットを、フランス観光親善大使の大野均さんとご案内します。

セザンヌが愛したエクス・アン・プロヴァンス

プラタナスに囲まれたカフェのテラス席
プラタナスに囲まれたカフェのテラス席

かつてプロヴァンス伯爵領の主都として栄え、15世紀には大学が創設されたエクス・アン・プロヴァンスは、いまも知的でおしゃれな雰囲気が漂うプロヴァンス観光の中心都市。この町で生まれた芸術家といえば「近代絵画の父」と呼ばれるセザンヌですが、中心街から少し離れた丘にあるアトリエでは、セザンヌがよく題材にした果物や像などの静物が生前のまま保存されています。

セザンヌが自ら設計したアトリエ。見学は要予約。日本語のオーディオガイドもある
セザンヌが自ら設計したアトリエ。見学は要予約。日本語のオーディオガイドもある

選手時代も含めてフランスには何度も訪れている大野さん。日本代表でパリに遠征した際には、オフの時間にルーヴル美術館にも行かれたそうで、今回セザンヌのアトリエではオーディオガイドを片手に熱心に鑑賞していました。セザンヌは1906年に67歳で亡くなるまで、ここで制作活動を続けました。アトリエではセザンヌが野外制作の際に使った画材やカバンなども見ることができます。

セザンヌのアトリエ Atelier de Cézanne

住所
9 avenue Paul Cézanne, 13090 Aix-en-Provence

サント・ヴィクトワール山を望むワイナリーへ

ブドウ畑の向こうにはサント・ヴィクトワール山が広がる
ブドウ畑の向こうにはサント・ヴィクトワール山が広がる

セザンヌが最も好んで描いたモチーフがサント・ヴィクトワール山。エクス・アン・プロヴァンスの郊外にそびえる標高1000mの山で、石灰質の白い岩肌が特徴です。セザンヌは生涯で80回以上もこの山を描きました。そんなセザンヌが愛した山に見守られるように立つワイナリー「テール・ド・ミストラル」を訪れました。

ロゼワインの肝となるブドウ果汁のフレッシュさを保つためステンレスタンクで外気を遮断
ロゼワインの肝となるブドウ果汁のフレッシュさを保つためステンレスタンクで外気を遮断

2008年に創設された「テール・ド・ミストラル」は、ワイナリーとしてはまだ若いですが、ブドウ畑は30年以上前から手掛けていて、3つのブドウ品種(シラーSyrah、グルナッシュGrenache、ロールRolle)を栽培、ワインはロゼを中心に14種類を製造しています。フランスのなかでも南仏プロヴァンス地方はロゼの生産が盛んで、フランス国内のロゼワイン市場の約35%を占めているといいます。

一部のワインは複雑味を加えるため地下の樽で熟成させる
一部のワインは複雑味を加えるため地下の樽で熟成させる

ワイナリー見学では製造工程の説明を聞きながらカーヴ(貯蔵・熟成庫)などを巡り、最後にお待ちかねの試飲タイム。日本酒や焼酎のプロデュースもしている自他ともに認めるお酒好きの大野さん。フランスのワイナリー巡りのほか、現役時代には南アフリカ遠征の際、立ち寄った居酒屋で知り合った人にケープタウンのワイナリーに連れていってもらったこともあるのだとか。ラグビー日本代表のなかでもトップ3に入るほどの酒豪という噂は伊達でなく、試飲のグラスも次々に空いていきます。

数種類のロゼワインをテイスティング
数種類のロゼワインをテイスティング
アカシア樽で6ヵ月熟成させた「ナディア・ロゼ」
アカシア樽で6ヵ月熟成させた「ナディア・ロゼ」

大野さんが気に入った「ナディア・ロゼNadia rosé」は、柑橘系のアロマとスモークされたような樽の香りをほのかに感じる味わい深いロゼワイン。「ナディア」とは、ワイナリー創設者の妻ナディアさんのお名前からとったもの。実はこのワイナリーのワインには経営者家族の名前が付けられているというユニークな特徴があります。

「ナディア・ロゼ」を試飲中にたまたま通りがかったナディアさんご本人と
「ナディア・ロゼ」を試飲中にたまたま通りがかったナディアさんご本人と
試飲付きの見学は要予約(所要1時間半、1人€13)。レストランも併設しているのでランチとあわせて訪れるのもおすすめ
試飲付きの見学は要予約(所要1時間半、1人€13)。レストランも併設しているのでランチとあわせて訪れるのもおすすめ

テール・ド・ミストラル Domaine Terre de Mistral

住所
Chemin du Pavillon, Route de Peynier, 13790 Rousset

ラベンダー畑のほとりでペタンク大会

エクス・アン・プロヴァンスから車で15分ほどの「テール・ユーゴ―」
エクス・アン・プロヴァンスから車で15分ほどの「テール・ユーゴ―」

南仏プロヴァンスの生活に欠かせないものといえばラベンダー。主要なラベンダー栽培地を結ぶ観光ルートは「ラベンダー街道」とも呼ばれ、現地では6月末~8月頃までの開花時期に合わせたバスツアーも催行されます。取材で訪れた「テール・ユーゴー」は、ラベンダー畑を眺めながらのんびりピクニックやBBQをしたり、南仏生まれの球技「ペタンク」もできる憩いのスポット。

誰でも自由に楽しめる南仏生まれのペタンク
誰でも自由に楽しめる南仏生まれのペタンク

ペタンクは、目標球に向かって鉄のボールを投げ合い、相手のボールより近づけることで得点を競うゲーム。老若男女楽しめるので、夏の南仏では至るところでペタンクに興じる人の姿を見ることができます。ペタンク初挑戦の大野さんでしたが「目標球を狙うなら高く投げて、相手の球をはじくなら低く投げるのがよさそう」とすぐさまコツをつかみ、地元の子どもたちと楽しんでいました。「テール・ユーゴー」の今年のラベンダー畑は8月末で営業終了しましたが、まだガイドブックでも紹介していない穴場スポットなので、ぜひ来年以降の夏旅のヒントにしてください。

テール・ユーゴー Terre Ugo

住所
1885 Route du Puy Sainte-Réparade, 13540 Aix-en-Provence
営業期間
6~8月末

ロゼワインの香水も!おみやげ探しはエクスの旧市街で

「ローズ・エ・マリウス」のシグニチャーは「ロゼワイン」の香水(右)。プロヴァンス地方の5つ星ホテルでも使われている
「ローズ・エ・マリウス」のシグニチャーは「ロゼワイン」の香水(右)。プロヴァンス地方の5つ星ホテルでも使われている

そぞろ歩くだけでも楽しい瀟洒な町並みが広がるエクス・アン・プロヴァンスの旧市街には、歴史的な建造物の合間につい足を止めたくなるすてきなお店がたくさんあるので、ショッピングタイムは多めにとっておくのが◎。
2012年にできた「ローズ・エ・マリウス」は、香水の町グラースから取り寄せた原料をもとに、プロヴァンス地方のアーティストによってていねいに作られている香水店。こちらのルームフレグランスはなんとマクロン大統領夫妻も愛用しているのだとか。

石鹸やリモージュの陶器に入ったアロマキャンドルも豊富に揃う
石鹸やリモージュの陶器に入ったアロマキャンドルも豊富に揃う

この店の代表作「ロゼワイン」の香水以外にも、「UNE NUIT D'ÉTÉ SOUS LE FIGUIER(夏の夜イチジクの木の下で)」など、ネーミングもおしゃれな香水がたくさん揃います。いまのところエクスで1軒のみ、フランス国内にも支店はないそうなので、唯一無二のプロヴァンスみやげになることは間違いありません。
※デパートやセレクトショップでの取り扱いは有

ローズ・エ・マリウス Rose et Marius

住所
3 rue Thiers, 13100 Aix en Provence
店内に置かれたM.O.F.のプレートと種類豊富なチョコレート
店内に置かれたM.O.F.のプレートと種類豊富なチョコレート

エクスでチョコレートを求めるなら、国家最優秀職人章M.O.F.(Meilleur ouvrier de France)のタイトルをもつ「フィリップ・スゴン」へ。キャラメルやラズベリー、コーヒー、タイム、イチジク、ココナッツなど、どれも味が気になるプラリネがずらりと揃います。

チョコレートのほか生ケーキやエクスの郷土菓子カリソンも
チョコレートのほか生ケーキやエクスの郷土菓子カリソンも

フィリップ・スゴン Philippe SECOND

住所
67 cours Mirabeau, 13100 Aix en Provence
キャラメル専門店「ラ・キャラメルリー」の店内
キャラメル専門店「ラ・キャラメルリー」の店内

「ラ・キャラメルリー」はオリーブオイルを原料にしたキャラメル専門店。リュベロン地区のマーヌManeに工場があり、50年代の古い機械と手作業で仕上げているのだそう。フレーバーはコーヒー、レモン、カマルグの塩、オレンジ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、甘草などさまざま。アソートされたパッケージもあるので、グルメな友人へのプレゼントにもぴったりです。

ラ・キャラメルリー La caramelerie

住所
12 rue Gaston Saporta, 13100 Aix-en-Provence
カリソンの名店「ル・ロワ・ルネ」の店内
カリソンの名店「ル・ロワ・ルネ」の店内

エクスの名物といえば「カリソンCalisson」。アーモンドパウダーとメロンのシロップ漬けを混ぜた生地を砂糖でコーティングしたお菓子で、葉っぱのようなひし形をしています。1920年創業の「ル・ロワ・ルネ」はエクスでカリソンといえば必ず名前が挙がる人気店。

カリソンの由来をわかりやすく伝えようと、お店の方とエクス・アン・プロヴァンス観光局のジェラルディーヌさんが突如寸劇をスタート。名演技に思わず吹き出す大野さん。プロヴァンスの人は本当に陽気でチャーミング!
カリソンの由来をわかりやすく伝えようと、お店の方とエクス・アン・プロヴァンス観光局のジェラルディーヌさんが突如寸劇をスタート。名演技に思わず吹き出す大野さん。プロヴァンスの人は本当に陽気でチャーミング!

カリソンは、15世紀にプロヴァンスを治めていたルネ王が、笑わない姫を妃に迎えるにあたり、笑顔になってもらいたいと作らせたお菓子。そのおいしさに顔をほころばせた姫がお菓子の名前をたずねると、王はこの地方の方言で「抱擁」を意味する「Di Calin soun(ディ・カリン・スン)」と答えたことが名前の由来と言われています。ちなみにカリソンは1個13.3gと決まっていて、13は「13聖人」、3は「三位一体」からきているのだとか。お菓子ひとつとっても歴史の深いフランス。おみやげ話にも花が咲きそうです。

ル・ロワ・ルネ Le Roy René

住所
11 rue Gaston de Saporta, 13100 Aix-en-Provence

「フランスの最も美しい村」を訪ねる

ゴルドを一望できる展望スポットは県道D15沿いにある
ゴルドを一望できる展望スポットは県道D15沿いにある

フランスには、昔ながらの田舎の景観を保護することを目的に設立された「フランスの最も美しい村協会」があります。村の人口が2000人未満であること、2ヵ所以上の保護建造物があることなどの条件を満たした村だけが「美しい村」と認定され、現在172の村が登録されています。そのうちのひとつゴルドGordesに立ち寄りました。

石造りの村のなかには高級レストランやホテルもある
石造りの村のなかには高級レストランやホテルもある

映画『プロヴァンスの贈りもの』(2006年)の舞台にもなった人気の村ゴルド。丘の上に立つ古城に向かって石畳が迷路のように入り組み、中世にタイムスリップしたかような気分を味わえます。村にはおみやげ物屋やカフェのほか「プティ・パレ・ダグラエPetit Palais d’Aglaé」のような眺めのいい高級ホテル・レストランもあり、数日間ゆったり過ごすことも可能です。

大野流の旅の楽しみ方は?

エクス・アン・プロヴァンスの朝市にて
エクス・アン・プロヴァンスの朝市にて

終始笑いの絶えない旅でしたが、どこにいても地元の方とスッと仲よくなる大野さん。秘訣を聞くと、そんなことないですよと謙遜しつつも「目を合わせることが大事かな」とひと言。現役時代は、海外遠征中のオフの日にひとりでバーに行って地元の人と飲んだり話したりするのがリフレッシュできて楽しかったそう。多少言葉はわからなくても、アイコンタクトで通じ合えるのはラグビーで培われたコミュニケーション力かも。

南仏の太陽のように明るい人たちとの触れ合いもプロヴァンス旅行の魅力のひとつ。ぜひラグビーW杯観戦の合間にフランス各地を訪れてみてください。

TEXT & PHOTO:地球の歩き方 由良暁世 Akiyo Yura

取材協力
フランス観光開発機構 Atout France www.france.fr/ja
プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地方観光局 Provence-Alpes-Côte d’Azur Tourisme
www.provence-alpes-cotedazur.com
エクス・アン・プロヴァンス観光局www.aixenprovencetourism.com
リュブロン観光局www.destinationluberon.com
東芝ブレイブルーパス東京 Toshiba Brave Lupus Tokoyo www.bravelupus.com


〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
(関連記事)https://www.arukikata.co.jp/web/catalog/article/travel-support/

筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。