コロンビアで知られざる湯滝を発見!豪快な野湯「セタキラの湯滝」

公開日 : 2024年04月01日
最終更新 :
筆者 : 鈴木浩大

これまで長きに渡って世界の温泉を訪ねてきました。訪ねた世界の温泉は約1200ヵ所。悠久の歴史に育まれた名湯、色鮮やかな濁り湯、沸き立つような噴泉、息をのむほどに美しい景観の湯。世界中の観光客が集まる人気の温泉から、地元の人だけが知る隠れ湯まで、百の温泉を訪ねれば百の表情に出会えます。そのなかから、特に思い出深い温泉を、豊富な写真ともに紹介していきたいと思います。

今回は日本から遠い南米の山奥で見つけた豪快な「セタキラの湯滝」です。

まずはセタキラの湯滝の近くにあるホテル、エリコニアス温泉をめざす

南アメリカ大陸の北端に位置するコロンビア。「とても危険な国」というイメージを持つ日本人が多いのですが、2016年の内戦終結を機に状況は改善し、今では多くの観光客が訪れるようになっています。港湾都市カルタヘナの歴史的建造物群や、コロンビアコーヒーの産地としての文化的景観など、数多くの世界遺産にも恵まれています。

コロンビアへはアメリカ国内を経由して訪れる人が多いようですが、筆者は東京からメキシコシティを経由し、アビアンカ航空に乗り換えて約5時間のフライトで首都のボゴタに到着しました。日本ではなじみがないかもしれませんが、アビアンカ航空はコロンビアが本拠で、南北アメリカの各都市を結んでいます。全日空などとともにスターアライアンスに加盟していて、オランダのKLM航空に次いで、世界で2番目に古い航空会社として知られます。

赤と白のコントラストが鮮やかなアビアンカ航空
赤と白のコントラストが鮮やかなアビアンカ航空

ボゴタは標高2600mに位置するため、飛行機を降りると何となく空気が薄いように感じます。目指す温泉はボゴタの北東約200km、ボヤカ県セタキラ村にあります。アンデス山脈に位置するボヤカ県は、冷涼で雨の少ない気候を生かしたジャガイモ栽培で有名です。

セタキラの湯滝は川沿いにあるようですが、完全な野湯であり人工的な施設はありません。ただ、近くに湯滝から温泉を引いたホテル「エリコニアス温泉」があるようなので、まずはそこを目指すことにしました。コロンビアに日系の旅行会社があるのを知り、事情を説明して車の手配を依頼しました。とても珍しい依頼だったようで、ベテランの日本人ガイドが同行してくれました。

ボゴタ周辺は慢性的な交通渋滞で、道路工事による片側交互通行も頻繁です。標高3000m地帯は濃霧で、未舗装の悪路が続くため、エリコニアス温泉までは予想以上に時間がかかりました。

エリコニアス温泉に到着!宿の様子

エリコニアス温泉の入り口。門から200mほど坂を下る
エリコニアス温泉の入り口。門から200mほど坂を下る

セタキラ村へ向かう未舗装路を走り、村まであと2kmという場所で、宿の看板に従って左折します。その後はムエチェ川沿いまでひたすら坂を下ります。ボゴタ空港から約6時間、太い竹を組んで作られた門をくぐると宿に到着です。

スペイン語では語頭のHを発音しないので、”Heliconias”でエリコニアスと読む
スペイン語では語頭のHを発音しないので、”Heliconias”でエリコニアスと読む

レセプションには宿の名前にもなっているトロピカルな植物エリコニアスが飾られていました。シーズンには広い庭中で花が咲き乱れるとのこと。

レセプションの向かいには、傾斜地に沿って2階建てのコテージが並んでいます。木造のシンプルな宿泊棟で防音性能はまったく期待できませんが、こんな山奥にあって意外にこぎれいな部屋でした。宿では竹が随所に使われ、日本人は親しみを感じるはず。

割り当てられたのは2階だったが、1階なら上階の音が響いたかもしれない
割り当てられたのは2階だったが、1階なら上階の音が響いたかもしれない

部屋の窓から、遠くに湯けむりが見え、あれが湯滝に違いないと気持ちが高ぶります。標高は1380mまで下がったので、息苦しさは感じません。

部屋の窓から外を見たらいきなり噴煙が見え、いても立ってもいられなくなる
部屋の窓から外を見たらいきなり噴煙が見え、いても立ってもいられなくなる

セタキラの湯滝へ出発!

川へと下る道は竹林の中
川へと下る道は竹林の中

さっそく、湯滝へと向かいます。レセプション脇の坂を下ると、分岐があり、左手は宿の温泉プールに、右手はムエチェ川に通じているようでした。竹垣に囲まれた道を下って川岸に出ると、200~300mくらい先に噴煙が見えます。川原か川中を歩いていくものと考えていましたが、まもなく山側に古タイヤを埋め込んだ道が現れるので、そこを進んでいきます。

川原に着くと正面に噴煙が見える。一刻も早く駆け寄りたいが足場は悪い
川原に着くと正面に噴煙が見える。一刻も早く駆け寄りたいが足場は悪い
川原からいったん離れて古タイヤの階段を上って滝へと向かう
川原からいったん離れて古タイヤの階段を上って滝へと向かう

100mほどでひとつ目の滝に着きます。ここは「三温の滝」と呼ばれていて、3つの温度の湯や水が混ざって流れ落ちているとのこと。温泉が流れている場所は岩肌が茶色に染まっています。これはこれで見事なのですが、この先にメインディッシュが待っているので、先を急ぎます。

「三温の滝」というが、左側は温泉、右側は水という「二温」しか区別できなかった
「三温の滝」というが、左側は温泉、右側は水という「二温」しか区別できなかった
温泉を運ぶパイプ沿いに滝への道を進む
温泉を運ぶパイプ沿いに滝への道を進む

岩場伝いに滝を越えて、山道を歩きます。道に沿うように黒い塩ビパイプが通っていて、目指す湯滝からホテルまで湯を運んでいるようです。まもなく、小規模な温泉の湧出地帯が何ヵ所も見えてきました。事前に読んだ文献には「32ヵ所の源泉がある」と記されているので、おそらくこれらの小源泉も含んでいるのでしょう。一般の人から見ればただの茶色い水でしかないかもしれませんが、筆者にとってはクライマックスが近づいているのを知らせる兆候で、気持ちが高揚します。

次々と温泉の染み出し箇所が出現し、クライマックスが近いことを実感する
次々と温泉の染み出し箇所が出現し、クライマックスが近いことを実感する

川原で石組みの即席露天風呂を楽しんでいる人たちが見えてくると、高さ16mのカラフルな湯滝に到着です。写真で見た以上に壮観で、しかも湯量が膨大なので迫力に圧倒されます。源泉は約90℃と高温なため、川歩き用の靴底から熱が伝わり、熱くて滝の直下に近づけません。正面に立つとむせるような蒸気と熱気が全身に伝わります。

滝の流れる岩壁は鮮やかな赤・黄・緑の縞模様。アフリカ諸国の国旗やレゲエファッションで有名なラスタカラーを思わせる色合いに興奮が高まります。味やニオイはほとんどありませんが、炭酸カルシウムを豊富に含むため、分厚い石灰華ドームを形成しています。世界各地で湯滝を訪ねてきましたが、湯温と鮮やかな色合いでは屈指のものです。湯滝の頂上には2本のパイプが突き刺さっており、エリコニアス温泉と対岸のもうひとつの宿に温泉を運んでいます。

再び川原に降り、右脇から湯滝に近づく。いよいよ到着だ
再び川原に降り、右脇から湯滝に近づく。いよいよ到着だ
赤、黄、緑のストライプが織りなす湯滝の全貌。熱くてこれ以上近づけない。
右上の黒いパイプを通して宿に温泉を送っている
赤、黄、緑のストライプが織りなす湯滝の全貌。熱くてこれ以上近づけない。
右上の黒いパイプを通して宿に温泉を送っている

筆者

世界中の魅力的な温泉を探し出して、旅しています。

鈴木浩大

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