ニューヨーク市最古のアイスクリーム・パーラー!愛さずにいられない古きよき店

公開日 : 2024年04月19日
最終更新 :

店が次々と入れ替わる、競争が激しいニューヨーク。そんな土地で、1世紀以上も営業を続けている小さなアイスクリーム・パーラーがあります。親に連れてきてもらった子供が成長し、また自分の子供を連れて来るような、家族何世代にも渡って愛されているこの店。大事な人とぜひ訪れてほしい「エディーズ・スイート・ショップ」をご紹介します。

エディーズ・スイート・ショップの歴史

オールド・アメリカンな雰囲気がたまらない、アイスクリーム・パーラー「エディーズ・スイート・ショップ」
(C)Hideyuki Tatebayashi オールド・アメリカンな雰囲気がたまらない、アイスクリーム・パーラー「エディーズ・スイート・ショップ」

南イタリアからの移民、ジュゼッペ・シトラーノ氏は、1968年に人気のソーダ・ファウンテン(アイスクリーム・パーラー)を営むドイツ系移民ウィリアム・ウィット氏が引退したあとに店を購入、店名を「エディーズ・スイート・ショップ」と改名しました。

シトラーノ家にエディーという名の家族はおらず、親しみやすいアメリカ人の名前を店名につけたようです。現オーナーのヴィトー氏は父ジュゼッペ氏から家業を引き継ぎ、ご夫人とふたりのご子息とともに家族経営を続けています。

人気オーナーが切り盛りする店内の様子

映画や広告の舞台となった、ノスタルジックな店内

ニューヨーク市クイーンズ区フォレストヒルズにあるこの店。地元民に昔から愛されている
ニューヨーク市クイーンズ区フォレストヒルズにあるこの店。地元民に昔から愛されている

エディーズ・スイート・ショップの店内に足を踏み入れると、テレビや映画で見たことがあるような、古きよきアメリカであふれています。

注文したアイスクリームをワクワクしながら待つ大理石のカウンターや回転スツール、たっぷりのホイップクリームが冷えている木製の冷蔵庫、サンデーが盛りつけられるシルバーの器……。どれも目を奪われるほどいい雰囲気を醸し出すビンテージで、オールドアメリカンの世界へ誘い込まれます。

この魅力的な店内は、コカ・コーラやペプシの広告で使用されました。また、2018年の映画『ロマンティックじゃない?』(※)にも登場したほか、約15本の映画やテレビドラマが撮影されています。

寒い日が続いたあと、半袖でもいいほど気温が上がったニューヨーク。アイスクリームを食べに来た客で満員の店内(2024年3月3日)
(C)Hideyuki Tatebayashi 寒い日が続いたあと、半袖でもいいほど気温が上がったニューヨーク。アイスクリームを食べに来た客で満員の店内(2024年3月3日)
テーブル席は、子供連れなどの家族や、ゆっくりしたいカップルに人気
(C)Hideyuki Tatebayashi テーブル席は、子供連れなどの家族や、ゆっくりしたいカップルに人気

ハンサムなオーナー、ヴィトー氏

俳優並みにハンサムなオーナーのヴィトー氏
(C)Hideyuki Tatebayashi 俳優並みにハンサムなオーナーのヴィトー氏

店内を見渡すと、ひときわ目立つ男性を発見。オーナーのヴィトー氏です。カウンター席が空くまで待ち、ヴィトー氏の目の前の席をゲットしました! 彫りが深く、俳優並みにハンサムです。ヴィトー氏は大学を卒業し、金融業界で働いたあと、10代の頃から手伝っていたこちらの家業に戻ったそうです。

オーダーの伝票に目を通し、ミルクシェイクを作り、シロップを補充し、山盛りの洗い物をしながらも、店内に目配りをし、笑顔で対応することも忘れません。オーナーのファンが多いことは、言うまでもありませんね。

2代目のオーナー夫妻、ご子息二人が切り盛りする家族経営。元学校教師のオーナー夫人がてきぱきとオーダーをとる
(C)Hideyuki Tatebayashi 2代目のオーナー夫妻、ご子息二人が切り盛りする家族経営。元学校教師のオーナー夫人がてきぱきとオーダーをとる

デートにもぴったり!

夜はライトアップするウィンドウ
(C)Hideyuki Tatebayashi 夜はライトアップするウィンドウ

多くのアメリカ人はアイスクリームが大好きなので、男性利用客も多く、子供から大人まで幅広い年齢が集まります。

家族や友人と一緒に訪れるのに向いている店ですが、筆者はデート、特に1回目のファーストデートにぴったりだと思います。ファーストデートなら、適度にざわざわとしたカウンター席が緊張しなくていいでしょう。肩を並べてアイスクリームを作る様子を眺めていれば、好きなアイスクリームの種類から子供時代まで、話が弾むかもしれません。アイスクリームを分け合って食べる頃には、店に入る前よりずっと、お互いを知り合っているでしょう。

現オーナーのヴィトー氏とアンジェリーナ夫人も30年以上前のファーストデートは、家業と知らされずに連れてこられたこの店だったそうです。彼女がラズベリー・アイスクリームにホームメイドのマシュマロとホイップクリームを添えたラズベリー・サンデーを楽しんでいると、当時のオーナー(ヴィトー氏の父)ジュゼッペ氏が近づいてきて正体を明かしたので、びっくりしたそうです。

すてきなファーストデートだと思いませんか? 意中の相手がいたら、こちらでファーストデートをしてみてはいかがでしょうか。現オーナー夫妻のように愛が実るかもしれませんね。

アイスクリームのオーダー方法

メニューの表紙は約100年前当時の写真(シトラーノ家が所有する前のオーナー、ウィット氏の時代)。店の雰囲気は変わらず、維持されている
(C)Hideyuki Tatebayashi メニューの表紙は約100年前当時の写真(シトラーノ家が所有する前のオーナー、ウィット氏の時代)。店の雰囲気は変わらず、維持されている

オーダーを眺められるカウンター席か、落ち着くテーブル席か、自分の好みの席に座ったら(個人的には作る様子が見られるカウンター席が絶対おすすめ)、いよいよオーダーをしましょう。

メニューがたくさんあるので、アイスクリーム・サンデーにしようか、でもクリームソーダも大好きだし、ミルクシェイクも捨てがたい……と、筆者のように迷ってしまうことでしょう。筆者は子供の頃、バナナ・パフェが好きだったので、迷ったすえ「バナナ・スプリット」をオーダーしました。

バナナ・スプリットとは、スライスしたバナナ、その上にお好みのアイスクリームを2種類、お好みのシロップを1種類、山盛りのホイップクリーム、最後の仕上げにスプリンクル(トッピング用のシュガー)とチェリーをのせたもの。雰囲気があるシルバーの器で提供されます。

オーダーの際は、スタッフがテンポよく好みを聞いてくれるので難しいことは何もありません。オーダーの方法と流れを以下にまとめます。事前に確認して工程を見逃さないようにしましょう!

たくさんのメニューがあり迷ってしまう
(C)Hideyuki Tatebayashi たくさんのメニューがあり迷ってしまう

1. アイスクリームを選ぶ

クラシックなフレーバーのアイスクリーム。眺めているとどれも食べたくなる
(C)Hideyuki Tatebayashi クラシックなフレーバーのアイスクリーム。眺めているとどれも食べたくなる
作業台の蓋を開けると冷蔵庫になっており、各種フレーバーのアイスクリームが詰まっている
(C)Hideyuki Tatebayashi 作業台の蓋を開けると冷蔵庫になっており、各種フレーバーのアイスクリームが詰まっている

ホームメイドのアイスクリームは、約20種類のフレーバーから選択可能。夏季限定のブルーベリーとピーチも人気。アイスクリームの配合は何十年も前から変えておらず、伝統の味を守っているそうです。

メニュー一覧

  1. バナナ
  2. バターピーカン
  3. コーヒー
  4. コーヒーチップ
  5. チョコレート
  6. チェリー・バニラ
  7. メープル・ウォルナッツ
  8. ミント・チップ
  9. ピスタチオ
  10. ラム・レーズン
  11. ストロベリー
  12. トゥッティ・フルッティ
  13. バニラ
  14. バニラ・チップ
  15. バニラ・ファッジ
  16. ラズベリー・シャーベット
  17. オレンジ・シャーベット

2024年3月3日当時のアイスクリームのフレーバー

2.ふわふわのホイップクリームがたっぷり盛られる

ふわふわのホイップクリームがてんこ盛り
(C)Hideyuki Tatebayashi ふわふわのホイップクリームがてんこ盛り
約80年前のレトロ可愛い木製の冷蔵庫。大きなホイップクリームのボウルはここで冷やしている
(C)Hideyuki Tatebayashi 約80年前のレトロ可愛い木製の冷蔵庫。大きなホイップクリームのボウルはここで冷やしている

レトロでかわいい木製の冷蔵庫には、ふわふわの夢がいっぱい詰まったホイップクリームが冷えています。大きなボウルに入ったホイップクリームをじっくり眺めたいのですが、木製の冷蔵庫の温度が上がらないように、オーナーが素早くドアを閉めてしまうので、一瞬しか見ることはできません。カウンターに座ったら、見逃さないように注意してみてくださいね。

3. シロップを選ぶ

シロップを惜しげなく、これでもかとたっぷりかけてくれる
(C)Hideyuki Tatebayashi シロップを惜しげなく、これでもかとたっぷりかけてくれる

アイスクリームとたっぷりのホイップクリームの上には、お好みのシロップを。最後の決め手をどれにしようか、もちろん迷います。

シロップの種類一覧

  • チョコレート
  • バニラ
  • ストロベリー
  • チェリー
  • コーヒー
  • ライム
  • ルートビア
  • コーク
  • ダイエット・コーク
  • オレンジ

4. スプリンクル(トッピング用のシュガー)をかけて完成!

レトロなシルバーの器にテンションが上がる。シロップはたっぷりで受け皿にもこぼれており、枡酒ならぬ枡シロップな状態
(C)Hideyuki Tatebayashi レトロなシルバーの器にテンションが上がる。シロップはたっぷりで受け皿にもこぼれており、枡酒ならぬ枡シロップな状態

筆者が頼んだバナナ・スプリットがテーブルにやってきました。2種類のアイスクリームはバニラとラム・レーズン、シロップはストロベリーにしました。

もっと豪華にしたい方は、バタースカッチ、キャラメル、マシュマロ、M&M(チョコレート)、ホットファッジ、パイナップル、胡桃などを追加料金でトッピングできますよ。

目の前にやってきたバナナ・スプリットは、子供の頃に夢見た憧れがぎっしり詰まっていました。アイスクリームは甘すぎず、思いのほかさっぱり。ふわふわのホイップクリームは今まで食べたことがないほど軽く、バナナはよく熟れ、シロップはいちごの味がしっかりしていて、何もかもたっぷりしており、甘美な夢の時間を堪能しました。

同行した家族と一緒にひとつを分け合いましたが、ふたりとも夕飯時にお腹が空かないほどのボリュームでした。物価の高いニューヨークでバナナ・スプリットが12ドル(チップ別)という値段は、かなり良心的です。

エディーズ・スイート・ショップへのアクセス

店内で食べずに、持ち帰りのオーダーも多い。写真はシングルのコーン。アイスクリームは気前よくぎゅうぎゅうに詰めてくれる
(C)Hideyuki Tatebayashi 店内で食べずに、持ち帰りのオーダーも多い。写真はシングルのコーン。アイスクリームは気前よくぎゅうぎゅうに詰めてくれる

クイーンズ区のフォレスト・ヒルズまで、ミッドタウンから地下鉄で約30分。"Forest Hills-71 Av"(地下鉄E,F,Rライン)、もしくはひとつ先の駅"75 Av"(地下鉄Fライン)で下車します。ともに駅から徒歩20分とやや不便ですが、"Forest Hills-71 Av"からは71st 〜 Continental Aveを、"75 Av"からはAscan Aveをほぼ直進(南下)するだけなので、わかりやすいと思います。

フォレスト・ヒルズは治安がいい住宅地として知られ、どちらも美しい閑静な住宅を眺めながら大通りを歩きますので、お腹を空かせるために散歩するのもいいと思います。エディーズ・スイート・ショップは夜遅くまで営業していますが、ニューヨークに土地勘のない方、駅から徒歩で向かう方は、日の明るいうちに出かけることをおすすめします。ニューヨークは夏季(6月〜8月)は日が長く、20:30頃まで明るいですよ。

英語名
Eddie's Sweet Shop
住所
105-29 Metropolitan Ave #1, Queens, NY 11375
エリア
ニューヨーク市クイーンズ区
店内飲食スペース
あり。テーブル席およびカウンター席
支払い
現金のみ
営業時間
水、木、日 15:00〜22:00 金〜土 15:00〜23:00 月火休
公式インスタグラム
https://www.instagram.com/eddiessweetshop/
おすすめ
バナナ・スプリット 12ドル(税込)チップ別

まとめ

「地球の歩き方」の読者の皆さん、おいしいアイスクリームを食べに「エディーズ・スイート・ショップ」に来てくださいね(オーナーより)
「地球の歩き方」の読者の皆さん、おいしいアイスクリームを食べに「エディーズ・スイート・ショップ」に来てくださいね(オーナーより)

インターネットにより世界中でトレンドが共有でき、多くの国で同じブランドが並び、各国独自の文化が薄れた気がする昨今。そのなかで、オールドアメリカンなスタイルを守る姿勢は貴重に感じました。利用客に喜ばれることを大切にし、店を誇りに思い、家族皆できびきびと仕事をする店で過ごす時間は、たいへん気持ちのいいものでした。

次回は、評価が高いコーヒーのアイスクリームを試してみたいです。コーヒーアイスクリームとセルツァー(炭酸水)を混ぜてホイップクリームをのせた「ブロードウェイ」という隠れメニューのドリンクも、オーナーのおすすめだそうですよ。

ノスタルジーを感じるアイスクリーム・パーラーでおいしいアイスクリームを食べに、ぜひニューヨークにいらしてくださいね。マンハッタン外にありますが、わざわざ訪れる価値のある店です。支払いは”キャッシュオンリー”ですので、現金を用意のうえお出かけください。ニューヨークでお待ちしています!

TEXT:ニューヨーク特派員 青山 沙羅
PHOTO:Hideyuki Tatebayashi
*Do not use images without permission.
監修:地球の歩き方

※掲載写真は、オーナーの許可を得て撮影しています。
※掲載情報は2024年3月時点の情報です。価格や商品構成などは変更になる場合がありますので、事前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
※2024年4月現在、1ドル:約155円です。

筆者

アメリカ・ニューヨーク特派員

青山 沙羅

はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。

【記載内容について】

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