【オーストリア、魅惑の5都市】2000m級の山々に囲まれたチロルの都、インスブルック

公開日 : 2022年12月28日
最終更新 :

人口約13万人の古都、インスブルック。街の名前は「イン川に架かる橋」に由来し、古くから交通の要衝として栄えてきました。ハプスブルク家出身のマクシミリアン1世が15世紀末にこの地に都を移したことで街は大きく発展。1964年と1976年には2度の冬季オリンピックを開催し、ウィンタースポーツのメッカとしても有名です。

かつて栄華を極めた神聖ローマ帝国の名残が旧市街に


美しいフレスコ画が天井に描かれた王宮の大広間。壁には一族の肖像画が並ぶ
©︎Innsbruck Tourismus / Christian Vorhofer
美しいフレスコ画が天井に描かれた王宮の大広間。壁には一族の肖像画が並ぶ

アルプスの山々に囲まれたインスブルック。かつて15世紀後半には、ここに神聖ローマ帝国の都が置かれ、今でも旧市街を散策するとその宮廷文化の名残をいたるところで見つけることができます。

旧市街の中心にある王宮は、15世紀半ばにチロル伯ジークムントが建立したものをマクシミリアン1世が拡張し、さらに18世紀にマリア・テレジアが現在の壮麗なロココ様式に改装。1765年にはマリア・テレジアの息子、レオポルド2世とマリア・ルドヴィカの婚礼がここで行われました。現在、内部見学が可能で、天井画やシャンデリア、皇帝やマリア・テレジア、皇妃エリザベートなどの肖像画が並び、当時の栄華をしのばせます。

王宮や大聖堂、宮廷教会など見どころが建ち並ぶ旧市街でひときわ目に付くのが、レジデンツ広場に面したバルコニーの上で燦然と輝く「黄金の小屋根」です。かつてマクシミリアン1世がこの広場で行われた舞踏会や馬術などの催しを上から見物するために作らせたもので、屋根部分には金箔を施した銅板が2657枚使われています。また、よく見るとバルコニーの手すり部分には、マクシミリアン皇帝や妃たちの姿を描いた精巧なレリーフがはめ込まれています。建物内部は現在、「黄金の小屋根博物館」として皇帝が集めた宝物などゆかりの品々が展示されており、ここで結婚式を挙げることもできるそうです。


白亜の建物に緑色の丸屋根が印象的な王宮。夏は7月を中心に約1ヶ月間、中庭でプロムナード・コンサートが開かれる
©︎Innsbruck Tourismus / Christof Lackner
白亜の建物に緑色の丸屋根が印象的な王宮。夏は7月を中心に約1ヶ月間、中庭でプロムナード・コンサートが開かれる

1500年に完成した「黄金の小屋根」。インスブルックで一番有名な観光地だ
©︎オーストリア政府観光局 / Sarah Dawalibi Le Blog de Sarah
1500年に完成した「黄金の小屋根」。インスブルックで一番有名な観光地だ

史上最多、これまで冬季オリンピックを2度開催


近未来的なフォルムで建築物としても美しいベルクイーゼル・ジャンプ台
©Innsbruck Tourismus/ Tom Bause
近未来的なフォルムで建築物としても美しいベルクイーゼル・ジャンプ台

インスブルックはこれまで冬季オリンピックのホストを2度、務めたことでも知られています。過去、2回開催した実績がある町は、スイスのサン・モリッツ、アメリカのレイク・プラシッド、そしてインスブルックの3都市のみ(イタリアのコルチナ・ダンペッツォが2026年に2度目の開催地となる予定)です。

そんなインスブルックで訪れたいのがベルクイーゼル・ジャンプ台。オリンピックだけでなく、数々のワールドカップ・ジャンプ競技の舞台になった歴史あるジャンプ台で、2002年に建築家の故ザハ・ハディドが設計した今の姿に生まれ変わりました。こちらは競技のない日には一般公開され、インスブルック市街とノルトケッテ連峰の眺めが見事な展望台に登ったり、パノラマレストランで食事を楽しんだりできます。ジャンパーの目線と同じく、ジャンプ台の助走路を上から見下ろすことができ、その高さと角度には圧倒されることでしょう。運が良ければ、ジャンパーが練習していることも。

インスブルックから一番近いスキー場があるのは、ベルクイーゼル・ジャンプ台とは反対側、町の北側にあるノルトケッテ連峰のハーフェレカー山。ケーブルカーやロープウェイを乗り継いで誰でも簡単に上ることができ、標高2334m地点のハーフェレカー駅まで約20分で到着できます。夏は展望台として人気で、周辺でハイキングを楽しむ人の姿も多く見られます。


W杯をはじめとした世界的なスキージャンプ大会が毎年開催されており、日本人の高梨沙羅選手や小林陵侑選手も優勝経験をもつ
©Innsbruck Tourismus
W杯をはじめとした世界的なスキージャンプ大会が毎年開催されており、日本人の高梨沙羅選手や小林陵侑選手も優勝経験をもつ

最新式ケーブルカー、フンガーブルクバーンに乗ってハーフェレカーへ。この駅舎もザハ・ハディド建築
©︎Innsbruck Tourismus / Christian Vorhofer
最新式ケーブルカー、フンガーブルクバーンに乗ってハーフェレカーへ。この駅舎もザハ・ハディド建築

ハーフェレカー山の上から見た市街地。複数のレストランがあり、チロルの伝統料理を食べられる
©Innsbruck Tourismus/ Christof Lackner
ハーフェレカー山の上から見た市街地。複数のレストランがあり、チロルの伝統料理を食べられる

ヨーロッパ最高地点にある「天空の動物園」へ


山の中腹にあるアルプス動物園。坂が多いので歩きやすい格好で出かけよう
©Innsbruck Tourismus/ Christof Lackner
山の中腹にあるアルプス動物園。坂が多いので歩きやすい格好で出かけよう

ハーフェレカーへ向かう途中、フンガーブルクバーンのアルプス動物園駅で下車して、動物園を楽しむのもおすすめです。標高はまだ727mですが、ヨーロッパで一番高いところにある動物園として知られ、本来の生息地に近い環境でアイベックスやアルプスカモシカなど、約150種、2000匹の動物たちを飼育。また、展示以外にも保護・研究・教育など、アルプスの生態系保全に寄与する活動を行っています。動物園のアイドル、象やキリン、ライオンといった動物はここにはいませんが、ヒグマやカワウソ、ハイイロオオカミ、ヨーロッパオオヤマネコといったアルプスを中心に生息する動物たちが、自然に近い環境でのびのびと暮らしています。


雪の中で身を寄せ合う動物園のヨーロッパオオヤマネコたち
©︎Alpenzoo Innsbruck
雪の中で身を寄せ合う動物園のヨーロッパオオヤマネコたち

郊外にあるスワロフスキーのテーマパークにも足を運んで


巨人の口がスワロフスキー・クリスタルワールドの入り口だ
©︎Swarovski Kristallwelten / Emanuel Kaser
巨人の口がスワロフスキー・クリスタルワールドの入り口だ

クリスタルガラスのアクセサリーや置物で有名なスワロフスキー社は、実はオーストリアの企業というのはご存知でしょうか?インスブルックから東に15kmほど行ったヴァッテンスという村に、体験型テーマパーク「スワロフスキー・クリスタルワールド」がオープンしたのは創業100周年にあたる1995年。現在では年間70万人もの観光客が訪れる、インスブルック近郊の人気スポットになっています。

広大な敷地内には、現代アートのような展示室から庭園、迷路、子供が遊べる遊具エリア、そしてレストランまでさまざまな施設が集結。オーストリアのマルチメディア・アーティストのアンドレ・ヘラーや日本の草間彌生をはじめ、国際的に有名な建築家や芸術家が装飾やデザインを手掛けており、史上最大31万カラットのクリスタル「センテナー」や595枚の鏡を使用した「クリスタルドーム」など、異次元の世界観を堪能することができます。

インスブルックの中央駅前からスワロフスキー・クリスタルワールドまでシャトルバスが運行しており、所要時間は30分ほどで到着します。山々に囲まれた自然豊かなロケーションにあり、インスブルックからの日帰り旅行にもぴったり。ミュージアム見学のあとは、もちろん世界最大級のショップでお買い物も可能です。


360度、まばゆい輝きに囲まれたクリスタルドーム
©︎Swarovski Kristallwelten / Werner Elmer
360度、まばゆい輝きに囲まれたクリスタルドーム

・アクセス: ウィーンからrailjet特急で約4時間15分、ザルツブルクから約1時間45分、ドイツのミュンヘンからEC特急で約1時間45分。

※当記事は、2022年11月30日現在のものです

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2022年11月30日現在、観光目的の海外渡航は難しい状況です。『地球の歩き方 ニュース&レポート』では、近い将来に旅したい場所として世界の観光記事を発信しています。渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
旅したい場所の情報を入手して準備をととのえ、新型コロナウイルス収束後はぜひお出かけください。安心して旅に出られる日が一日も早く来ることを心より願っています。

筆者

地球の歩き方観光マーケティング事業部

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