ヨーロッパの列車、1等車と2等車で何が違う?

公開日 : 2022年12月12日
最終更新 :

ヨーロッパの鉄道旅行を計画する際に、「1等車」、「2等車」など、列車のクラスの話が出てくる。1等車を利用する方は運賃が高く、2等車を利用する方は運賃が安いので、リーズナブルで旅をしたいのであれば、2等車で十分だと思う方も多くいるだろう。しかし、ヨーロッパの列車のクラスは、運賃だけでは比較できない面が多くある。今回は、ヨーロッパの列車クラスと座席について解説しよう。(文/鹿野博規(株式会社ワールドコンパス))

目次

2等車は「普通」、1等車は「グリーン」、特等は「グランクラス」

ヨーロッパの高速列車や特急列車では、基本的には1等車と2等車の編成。快速列車や普通列車では、2等車中心の編成で、一部に1等用スペースがあるといったものである。
ヨーロッパの列車のクラスである「1等=ファースト」「2等=スタンダード」は、日本のJRで例えるなら1等は「グリーン車」、2等は「普通車」と同じだと考えて問題は無い。
1等の方は座席が広く、2等の方は座席が狭いのも、日本と同じである。
また、国際高速列車ユーロスターの「ビジネスプレミア」、国際高速列車「タリス」の「プレミアム」、オーストリア連邦鉄道(ÖBB)のレイルジェットの「ビジネスクラス」、トレニタリアの高速列車フレッチャロッサの「エクゼクティブ」は、1等よりも上位クラスである「特等」に該当する。日本で例えるならば、JR東日本の東北新幹線や上越新幹線に編成される「グランクラス」と同じようなものである。

1等車の乗降口。クラス表記のない列車もあるので注意
1等車の乗降口。クラス表記のない列車もあるので注意

ヨーロッパの座席タイプ

ヨーロッパの座席車はおもに、オープンサロンとコンパートメントのふたつのタイプがある。オープンサロンとは、日本の新幹線や特急列車と同じように車両全体がひとつの空間となっていて、通路を挟んで両側に座席が配置されているタイプの車両。座席は向かい合わせの場合や一方向にレイアウトされたものなどがある。一方、コンパートメントは、日本ではあまり見かけないタイプのもので、車両の片側が通路になっていて、片側がいくつかの個室に分かれているタイプ。各部屋に座席が設けられている。

オープンサロンの車内

オープンサロンの座席車は、1等車と2等車とで車両の座席数が異なる。4人向かい合わせの席の場合、固定式のテーブルが設置されていることもある。基本的には座席の向きは固定されており、利用者自身で向きを変えることはできない。通常のオープンサロンの車両であれば、1等なら通路を挟んで片側1人、片側2人、2等ならば両側2人ずつの配置となっていることが多い。2等座席と比べて、1等座席は多少ワイドで、ひじ掛けもゆったりとして大きく、個々の座席にパソコン用の電源プラグが設置されていることもある。イタリアの高速列車フレッチャロッサに編成される特等にあたる「エクゼクティブ」やチェコ鉄道(ČD)の高速列車・レイルジェットの「ビジネスクラス」には、通路を挟んで1人掛けずつの座席となっている。
座席の広さについては、2等座席の場合、飛行機のエコノミークラスよりは広いが、フランスの高速列車TGVや国際高速列車タリス、イタリアの高速列車イタロなど、TGV系の高速列車は比較狭く、ドイツのICE系の高速列車やスウェーデンのSJ2000などは、ゆとりのある座席となる。ヨーロッパの鉄道も近年LCC的な格安料金の鉄道会社が増えつつあるが、これらの会社が運行する列車の2等座席は狭い。

ひと口メモ:オープンサロンの座席の向き

日本の新幹線や特急列車のように、座席は必ずしも進行方向に向いている訳ではない。座っている方向とは逆向きに進行する場合も多くある。近年では、フランスのTGVの新型車両(TGV Oceane)やスペインのAVE(S103)は、日本と同じように進行方向に座席が向いている車両も登場しているが、まだまだ少数派である。

TGVの1等席
TGVの1等席

コンパートメント車内

チェコ鉄道の1等車コンパートメント
チェコ鉄道の1等車コンパートメント

コンパートメントの座席車は、1等車と2等車ともに6人席が標準である。個室内に3人掛けの座席が向かい合わせに設置されている。一部の国の1等車では4人席、2等車では、8人席も設定されている。6人席の場合、1等車と2等車の違いは、個室の広さである。
多少の違いはあるが1両当たりの個室数が1等の場合は9室、2等の場合が11室である。
またオーストリア連邦鉄道のレイルジェットの特等にあたる「ビジネスクラス」は、セミコンパートメントタイプの座席となっている。やはり2等コンパートメントは、1等コンパートメントと比べて、個室のサイズが狭いので、6人席を6人で利用した場合は、狭さを感じるかもしれない。

ひと口メモ:同じ列車でも所属している会社によって座席タイプが異なる

オーストリア連邦鉄道(ÖBB)とチェコ鉄道(ČD)で運行している国際高速列車レイルジェットは、所属している会社によって、座席のタイプが異なる。特等にあたる「ビジネスクラス」は、ÖBBの場合は、セミコンパートメントタイプ、ČDの場合は、オープンサロンタイプとなる。座席数もÖBBの方が多い。このように同じ列車種別でも、座席タイプが異なる場合があるので、注意しよう。

1等車と2等車はどちらか混むか?

1等車は、グリーン車に該当するクラスなので、利用者はビジネス利用が中心。年齢による割引運賃なども設定されてりするので、シニアの方や鉄道パスを持っている観光客の方も利用していることが多い。そのため空いているのかと言えば、高速列車や特急列車は、これらの利用者が多く、座席数も2等車と比べて少ないため、主要区間の朝の時間帯やや繁忙期などは比較的混雑している。逆に地元の方の足となる快速列車や普通列車にも1等車および1等スペースがあるが、地元の方は利用する機会が少ないので、空いていることが多い。
2等車は、普通車に該当するクラス。地元の方が多く利用する。また、チケットの早割などの割引運賃や格安運賃は2等に設定されることも多いので、1等車と比べて、座席数は多いが、混雑しやすい。

ひと口メモ:1等の鉄道パスの活用法

快速列車、普通列車は繁忙期になると非常に混雑する。そのため2等座席は満席だが、1等座席は空いていることがある。そのため、ユーレイルグローバルパスなどの鉄道パスで旅をする場合、1等パスを持っていれば、空いている1等座席を利用することもできるので、価格面では見えないメリットがある。

携帯電話と会話のマナー

ヨーロッパの列車では、日本とは異なり座席での携帯電話の利用ができる。そのため日本の列車と比べて、良い意味でいえば「にぎやか」である。しかし、現地でも静かな空間で列車利用をしたい方も多くいる。そのために、ヨーロッパでは、「静かな席」もしくはサイレンス車両の設定がある。これらの座席を利用する場合は、客車内では携帯電話の利用の禁止はもちろんのこと、会話も禁じられている。またモバイルやオーディオプレイヤー等で音楽を聴く際も、イヤホンから音漏れをしないように気を付けなければならない。騒いだり、音漏れで他の乗客から指摘があった場合は、車掌から注意される。
それ以外の座席の場合は、携帯電話を使用しても構わないが、周囲に迷惑をかけないようにデッキで話すようにしよう。

クラスでのサービスの違い

アムステルダム中央駅の専用ラウンジ
アムステルダム中央駅の専用ラウンジ

これまで座席のタイプなど設備面を中心に、クラスの違いを説明したが、サービス面でも特等、1等、2等の違いがある。特等クラスを利用する方には、発着駅に設置されている専用ラウンジの利用やユーロスターやタリスなど一部の列車には座席での食事サービスが提供もある。1等利用者も一部の国ではノーマル運賃(普通運賃)であれば、発着駅のラウンジの利用ができる。デンマーク、ノルウェー、スウェーデンなどでは、1等車内(ノルウェーの場合は:コンフォートクラス)に設置されているコーヒーや紅茶などのドリンクサービスがある。高速列車のWiFi利用については、以前は特等や1等利用者のみのサービスであったが、近年は2等車でも提供されるようになってきている。

筆者

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