イタリア・ヴェネツィアのカーニバル2023はすぐそこ!歴史と仮面のお祭りの楽しみ方

公開日 : 2023年01月24日
最終更新 :

イタリア北東部の世界遺産の町ヴェネツィア。
ヴェネツィアは、海の干潟に浮かぶ島々に水路が張り巡らされた、世界でも珍しい“水の上に建つ都市”として知られています。幻想的で美しい水の都では、毎年2月に世界三大カーニバルのひとつとされる「ヴェネツィアのカーニバル」が行われます。カーニバルは、東方貿易で栄えた海洋国家ヴェネツィアの歴史と文化を象徴し、1000年以上の伝統を誇る大切な行事です。今回は、ヴェネツィアのカーニバルの歴史や楽しみ方などについてご紹介します。

ヴェネツィアの歴史-アドリア海の女王の繁栄と衰退

ティントレットの「最後の晩餐」の絵画で知られるサン・ジョルジョ・マッジョーレ教会からのパノラマ
ティントレットの「最後の晩餐」の絵画で知られるサン・ジョルジョ・マッジョーレ教会からのパノラマ

ヴェネツィアのカーニバルについての本題に入る前に、イベントが開催されるヴェネツィアについてご説明しましょう。イタリアには20の州がありますが、北東部にあるヴェネト州の州都となっているのがヴェネツィアです。ヴェネツィアは、衛星写真で見ると、島全体がカタツムリのような形をしています。魚の形に見えるといわれる場合もありますが、筆者はくるくるしているところがかわいらしいことから、カタツムリと呼んでいます。海の上に浮かぶヴェネツィアの町は、小さな118の島が集まったもので、それぞれの島がおおよそ200の運河で隔てられて橋で結ばれることで、大きなヴェネツィア本島と呼ばれる生活圏になっています。
ヴェネツィアは、今日ではイタリアの一都市ですが、長い間ひとつの独立した国でした。東方貿易で繁栄を遂げたヴェネツィア共和国はアドリア海の女王とも呼ばれ、1000年近くに渡り、地中海貿易の要所として君臨していました。歴史的には、1797年になるとオーストリアの支配下に入り、近代になってからイタリアに併合されます。

ヴェネツィアの魅力は、その世界でも類を見ない、ヴェネタ潟の上に築かれている都市であることです。昔は沼地であったところを、広大な面積を灌漑によって人が住めるようにしています。1987年に世界遺産に登録されると、美しい水の都ヴェネツィアには、世界中から多くの観光客がやって来るようになりました。ヴェネツィアの典型的な風景は、ゴンドラが行き交う運河や個性的で華やかな建築物、そしてターコイズ・グリーンの海の素晴らしい眺めです。

ヴェネツィアの観光スポット-ヴェネツィアの魔法を発見しよう

ヴェネツィア旅行ではヴェネツィア派絵画の傑作がそろうアカデミア美術館もぜひ!
ヴェネツィア旅行ではヴェネツィア派絵画の傑作がそろうアカデミア美術館もぜひ!

ヴェネツィアは、イタリア人にも人気のある観光地のひとつです。ヴェネツィアで有名な観光スポットには、サン・マルコ大聖堂、ドゥカーレ宮殿、リアルト橋などがあります。その他には、ヴェネツィア派の絵画が鑑賞できる聖堂や美術館などがそろいます。筆者はローマに住んでいますが、目的が観光であっても仕事であっても、ヴェネツィアは毎回とても癒やされる訪問地です。ヴェネツィアの鉄道駅サンタ・ルチーア駅に降り立つ度に、まるで夢の中に迷い込んでしまったかのような感覚を受けます。
運河をゆっくりと行き交うゴンドラや、路地裏から見える海とその遠くに見える小さな島々など、息をのむような幻想的で美しい景色を見せてくれます。イタリアのすべての都市を訪ねる時間がなければ、まずはヴェネツィアを選択の一番に入れることをおすすめしたいと思います。この町の雰囲気には、独自のものがあります。4~5日あれば、ひととおり有名な観光スポットを鑑賞できます。

ヴェネツィア本島の近くには、ヴェネツィアングラスで知られるムラーノ島や、メルレットと呼ばれるレース編みが伝統となっているカラフルな家並みのブラーノ島、ヴェネツィア発祥の地トルチェッロ島などの100以上の島々があります。周辺の島々へは、本島から乗り合いの水上バスヴァポレットを使うと、30分から1時間程度で訪れることができます。日帰りの観光スポットとしてもおすすめです。

漁師が無事に自分の島に戻って来れるよう、遠くからでもよく目立つ色で塗られたブラーノ島の家々。2019年11月7日、筆者撮影
漁師が無事に自分の島に戻って来れるよう、遠くからでもよく目立つ色で塗られたブラーノ島の家々。2019年11月7日、筆者撮影

ヴェネツィアのカーニバルの歴史-1000年を超える伝統の祭典

ヴェネツィアのカーニバルは、毎年2月に開催される世界三大カーニバルのひとつです。カーニバルは、1100年代後半に市の太政官会が公式行事として宣布したのが始まりで、世界で最も古いお祭りといわれています。16世紀になると、さまざまな職業の人々がヴェネツィアに集まり、仮面をつけて祭りを楽しむようになりました。それ以来、ヴェネツィアのカーニバルは、カラフルな仮面や衣装をまとって仮装などが行われる活気のあふれる祭典となっています。
カーニバル期間中のヴェネツィアは、街全体が神秘的なムードとなり、訪れた多くの人々が「今までで最も魅力的なイベントだった」と感想を述べます。ヴェネツィアの雰囲気自体がすでに唯一無二ですが、街を闊歩する仮装姿の人々を見ると、まるで中世の知らない街に迷い込んでしまったかのようです。

ヴェネツィアのカーニバルの楽しみ方 2023年

どこを切り取っても絵になる美しさの水の都、ヴェネツィア。サン・マルコ広場のゴンドラ
どこを切り取っても絵になる美しさの水の都、ヴェネツィア。サン・マルコ広場のゴンドラ

ヴェネツィアへのアクセス

ヴェネツィアへの行き方はとても簡単です。首都ローマからは、旧イタリア国鉄のトレニタリアのフレッチャ・ロッサやNTVのイタロなどの高速列車を使って約4時間で到着します。ミラノからヴェネツィアへは約2時間半の所要時間です。ヴェネツィアの鉄道駅サンタ・ルチーア駅からは、ホテルなどの各目的地まで、水上バス、小船、ゴンドラなどを利用します。
ヴェネツィアは、物理的に車を乗り入れることができないため、車はありません。乗り合いの水上バス ヴァポレットの切符は、一回用の乗車券の他には、24時間券、2日間、3日間、7日間有効なお得な切符が販売されています。また、ヴァポレットと美術館などの観光施設の入場券がセットになったものもあります。

カーニバルの参加の仕方-レンタル衣装もあり

ヴェネツィアのカーニバルでは、まずは大きなサン・マルコ広場を基点として街歩きを始めましょう。サン・マルコ広場は、ヨーロッパの居間とも呼ばれる美しい広場で、この界隈でイベントが多数行われます。サン・マルコ広場にあるサン・マルコ大聖堂の鐘楼は、100mの高さがあり、離れていてもわりと見えますので、もし迷子になってしまったら、目印になりやすいポイントです。

ヴェネツィアのカーニバルには、誰でも無料で参加することができます。イベントによっては、チケットを購入することでショーや演劇を見たり、ヴェネツィア伝統料理の試食などの体験ができるものがあります。カーニバルには、自分で仮装をして参加することもOKです。ヴェネツィアに着いたら街中で仮面を購入できますが、もっと本格的に準備をしたいなら、レンタル衣装もあります。イタリア国内のコスチュームショップでは、ヴェネツィアのカーニバルのための衣装をレンタルしていて、好きな日数借りることが可能です。

カーニバル伝統菓子「フリッテッレ」-本物のヴェネチア文化を体験しよう!

ヴェネツィアのカーニバルの時期に食べられる伝統菓子フリッテッレ(Frittelle)©iStock
ヴェネツィアのカーニバルの時期に食べられる伝統菓子フリッテッレ(Frittelle)©iStock

カーニバルの時期にヴェネツィアを訪れたなら、この時期でしか食べられないカーニバルの伝統菓子を味わってみてください。フリッテッレと呼ばれる小さな丸い形をした揚げ菓子で、ひとことでいうとドーナッツに似ています。フリッテッレは、小麦粉と卵を混ぜて油で揚げたもので、中にレーズンや松の実を入れられることもあり、作り手によってアレンジはさまざまです。
カーニバル期間限定のフリッテッレは、街角のバールではこの時期、カウンターに並んでいることが多いため、すぐに見つけることができます。スーパーや食材店でも販売されています。購入後、2日程度は保存ができます。もし中にクリームなどが入っているものでしたら冷蔵庫に入れておきます。素朴で懐かしい味のするイタリアの伝統的なお菓子です。

ヴェネツィアで買いたいおすすめのおみやげ

ペストの医者と呼ばれる鳥のような風貌の不気味なベネチアンマスクも
ペストの医者と呼ばれる鳥のような風貌の不気味なベネチアンマスクも

日本へのおみやげのおすすめは、ヴェネツィアのカーニバルの時期なら仮面です。街中でいろいろなデザインのマスクが購入でき、小さい壁掛け用のものなら6ユーロくらいから販売されています。マスクには、よく知られるカラフルで華やかなものから、「ペストドクター」と呼ばれる非常に不気味なものまであります。ペストのドクターは、白い顔に長い鼻を持つとても怖いマスクです。500年ほど前のヴェネツィアで、医師が伝染病予防のため医療用のマスクとして着用していたものに由来していますが、伝統的なベネチアンマスクのひとつです。自分だけのマスクを作りたい人は、注文をしてから最短でも10日と時間はかかりますが、オーダーメイドもできます。仮面職人の工房により、製作に要する期間、価格は異なります。

他には、ヴェネツィアのおみやげには、ヴェネツィアングラスなどのガラス製品、またそれらのアクセサリー、ブラーノ島のレース編み、雑貨、お菓子などがおすすめです。
少しマニアックなおみやげとしては、ゴンドラを漕ぐゴンドリエーレが身につける「フルラーネ Furlane」と呼ばれるカラフルでかわいいスリッパがあります。「ゴンドリエーレのシューズ」は50ユーロ前後から購入ができ、実際に室内シューズとして履けるだけでなく、レース編みなどで飾られているものはオブジェにもなります。

2023年のカーニバルの開催期間

かわいいどぶネズミのボート「パンテガーナ」の水の行進 ©iStock
かわいいどぶネズミのボート「パンテガーナ」の水の行進 ©iStock

ヴェネツィアのカーニバルは、ヴェネツィアでは年中行事として、毎年2月から3月の四旬節(カトリック教会の暦で復活祭40日前の水曜日から前日に当たる期間のこと)の始まりまで行われています。2023年の開催日は、2月4日から2月21日までの予定です。

毎日さまざまなイベントが開催されていますが、有名なものには、2月5日に行われる「カーニバル水行列 Corteo acqueo di Carnevale」があります。ヴェネツィアの伝統的な張り子ボートのどぶネズミ「パンテガーナ」と、その他の仮装をした一行が運河を進むとてもかわいらしいイベントです。仮装行列の行進が水上で行われるバージョンです。大きなどぶネズミのボートは、ある地点にたどり着くと止まり、開催者により10・9・8・7とカウントダウンが行われます。すると、背中が真っ二つに割れ、中から色のついた煙とたくさんの風船が出て来て空に上がります。パンテガーナがヴェネツィアのカーニバルの開催を宣言するのです。

カーニバル中のイベントは日中だけではなく、「アルセナーレのナイトショー」などの夜に行われているものもあります。ヴェネツィアのカーニバルは、例年、最後の週末から最終日にかけてが最も盛り上がります。地元の人の伝統行事への誇りと喜びを感じられるすてきなイベントです。

カーニバル期間中のイベントは、こちらの公式ホームページでチェックすることができます。ヴェネツィアのカーニバル

まとめ

ヴェネツィアのカーニバルは、とてもユニークなお祭りです。旅行者も自由に参加ができるカーニバルは、長い歴史を誇るヴェネツィアの文化を体全体で感じることができます。また、海に囲まれたヴェネツィアでは、新鮮なお魚や甲殻類などがとれます。この地では、地中海のおいしい海の幸も味わってみてください。
いろいろな魅力にあふれるヴェネツィアは、一年をとおして観光が楽しめますが、初めて訪れる方でしたら、「アクア・アルタ」と呼ばれる異常潮位が多く発生する11~12月以外の時期に訪れることをおすすめします。アクア・アルタについては、筆者の過去記事 ローマ特派員/ヴェネツィアの高潮チェックアプリをインストールしよう!などをご参照ください。皆さんのすてきなヴェネツィア滞在を祈っています。2023年のヴェネツィアのカーニバルの最新情報は、随時公式サイトでご確認ください。

筆者

イタリア特派員

阿部 美寿穂

ローマからイタリアの日常やイタリア旅行に役立つ情報などをお送りしています。

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