【隠岐を満喫する10のこと】地球の記憶を今に伝える悠久の島

公開日 : 2023年06月01日
最終更新 :

島根半島の北方約50kmに位置する隠岐諸島。人が住む島は西ノ島[西ノ島町]、中ノ島[海士町(あまちょう)]、知夫里島(ちぶりじま)[知夫村]、島後(どうご)[隠岐の島町]の4島で、西ノ島、中ノ島、知夫里島の3つを合わせて島前(どうぜん)と呼びます。

約600万年前の火山活動によって形成され、約1万年前に現在のような姿になった隠岐。大地の成り立ちに起因するダイナミックな自然や希少な生態系、また自然や歴史と呼応するように育まれた独自の文化が評価され、2013年には世界ジオパークに認定されました。

ここでは定番の見どころから最新スポットまで、隠岐の魅力をギュッとダイジェストでお届けします。旅の参考にぜひ!

1.ローソク島[隠岐の島町]

まるでローソクに火が灯ったよう
まるでローソクに火が灯ったよう

隠岐の島町北西部の海上に浮かぶ巨大な岩、ローソク島は隠岐を代表する景観のひとつ。浸食により周囲の岩盤が崩落し、長い年月をかけて高さ約20mのまるでローソクのような細長い形となりました。

展望台から眺めることもできますが、ローソク島が生み出す奇跡の絶景を味わうならサンセットに合わせて出航する遊覧船に乗船を。船長の熟練の舵さばきで、水平線に沈む直前の太陽とローソク岩とが交錯し、まるでローソクの先端に炎をともしているかのような光景を目にすることができます。

天候や海の状況にも左右されるため、見られる確率は69%とも。運を味方につけて自然の神秘を体感しましょう。

2.岩倉の乳房杉[隠岐の島町]

神木としてあがめ奉られている神秘的な乳房杉
神木としてあがめ奉られている神秘的な乳房杉

最近の研究で、隠岐は氷河期時代にさまざまな植物の“逃避地”であったことが判明しつつあります。現在隠岐に見られる杉の祖先もそのひとつで、当時陸続きだった本州から寒さを逃れるために避難し、生き延びたものと考えられています。

樹齢約800年といわれる岩倉の乳房杉(ちちすぎ)は、隠岐の自然を象徴する存在。樹高約40m、幹囲約11mの巨大な杉で、主幹は地上3m部で15本に分岐しています。大小24個の乳房状の根が垂れ下がったその特徴的な姿容からその名がつけられました。

岩倉の乳房杉は八百杉(やおすぎ)、かぶら杉、マドスギと並ぶ島後の四大杉のひとつ。隠岐最高峰・大満寺山の東麓にあり、近隣一体の山を守る御神木としてあがめられています。

3.摩天崖[西ノ島町]

摩天崖の上で草を食む馬。牧歌的な風景だ
摩天崖の上で草を食む馬。牧歌的な風景だ

摩天崖(まてんがい)は、隠岐の中でも最も壮大な自然風景のひとつです。その名のとおり、崖は空まで伸びているかのような高さ。何十万年もの歳月をかけ波風に削り取られて形成された海抜257m、実にビル70階建てに相当する大絶壁は、ここが日本であることを忘れてしまうほどのスケール感ある絶景をつくり出しています。

全景を見渡すのであれば、摩天崖の上から国賀浜の通天橋までを結ぶ約2.5kmのトレッキングコースを歩くのがおすすめ。のんびり草を食む牛馬を横目に見ながら(驚かせると危険なのでむやみに近づかないように)、眼下に広がる奇岩を目指して空中散歩へと出かけましょう。

時間に余裕があれば国賀めぐり定期観光船もぜひ体験を。摩天崖や国賀海岸の奇岩といった壮大な風景を続けざまに観賞できるクルーズは、必ずや隠岐旅のハイライトとなるでしょう。波が穏やかな日には明暗(あけくれ)の岩屋という洞窟内に入ることもできます。

4.赤壁[知夫村]

むき出しの岩が赤く輝く赤壁
むき出しの岩が赤く輝く赤壁

知夫里島の西海岸に約1kmにわたり続く断崖赤壁は、その名のとおり赤く染まった壁が特徴的な観光スポットです。この壁は地層の鉄分が酸化してできたもの。繰り返し噴き上がったしぶきによって縞模様ができたとされ、国の天然記念物にも指定される名勝です。

来居(くりい)港から出航する赤壁遊覧船は、この赤壁を海から展望するなんとも贅沢なクルージング。特に夕日に照らされ輝く赤壁は、唯一無二の絶景といっても過言ではありません。

赤壁展望所を訪れた際は、ぜひ赤ハゲ山にもお立ち寄りを。知夫里島最高所となる324.5mの赤ハゲ山の山頂にある展望台からは、ぐるっと360度の大パノラマを楽しむことができます。島前の島々はもちろん、天候に恵まれれば島後や本州まで望むことができますよ。

5.隠岐自然館[隠岐の島町]

ワンフロアをゆったり活用した周回しやすい展示レイアウト
ワンフロアをゆったり活用した周回しやすい展示レイアウト

隠岐自然館は、隠岐の自然と文化を深く理解するための施設です。西郷港フェリーターミナルに直結する隠岐ジオゲートウェイの2階にあり、隠岐諸島の成り立ちや生態系、歴史や文化などをパネルや映像、ジオラマ展示などでわかりやすく解説。隠岐旅の予・復習の場としても最適です。

ひときわ目を引くのが入口正面に設置されたプロジェクションマッピング。隠岐諸島の立体模型に標高や土地利用図、地質や神社の位置、さらには江戸時代後期に伊能忠敬によって作成された伊能図といったものまでが次々と投影され、時間が経つことも忘れて思わず見入ってしまいます。

同施設の1階には隠岐の島町観光協会があり、観光情報の提供や旅の相談などに快く対応してもらえます。島前各島のフェリーターミナルにも観光協会があるので、島に到着したらまず立ち寄ってみるとよいでしょう。

◎隠岐自然館
https://www.oki-geopark.jp/museum/

6.焼火神社[西ノ島町]

岩に飲み込まれたような本殿が印象的な焼火神社
岩に飲み込まれたような本殿が印象的な焼火神社

西ノ島、中ノ島、知夫里島が囲む内海は、島前カルデラと呼ばれています。実は3島は600万年前に形成した巨大なカルデラの外輪山なのです。そのカルデラの中央火山口が西ノ島の焼火山。焼火神社は焼火山の中腹に鎮座しています。

焼火神社は安藤広重や葛飾北斎の版画「諸国百景」でも隠岐国の名所として描かれている神社で、古くから海上安全の神として信仰されてきました。岩穴に建つ本殿は隠岐最古(1732年改築)。海中から現れた火の玉が本殿裏の岩穴に入っていったことから、この地が祀られるようになったという伝承が残っています。

ちなみに隠岐と本土を結ぶフェリーや高速船を運航する隠岐汽船のロゴマークは3つの赤丸をかたどったものですが、これが焼火神社の伝承に由来しているというのはちょっとしたトリビアかもしれません。隠岐汽船の礎を築いた松浦斌(さかる)氏は、焼火神社の現在の宮司である松浦道仁氏の先祖。焼火神社の神様に敬意を表し、焼火山の下を通過するフェリーは必ず汽笛を鳴らしているそうです。

7.牛突き[隠岐の島町]

年3回開催される牛突きのひとつ、一夜嶽牛突き大会の様子
年3回開催される牛突きのひとつ、一夜嶽牛突き大会の様子

隠岐に配流された後鳥羽天皇をなぐさめるために始まった牛突きは、実に800年の伝統を誇る闘牛です。かつては島民の娯楽として全島で行われてきましたが、現在残っているのは島後のみ。年3回行われる牛突き本場所はいずれも大熱戦が繰り広げられ、取り組みをひと目見ようと多くの観客が集まります。近年は牛飼いの減少が課題となってはいますが、いまなお島民にとって重要な伝統行事であることに違いありません。

気軽に牛突きを観戦するなら隠岐モーモードームへ。観光客向けの牛突きで取り組みはすべて引き分けとなりますが、それでも迫力は十分に伝わるはず。試合が終われば牛との記念撮影タイムが設けられています。

また隠岐旅工舎では突き牛(牛突きのために育てられた牛)の散歩体験アクティビティも用意。巨体を揺らしながら気持ちよさそうに散歩する突き牛と触れあえば、牛突き文化をより身近に感じることができるでしょう。

◎隠岐モーモードーム
https://oki-dougo.info/data01/room/broom/event_ushi2014.html

8.Chez SAWA[知夫村]

メインは肉料理。写真は隠岐牛とアワビの赤ワインソース
メインは肉料理。写真は隠岐牛とアワビの赤ワインソース

Chez SAWAは、2022年にオープンした築60年超の古民家を改装したフレンチレストラン。オープンするやいなやその噂はまたたく間に広がり、島内のみならず他島からも「一度はChez SAWAへ行ってみたい!」と声があがるほどの人気店となっています。

若きオーナーの岡田紗和さんは自家農園の「いただきファーム」も運営。洋野菜やハーブも含め、店で使用する野菜のほとんどをまかなっているそうです。料理を手がけるのは本場フランスでの修業経験を持つシェフの里野モミイチさん。インスピレーションあふれる料理は目と舌を大いに楽しませてくれますが、息のあった二人によるあたたかなもてなしがまた、その体験をいっそう格別なものにしてくれます。

昼・夜ともコースのみで、シェフいわく「いちばんいい素材を当日に決める」とのこと。前日までの完全予約制ですが、人気店のため早めの予約をおすすめします。

◎ Chez SAWA
知夫村仁夫2293
Tel. 050-8885-0767

9.Entô[海士町]

プライベートテラスを備えたNEST DX(デラックス)ルーム
プライベートテラスを備えたNEST DX(デラックス)ルーム

Entô(えんとう)は海士町の玄関口・菱浦港に面した島の顔ともいえるホテル。島で唯一の大型宿泊施設であったマリンポートホテル海士を大幅に改装し、2021年にオープンしました。

菱浦港に入港するフェリーや内航船からすぐ目に入るモダンな建物は別棟のEntô Annex NEST。NESTは全室が海に面し、さらに全面ガラス張り。入室した際に目に飛び込む景色こそが最大の魅力ととらえ、家具や調度品はあえてシンプル&ミニマルに設えられています。この「何もしない」をするという非日常体験を求め、記念日などに宿泊する旅行者も多いそうです。

またEntôは隠岐ジオパークの拠点施設としての機能も担い、展示施設のGeo Room "Discover"は宿泊客以外にも無料開放しています。解説員によるガイドツアーに参加すれば、より隠岐への理解も深まることでしょう。

◎Entô
https://ento-oki.jp/

10.E-bike

車体や貸し出し方法は全島でほぼ共通化しているので利用しやすい
車体や貸し出し方法は全島でほぼ共通化しているので利用しやすい

離島の旅は非日常の体験に満ちていますが、島内の移動手段が限られているのが難点でもあります。隠岐では各島でレンタカーを借りることもできますが、運転免許を取得していない人や車の運転に不慣れで見知らぬ土地をドライブすることに不安を覚える人もいるのではないでしょうか。

そんな旅行者におすすめしたいのがE-bikeです。E-bikeは電動アシスト機能付きのスポーツタイプの自転車で、隠岐では全島に導入されています。貸し出しと返却は各島の観光協会で。3時間から借りることができ、目的地に応じて柔軟にレンタルプランを選べます。面積が大きく見どころが点在している島後は一日で見どころすべてを巡るのは難しいですが、島前各島であれば半日もあれば島の主要なスポットは巡ることができるでしょう。

レンタカーでの移動とは異なり、行く先々の土地との距離が近いのもE-bikeの魅力。目的地に向かう途中にふらりと立ち寄った集落で、思わぬ出合いが待っているかもしれません。免許等は不要ですが、身長制限(159cm〜)があるので利用の際はご注意ください。

隠岐だけの完全ガイド!改訂版が登場です!

地球の記憶を今に伝える悠久の島、隠岐。1冊丸ごと隠岐だけのガイドブック!島の人のとっておきの情報が満載です。「観る・遊ぶ・食べる・買う・泊まる」の情報はもちろん、ジオパークの詳しい解説や、4つの島の巡り方のプランなどをお届けします。

※当記事は、2023年6月1日現在のものです

PHOTO &TEXT:『地球の歩き方 島旅 09 隠岐 3訂版』編集担当 永島岳志

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筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

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