乗り継ぎ待ち8時間でイスタンブールを観光する方法

言わずもがなですが、2018年に運用が開始された新しいイスタンブール空港 (IST) のキャパシティーはデカい。

かつて「シルクロード交易、東西の通過点」であったように、改めて、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、中近東地域向け空路の一大拠点として、重要な機能を担っています。最終目的地がトルコ国内ではない場合においても、移動経費を抑えたり、ターキッシュエアラインズ (旧称: トルコ航空) 運航便搭乗への欲求から、イスタンブール経由のフライトを利用される邦人旅行客・出張者も多いでしょう。

イスタンブール空港は新築で大きなポテンシャルが感じられると同時に、突貫工事で事業が進められたという背景もあり、開港からメトロ開通までには数年間を要する結果となりました。残念なことに空港の建設過程では、納期優先のツケを末端の労働者が支払うこととなり、多くの労働者の命が厳しい労働環境・乏しい安全水準の犠牲になったということが当時国内外のメディアで報じられました (参考: Airport Technology, ロイター通信, DW, and HRW )。煌びやかな開発の影に隠れたこのようなストーリーは、私たちが想像するよりも遥かに多くの地に存在しています。旅の過程においては、異国の地での体験を楽しみながらも、このような歴史にも目を向ける機会にしたいところです。

さて、2023年１月に本格的に開通したM11線は市内への最速・最安の選択肢となったため、旅行者にとっても市内中心部へのアクセスは大幅に改善されることとなります。

乗降場所、価格、所要時間等は2023年４月時点の筆者の実体験に基づいています。必ずしも本稿に記載されている条件で、メトロの利用が可能であるということを保証するものではありません。乗り継ぎ便が控えている場合は、外出に伴う充分な時間が確保されていることを航空会社等に確認することを推奨します。また、現地通貨へ両替したり、有料手荷物ロッカーに荷物を預けてしまう前に、メトロの最新の運行状況を確認した上で判断を下されることを推奨します。

乗り継ぎ待ち時間を利用してイスタンブールの観光名所２か所を巡る旅を紹介します。筆者が出張時の乗り継ぎ待ち時間を利用し、複数回に渡り実際に検証をした旅程です。条件は以下のとおりです。

尚、ターキッシュエアラインズの正規航空券を購入された場合は、無料でイスタンブール空港発着の市内観光ツアーに参加することが可能です (諸条件あり)。本稿は「到着便と出発便の運航会社が異なり、待ち時間に自力で市内に出られることを検討されている方」や「敷かれた線路から逸脱することを好まれる方」を対象者として想定しています。

イスタンブール空港に着陸後、入国手続きを終えて荷物をピックアップすると１階の到着ロビーに到着します。向かって右手 (バーガーキングのある方向) 側に延びる通路をつきあたり付近まで進む (図の①参照) と、右手にターキッシュエアラインズの無料観光ツアーやホテルを手配してくれるデスクがあります。このデスクのすぐ左隣には荷物預かりデスクがあります。筆者はこちらのサービスを３つの異なる機会に利用しましたが、特段サービスに問題はありませんでした。

2023年の利用料は以下のとおりです (2023年８月時点)。「中」が機内持ち込み荷物のサイズ、「大」が受託手荷物のサイズで、いずれも24時間利用時の料金です。荷物を預けた後は、到着ゲート付近まで引き返し、11番出入口から建物の外に出ましょう (図の②を参照)。そのまま約300m、到着ゲートを背に真っすぐ直進するとメトロの駅に到着します。

荷物一時預かりサービスの料金は空港の公式ウェブサイトに掲載されておりますので、ご確認ください。

駅は広大で、メトロの発着駅は最下層にあります。

改札口の反対側に券売機が設置されているので、事前に料金の支払いを行います。筆者は50リラ (約274円) でイスタンブール・カードを1枚購入し、少額紙幣を複数回に渡りチャージしながらメトロを利用しました。券売機の操作には英語の他、日本語の選択も可能です (2023年８月時点)。

券売機は度々故障に見舞われるようで、故障中の機械には張り紙が貼られています (貼られていない場合もあります)。故障中の機械に入金してしまわないよう注意が必要です。

逆方面行きの電車は、現状、次駅の空港施設カーゴ・ターミナル留まりですが、建設が完了したあかつきには更に7駅程に渡り路線が延長されることになります。イスタンブール市内にアクセスする場合はキャウトハーネ (Kâğıthane) 方面に向かう必要があります。

キャウトハーネ (Kâğıthane) 駅に到着し地上階に上がると、乗り換えのためM7線の駅へ移動する必要があります (図の①参照) 。M7線の駅では、向かって左側のエスカレーターでプラットフォームに上がります (図の②参照)。メジデイェキョイ駅 (Mecidiyeköy) 方面に向かう必要がありますので、進行方向をご確認ください (図の③参照)。

イェキョイ (Mecidiyeköy) 駅はキャウトハーネ (Kâğıthane) 駅の2駅先なので、約5分で到着します。駅構内の案内に従い、徒歩でM2線のシシリ＝メジデイェキョイ (Şişli - Mecidiyeköy) 駅を目指しましょう。M2線は緑色です。

無事にM2線のシシリ＝メジデイェキョイ (Şişli Mecidiyeköy) 駅に辿り着いたら、イェニカプ (Yenikapı) 方面行きの電車に乗車し、ヴェズネジレル (Vezneciler) 駅まで約20分間電車に揺られます。

ヴェズネジレル (Vezneciler) 駅から地上に上がると、突然地元感の溢れる街並みの中に浮上するので、方向感覚を養うのがやや難しいかもしれません。地上に足をつけたら、道路を挟んで広がる小さな広場とは逆方向に進路を定め、「Chef Murad」という看板を掲げる飲食店が面した通りを下りましょう。270mほど通りを南下し (図の①参照)、左折すると、車道の真ん中に路面電車の駅があります。進行方向は東ですので、黄色の矢印側の停留所から乗車します (図の②参照)。

1区間の乗車でグランド・バザール (Beyazıt-Kapalıçarşı) 駅にて降車します。徒歩で臨む場合の最短距離は約1kmで所要時間は約10分です (図の③参照)。

グランド・バザールは価格交渉スキルの見せ所です。商人は観光客を相手にしたビジネスに精通しているので、真にお得な買い物をすることは至難の業です。こちらの言い値を容易に明かさず、お目当ての商品の相場をしっかりと見極めてから交渉に入りましょう。

グランド・バザール (Beyazıt-Kapalıçarşı) 駅から東に真っすぐ進みます。道の両脇に岩のドーム状の建物が建っているT字路を右折し、そのまま道沿いに真っすぐ進むと、間もなくオベリスクがそびえ立つ広場とモスクが見えてきます。

往路 (観光を含む): 3時間30分

復路: 1時間30分

年々悪化するイスタンブールの交通渋滞は2021年には、世界最悪 (Source: TomTom Traffic Index) という不名誉な称号を授かりました。バスでの移動には、これによる重大な遅延のリスクが伴いますが、メトロは比較的定時運行が成されているため、乗り継ぎ便がある場合にも安心です。今回の旅程案では空港から目的地まで片道約90分を要するため、「気軽さ」の範囲をやや超えていると感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、「せっかくだから中継都市も散策してみたい！」という旅好きの皆さまに置かれましては、滞在時間に関わらず、メトロを利用したイスタンブールの観光をどうぞご検討ください。