【ラグビーW杯2023】トゥールーズの歩き方(前編) 大野均さんと巡るフランスラグビーの聖地

公開日 : 2023年08月31日
最終更新 :

熱い闘いが期待されるラグビーワールドカップ2023フランス大会(9/8~10/28)。9/10に日本の初戦となるチリ戦、9/28には対サモア戦が行われるフランス南西部の町トゥールーズ。フランスでは「ラグビーの聖地」と呼ばれるトゥールーズを、日本ラグビー界のレジェンドであり、フランス観光親善大使も務める大野均(おおのひとし)さんと巡ります。開催地の魅力を知って、ラグビーW杯を200%楽しみましょう!

ラグビーの聖地「トゥールーズ」ってどんな町?

トゥールーズ空港の「スタッド・トゥール―ザン」オフィシャルショップ
トゥールーズ空港の「スタッド・トゥール―ザン」オフィシャルショップ

ピレネー山脈が背後にそびえるフランス南西部オクシタニー地方の中心都市トゥールーズ。紀元前3世紀からの歴史ある町ですが、現在はエアバスをはじめとする航空産業の中心地であり、10万人以上の学生が集まる学生都市としての顔ももっています。そして何といってもラグビーの町! フランスラグビーの強豪チーム「スタッド・トゥール―ザンStade Toulousain」の本拠地として世界中のラグビーファンから注目されています。

スペイン国境に接しているオクシタニー地方の中心都市トゥールーズ
スペイン国境に接しているオクシタニー地方の中心都市トゥールーズ

パリからトゥールーズまでは飛行機で約1時間15分。トゥールーズ・ブラニャック空港からトゥールーズ・マタビオ駅に隣接するバスターミナルまではシャトルバスで20~45分で到着します。旧市街に降り立つと目に入ってくるのがれんが造りの建物。このれんがが夕日に染まると赤く輝いて見えることから、トゥールーズは「バラ色の町」とも呼ばれます。町の中心広場に立つ市庁舎も、赤茶色のれんがと白い石を組み合わせで建てられたもの。外観だけでなく、町の歴史を描いた美しい壁画や天井画が見られる市庁舎2階の大広間は必見です。ちなみに2階のバルコニーからスタッド・トゥールーザンの選手が優勝報告をすることもあり、ヒーローたちの姿をひと目見ようと、広場は地元ファンで埋め尽くされるのだとか。

1760年完成の市庁舎とキャピトル広場。地面に描かれているのはオクシタニー地方のシンボル「オクシタン十字」
1760年完成の市庁舎とキャピトル広場。地面に描かれているのはオクシタニー地方のシンボル「オクシタン十字」
壁画と天井画が見事な市庁舎2階は無料で一般見学可(左) 地元選手が優勝報告した窓から広場を見つめる大野さん(右)
壁画と天井画が見事な市庁舎2階は無料で一般見学可(左) 地元選手が優勝報告した窓から広場を見つめる大野さん(右)

市庁舎 Le Capitole

住所
Pl. du Capitoie, 31000 Toulouse
開館時間
月~土 8:30~19:00、日・祝 10:00~19:00
休館日
1/1、12/25、式典のある日
料金
無料

現地でお会いしたトゥールーズ副市長兼トゥールーズ・メトロポール副議長ジャン=クロード・ダルドレ氏によると「トゥールーズの市民にとってラグビーはオーセンティックであり、他人のために働く精神や共同で何かを成し遂げるというメンタリティが育まれている」のだそう。まさに「One for all All for one」の精神ですね。

ジャン=クロード・ダルドレ副市長(中央)とトゥールーズで日本酒や日本食を広める活動をしているベルティル・ロート氏(左)。ヴィクトール・ユーゴー市場にて
ジャン=クロード・ダルドレ副市長(中央)とトゥールーズで日本酒や日本食を広める活動をしているベルティル・ロート氏(左)。ヴィクトール・ユーゴー市場にて

ちなみにトゥールーズを含むオクシタニー地方は、ワインの産地としても有名で、この日はトゥールーズの台所ともいえるヴィクトール・ユーゴー市場のワインショップで副市長と懇談しました。ですが「実はトゥールーズには200を超えるビール醸造所があり、スポーツ観戦にはやっぱりビール!という人も困ることはないんですよ」とのこと。ワイン党もビール党も仲よく観戦を楽しめそうです。

削りたてを試食させてくれるヴィクトール・ユーゴ―市場の人気生ハム店
削りたてを試食させてくれるヴィクトール・ユーゴ―市場の人気生ハム店

1896年から続くヴィクトール・ユーゴー市場はフランス最古の屋内市場で、生ハムやチーズ、パンやおしゃれなケーキ類など、地元食材を中心に80を超えるお店がひしめき合っています。いつも地元の人でごった返していますが、軽食や立ち飲みができる店もあり、ランチをサッと済ませたいときにもおすすめ。おみやげ探しはもちろん、屋内なので雨の日の散策にもぴったりです。

ヴィクトール・ユーゴー市場 Marché Victor Hugo

住所
Place Victor Hugo, 31000 Toulouse
営業時間
火~日 6:00~14:00
定休日
月・祝

そのほか旧市街には、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路として重要な「サン・セルナン・バジリカ聖堂」や、1200年代後半にドミニコ修道士会が最初に造った修道院「ジャコバン修道院」など歴史的な見どころが点在しています。町を歩いていると目に留まるのが通り名を示したプレート。首都パリではフランス語のみですが、この町では上のプレートはフランス語、下はこの地方の言葉「オック語」で書かれていて、アイデンティティの強さを感じます。

バラ色の町と称されるトゥールーズの町並み(左) 通り名のプレートはフランス語(上)とオック語(下)の2種。ホタテ貝の模様が刻まれた青いプレートは巡礼路の道しるべ
バラ色の町と称されるトゥールーズの町並み(左) 通り名のプレートはフランス語(上)とオック語(下)の2種。ホタテ貝の模様が刻まれた青いプレートは巡礼路の道しるべ

ラグビーW杯2023日本戦が行われるスタジアムへ

1試合で6kgも体重が落ちた因縁のスタジアム
1試合で6kgも体重が落ちた因縁のスタジアム

日本対チリ(9/10)、日本対サモア(9/28)の試合が行われるのが「スタジアム・ド・トゥールーズ」。町を南北に流れるガロンヌ川の中州、グラン・ラミエ島に立っています。市庁舎から車で約10分、徒歩では40分ほど。約33,000人収容できるスタジアムの客席は、スミレの栽培が盛んなトゥールーズにちなんで、紫色がふんだんにあしらわれています。

スミレの紫色がおしゃれな観客席
スミレの紫色がおしゃれな観客席

2007年ラグビーW杯の日本代表としてこのスタジアムで戦った経験のある大野さんによると「観客席とグラウンドの距離が近く一体感が感じられる」そうですが、フィジーと対戦した際には、1試合でなんと6kgも体重が落ち、点滴を受けるほどの消耗だったといいます。残念ながらそのときは31-35で惜敗を喫しましたが、今年はこの場所でどんな熱戦が繰り広げられるのでしょうか。

スタジアム・ド・トゥールーズ Stadium de Toulouse

住所
1 All. Gabriel Biénès, 31000 Toulouse

ラグビーW杯開催都市では各地でファンゾーンと呼ばれる大会公式のイベントスペースが設置されます。パブリックビューイングや飲食ブースが設けられ、世界中から集まるラグビーファンとお祭り気分を楽しめる会場。トゥールーズのファンゾーンは今回のフランス大会開催都市のなかでも最大で、なんと4万人も収容できるそう。町なかにはサポーターのための案内所(Fan Embassy)も作られています。スタジアム観戦のチケットを持っていてもいなくても、ラグビーの聖地で地元ファンと一緒に盛り上がれたら、最高の思い出になるでしょう。

ラグビーファンのための案内所Fan Embassy
ラグビーファンのための案内所Fan Embassy

トライは川へダイブ一択!大盛り上がりの「ウォーターラグビー」観戦

17世紀に架けられた橋ポン・ヌフを望むウォーターラグビーの会場
17世紀に架けられた橋ポン・ヌフを望むウォーターラグビーの会場

2019年からトゥールーズで開催されている「ウォーターラグビー」。ガロンヌ川に浮かべた長さ45m、幅35mの特設グラウンドで戦う水上ラグビーイベントです。四方を水に囲まれた浮島で、ゴールポストの外はすぐ川。トライを決めるには川へダイブするしかありません。スマートに飛び込む選手もいれば、1回転して派手に決めるプレイヤーも。ラグビー界のレジェンドとアマチュアが集い、トライをするたびに会場は大歓声に包まれます。通常は毎年9月に開催されますが、今年はW杯の関係で6月29日~7月2日に催され、最終日のオールスター戦には元フランス代表の選手とともに大野さんがゲスト出場しました。

試合前こちらに気づいて手を振ってくれた大野さん
試合前こちらに気づいて手を振ってくれた大野さん
現役さながらの力強いプレイで会場を沸かせてくれました
現役さながらの力強いプレイで会場を沸かせてくれました
トライ後は自力で川から上がらなければいけないハードなゲーム
トライ後は自力で川から上がらなければいけないハードなゲーム

大会のラストを飾るオールスター戦は、元フランス代表選手も参加して大盛り上がり。どの選手も引退しているとは思えない鍛えられた肉体で水上グラウンドを躍動する姿は迫力満点!出場前は笑顔を見せていた大野さんですが、試合後にお話を伺うと「陸よりもグラウンドが滑りやすく、通常より早く息が上がった」とのこと。「試合前に元フランス代表のセルジュ・ベッツェンから、今日は日本代表みたいにクイックにいくぞ!と声をかけられ、目が笑ってなかったので、あ、本気なんだなと(笑)。試合中もtalk! talk!(声を掛け合え!)と叫んでいて、現役時代を思い出しました」と、楽しみながらも真剣なプレイを見せてくれました。
会場内はグッズやドリンクの販売もあり、お祭りムード。フランスでもここだけで楽しめる特別なイベントなので、開催期間にあわせてトゥールーズを訪れてみるのもいいかもしれません。

「思いのほかガチでした」と笑顔で語る試合後の大野さん
「思いのほかガチでした」と笑顔で語る試合後の大野さん

名物グルメは鴨料理! 夏なら川沿いの青空レストランも

「ボン・ヴィーヴル」の鴨のコンフィは大野さんも絶賛
「ボン・ヴィーヴル」の鴨のコンフィは大野さんも絶賛

ラグビー観戦や町歩きのあとは美食タイム。フランス南西部の内陸ではトリュフやフォワグラ、鴨のコンフィなど、しっかりとした肉料理が名物です。地場の食材にこだわったレストラン「ボン・ヴィーヴル」の鴨のコンフィは、皮はパリっと身はやわらかくしっとり。結構なボリュームですが意外に重くはありません。上の写真のほぼ飲み干している飲み物は、フロック・ド・ガスコーニュ(Le Floc de Gascogne)。アルマニャックというブランデーをブドウジュースで割ったオクシタニー地方のアペリティフ(食前酒)です。ぜひ地元ならではの食材やお酒にもチャレンジしてみてください。

カジュアルな雰囲気の店内で気取らずおなかいっぱいに
カジュアルな雰囲気の店内で気取らずおなかいっぱいに

ボン・ヴィーヴルBon Vivre

住所
15 bis Place du Président Thomas Wilson, 31000 Toulouse
営業時間
月~金11:30~15:00、18:30~23:00、土・日11:30~23:00
休日
無休
ウォーターラグビー期間中は特別提供のビュッフェをいただきました(通常はアラカルトメニュー)
ウォーターラグビー期間中は特別提供のビュッフェをいただきました(通常はアラカルトメニュー)

ウォーターラグビー会場の対岸ではガロンヌ川のほとりで夏季限定の屋外レストラン(フランス語でGuinguetteガンゲット)「ラシーヌ」がオープンしていました。川を渡る風に吹かれながらのんびり過ごしたり、生演奏にあわせて体を揺らしたり、思い思いに過ごせるすてきな空間。夏のトゥールーズに来られる方にはおすすめのスポットです。

ラシーヌ Racines

住所
Pl. Bernard Lange, 31300 Toulouse
営業時間
夏季のみ(6~9月頃)
休日
無休

宿泊は町の中心がおすすめ

「ル・グラントテル・ド・ロペラ」のダブルルーム
「ル・グラントテル・ド・ロペラ」のダブルルーム

ホテルはトゥールーズ・マタビオ駅周辺にも複数ありますが、町の中心に宿泊したほうが観光や食事に出かけるのに便利です。抜群の立地なのが、キャピトル広場に面する「ル・グラントテル・ド・ロペラ」。1909年からホテルとして営業していますが、以前は劇場としても使われていた歴史ある建物です。劇場の面影を残す赤のベロア調で統一された館内は、旅の高揚感を高めてくれます。市庁舎のすぐ横という最高の立地にも関わらず、意外にリーズナブルな料金設定も嬉しいポイント。窓からキャピトル広場が眺められるスイートは3室。

螺旋階段のあるクラシカルな1階ロビー
螺旋階段のあるクラシカルな1階ロビー

ル・グラントテル・ド・ロペラ Le Grand Hôtel de l’Opéra

住所
1, pl. Capitole, 31000 Toulouse
料金
シングル・ダブル€175~(時期により異なる)

おみやげにはラグビーグッズやスミレ&パステル製品も

トゥールーズ空港内のスタッド・トゥール―ザンのショップにはTシャツや帽子など実用アイテムがたくさん
トゥールーズ空港内のスタッド・トゥール―ザンのショップにはTシャツや帽子など実用アイテムがたくさん

ラグビーや飛行機が注目されがちですが、スミレやパステル(アブラナ科の一種)といった可憐な植物もトゥールーズの特産品。上品な香りのスミレは香水やハチミツ、紅茶、キャンディなどに。トリートメントの力が注目されているパステルからは、さまざまなコスメグッズが作られています。町なかのみやげ物店はもちろんトゥールーズの空港でも購入できるので帰国前のショッピングにぜひ。

スミレViolette製品は紫、パステルPastelはブルーが目印(左) エアバスの本拠地で飛行機グッズをゲットするのもいい(右)
スミレViolette製品は紫、パステルPastelはブルーが目印(左) エアバスの本拠地で飛行機グッズをゲットするのもいい(右)

後編ではトゥールーズから足を延ばして訪れたい、絶景尽くしのオクシタニー地方を旅します。

TEXT & PHOTO:地球の歩き方 由良暁世 Akiyo Yura

取材協力
フランス観光開発機構 Atout France www.france.fr/ja
トゥールーズ観光局 Toulouse Tourisme www.toulouse-tourisme.com
オクシタニー地方観光局 Occitanie Tourisme www.tourisme-occitanie.com
東芝ブレイブルーパス東京 Toshiba Brave Lupus Tokoyo www.bravelupus.com

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
(関連記事)https://www.arukikata.co.jp/web/catalog/article/travel-support/

筆者

地球の歩き方書籍編集部

1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。