【スコットランド】ハロウィーンの起源はスコットランド⁈その風習と意味

公開日 : 2023年10月08日
最終更新 :

10月31日はハロウィーンですね。最近では日本でもハロウィーンが若者を中心に定着してきましたが、イメージとしては「仮装」「子供たちがお菓子をもらう」というのが主な、近年流行りの派手なイベントという印象なのではないでしょうか。
またハロウィーンは、アメリカでの収穫祭(キリスト教の万聖節)の前夜祭として行われる仮装パーティーというイメージを持つ人も多いかと思いますが、実はこれ、2000年以上も前からヨーロッパに存在していた宗教的な祭りが起源なんです。
今回はスコットランドにおけるハロウィーンを、その起源と共に紹介していきたいと思います。

ハロウィーンの起源

ハロウィーンの発祥は2000年以上も前、古代ケルト人が行っていた祭礼「サウィン(Samhain)」が起源だと言われています。
サウィンというのは「夏の終わり」を意味し、秋の収穫を祝うと共に、悪霊を追い払う宗教的な行事として、古代ケルト人の暮らしに根付いていたそうです。
ケルトの暦では10月31日は1年の終わりの日です。ケルト人の宗教は自然信仰であり、日本と同じように、自然の中(太陽に、山に、海に、空に。)多くの神が存在すると信じられ、人間は身体は死んでも魂は永遠に生き続ける輪廻転生の考えが普通にありました。
一年の終わりであるその日は現世と来世を分ける境界が弱まる時であり、死者の魂が家族のもとに戻って来る日としても信じられていたそうです(日本でいうお盆のようですね。)。死者の魂と共に悪霊も一緒にやってくると考えられ、その悪霊に人間だと気づかれないように、火を焚いたり仮面を着けたりして身を守ったと言われています。
この風習がハロウィーンの代表的な仮装の起源となったそうです。

この土着信仰がやがてキリスト教と結びつき、キリスト教の諸聖人に祈りを捧げる万聖節の前夜祭として行われるようになったそうです。「Hallow」とは聖人を意味していて、11月1日の万聖節(All Hallows-全ての聖人ー)の前夜である10月31日は「All Hallow's Eve」。これが短くなり、訛って、「Halloween(ハロウィーン)」と言われるようになったそうです。

かぼちゃのランタンと「Trick or Treat」

ハロウィーンが近づくと、かぼちゃにとがった目や大きな口を彫ってランタンを作りますが、これは「ジャック・オー・ランタン」と呼ばれ、ケルト人の文化が根強く残るアイルランドの物語に由来しています。
この物語とは、「悪事ばかり働いていたジャックは、生前自分の魂を狙った悪魔を騙して「自分が死んでも、地獄に落とさない」という契約を結びます。ジャックは死後、生前の行いから天国に行くことはできず、とはいえ悪魔の契約のせいで地獄に行くこともできません。行き場を失ったジャックはくり抜いたカブの中に炭火を灯し、今もこの世をさまよい続けている。」というもの。いまだにさまよい続けるジャックの魂が、家族の魂に紛れて家の中に入ってこないように、怖い顔のかぼちゃのランタンを作って窓際や玄関に飾っているのだそうです。
これ、本当にヨーロッパでは「カブ」で作られていたそうですよ。スコットランドでも収穫できる数はカブの方がかぼちゃよりも圧倒的に多いです。いつの間にかかぼちゃに変わったのは、アメリカではかぼちゃの収穫の方が多かったことと、カブよりもかぼちゃの方が断然くり抜きやすいからだそうです。ちなみにスコットランドでは現在でもカブを使ってランタンを作る人も多いそうですよ。

そしてもうひとつ。ハロウィーンといえば子供たちが仮装して「Trick or Treat」と言いながら近所の家々をノックし、お菓子をもらうのが風習になっています。
子供たちは家族の元へと戻って来る死者の魂に紛れてやってきた悪霊に扮しています。「Trick or Treat」とは、「悪霊にいたずらされたくなければ、お菓子をちょうだい。」という意味です。現在ではチョコレートやキャンディーをあげるのが当たり前になっていますが、昔はお金(コイン)など光るものを渡していたところもあるそうです。

スコットランドではこの「Trick or Treat」は昔は別の形のものでした。子供たちが恐ろしい姿や魔女などに仮装したのは、町をうろつく本物の悪霊たちが子供たちを仲間だと勘違いして、子供たちに危害を与えないためのものだったそうです。子供たちは家の前で「Guising」または「Galoshin」と叫んで悪霊を追い払いました。そして見事に仮装して悪霊をだまし、追い払った子供たちは、大人たちから「よくやった」とご褒美のスイーツやコイン、フルーツをもらったそうです。
これが後々アメリカにわたって、現在の「Treck or Treat」へと変わっていったんですね。

この時期になると色んな種類のかぼちゃが店に並びます。
この時期になると色んな種類のかぼちゃが店に並びます。
Trick or Treat!
Trick or Treat!

現在のスコットランドのハロウィーン

現在ではスコットランドでもハロウィーンの過ごし方は世界と同じ形です。
10月に入ると店には子供たちの仮装の衣装やランタン用のかぼちゃ、Trick or Treat用のスイーツなどが売られ、家々は様々な不気味な飾り付けを始めます。

10月31日当日は近所の子供たちがグループになって近所の家々のドアをノックしながら練り歩き、そのあとは子供たちが集まってパーティーをする、というのが主な一日の流れですね。暗黙のルールとしては、子供たちがノックするのは飾り付けがしてある家のみ、ということ。かぼちゃのランタンが飾ってあったり、電飾であちこちを光らせているのみを訪問することになっているようです。
日本のように若者が仮装して町に集結する、というのはこちらでは見かけないですね。

ハロウィーンのショップディスプレイ
ハロウィーンのショップディスプレイ

まとめと感想

今回はスコットランドにおけるハロウィーンの起源とその意味をまとめてみました。
日本ではその日の本当の意味を知らず、ただ若者たちが仮装してパーティーをしたり、時には暴れまわったり、子供たちが近所の家を練り歩いてお菓子をもらったりする楽しいイベントとして定着していきました。
しかしこのイベントの根底には、一年の終わりと秋の収穫に感謝し、家に戻ってくるご先祖様を迎えつつ、悪霊を払う、という大きな意味があることを知りました。個人的には今までハロウィーンはあまり好みではないイベントでしたが、今回こうしてその意味を知ることで、この日がくるのが楽しみになりました。

スコットランドではこの時期になると冬時間に変わり、夕方3時ごろから暗くなり始めます。薄暗く、寒く、小雨や霧が降る石畳の町並みは、不思議で不気味な雰囲気のハロウィーンにぴったりです。
今年は私もジャック・オー・ランタンを作って、窓辺に飾ろうと思っています。

筆者

イギリス特派員

ベイトマン明子

2023年に引っ越してきたばかりのスコットランドのあちこちを訪れ、皆様に報告できることを楽しみにしています。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。