トルコでイスラム神秘主義に触れる旅。無形文化遺産の「セマー」を見に行こう

公開日 : 2024年03月08日
最終更新 :

白い衣装に身を包み、くるくると回り続ける男性たち。イスラム神秘主義の一派、メヴレヴィー教団のセマー儀式です。ユネスコ無形文化遺産に登録されたこの儀式は、毎年12月17日を最終日とする10日間、トルコ国内で盛大に催されます。筆者は2023年12月で750回目を迎えた特別な儀式に参加してきました。今回は参加レポートを通して、王道のトルコ旅から一歩進んだ、イスラム文化に触れられる特別な旅をご提案します!

メヴレヴィー教団によるセマーとは?

神秘的な音楽とともに踊るセマー。子供の踊り手も
神秘的な音楽とともに踊るセマー。子供の踊り手も

冒頭で触れたセマー儀式(以下、セマーと表記)とは、イスラム神秘主義(スーフィズム)の一派、メヴレヴィー教団による旋回舞踊の儀式。13世紀に、首都アンカラから約250kmのコンヤという街で教団を設立したメヴラーナ・ジェラーレッディン・ルーミーの教えを表しています。

旋回舞踊という名の通り、セマーでは白い装束を来た踊り手(セマーゼン)が左足を軸にして右足でくるくると回り続けます。この行為は宗教的・精神的な意味合いを持っており、回ることで一種のトランス状態になることによって神との一体感を追求しているのです。また、回転は神(イスラム教の唯一神、アッラー)を象徴するため、半回転は「アッ」、もう半回転は「ラー」を表しています。

右手を上に、左手を下に向けているのは、右手で神からの啓示や導きを受け取り、左手で地上の人々にそれらを与えることを象徴しているからです。

セマーを踊るメヴラーナ(画像中央の人物)
パノラマ博物館 セマーを踊るメヴラーナ(画像中央の人物)

メヴレヴィー教団の設立者、メヴラーナ・ジェラーレッディン・ルーミーは、1207年にベルフ(アフガニスタン北部)で生まれ、1273年にコンヤで亡くなった学者・イスラム神秘主義者です。

逝去してから750年以上経っているにも関わらず、メヴラーナ、またはルーミーという愛称で世界中の人々から愛され続けています。コンヤ市内にあるメヴラーナ博物館にはメヴラーナが眠る棺があり、今でも多くの人々が足を運んでいます。

メヴラーナ博物館内にあるメヴラーナの棺(画像中央)。多くの人が訪れ常に混雑している
メヴラーナ博物館内にあるメヴラーナの棺(画像中央)。多くの人が訪れ常に混雑している

メヴラーナがこれほど多くの人々に愛されているのには、彼の思想が大きく影響しています。メヴラーナはイスラム神秘主義者でしたが、誰がどんな宗教を信仰し、どんな思想を持っていても平等に助言を与えました。彼が残した数々の詩は今も人々に勇気を与え、多くのアーティスト、たとえば歌手のマドンナも彼がつくった詩に感化され楽曲を制作したといわれています。

メヴラーナは亡くなるとき、神の愛に触れ、そして神と預言者ムハンマドのもとへと還ったといわれていることから、命日の12月17日は「婚礼の夜(shab-i arus)」と呼ばれ、毎年セマーによって祝われているのです。

セマーを見た感想

今回、筆者は2023年12月17日、メヴラーナが亡くなって750回目の命日である特別な日にセマーを見に行くことができました。場所はコンヤ市内のメヴラーナ文化センター。開演時間が近づくにつれ、人がどんどん集まってきます。特別な日だからか、開演前から厳かな雰囲気が漂っていました。

19:00になるとトルコの政府関係者によるスピーチが始まりました。スピーチが終わると神秘的な音楽とともに黒いローブを身にまとった踊り手であるセマーゼンたちが舞台に現れ、会場の空気が変わります。

セマーが行われる会場。ずらりと並ぶセマーゼンたち
セマーが行われる会場。ずらりと並ぶセマーゼンたち

並び終わると、セマーゼンたちはいっせいに黒のローブを脱ぎ捨てて白い装束姿となります。このローブを脱ぐ行為は、物質的な束縛から解放と霊的な世界へ入り込むことを意味しています。

準備ができると、会場左手のセマーゼンからひとりずつくるくると回転を始めます。会場全体を覆い尽くすセマーゼンたちによる儀式は神秘的な美しさがあり、この独特な世界に引き込まれていきます。

また今回は、会場の指定座席からだけでなく、特別に舞台の端まで降りて目の前で儀式を見ることもできました。近くで見てみると、舞台の上から見た際の美しさとは対照的に、荒々しさと迫力も感じました。セマーゼンたちは神との一体感を追求し、回ることでトランス状態に陥っているので、回りながら声をあげたりうなったりするのです。ずっと見ていると、その独特な雰囲気に飲まれてしまうような感覚に陥りました。

動画で見ても神秘さを感じることができますが、実際に見てみると美しさと圧倒的な迫力を体感でき、感動もひとしおです。セマーを見てみたい!という方は、ぜひコンヤを訪れることをおすすめします。

筆者

地球の歩き方 永倉

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