四季折々の田舎・夏 2
夏になると、田舎のウォーキングの途上に見かける石造りのコテージの門口や庭先が色とりどりの花で飾られます。
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北イングランドからスコットランドにかけてのムーアと呼ばれる荒野に自生する背の低いへザーのブッシュは、秋から春のあいだは茶色く枯れて、荒野の風景をいっそう寒々としたものにしているのですが、年に一度、夏のさかりに開花し、赤紫のカーペーット広げたように丘一面をおおいつくします。
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ヘザーは、ヒースと呼ばれることもあって、世界の名作のひとつに数えられるエミリー・ブロンテ作の「嵐が丘」の主人公ヒースクリフの名前は、この植物ヒースにちなんで名づけられたとされています。
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麦畑では、青々としていた麦の穂が秋の収穫にむけて、じょじょに小麦色に変わりつつあります。そんな小麦の海原をキャンバスにして、ちょっと悪戯しかけてやろうと思いたったエイリアンか、エイリアンを装った悪戯小僧が、イギリスの麦畑には出没するようなのであります。
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夏も終わりに近づくと、自然は、新たにやってくる季節の準備をはじめます。
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長い夏の日は、はるかに北よりの西の空を焦がして没していきます。
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けれども、だれにも止めることのできない季節の移ろいの中で、
その夕焼け空は、日ごとにゆっくりゆっくりと真西へ移動していくのです。
まるで行こうとする夏を名残り惜しむかのように切ない色に燃えたちながら……。
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