オベリスク、立てるのは大変なの!ローマの13本のリアルなエジプトのオベリスク。

公開日 : 2013年11月23日
最終更新 :

世界に古代のオベリスクが27本現存しているのですが、そのうち13本はなんとローマに立ってます。

7本はご本家エジプトにまだあるので、13本とはずいぶんたくさん持って来ちゃいましたねぇ。

今日は13本の中で一番背が高くて(高さは世界一!)、しかも一番古いオベリスクをご紹介したいと思います。

DSCN2871.JPG

ローマの13本のオベリスクは、ローマ皇帝アウグストゥス帝の時代(紀元前10年)からコンスタンティウス2世 (357年)の間にせっせとローマに運ばれてきました。

そのうち7本は確実にエジプトで掘り出したものです。

ローマが征服したエジプトからの戦利品とも言えますが、この頃、空前のエジプトブーム(?)で、エジプトおたくが帝国内の上層部にいっぱいいたので、素敵だな~と思って持ってきたというわけです。(ローマはエジプトを征服したけれど、文化はエジプトに征服されたと言われることに・・・)

13本のうち、残りの6本は古代ローマ人が真似して作ってみました。(けっこう上手)

戦地エジプトで初めて見るオベリスクが、古代ローマ人にはとっても魅力的なものに見えたのかもしれません。

さて、どうやってローマまで持ってきたのでしょうか?

1本の長さは20メートル前後、石なので重量は何百トンもあります。 アフリカの象の背中に乗せて歩かせた説、大きなクジラを何匹もつなげてその背中に乗せて泳いでもらった説など色々あります。(クジラも溺れるほど重いと思います)

エジプトからだと海を渡るのですが、オベリスクを分断せずに丸ごと持ってこれるように、オベリスク専用の巨大舟を作ったそうです。 イタリア半島に上陸するとオベリスクは横にしてひきずってローマまで持ってきたのはいいのですが、これを立てるのがとても難しいのです。とっても重いですから。

中にはエジプトから運んでくる長旅の途中にぶつけてヒビが入ったり欠けたりして、途中で駄目になって見捨てられたものもたくさんあったようで、後世に結構な数が土の中に埋まっているところを発見されました。

DSCN9278.JPG

この13本のうち4本はローマ教皇シクストゥス5世が1586~1589年の間に "ローマの町をきれいに整備しよう計画"の中で、主要な大聖堂や広場に目印の為に立てられました。

今日皆さんが観光して主要な広場で見られるものは彼が立てたものです。

いずれも頂点のところにキリスト教のシンボルとして、十字架などがとりつけられています。エジプトのものそのまま(異教)というわけにはいかないですものね~。

彼が立てた有名なものに、ヴァティカン市国にあるサン・ピエトロ寺院の前の広場の1本があります。当時、立てるのがどんなに大変だったかこんな面白い話があります。

サン・ピエトロ寺院の前にも、オベリスクを立てることにしたシクストゥス 5世は、当時一番の腕利きとされた建築家フォンターナに頼みました。

このオベリスクは長さが25メートル、重さは350トンもあり、横になっているものを縦にするのには思った以上に難航していました。 建築家は色々計算を巡らすと、オベリスクにロープをかけて、どうやら800人と140匹の馬でひっぱればなんとか立て起こせそうです。

起こす途中、オベリスクは一歩間違えば弾みで向こう側に倒れてしまうこともあり、また突然ロープが切れたりして下敷きになって即死する事故も多発していて、予断も許されない状況にありました。

この時、周りで見物する人が"あっ!"と一言叫ぶと死刑(絞首刑)ということでしたので、近くを通る人も工事の邪魔をしないようにと、息もできないくらいの緊張です。

さて、そろりそろりとオベリスクが立ちはじめ、あと少しで真っ直ぐに立つという時、結んでいたロープがゆるみはじめました。大変です!ロープはつるつるとした石の表面を滑って、オベリスクがまたゆっくりと地面に叩きつけられつつある、危機的な状況になりました。

"あ~これじゃ駄目だ倒れるぞ、逃げろ!"と引っぱっていた作業員さんもみんな思っていたと思います。

(恐怖と緊張のあまり)し~んと静まり返っていたところに、(死刑も覚悟で)ジェノヴァ方言で一人の男が怒鳴ります。"な~にやってんだ~縄に水をかけろぉ!"と。

建築家フォンターナは訳もわからず、地面に倒れそうになっているオベリスクを縛っているロープめがけて水を放ちます。 するとなんと緩みかけていたロープがきゅっとしまったのです。そして、オベリスクを再度真っ直ぐに立て直すことに成功、難しい作業はうまくいったのでした。

この男は実は船長で、ジェノヴァ付近で漁業に携わっており、自身の経験から麻縄は水をぶっかけるとしまることを知っていたのでした。

この後、男はすぐに逮捕されましたが、シクストゥス5世によって恩赦となったのでした。

この"水をかけろぉ!"という言葉は、今日でも、どうしようもない程難しい問題に直面した時に、勇気を出させる為にも使われます。

DSCN1117.JPG

↑ ローマで一番高いオベリスクで約32メートルあります。(世界一の高さ)

びっくりするのはその古さで、紀元前15世紀の古代エジプトのファラオ、トトメス3世時代にエジプトで作られたものです。サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂前にあります。これもシクストゥス 5世とフォンターナのコンビが立てたもの。きちんと台座の上にのってます。台座には建築家フォンターナのサインもあり。

DSCN9275.JPG

↑ 美しい象形文字がまさにエジプト的。綺麗なままで残っています。エジプトまで行かなくても見れます。

DSCN9279.JPG

↑ 実はエジプト文化も楽しめるローマです。それではまた!

筆者

イタリア特派員

阿部 美寿穂

ローマからイタリアの日常やイタリア旅行に役立つ情報などをお送りしています。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。