ドイツ最古の帽子屋さん「Hutkönig」
最古というのも良い響きですが、ドイツで紳士物、婦人物の帽子作りのマイスターといえば唯一この人、ヌスラン氏。
でも今日このヌスラン氏とお話して思ったのは、最古というより、唯一本物の帽子屋さんと言い換えた方が良いような気がしました。
とっても気さくに楽しくお話しされるヌスラン氏。彼が帽子作りが大好きで、というのは事前に勉強して知ってはいたのですが、本当それがお話を聞いていて伝わってくるんです。
1つの帽子を作るのに4時間。70工程もの作業。それを楽しそうに、誇りをもって説明してくれる、本物の職人さんです。
2019年3月に改装後のお店について私もこちらで紹介しておりますが、コロナがレーゲンスブルクにやってきた二日前に改装が完成したばかりだった、とのこと。
その後、改装したお店の一角に、帽子製作を観光客に紹介するための設備を設けたそうです。
実際の作業現場は旧市街から北東に5kmほどのところだそうですが、観光客のためのショーをしてくれるのだそうです。
普通、所要時間30分ほどですが、今回は私達3名のためのショーでしたので、ざっくばらんな会話をしながら50分近くもお話しをしてくださいました。
ドイツ語でネット上検索すると、かなり詳しくお店の歴史などを知ることができますが、実際にお話を聞くと、ヌスラン氏のお人柄も伝わってきます。
私も前日に予習をしていたので、気になったところを質問しつつ、とても楽しいお話を聞くことができました。
実はこの帽子屋さん、1875年から続く歴史あるお店で、家族経営4代目です。ただ、現在のアンドレアス・ヌスラン氏の後を継ぐ後継者はいないとのこと。
それでは、その後はどうなるの?という質問に対しては、お店はアイスクリーム屋さんになってしまうかな、とおとぼけの回答が。
ヌスラン氏のお話によると、このお店には3つの幸運があった、とのこと。
その一 戦火を逃れた
現在のお店は、レーゲンスブルクの大聖堂のすぐ向かいにあります。戦時中も戦火から逃れたのは大きな幸運でした。
もし爆撃を受けていたなら、帽子を作るための木型(現在の価値だと1つ6万円くらいする)が全て焼けてしまっていたからです。
店の隅々には、このように(↑)さまざまなサイズの帽子の在庫がぎっしり積まれています。
その二 先祖代々築き上げた地盤があった
現在4代目。帽子職人として仕事をするには、非常に膨大な資金が必要になるのですが、すべて引き継ぐことができました。
木型もそうですが、フェルトを切るための鋏なども少なくともお爺さん世代からのもの。
木型も高いものですから、ものすごい何千何万という数の(数も本当は教えてくれていたのですが、私は通訳のお仕事だったのでメモることが出来ず・・・)木型を所有するには、ものすごいお金が必要ということですよね。だって、同じ型でも、1cm単位で違う型が必要だそうですから。
今、何もないところから帽子職人になぞなれない、とヌスラン氏は語ります。さらに、彼には後継がいないので、このお店はその後絶えてしまうとのこと。
その三 雑誌が顧客層を広げてくれた(1995年)
実はそれ以前も1986年から地元の新聞やラジオに取り上げられていたようですが、世界中に読者をもつプレイボーイが取り上げてくれたことで、火がついたようです。
100km圏内が顧客だったのが、これをきっかけに、世界中に知られることになったわけですから、雑誌の力がいかに大きかったかが分かります。ちなみに、日本のテレビでも2011年に報道されたようです。
教皇からプレイボーイまで、と言う謳い文句もありますが、それはローマ教皇の帽子を作るかと思えば、かの有名な雑誌、「プレイボーイ」でも紹介された、ということ。
(私も「プレイボーイ」に記事書いたことありますけど!グラビアじゃないでうすよ、うふふっ!)
このヌスラン氏、とってもダンディーな方です。葉巻タバコをくわえて帽子を斜めに被り、キメるあのポーズ。プレイボーイの取材時に被っていた帽子、その後も非常に人気が高いそうです。
ヌスラン氏のお話で興味深いことは、いくつもありましたが、時代ごとの帽子の流行の変化について、また身長が高いかどうかでも似合う帽子に差があるとか。男性は一度このお店で帽子を買えば30年は買ってくれない、とか(だって、品質が良すぎて、新しいものを買い替える必要がないんですもの)。
ヌスラン氏は、職人技をオーストリアで学ばれています。3年帽子作り、1年素材について。
羊の毛よりうさぎの毛の方が高い、とか、どれだけの量の毛が一つの帽子に必要だとか、なぜ高価なのか、そして高価な帽子は安価なものとどう違うか。
そんな具体的な話を聞いていくと、私たち素人が帽子の魅力に惹かれていくのです。
水と熱、水と熱、とにかく蒸気をたくさん使いながらのお仕事は、特に真夏は大変なものでしょう。
熱い素材を素手で操るヌスラン氏。職人の手って、一体どうなんだろう?直接伺って見せてもらおうと思っていたけど、すっかり忘れてしまいました。
今考えてみると、お会いして挨拶したときに、そういえば握手したなぁ。あのとき、普通の大きな手だったな、と改めて思います。
もっと皮の厚い手かと思ったら・・・
店内でのデモンストレーションは随時なされているわけではありません。そして実は私も今回初めてそんな体験ができることを知りました。
私も(仕事の影響もあり)ここの帽子をいくつか持っていますが、改めてこの帽子屋さんのファンになりました。
店員さんも、とっても親切。
そうそう、メガネをかけたブロンドの長い髪を一つにくくり、メガネや帽子のリボンと腕時計のカラーコーディネートができている、清楚で賢そうな女性を見かけたら、きっとメラニーさんだと思います。彼女がここの帽子の飾り付けを全て担当されているそうですよ。
Der Hutmacher am Dom GmbH & Co. KG
住所: Krauterermarkt 1
営業時間: 月〜金曜日 10.00〜17.00、土曜日 10.00〜16.00
公式ホームページ: https://www.hutkoenig.de
Facebook: https://www.facebook.com/hutkoenig/
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