いまが見頃!英「ロココ・ガーデン」で愛でるスノードロップ

公開日 : 2023年02月19日
最終更新 :

毎年この時期になるとイギリスでは、「待雪草」、「雪のしずく」とも呼ばれるスノードロップが見頃になります。まだ寒い頃からうつむいた白いベル型の花を咲かせ、春の訪れを告げるシンボルとされています。日本では2〜3月が開花時期のようですが、季節がひと月早いこちらイギリスでは1〜2月がベストシーズンです。

その姿をひと目見ようと例年、各地の見どころスポットに観光客が多く集まりますが、南コッツウォルズ地方の「ロココ・ガーデン(Painswick Rococo Garden)」もそのうちのひとつ。

ロココ調とは

受付でもらったパンフレットによると、施設の名前にある「ロココ」とは1700年代にフランスとイタリアで発祥した建築と装飾美術の様式で、C字やS字のいわゆる“ネコ脚”と呼ばれるような曲線や精巧な装飾、直線と曲線が入り混じるアシンメトリー(不均整)が特徴です。

英国式庭園のデザインにも、1740年〜1770年の間にこのロココ調が取り入れられ、小径や花畑、庭園建築やそのほかの構成に反映されました。その多くは小規模であったため、にわか成金や小金持ちが箱庭のようにして作るのに最適でした。

ロココ・ガーデンもちょうどその頃、1748年にHyett家の屋敷である、ペインズウィック・ハウスの客人をもてなすために作られました。イタリア発祥のバロック様式の流れを引き継いで生まれた、欧州大陸の風を感じるスタイルです。

各様式を学べる建築物めぐり

庭園内には、各所にこのロココ調のあずまやや教会のような歴史的建物があるので、それらを周りながら植物を愛でるのがよさそうです。

どこから始めるかは自由ですが、今回は庭全体を一望したあと、左回りに歩くことにしました。まず始めに現れるのは1700年代に建てられたという「ワシの家(Eagle House)」。新しくきれいに見えるのは、上部の建物が1980年代に追加で作られたものだからだそうです。

なかにはイギリスの駅舎や観光施設でもよく見かける、無人書店がありました。値段が書かれている場合はその値段分を、なにもない場合は自分の好きな価格を設定して、設置されている箱にお金を投入する仕組みです。こちらでは、集まったお金は庭の維持費に充てられるそうです。

突き当たりにはなぜかゴシック調のあずまやが。ゴシック調は華やかで曲線美が特徴のロココ調とは逆に、直線的で無骨な感じだそうですが、写真のとおりたしかにそれは、ワシの家がエンジ色と白が基調でかわいらしい造りなのとは真逆のデザインでした。コンクリートがむき出しで四角い飾り屋根がついてはいますが、休憩所としての実用性が目立ちました。

スノードロップ畑と写真映えスポット

お目当てのスノードロップ群は、庭園の中心に向かって戻るエリアに広がっていました。スノードロップは一般家庭の花壇や、近所の公園でも見られる庶民的な花です。けれども、こういった大きな庭園で、敷き詰められたカーペットのような大群を見るのは格別です。

写真のような木々の間だけでなく、ロココ調建物をバックにしても可憐な白が映えてきれいです。中央に位置する「白鳥池(Swan Pond)」を通り抜けると、イギリスの夏の風物詩、サマー・シアター(屋外でする演劇)が開けそうな半円型の「エクセドラ(Exedra)」が、さらにその奥にはチャペルにもなる「紅の家(Red House)」があります。

どちらも結婚式やパーティーなどで写真映えする、ロココ調のかわいらしさが全開の建物です。特に紅の家の前は白鳥池の方までつながる一直線の芝が敷かれており、ここをバージンロードとして歩けばさぞかし素敵な写真が撮れることでしょう。

ほかに、この季節はぬかりみのため立ち入り禁止になっていましたが、エクセドラ前の「キッチン・ガーデン」や、庭園外の丘陵や屋外迷路、ワシの家を遠くに見渡せる展望ビューポイント、「ハトの家」もあります。

地元民に愛される憩いの場

施設内の看板にも書かれていますが、庭園内の道は土なので冬場のこの頃は泥だらけになる箇所があり、注意が必要です。年間パスを持つ地元客のような人たちは慣れたもので、しっかりと長靴を履き完全装備でした。この時期に訪れる際は、ブーツや汚れてもよいスニーカーなどで行くことをおすすめします。

庭園散策を終えマットで泥を落としていると、閉園間近だというのに「もう咲いたかなと思って、ちょっとスノードロップの確認に来たの」と、いかにも近所に住んでいそうな老夫婦がスタッフと親しげに話をしていました。ロココ・ガーデンの公式SNSサイトにある投稿にも、「ウチの子たちを連れて行くわ!」「待ちきれない!」といったコメントが多く寄せられ、地元住民にはとりわけ地域の庭として親しまれていそうです。

1950年代には、まるでジャングルのように荒れ果てていたといわれるこちらの庭園。幸いにも1748年に庭園所有者のHyett氏が、地元アーティストのトーマス・ロビンズに描かせたものが残っていたので、1970年代から度重なる改装を経て現在の形まで再現することができたそうです。

入園料や寄付は今後も庭園を維持していくための重要な資金となるので、冬だけでなく、これから暖かくなる春やほかの季節にも、旬の花を愛でに足を運んでみてはいかがでしょう。季節ごとに異なる開園時間や開花状況については、下記のウェブサイトを確認ください。なお、1〜2月はピークシーズンのため、オンライン予約は必須です。

◼️
ロココ・ガーデン(Painswick Rococo Garden
・住所
Painswick Glos GL6 6TH
・アクセス
電車Stroud駅
・開園時間
(2月まで)毎日10:00〜17:00(最終入場時間16時)
・入園料
大人£10.5、小人(4〜16才)£4.9、家族割£27.25

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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