卵やウサギのチョコだけじゃない!イースターに欠かせない各国のお菓子
春の訪れとともにやって来るイースター。最近は日本でも、ウサギをモチーフにしたチョコレートや中に小さなお菓子やおもちゃが入ったエッグチョコなどを店頭で見かけるようになりました。が、実はイースタースイーツといっても各国によってさまざま。今回は、地球の歩き方『世界のお菓子図鑑』でも特集している祝祭菓子のなかから、イースターにまつわるお菓子をいくつかご紹介します。
イースターとは?
復活祭とも呼ばれ、十字架にかけられたイエス・キリストが3日目に復活したことを祝うイースター。その名は古代ゲルマン神話の春の女神エオストレに由来するとされ、春の訪れを祝う行事としても定着しています。
春分の日のあとの最初の満月の次の日曜日と定められているため、クリスマスなどと違って毎年日付が変動。キリスト教徒にとっては一年で最も重要な日のひとつで、イベントに参加したり家族や友人が家に集まって皆でごちそうを食べます。
そんなイースターのお祝いに欠かせないのが、デザートやスイーツ。伝統的にイースター前の四旬節(40日間)は肉、乳製品、卵などを食べることが禁じられているため、断食明けのイースターには、卵やバター、牛乳などをたっぷり使ったお菓子が多く登場します。
アニョー・パスカル(フランス)
ドイツとスイスに国境を接するフランス・アルザス地方では、アニョー・パスカルと呼ばれる子羊の形をしたケーキを食べます。フランス語でアニョーとは「羊」、パスカルとは「復活祭」の意味。聖書の出エジプト記に由来するユダヤ教の春の行事「過ぎ越しの祭り」で、生け贄として子羊を食べていた習慣に由来すると言われています。
ふわふわとした軽い食感が特徴のスポンジ菓子で、表面には粉砂糖が振りかかっているのが一般的。この独特の形はアルザス地方のスフレンハイム村名産の専用の陶器を使って焼き上げます。
シムネル・ケーキ(イギリス/アイルランド)
イギリスやアイルランドでイースターケーキと言えば、表面にピンポン玉のような飾りがのったシムネルケーキが定番。ドライフルーツや柑橘類の果皮、砂糖漬けなどがたっぷり入ったフルーツケーキで、表面はシート状に薄く伸ばしたマジパンで覆われています。その上を飾るのは、“復活”のシンボルである卵に見立てたマジパンボール。11個並べ、イエス・キリストの12弟子のうち裏切り者のユダを除いた11人を表しています。
現在ではイースター定番のお菓子として知られていますが、実はもともと「マザリング・サンデー(母の日)」にちなんだ伝統菓子。イースター3週間前のこの日、故郷の教会(マザリング・チャーチ)を訪れる習慣があり、家を離れて働きに出ていた娘たちが母親への手土産として焼いて持ち帰ったものが起源とも言われています。
コロンバ(イタリア)
イタリアでは、イースターが近づくとお菓子やパン屋にハトの形をした菓子パンがずらりと並びます。コロンバとは、イタリア語で「ハト」の意味。復活や平和のシンボルで、幸せを告げる鳥とも言われています。
クリスマス定番の伝統菓子であるパネットーネの生地をハトに模して焼いたもので、近年ではチョコレートやクリームなどが入ったものが登場するなど、バリエーションも豊富。バターと卵をたっぷり使った生地にパネットーネ種という天然酵母を加え、何度も発酵を繰り返してから焼き上げたもので、なかにはラム酒に漬けたドライフルーツや柑橘類の果皮などが入っています。
マズレック(ポーランド)
ポーランドのイースターに欠かせないのは、ポーランドの民族舞踊・舞曲「マズルカ」(ポーランド語でマズレック)の名がついたマズレック。クッキー生地の上にクリームやジャムをたっぷりと塗り、ドライフルーツやナッツなどで飾り付けた見た目も楽しい伝統菓子です。
生地や形、フィリングは家庭によってもさまざまですが、表面に木の芽や花といった春の訪れを感じさせるデザインが施されているのが特徴。初心者でも比較的簡単に作れることから、毎年デコレーションを楽しみながら作る人が多いのだそうです。作り方は『世界のお菓子図鑑』でも紹介しているので、ぜひ挑戦してみてください!
チュレキ(ギリシャ)
ギリシャ正教徒にとって、イースターは一年で最も重要な日。イースター前の40日間、特にイースターを迎える聖週間はキリストの苦しみを分かち合うため、今でも多くの人々が動物性食品を控えます。期間中、教会を中心にさまざまな儀式が行われ、土曜日の夜の12時、キリストの復活を告げる鐘の音とともに盛大な晩餐会が開かれます。
そんな祝宴に欠かせないのが、チュレキと呼ばれる小麦粉ベースの生地を焼いた甘いパン。チェリーの種の中の「仁(じん)」で風味付けされた独特の香りが特徴的で、表面にはキリストの血(赤色)と復活(卵)を象徴する真っ赤に染められたイースターエッグが埋め込まれています。
マンミ(フィンランド)
イースターには子供たちが魔女やウサギの恰好をして近所の家々をまわり、幸せと健康を祈るお返しにお菓子をもらうといったハロウィンのような習慣があるフィンランド。街なかは、春の訪れを祝う花やイースターのシンボルである卵やヒヨコ、ウサギなどのディスプレーで彩られます。
この時期になるとエッグチョコなどのお菓子が一斉に店頭に並ぶのは他の西洋諸国と同様ですが、それらに混じって登場するのが見た目も奇抜なマンミと呼ばれるデザート。ライ麦の粉にモルト(麦芽)を混ぜて発酵させ、オレンジピールや濃いシロップなどを加えて焼き上げたもので、独特の酸味とザラザラとした食感が特徴。冷やしてから通常、クリームや牛乳、アイスクリームなどをかけて食べます。
『世界のお菓子図鑑』で世界のイースターを楽しもう!
春の訪れを告げるイースター。最近では、日本でもイースターにちなんだお菓子が店頭に並び、パーティーやピクニックを行う人々も増えてきました。世界113の国と地域、そして日本全国47都道府県のお菓子を網羅した旅の図鑑シリーズ『世界のお菓子図鑑』では、そんな祝祭菓子を多数紹介! 歴史的背景や文化、各国の慣習についても解説しています。誰をも幸せな気分にしてくれるお菓子とともに、世界各国のイースターをぜひ体感してみてください!
TEXT:竹内あや
PHOTO:iStock
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