コロンビアで知られざる湯滝を発見!豪快な野湯「セタキラの湯滝」
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公開日 : 2024年04月01日
最終更新 :
筆者 : 鈴木浩大

地元の人たちと「チチャ」で一服

このくらい離れた場所がちょうど適温。地元の家族の皆さんはここでのんびりと過ごすという
このくらい離れた場所がちょうど適温。地元の家族の皆さんはここでのんびりと過ごすという

地元の人たちは少し下流の、温泉が川の水と混ざって適温になる場所に石組みの露天風呂を作って、入浴を楽しんでいるようです。聞いてみると、近隣からお弁当持参で来たとのこと。

確認する間もなく、紙コップに注いでしまい、チチャを断るすべはない
確認する間もなく、紙コップに注いでしまい、チチャを断るすべはない

「日本から来た」と伝えるととても喜んでくれ、「一緒に入ろう」と誘ってくれました。砂地で深い浴槽は作れないので、半身浴が精一杯。ですが皆さん満足そうで、私もはるばるやってきた達成感に包まれました。

歓迎の印に自家製の発酵酒もすすめてくれます。とうもろこしを発酵させた「チチャ」というドブロクのような酒で、南米ではインカ帝国の時代から広く飲まれているとのこと。

一瞬ひるみましたが、同行したガイドさんも「断れる状況ではない」というので、ありがたく頂戴しました。顔がこわばらないように注意しながら作り笑顔でひと口飲んでみると、ドロッとした白い液体は、酸味の強い甘酒のような感じ。アルコール感はほとんどなく、頑張れば飲み干せそうな味でしたが、旅は始まったばかりなのに、お腹を壊さないかが心配です。

見かねた歴戦のガイドさんが残りを一気に飲み、「おいしい」とカップを返してくれました。後で聞くと、「昔は唾液で発酵させていたが、今はさすがにやってない」とのこと。飲む前に聞かなくてよかったと心底思いました。

下流側へ行くほどぬるくなり、35~38℃くらいの即席露天風呂が並ぶ
下流側へ行くほどぬるくなり、35~38℃くらいの即席露天風呂が並ぶ

下流側には、先客が作成したと思われる石組みの露天風呂がいくつも残っていて、好みの場所で浸かることができます。地元の夫婦がひと組、ぬるめの場所で浸かっていました。

残念過ぎる湯滝の正式名称

「コロンビアで最も高熱の滝」。これが湯滝の正式な名称で、インターネットでもこの名前で検索できます。ただ、琵琶湖を「日本で一番面積の大きな湖」、りんごを「赤くて丸く少し酸味のある果物」と呼ぶようなもので、ちょっと残念です。「クラスで一番背の高い男の子」と呼ばれるより、名前で呼んであげたほうが嬉しいと思います。

日本でも、川原毛の大湯滝(秋田県)やカムイワッカの湯滝(北海道)など、湯滝は地名やその地の言い伝えから名づけられていますので、ここは「セタキラの湯滝」と呼びたいと思います。

セタキラの湯滝満喫後は、南半球の温泉宿を堪能する

エリコニアスの温泉プール。周囲は完全な森で人工物はまったく見えない。湯は40℃弱で心地よい
エリコニアスの温泉プール。周囲は完全な森で人工物はまったく見えない。湯は40℃弱で心地よい

滝を訪ねて大満足で宿に戻ったあとは、温泉プールに浸かることにしました。浅い場所もありますが、全体的に胸くらいの深さです。写真では少し青みを帯びた湯のように見えますが、ほぼ無色透明です。

湯の鮮度はあまり高くありませんが、セタキラの湯滝を訪ねる際の拠点としては申し分ありません。夜は南半球の空を眺めながら、朝は耳なじみのない様々な野鳥の声を聴きながら、安心できる環境で温泉に浸かれるのは何といっても最高です。

夜は23:00まで利用できるので、夕食後にいつまでも浸かっていられる
夜は23:00まで利用できるので、夕食後にいつまでも浸かっていられる

宿泊プランは素泊まりのみですが、近くに店などはないので、レストランで夕食をとります。おすすめは川マスだというので、ガーリック焼きを注文しました。サーモンに似た色と肉質でボリュームは満点。予想をはるかに超えるおいしさでした。別皿には白米とフライドポテト。コロンビアは米食文化の国で、日本の白米と似ているので、滞在中に日本食が恋しくなることはありませんでした。

ホテルのレストランでの夕食。肉厚なマスはとてもおいしかった
ホテルのレストランでの夕食。肉厚なマスはとてもおいしかった

帰路で見事な濁り湯のグアスカ温泉へ

この巨大な露天風呂が「足元湧出湯」というのだから驚きだ
この巨大な露天風呂が「足元湧出湯」というのだから驚きだ

ホテルをチェックアウトして、再び遠路ボゴタに戻ります。途中、気になっていたグアスカ温泉(クンディナマルカ県)に立ち寄りました。標高は2680m、ボゴタとほぼ同じです。黄土色に濁った巨大な露天プールが目の前に広がります。係員の女性が熱心に説明してくれました。温泉は500年以上前から知られ、野湯として使われていた時期もあったようですが、その後廃れてしまったそうです。

よく見ると至る所で気泡の波紋が見える
よく見ると至る所で気泡の波紋が見える

2014年に、源泉を再び利用できるようにして今の施設をオープンしたとのこと。湯が湧いている場所をそのままプールにした「足元湧出湯」で、あちこちから気泡が立ち昇っています。これだけ広大な足元湧出湯はとても珍しいです。最高の湧出地点は40℃弱とのことですが、浴槽全体では35℃前後。湯のニオイや味ほとんどありません。泉質的にはひなびた湯で有名な島根県の千原温泉に似ていますが、気泡はあそこまで活発ではありません。温泉プールの一角にはジェットシャワーがあり、地元の人たちは腰や肩に当てて気持ちよさそうに過ごしていました。

露天風呂の一角には強力な「噴射口」があり、打たせ湯のように楽しめる
露天風呂の一角には強力な「噴射口」があり、打たせ湯のように楽しめる

隣の室内に、広いプールと打たせ湯、奥にもうひとつの浴槽があります。露天プールから湯を引いているのでぬるめですが、最奥の浴槽は加温しています。施設の案内には「温かいプールと冷たいプールを交互に浸かるのがよい」と温冷交互浴のススメが記されていました。この気持ちよさは「世界共通なんだなあ」と思わず顔がほころびます。

まとめ

ボゴタから1泊2日の旅で、日本では知られていない温泉ばかりを訪ねました。ほかにもボゴタ近郊には温泉施設や温泉ホテルが数多くあります。温泉を目的に、わざわざコロンビアまで行く人は少ないかもしれませんが、60以上もの温泉が全土に渡って湧いています。温泉ポテンシャルの高い国として、コロンビアを記憶に留めてもらえたら嬉しいです。

記事で紹介した温泉

温泉名(スペイン語名) 温泉名(日本語) 住所 備考 URL
Heliconias エリコニアス温泉 オテル・カンペストレ・ラス・エリコニアス(Hotel Campestre Las Heliconias )、ボヤカ県セタキラ村(Boyacá, Zetaquira) - https://www.heliconiaszetaquira.com/
Cascada de Tres Temperaturas 三温の滝 ボヤカ県セタキラ村(Boyacá, Zetaquira) 野湯(無料) -
La Cascada Termal Más Alta de Colombia セタキラの湯滝 ボヤカ県セタキラ村(Boyacá, Zetaquira) 温泉名の直訳は「コロンビアで最も高熱の滝」 -
Guasca グアスカ温泉 クンディナマルカ県グアスカ村(Cundinamarca, Guasca) 月~土曜は8:00-19:00、日・祝日は4時間制(8:00-12:00、12:30-16:30、17:00-21:00)、入湯料は3万5000ペソ(約1320円) https://termalesdeguasca.com/

筆者

世界中の魅力的な温泉を探し出して、旅しています。

鈴木浩大

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