有名なのに誰も見たことがない?アメリカ・ネバダのフライランチガイザー温泉

公開日 : 2024年06月01日
最終更新 :
筆者 : 鈴木浩大

アメリカ・ネバダ州北部に湧く「フライランチガイザー(Fly Ranch Geiser)」。広大な牧草地に極彩色の噴泉塔がポツンと立っています。光り輝くような塔の先端から温泉と蒸気を噴き上げるさまは、異世界を思わせます。「世界の絶景」を収録した写真集やWEBサイトで常連となっている「有名な温泉」ですが、実際に訪ねた人はほとんどいません。立入りできない私有地にあったためです。いつか行きたいと思っていましたが、2018年から立入りできるようになったため、温泉マニアにとって念願のガイザーを訪ねてみました。

バーニングマンのポスターが出迎え

リノ空港に掲示されていたバーニングマンのポスター。中央の奥に「マン」が見えます
リノ空港に掲示されていたバーニングマンのポスター。中央の奥に「マン」が見えます

起点となる町はネバダ州のリノ。サンフランシスコから1時間のフライト、または車で北西へ4時間(380km)の場所にあります。巨大都市のサンフランシスコからレンタカーで出発する自信はなかったので、空路でリノに向かいました。リノの空港に着くと、ずらりと並ぶバーニングマンのポスターが迎えてくれます。

リノの町の全景。降水量が少なく町の周囲は砂漠のよう
リノの町の全景。降水量が少なく町の周囲は砂漠のよう

バーニングマンとは、ネバダ州北部のブラックロック砂漠で夏の終わりに開催される奇妙な祭りの名前です。ある人はひたすら踊り、ある人は参加者が持ち込んだ奇妙なアートを楽しみ、ある人は何もしない。電気もガスも水道も宿泊施設もない砂漠で、毎年7万人ほどの参加者が、物々交換をしながら1週間を過ごします。最後に「マン」と呼ばれる巨大な人型の像を焼き尽くすことから、バーニングマンと呼ばれています。

  • 間近に見るカジノビル。これ以上、金色が似合う建物はありません

    間近に見るカジノビル。これ以上、金色が似合う建物はありません

  • カジノの街らしく、リノ空港では本格的なスロットマシンを体験できます

    カジノの街らしく、リノ空港では本格的なスロットマシンを体験できます

フライランチガイザーの歴史

100年以上前に井戸を掘削していて間欠泉が噴出したのが始まりといわれます。その後、しばらく放置されていましたが、1964年に地熱調査で再掘削したところ、熱水が噴出し、析出物が堆積し始めました。巨大な噴泉塔に成長した今も、勢いよく温泉を噴き上げています。ダイナミックな形状と色彩は一度見たら忘れられません。

なお、ガイザーは間欠泉の意味ですが、休みなく噴き上げています。長い間私有地にあって見学できませんでしたが、バーニングマンを主催する組織が、2016年に一帯の土地を650万ドル(当時の相場で約7.5億円)で購入。2018年から、日帰りツアーでの公開が始まりました。

集合場所のガーラックを目指す

アメリカらしい雄大な風景が続くガーラックへの道
アメリカらしい雄大な風景が続くガーラックへの道

見学するにはWEBでの事前申し込みが必要です。ツアーは春から秋の土曜限定で、開催日はWEB上に掲載されます。1回3時間のツアーは20名限定。参加料は1名50ドル(7500円)と安くありません。

集合場所のガーラックまではリノから車で2時間かかるので、レンタカーが必要です。朝早めにリノを発ち、余裕をもって到着しました(注:集合場所は変わることがあります)。

ガーラックに着いてまずは腹ごしらえ。アメリカの田舎は朝も昼もこんな感じ。おいしそうに見えますが、こればかりが続くと飽きます
ガーラックに着いてまずは腹ごしらえ。アメリカの田舎は朝も昼もこんな感じ。おいしそうに見えますが、こればかりが続くと飽きます

参加者はまず互いに自己紹介をします。温泉バカしか来ないと思っていましたが、大半は一般の旅行者。筆者以外は地元のネバダ州か隣のカリフォルニア州の在住者でした。「ガイザーを見るために日本から来た」と挨拶すると、どよめきが起こりました。

ツアー中の様子。この日はアジア系のアメリカ人が半分くらいを占めていました
ツアー中の様子。この日はアジア系のアメリカ人が半分くらいを占めていました

おいそれとは見学できない

アメリカでよく見かける侵入禁止のサイン。無視して入ると銃撃される場合があります
アメリカでよく見かける侵入禁止のサイン。無視して入ると銃撃される場合があります

ガーラックからさらに30分、車で北上。「侵入禁止」の札がある柵を主催者が開けて、草地に車を停めます。一刻も早く噴泉塔と対面したいのですが、バーニングマンのイベントや環境保護の取り組みの説明が延々と続きます。主催側は広報活動を兼ねて土地を購入したのですから、我慢するしかありません。

動物の骨で構成されたオブジェ。前衛的なアート作品が多くありました
動物の骨で構成されたオブジェ。前衛的なアート作品が多くありました
これもバーニングマンで使われたという大きな船。興味のない筆者は噴泉塔を見たいという思いが募るばかりです
これもバーニングマンで使われたという大きな船。興味のない筆者は噴泉塔を見たいという思いが募るばかりです

じらされた末にようやく対面!

古い間欠泉が牧草地にポツンと立っていました
古い間欠泉が牧草地にポツンと立っていました

やがて噴出が止まった古い間欠泉や、今まさに発育中のミニ間欠泉が見え、周囲が地熱地帯なのを実感します。

茂みの中のミニ間欠泉。やがて巨大化するのでしょうか
茂みの中のミニ間欠泉。やがて巨大化するのでしょうか

出発から2時間近く炎天下を歩かされたあとで、ようやく噴泉塔を間近で見られます。台座も入れた高さは3m前後。思ったよりは小さかったのですが、抜群の造形です。眺める角度によって噴泉塔の形はがらりと変わります。木道や展望台が設けられていますが、一歩踏み外せば熱水が流れていてヤケドをしかねません。

間近で眺める噴泉塔はまさに圧巻。噴出口は赤く染まっています
間近で眺める噴泉塔はまさに圧巻。噴出口は赤く染まっています

噴泉塔の湯が溜まった池があるので、浸かってみたいところですが、「万一ケガをした際の責任が取れないので、入浴は許可していない」とのこと。ひそかに水着も持ってきたのに残念です……。池に突き出した木道から腕を突き出して、湯に触るのが精いっぱいでした。

少し青みがかった透明な湯は、意外に癖のない泉質です。温泉バカとしては、「姿勢を崩して、うっかり池に落ちたら、入浴成功だな」という思いが一瞬よぎりますが、やってはいけません。なお、あまりにも熱心に尋ねたからか、「バーニングマン組織にボランティアスタッフとして参加すれば、入浴できる」という情報を教えてもらいました。

木製の展望台と噴泉塔との関係。見る角度によって噴泉塔の印象は変化します
木製の展望台と噴泉塔との関係。見る角度によって噴泉塔の印象は変化します
噴泉塔の湯が溜まったプール。できれば入浴したかったです
噴泉塔の湯が溜まったプール。できれば入浴したかったです

筆者

世界中の魅力的な温泉を探し出して、旅しています。

鈴木浩大

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