【日本のこと、どれだけ知ってる?】インバウンドガイドが教える「シェアしたくなる”日本の魅力”」 ~「庭園」&「伝統工芸」編~

公開日 : 2022年09月17日
最終更新 :
美しい日本の四季
美しい日本の四季

数々の訪日外国人からの質問にこたえ、日本をより深く楽しんでもらうためのお手伝いしてきたインバウンドガイドが、「シェアしたくなる“日本の魅力”」を紹介! 前半の記事では、「日本食」と「建築」をテーマに、海外の文化と比較しながらそのユニーク性をお伝えしましたが、後半の記事では、「庭園」と「伝統工芸」をテーマに「日本の魅力」に迫っていきたいと思います。

日本の魅力③ 「庭園」~日本の庭園~

日本の魅力③ 「庭園」~日本の庭園~
木々や池、水など全体のバランスや調和を表現する「日本の庭園」

日本と西洋の「庭園」の大きな違いを知っていますか?
それは、庭園の造りが「シンメトリー(対称性)」であるか「アシンメトリー(非対称性)」であるかです。

この違いには、日本と西洋の「自然に対する考え方・捉え方」が関係しています。日本では、古くから水に恵まれており、東洋思想の影響も相まって「自然と調和する思想」が根付いています。そのため、日本庭園でも「自然との調和」が表現され、庭園の造りはアシンメトリーになっています。自然と人工物の境目を曖昧にし、曲線を多く用いるのが特徴です。また、水がない庭園にも砂利に線を描くことで水の流れを表現する「枯山水」という技法があり、「水」がキーワードとなっていることがわかります。

日本の魅力③ 「庭園」~西洋の庭園~

日本の魅力③ 「庭園」~西洋の庭園~
対称性や規則性を表現する「西洋の庭園」

一方、西洋や中東は、日本やアジアほど水や自然に恵まれていませんでした。古くから、自然は脅威・克服する対象であり、科学が発展したため、西洋の庭園では「自然をコントロール」する人工美が表現されています。自然と人工物はきれいに遮られ、シンメトリーな造りになっていることが多いです。自然界には存在しない、直線や真円を多用しているのも特徴です。

前回の記事で紹介した「建築」でも、教会は豪華絢爛なデザインや美しい絵画での装飾など、圧倒されるほどの「人工美」が特徴ですが、日本の寺社はシンプルな装飾が多く、森や川など自然と隣接して建てられ、庭園を含め落ち着いた「自然との調和」をベースに造られています。他国の建造物・庭園を日本と比較してみると、そのユニーク性がよくわかります。

日本の魅力④ 「伝統工芸」~わびさび~

日本の魅力④ 「伝統工芸」~わびさび~
『今こそ学びたい日本のこと』P.71

最後に紹介するのは日本の「伝統工芸」です。

日本には、華やかで美しい伝統工芸品も数多くあり、マジカルトリップのツアーでも日本の伝統工芸品をテーマにしたツアーは人気です。今回は、その中でも独自の美的観念である「わびさび」を感じられる工芸品を紹介します。

「侘び(わび)」とは「過剰なものが削ぎ落とされたシンプルな状態や、ものの不足に美しさを見出す心」を指し、「寂(さび)」とは「時間とともに古びることで新しい美が加わる」という考えです。

日本には、茶道用の陶器のように、土本来の色合いを生かし、釉薬や装飾をあえて行わないシンプルさに美を見出す文化があります。一見、質素や武骨に感じてしまうようなデザインに、日本は古くから趣を感じ、大事に使いこむことで生じる色合いの変化を「味」として楽しむ「寂」の文化が浸透しているのです。スティーブ・ジョブスは「わびさび」や「禅」の思想を好み、初代iPodのシンプルさを追求したデザインにも、この「わびさび」の思想が影響しているともいわれています。

金継ぎが施された陶器
金継ぎが施された陶器

また、「わびさび」の思想が最も顕著に表れているのが、「金継ぎ」という文化です。「金継ぎ」とは、割れてしまった陶磁器を漆でつなぎ合わせ、そのつなぎ目に金粉や銀粉を装飾する修復技法です。「割れた」「欠けた」というネガティブな「傷跡」を、修復過程で金や銀で美しく装飾することで、新たな美や趣を与え、さらにものの寿命まで延ばすという、ものを大事にする日本人の精神性が伺えます。

また「わびさび」は、千利休により確立されましたが、千利休は「侘び茶」という独自の茶道の流派も確立しました。侘び茶は遊びの要素を極力減らし、心の交流を中心とした緊張感のある茶の湯が特徴です。優雅なイメージのある西洋のアフタヌーンティーとも対照的で、「茶」の文化ひとつとっても日本と西洋には違いがあることがわかります。

日本の魅力④ 「伝統工芸」~西洋との違い~

日本の魅力④ 「伝統工芸」~西洋との違い~
『今こそ学びたい日本のこと』P.131

西洋の芸術は「足し算の美」、日本の芸術は「引き算の美」であるといわれます。西洋の教会に飾られている油絵の宗教画と、日本の寺院に飾られている禅画を思い浮かべるとわかりやすいように、日本には「余白」にこそ美を感じる美的観念があります。

工芸品も同じく、西洋の工芸品は「華やかさ」や「優美さ」などが特徴で、わびさびを追求した日本の伝統工芸品とは正反対の美を追求していることがわかります。

「どちらの美のほうが美しい」という議論ではなく、それぞれの国の文化のよさがある「伝統工芸」。古来、日本人が大切にしてきた美的観念を、ぜひ旅のなかで感じてみてください!

日本の魅力の再発見ができる1冊が誕生!

あなたは、日本のことをどのくらい知っていますか?
この国の文化や歴史、習慣について世界の人々に説明することができますか?

日本がもつ独特の文化や景観は、いまや世界中から愛され、年間3000万人もの外国人が日本を訪れる時代になりました。彼らの目に映る日本はどこまでも新鮮で、美の宝庫。私たち日本人が気づいていないこの国の魅力をキャッチしているのです。

本書は、1万人の訪日外国人をガイドしてきた旅のプロが、こうした「外からの目線」で日本を切り取った、まさに日本人のための日本案内本。エンタメ、食文化、職文化、日本人の心(ジャパニーズスピリット)、地理的・文化的特徴、信仰(宗教)、日本人のルーツと歴史、日本各地の魅力の8テーマで、「日本人が知らない日本」という切り口で紹介します。

ページをめくり、異国を旅するように、“日本”と出合ってください。
きっと、身近な誰かに、世界の人々に、日本の魅力をシェアしたくなりますよ。

※当記事は、2022年9月17日現在のものです

TEXT: 蜂谷翔音、松本まさ
PHOTO: istock

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筆者

地球の歩き方書籍編集部

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