【ドイツ】レーゲンスブルクのプロテスタント教会、三位一体教会

公開日 : 2023年05月11日
最終更新 :

正直、何も知らなかったら立ち寄っても見ようと思わないような、そんな目立たない教会。
レーゲンスブルクにはたくさんの教会がありますが、大聖堂とその他いくつかある気になる教会以外、普通はきっとあまり注目して見ないでしょう。
というのも、18世紀にこの町を訪れたゲーテが「教会また教会、修道院また修道院」と言ったくらい、犬も歩けば教会に当たるほど、ここにはたくさんの教会があるのですから。

この教会は、実はヨーロッパをも代表する価値を秘めた教会であり、少なくともレーゲンスブルクの中で「最もオリジナルを保った教会」なのです。

張り切ってカメラ片手に出掛けて参りましたので、皆様も私と一緒に、プロテスタントの三位一体教会を擬似体験してみませんか?

教会の祭壇
教会の祭壇

バロック時代のレーゲンスブルクは貧しかったため、バロック建築は数が比較的少ないのです。
バロック建築は、光と影をうまく使った明暗法を取り入れ、左右対称のシンプルな造り。内部は窓がたくさんあり、光を取り込むので、まるで天国から続くようなイメージをもたらす広くて白い空間です。そこに奥行きを表現するため、たくさんの凹凸があります。

教会が建てられた当時の歴史的背景

1517年マルチンルターの宗教改革、そこでプロテスタントの教えが広まったわけですが、レーゲンスブルクには近郊から多くのプロテスタントの人々が難を逃れて集まってきました。
当時レーゲンスブルクは貧しかった時代。
増え続けるプロテスタントに対応するため、当時カトリックであったノイプファー教会を、プロテスタントに貸していました。

ドイツ各地でプロテスタントの教会の需要があったのですが、ここレーゲンスブルクと同様で、他の地区もカトリック教会を改築してプロテスタント用に使用するというのが一般的でした。

レーゲンスブルクでは、30年戦争の最中に、しかもたったの4年半で建てられ(1631年完成)ました。そしてこれは、南ドイツで最も最初に建てられたプロテスタントの新築教会という位置付けになります。

パイプオルガンの下には、トゥルン・ウント・タクシスの公爵のために特別な席が用意されています。(中二階)
パイプオルガンの下には、トゥルン・ウント・タクシスの公爵のために特別な席が用意されています。(中二階)

南ドイツを代表する、「最も古い」「オリジナルを保った」プロテスタント教会と言われていたこの教会も、2018年の秋、天井の一部が剥がれ落ちたことを機に一旦閉鎖され、15ヶ月に及ぶ大掛かりな修復が行われました。

パイプオルガンについて

1758年に造られたパイプオルガンは、数年前まではレーゲンスブルクで2番目に古いものでしたが、さすがに1966年頃から調子が悪く、2020年から新しいオルガンになりました。

市民が力を合わせて作った教会

レーゲンスブルクの紋章は鍵が二本交差したもの。その紋章が教会のあちこちにあるのも、教会としては非常に珍しいことだそうです。今でこそカトリックが中心のバイエルン州ですが、レーゲンスブルクは当時市民権を得るためにはプロテスタントでないとダメだった時代があります。そんな中、みんなで作り上げた市民のための教会ということで、紋章が掲げられているのだそうです。

  • レーゲンスブルクの紋章が窓の中央に

    レーゲンスブルクの紋章が窓の中央に

  • ここにも

    ここにも

  • そしてここにも

    そしてここにも

椅子の数がなんと1300席以上と、大聖堂の中では2番目の規模

しかもそれらの椅子のうちの90%は、暖房が付いているのです。暖房は「オリジナル」ではないのですが、虫食いなどの処理をした後、椅子もオリジナルをなんとか保ち、現在では温度湿度管理のため、色々試行を凝らしているようです。
そして、たくさんの折りたたみ式の椅子があります。以前は掃除婦が一つ一つ畳んで掃除をするため効率が悪く、これらは、2013年当時、いずれ固定されるとのことでした。実際、せっかくの折り畳み椅子は固定されており、自由に使用することが不可能となっています。シンプル素敵な椅子であっただけに残念です。
さらに、祭壇すぐ前の椅子3列は取り外すことが可能です。それは室内楽のコンサートを行うときに場所を確保するためです。

  • 折りたたみ式の椅子がベンチのサイドにある。現在は固定されて使用不可

    折りたたみ式の椅子がベンチのサイドにある。現在は固定されて使用不可

  • ここにも折りたたみ式の椅子が

    ここにも折りたたみ式の椅子が

  • 椅子、椅子、椅子。これは祭壇に近い部分の側面に設置されたもの

    椅子、椅子、椅子。これは祭壇に近い部分の側面に設置されたもの

  • これが一般的な椅子(左側が祭壇側)

    これが一般的な椅子(左側が祭壇側)

  • しつこいですが、先ほどの椅子を違う角度から

    しつこいですが、先ほどの椅子を違う角度から

  • これはエンポーレ(中二階)の後ろの椅子

    これはエンポーレ(中二階)の後ろの椅子

教会建築の細部をことごとく観察してみると

カメラ片手に写真をちょっと撮ろうと出掛けたのですが、あまりの美しさに「ちょっと」で終わらなくなりました。やっぱりレーゲンスブルクってすごい、と改めて思わせるそんな教会です。フォトギャラリーとしてご紹介します。

  • 教会の扉にはとても美しい装飾がなされています

    教会の扉にはとても美しい装飾がなされています

  • 天井は当時の最先端な技術を用いて

    天井は当時の最先端な技術を用いて

  • 床にも歴史を感じる

    床にも歴史を感じる

  • トゥルン・ウント・タクシス専用席の下にある装飾

    トゥルン・ウント・タクシス専用席の下にある装飾

  • 階段の手すり。釘もまだこの時代は金属でない

    階段の手すり。釘もまだこの時代は金属でない

教会の外側には貴族のお墓が

ここのお墓は普通のお墓とはちょっと違う。
ここまで来たら、せっかくなので足を運んでみてください。
何が違うかというと、17、18世紀(1633〜1787年)の貴族のお墓なのです。
2つの例外を除き、中世のプロテスタントの貴族のお墓です。
(ちなみに、同様にカトリックの貴族の場合は、エメラム教会にお墓があります。)
ペストが流行ってからは、衛生環境に対して人々は神経を尖らせていました。
垂れ流しだったトイレの環境も改善され、街の中心部にお墓を作ることは認められなくなってからの時代です。
ここは例外的にお墓を作ることが許可され、

このお墓の特徴としては、
町の中心部にあるお墓であること、
神聖ローマ帝国の時代に造られた、プロテスタントの貴族のお墓であること、
1641年から1805年までの間に造られたお墓であること、
狭い教会の敷地内に、隣接する建物の壁などを利用して造られた閉鎖的な環境にあるお墓であること、
そしてこれは、ヨーロッパで唯一無二であること、


現在2026年までを目処に改築中ではありますが、それでも一般公開されています。

  • 1787年の年号が読み取れる

    1787年の年号が読み取れる

  • 骸骨

    骸骨

  • お墓は何度も入れ替えられているので、その度に床にはダメージが

    お墓は何度も入れ替えられているので、その度に床にはダメージが

レーゲンスブルクを上から眺められる場所、塔に是非登ってみましょう

毎年3月最後の週末から10月最後の週末までの水曜日から日曜日、12時から18時まで塔に登ることができます。
教会の北側の入口(Gesandten Straße、ゲザンテン通りに面した入口)から教会内に入り、パイプオルガンの下から中二階へ登り、祭壇がある方へ進むと、チケットが買えます。(3€)
塔の高さは70m弱あります。
大聖堂の塔が105m、黄金の塔が51m、旧市庁舎の塔が48mですから、町が十分に見渡せる唯一のスポットとも言えます。
天気が良ければ絶対行くべきスポットです。

大聖堂、黄金の塔を含むレーゲンスブルクの街並みなどが見られます。
大聖堂、黄金の塔を含むレーゲンスブルクの街並みなどが見られます。
教会名
三位一体教会 (Dreieinigkeitskirche)
住所
Am Ölberg 1

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