【スコットランド】フォース湾にかかる3つの橋

公開日 : 2023年07月16日
最終更新 :

エジンバラからスコットランドの北側に向かう時、フォース湾にかかる橋を渡っていくのが最も便利な方法です。
フォース湾には3つの橋がかかっています。
1つ目がもっとも古く有名で、世界遺産リストにも登録されている列車専用の「フォースクロス鉄橋」。2つ目がバス・タクシー専用のつり橋「フォースクロス橋」。3つ目が最も新しい道路橋「クィーンズフェリークロッシング橋」です。
3つともその形状や目的、造られた時代が全く違っていて、見た目が全く異なる橋が、隣り合わせに並んで架かっている景色は、非常に興味深く、圧巻です。
今回はフォース湾にかかるこれらの興味深い3つの橋について紹介します。

3つの橋が並んで架かっているフォース湾
3つの橋が並んで架かっているフォース湾

フォース鉄橋(Forth Bridge)

1890年に完成したフォース鉄橋は、そのデザインのユニークさと美しさで世界的にも有名な鉄道専用の鉄橋です。
およそ150年前に完成した歴史ある橋ですが、現代に至っても片持ち梁の橋(Cantilever Bridge)としては世界で一番長い橋なのだそうです。その長さは2467m。毎日200の列車が通り、一年に3百万人の乗客を運んでいます。

19世紀、イギリスでは落橋事故が相次いで起こりました。中でもフォース鉄橋が完成する11年前に「テイ橋の悲劇」と呼ばれる強風による橋の崩落事故が起こり、走行中の列車の乗客75人が死亡しました。この事故により当時すでに建設が始まっていたフォース鉄橋の工事は一時中断され、その構造と強度が見直しされることになりました。
結果この橋はイギリスで最大規模の鉄骨建築プロジェクトとなり、55,000トンの鉄骨が使用されました。この頑丈な橋はそのデザインから「鋼の恐竜」と呼ばれることになり、建設後150年経った現在も鉄道専用の鉄橋として現役で使用されています。
2015年には、その独特のスタイル、素材、規模において革新的であり、鉄道が長距離の陸路移動を支配するようになった時代の橋の設計と建設において重要なマイルストーンになった、としてユネスコの世界遺産リストに登録されました。

赤い鋼の恐竜と呼ばれるフォース鉄橋
赤い鋼の恐竜と呼ばれるフォース鉄橋

フォースロード橋(Forth Road Bridge)

フォースロード橋は1964年に完成した、2か所の巨大な支柱に支えられる長距離の吊り橋です。乗用車の増加によって建設された当時は、吊り橋としてはアメリカ以外の世界で最も長い吊り橋として完成しました。
長さは2.5キロ。見た目はまさしく瀬戸大橋やレインボーブリッジですね。日本人には馴染み深いデザインの吊り橋です。
新しくクイーンズフェリークロッシング橋ができてからは、現在この橋はバスとタクシーなどの輸送車専用となっています。また、許可されると自転車や徒歩で渡ることも可能です。

2つの支柱に支えられた吊り橋フォースロード橋
2つの支柱に支えられた吊り橋フォースロード橋

クイーンズフェリークロッシング橋(Queensferry Crossing)

3つの橋の中で最も新しいのが、2017年に完成したクイーンズフェリークロッシング橋です。乗用車の数がどんどん増加し、渋滞が深刻な問題となったためにこの3つ目の橋が建築されました。
長さは2.7キロ。3本の支柱とケーブルで支えられる、女性のドレスのようなエレガントな見た目の美しい橋です。
この橋はエジンバラに続く高速道路M90とつながっていて、スコットランドの主要道路としての役割を務めています。イギリスの多くの高速道路がそうであるのと同じで、この橋も無料で使用することができます。
この橋をエジンバラに向かって渡っていると、左手にフォースロード橋、そして赤い鋼の恐竜フォース鉄橋が並んで見え、フォース湾の美しい景色にインパクトを与えています。全く姿が異なる3つの橋が並んで架かっている姿は、ダイナミックで、それぞれの異なる時代風景を感じ、とても興味深い光景です。

エレガントで美しいクイーンズフェリークロッシング橋
エレガントで美しいクイーンズフェリークロッシング橋

インチガービー(Inchgarvie)島

よく見ると、フォース鉄橋の下には最長1.5キロの長細い小さな島があるんです。そこには何やら建物もあるようです。調べてみると、その島はインチガービー島という無人島でした。
この島の歴史はとても興味深く、まず1490年にジェームス4世王が城を建てました。その後1519年から1671年まではこの城は刑務所として使用されたそうです。
その後は時の権力者たちによって所有争いが繰り広げられましたが、結局はフォース鉄橋建設の際に鉄道会社に売却されましたが、世界大戦中にはフォース湾の攻防の役目を果たすドックヤードとして重要な役割を果たしたそうです。
フォース橋の建設中には労働者たちがこの島で宿泊して利用したようですが、現在は無人島。野鳥たちの生息場となっています。

興味深いインチガービー島
興味深いインチガービー島

今回はフォース湾に架かる3つの橋について紹介しました。
3つの形状が異なる橋には、それぞれが建設された時代の風景が垣間見え、大変興味深いです。
ひとつの湾に3つの橋が並んで架かっている風景は珍しく、ダイナミックで、その景色には息をのみます。
橋の辺りのクイーンズフェリーとよばれる地域は古くから輸出入の港町として栄えた場所で、現在もハイストリートなどには興味深いレストランや雑貨店が並んでいます。
もしもエジンバラを訪れる際には、少し足を延ばしてこの興味深い場所を訪れてみることをお勧めします。

筆者

イギリス特派員

ベイトマン明子

2023年に引っ越してきたばかりのスコットランドのあちこちを訪れ、皆様に報告できることを楽しみにしています。

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