まるでアールデコの宮殿!カヴロワ邸で見る建築家マレ=ステヴァンスの軌跡(フランス・クロワ)
![カヴロワ邸 ©Kanmuri Yuki](https://static.arukikata.co.jp/pic-images/newsreport/file_img/18062123382851732.8.jpg)
フランス北部の町クロワ(Croix)の閑静な住宅街に建つカヴロワ(Cavrois)邸は、建築家ロベール・マレ=ステヴァンス(Robert Mallet-Stevens)の傑作とみなされています。マレ=ステヴァンスは、近代建築が台頭し、アールデコが流行した1920年代から30年代にかけて活躍した稀代の建築家です。今回は、その建築家マレ=ステヴァンスの世界が垣間見える、カヴロワ(Cavrois)邸を紹介します。
13年の修復を施して2015年から公開
![13年の修復を施して2015年から公開](https://static.arukikata.co.jp/pic-images/newsreport/file_img/18062123382872724.6..jpg)
ロベール・マレ=ステヴァンス(Robert Mallet-Stevens)は、ル・コルビュジエ(Le Corbusier)と同年代、モダニズムを代表するフランスの建築家。カヴロワ(Cavrois)邸は、マレ=ステヴァンスの設計、内装によって、1929-32年に建てられた邸宅です。
第二次世界大戦時、この地域はドイツ軍の占領を受け、カヴロワ邸もドイツ軍に占拠されました。戦後再びカヴロワ家の手に戻ったものの、1986年に売却されたのちは、手入れもされることがなく、荒れるがままでした。
1990年に国の歴史建造物指定を受けた後も、しばらく放置されていましたが、2008年、国が国立モニュメントセンター(Le Centre des monuments nationaux、以下CMN)に管理を委託。フランス全国の城や美術館など100点近くのモニュメントを管理運営するCMNが、13年かけて細かでていねいな修復を施し、2015年6月に博物館として公開の運びとなりました。
以来、国内外から訪問客が大勢訪れ、2017年末までの1年半で、すでに、延べ324,000人を魅了した計算になります。
建築と家具の一体感
![建築と家具の一体感](https://static.arukikata.co.jp/pic-images/newsreport/file_img/18062123382883633.7..jpg)
カヴロワ邸の外観は珍しい黄色いレンガが印象的で、アールデコの直線的で機能的な輪郭をしていますが、広い庭の池に映る姿には、気品を感じます。
1932年の建築当時の姿に近づけるため、当時の家具を追跡し、買い戻したり、修復したりしています。というのも、マレ=ステヴァンスは、部屋ごとに、壁などの内装と同じ木材で家具を制作しており、トータルしてはじめてその世界がよりよく味わえるからです。
![主寝室。家具と扉枠が同じ木材 ©Kanmuri Yuki](https://static.arukikata.co.jp/pic-images/newsreport/file_img/18062123382893737.4..jpg)
庭園もまた、周りの土地が失われたため、建設当初より規模は縮小されましたが、できるだけ当時の形に近く復元されています。
繊維産業で財を成したポール・カヴロワ
![繊維産業で財を成したポール・カヴロワ](https://static.arukikata.co.jp/pic-images/newsreport/file_img/1806212338293776.5..jpg)
カヴロワ邸を注文したのは、繊維産業で財を成したカヴロワ=マイユー(Cavrois-Mahieu)社のオーナー、ポール・カヴロワ(Paul Cavrois)でした。20世紀初頭、フランス北部はもっとも工業化が進んだ地域で、特にテキスタイル産業が発達しました。カヴロワ=マイユー社は、 1923年には、工場を5つ経営し、700人の従業員を抱える規模だったそうです。
カヴロワ家には、子供が7人いたため、カヴロワ邸には、多くの子供部屋のほか、子供専用のダイニングルームやミニ劇場にも使えるプレイルームなどが揃っています。
また見学する人にぜひ注目してもらいたいのが、照明の使い方です。担当したのは、ペルフェクラ社を経営するアンドレ・サロモン(Andre Salomon)でした。どこも徹底的なほどの間接照明で、建築内装に組み込まれるようにして作られています。これらの照明は、明るいけれども目に刺さらない柔らかい印象の光で、屋内を包みます。
9月まで開催される写真展
![9月まで開催される写真展](https://static.arukikata.co.jp/pic-images/newsreport/file_img/18062123382913832.1..jpg)
現在、このカヴロワ邸で、「ロベール・マレ=ステヴァンスと、カメラマン」展が開催されています。 ジャン=ルイ・コーエン コレクションから選ばれた50枚ほどの写真が、館内に展示されています。
実は、マレ=ステヴァンスの業績や作品に関する文献は、ほぼすべて失われており、コーエン・コレクションは、現存する唯一のマレ=ステヴァンスの跡を辿る手がかりです。このコレクションは、1920年代初頭から1939年最後の作品に至るまでのマレ=ステヴァンスの軌跡が見て取れます。
![未完成のポール・ポワレ邸、メジー・シュル・セーヌ(1921-23)写真:REP. Collection Jean-Louis Cohen](https://static.arukikata.co.jp/pic-images/newsreport/file_img/18062123382924305.8..jpg)
![ノワイユ子爵邸、イエール(1923-28)中庭と芝生、写真:Thérèse Bonney. Collection Jean-Louis Cohen](https://static.arukikata.co.jp/pic-images/newsreport/file_img/18062123382932101.6..jpg)
たとえば、カヴロワ邸と並び、三部作ともいえる、服飾デザイナーのポール・ポワレ(Paul Poiret)の邸宅(1921-23)と ノアイユ子爵の避暑宅(1923-28)の写真を並べてみるのも、非常に興味深いところです。
パリの16区には、マレ=ステヴァンスの名を冠した通りがあります。その名の通り、マレ=ステヴァンスの設計した建物が複数並ぶ通りです。マレ=ステヴァンス夫妻の個人宅も1926-27年、ここに建てられました。
![マレ=ステヴァンス夫妻宅、パリ16区マレ=ステヴァンス通り(1926-27) ホール・サロン、写真:L’Illustration. Collection Jean-Louis Cohen](https://static.arukikata.co.jp/pic-images/newsreport/file_img/18062123382942733.3..jpg)
コーエン・コレクションには、戦前のカヴロワ邸の様子をうかがえるものも多く、 特にインテリアの修復や復元の際、隅々まで参照されました。
いかがでしたか。これから庭園がますます美しくなる時期、アールデコの宮殿にも見えるカヴロワ邸を訪れて、稀代の建築家マレ=ステヴァンスの世界を覗いてみませんか。
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