50オトコの50日間世界一周。地球のまわり方! 第3回 セルビア~マルタ編
第3回はセルビア、イタリア、マルタをまわります(写真はマルタの前に立ち寄ったローマにて)。
ポルトガルのポルトから、アセイシ君と共にセルビア共和国のベオグラードに移動です。航空会社は初めて使うLCCのイージー・ジェット。この会社はアーリー・チェックインが必須で、搭乗券も事前にスマホに入れておくかプリントしないと乗せてくれません。
ポルトの空港ではチェックインがスルーで、荷物を預けに行くと、2人の美人スタッフが迅速に対応してくれました。
28年ぶりのベオグラード
2 時間10 分でスイスのジュネーブに到着。ここでトランジットです。LCCの欠点は荷物がスルーで目的地に行かず、経由地で自ら取って再び預けないといけないこと。荷物預けカウンターは長蛇の列で、1時間も並びました。空港内で困惑したこと。スイスはスーパーのレジ係の時給が約3500円(!)という物価の高さを誇ります。通常、空港のセキュリティでは水は没収。私は水分を常に補給したい体質なので必ず空港で購入しますが、売店の水が約500円もするのです。水は必要だけど、そんなに払って買う気が起きません。
どうしようかとしばらく売店の前で悩んでいるとお金持ちのアセイシ君が「いつも嵐さんには世話になっているので水を奢らせてください」と言い、さらに彼は自分の水とポテトチップも購入しました。全部で1500円くらいです。
ジュネーブからは約2時間のフライト。ベオグラードに来るのは28年ぶりです。1991年9月当時、私は鉄道でヨーロッパを周遊していました。その過程で当時ユーゴスラビアの首都ベオグラードに寄ることになったのですが、駅に到着するとただならぬ状況。そこは若い兵士でごった返し騒然としていたのです。
内戦状態になっていたのは知ってはいましたが、当時インターネットはなく、旅行中で情報も得にくかったのでこんな状況になっているとは驚きでした。この町には泊まれないと思って次の列車を待つために外のカフェで時間を潰していたのですが、写真を持った母親が他の兵士に写真を見せて「息子を知らないか?」と尋ねまくっていたのが印象的でした。それ以来、いつか再訪したいと思っていたのです。
空港からタクシーに乗り、スラヴィヤ広場に面した旧社会主義的な古く無機質で大きいホテルにチェックインしました。ベオグラードのホテルは『ホテルスラヴィヤ』。1泊ひとり2000円くらいです。翌日、ベオグラード本駅まで歩いたのですが、駅に近づくと鳥肌が立ってきました。28年前のことがフラッシュバックしてきて不思議な高揚感が襲い、長い年月にわたり旅をしてきて良かったと思いました。
現在、駅は別の場所に移ったようで、旧駅は廃墟のようになっていました。28年前に入ったレストランは警察関係の詰め所になっていました。旧駅の、当時使用していた旧式の電光掲示板がまだ残っており、両替所の跡も確認。しばらくそこで当時のことを振り返り思いを巡らせました。
ベオグラードの感想。実質1日しか観光していませんが、今は平和で素朴な町でした。28年前の駅の痕跡を見られて満足です。ハンバーガーが旨いという噂だったので食べましたが大きくておいしかった。英語も通じるので観光にも力をいれているんだなと感じました。
●寒かったサラエボ
ベオグラードからボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都サラエボの空港までは約1時間。到着した際の感想は、「外が寒くてずいぶんとローカルな空港だなあ」。
サラエボは、町自体が山に囲まれた盆地になっています。町にはムスリムの人が多く、特にバシチャルシャ広場周辺では長い髭を生やしている男たちがカフェでボスニア風コーヒーを飲んでいる姿が目につきます。中近東的な風景であり、かつてオスマントルコに支配されていた名残がある場所でもあります。このボスニア風コーヒーは、フィルターなどを通さずカップに入れた曳いたコーヒーに直接お湯を注いで上澄みだけ飲むスタイルで、少し粉っぽく、私は苦手です。
●サラエボ観光
町は観光客が多く、特に中国人の姿が目立ちます。ベオグラードもそうだったのですが、中国と旧ユーゴスラビアは同じ社会主義国陣営で昔から交流があり(セルビアとボスニア・ヘルツェゴヴィナは旧ユーゴスラビアから独立)、テレビや映画のロケも昔から旧ユーゴほかで行われ、それに憧れている旅行者がやって来るようです。
10月初旬のサラエボは天気が悪く、気温は昼間でも12度くらいで寒さを感じました。町の中心には歩行者天国になっているフェルハディア通りがあり、土産物屋やレストランなどが並んでいます。
サラエボは面白い町で、狭いエリアにカトリック、ユダヤ教、イスラム教、東方正教会などの宗教施設が点在しています。そのような建造物が好きな人にはたまらないかもしれません。川に架かるラテン橋は、第一次世界大戦の勃発の原因の一つになったサラエボ事件の現場であり、その前にある建物はサラエボ博物館になっています。その入口には暗殺されたオーストリア皇太子夫妻が乗った車が展示されていて、観光客が写真を撮っています。
サラエボの感想。かなり寒かったですが優しい人が多く、治安もよく、町も美しかった。今度は地方の町にも行ってみたくなりました。
イスタンブール経由でイタリア・ローマへ
アセイシ君と私は、サラエボ空港からトルコ航空でイスタンブールを経由してローマに向かいました。イスタンブールの空港は数年前までは市内から車で30分位の距離でしたが、2019年4月にオープンした新空港は町まで1時間以上かかってしまうようです。空港で4時間弱トランジットをしましたが、休めるようなイスも少ないし、大きすぎて何だがあんまり好きになれませんでした。
ローマ行きの便の搭乗口前に座っていると、日本人の60歳過ぎのオジさんに話しかけられました。彼はナポリまでのフライトとのこと。聞けば、定年退職後、時間とお金があるのか学生ビザを取り、ナポリ郊外にイタリア語学留学しているのだとか。「言葉はなかなか上達しないけれど、市場では海鮮類は安いし、日本ではビール党だったけれどワインが安くて美味しいのでそればかり飲んでいますよ」。
この方はすごく紳士で身なりも良く、友人が世界中に住んでいるようで「ハワイに住んでいる友達がこの前来て、ローマまで迎えに行って……」などと、楽しそうに話していました。歳を取ってこのような暮らしをしているなんて、羨ましい。
●ローマには夜に到着
ローマの空港には19時過ぎに到着しました。来る前は「スリが多く治安が悪いので注意するように」と、いろんな人に言われ、現に知り合いでスリの被害に遭っている人がいるので警戒していました。
空港から中心街に位置するテルミニ駅まではレオナルド・エクスプレスという電車が通っています。料金は14ユーロ。空いていて快適です。乗客は中国、韓国、日本からの観光客ばかりで、35分ぐらいでテルミニ駅に到着しました。この駅では観光客を狙ったスリや犯罪者が多いと聞いていたので少し気合を入れます。
電車を降りて改札を出ると……人が大勢歩いていて駅舎の中がショッピングセンターのようになっています。観光客もたくさんいるし、まったく治安に問題はない。そこから歩いて予約してあるホテルまで歩きましたが遅い時間なのに店は開いているし、楽しい場所のようです。
●ローマはまるでテーマパーク!
翌日から町を歩きましたが、有名なフォロ・ロマーノ、パラティーノの丘、コロッセオの共通チケット売場は長蛇の列。日差しが強く、また気温も高い中で1時間半ぐらい待つのは耐えられないのでパスしました。
もちろん外からは眺めましたが、それにしても観光客だらけ。観光シーズン中の7、8月はどんな様子なのか……はちょっと考えたくありません。まるでディズニーランドの各アトラクションに並んでいる人たちみたいです。
有名なスペイン広場に行きました。一度は訪れたい場所です。現在、階段に座ってはいけないようですが、ここにいるだけで確かに楽しかった。トレビの泉は人でごったがえしており、まともに写真すら取れませんでした。
ローマの感想は“町中が人気テーマパーク状態”。町全体がすばらしい建造物ばかりで、圧倒され、ここは何度も来たいなと思いました。食べ物は美味しいし、コーヒーやビールもカフェでいくらでも堪能出来るし、楽しかった。惜しむらくはもう少し空いていれば……。
●ナポリに日帰り旅行
ローマからナポリに日帰りで行ってきました。この区間は距離がかなりあると勝手に思っていたのですが、特急でわずか1時間10分です。料金は往復で98ユーロ。
ナポリは昔から治安が悪いことで有名ですが、町の造りは素晴らしいです。特にスカッパ・ナポリと呼ばれる下町。狭い路地に古い建物が密集し、住民の洗濯物などが上階にかかり、美味しそうなレストランやカフェが軒を連ねています。きれいな海を眺めながらサンタルチアの卵城に行きました。この上からはナポリ湾やヴェスヴィオ火山が見えます。海風が気持ちよく、来て良かったと思いました。
午後になってスパッカ・ナポリという地区で名物のピザを頼みました。ナポリはマルゲリータ発祥の地なのでそれをいただきました。美味しかったですが、サイズが大きくて食べきれません。
ナポリの感想ですが、昼間の中心街は治安は問題ありませんが、駅までの帰路に寂れた道を選んで進んだところ雰囲気は最悪で少し危険を感じました。さらに駅のカフェで電車待ちをしている時、アセイシ君がテーブルの上に一眼レフカメラを置いていたところ、私の隣に座っていた地元の老人に「このカメラは危ないから隠した方がいい。この町は泥棒ばかりなのだよ」と注意されました。その後すぐカバンの中に入れたのは言うまでもありません。訪れる人は注意を怠らないでほしいです。
「ナポリを見てから死ね」という言葉を聞いていましたが、世界三大美港のひとつであり、夜景など誇れるものがあり(世界三大夜景のひとつでもある)、素晴らしい場所でぜひまた訪れたいです。
あと、イタリア全般に言えますがオヤジが世界一、格好良いです。お洒落で可愛く、優しいのです。
マルタ、正直、住みたいです
ローマからアリタリアで約1時間15分飛びマルタ共和国へ。宿を取った港町スリ―マは海岸線を歩くだけで気持ちが良いです。波が岩盤に当って白い飛沫を上げ、真っ青な地中海の空が心を無にさせます。マルタ人は素朴で親切な人が多く、物価もそれほど高くはありません。
アセイシ君は帰国し、マルタ滞在二日目の夕方に友人の梅田さんとホテルで待ち合わせしていました。昼間の観光を終え部屋で仕事をしていましたが、18時を過ぎても連絡がないのはオカシイと思ってLINEすると
「嵐さん、大変です。タクシーの中で財布を落としたみたいで、今フロントにいます」と返事がありました。一体、どうなっているのか? 到着早々、車に財布を忘れる男など世の中にいるのかと思いながらフロントに降りると、梅田さんがスタッフと話し込んでいます。詳細はこう。
空港からプリペイドタクシーを使い、その時に財布を出して20ユーロを払って、タクシーに乗り込んだ。ホテルについて宿代を払う際、財布がないのに気がつきましたが、たぶんどこかにあるだろうとこの時は考え、別の封筒にユーロを入れていたのでそれで宿代を払いました。その後、探しまくるが、ありません。落とした財布の中には現金で1万8000円と免許証、国際キャッシュカード、クレジットカードが入っていました。ホテル代も払ってしまったし、もう一文無しです……。
ホテルのスタッフは空港のタクシー会社に電話してくれましたが、出た相手は「明日電話する」とのひと言のみ。すぐに運転手に連絡してくれればいいのにそれもしないようです。港の近くにタクシー・ブース兼事務所があるので私もついていきました。すると運転手の一人が「空港に行った方がいい」というのでそれに従いました。梅田さんは一人で大丈夫なようで、私は80ユーロを貸し、空港に着いた梅田さんはプリペイドタクシーの受付、その前に立ち寄った携帯電話会社に行って探したのですがありません。最終的には「見つかったら電話する」それだけ。警察に被害届を出しましたが捜査する気はないようで、終始笑っていたそう。
ずっと電話を待っていた梅田さんですが最後には諦めました。ホテルのスタッフに愚痴をこぼすものの「ここはマルタだ。日本とは違うのだ。見つからないだろう」と言われました。ちなみに梅田さんは過去に中国で2回、フィンランドで1回財布を落としています。私がいたので彼にユーロを貸せたのですが、ひとりだったらどうするつもりだったのでしょうか。
●マルタ観光。見どころいっぱい
マルタ共和国の首都ヴァレッタにはフェリーで行きました。町全体が世界遺産だけあって素晴らしいです。この町の中にあるたくさんの観光地の中でも一番のおすすめは国立戦争博物館です。入場料は15ユーロで、館内は大きく、港を見渡せ、マルタの歴史を学ぶことが出来ます。
マルタは観光客目当てのレストランやバーが多く、食事の場所には困らないです。名物のウサギ料理を最終日に食べることにしました。レストラン(スリーマにある『タ・コリーナ』)は梅田さんが探してくれました。日本の若い女性3人組もいました。
スープ、前菜の盛り合わせなどを食べ、メインのウサギ料理が運ばれてきました。トマトで煮込まれており、味はあっさり目です。肉はナイフを入れるとすぐに崩れるくらい柔らかく、かなり美味。骨が意外と多く、少し食べにくさはありますが、こんなにおいしいとは予想していませんでした。
マルタの感想。全体的にノンビリしていました。新婚旅行やカップルで来るのには平和で静かなのでいいと思うし、もし悩みを抱えている人がいたら海をずっと眺めているだけで心が癒やされると思います。お金があったら1ヵ月ぐらい滞在したいくらいの居心地の良さで、正直住みたい。ちなみに梅田さんが不動産屋を覗いたらマンションが約5000万円でした。英語圏でもあり、日本人の語学留学生が多いのも納得できました。
最後に……貴重品をなくしたら絶対に戻ってこないので注意してください。
▸第1回 フィジー~ニュージーランド編はこちら
▸第2回 チリ~ポルトガル編はこちら
▸第4回 チュニジア~日本帰国編に続く
文:嵐よういち
筆者
地球の歩き方書籍編集部
1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。
【記載内容について】
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