ノルウェーファッション業界が日本進出できる可能性とは?

公開日 : 2012年06月06日
最終更新 :
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 5月29日、ノルウェーの首都オスロにあるノルウェーデザイン建築センターDogaにて、ノルウェーファッション研究所(Norwegian Fashion Institute)主催による講習会が開催された。「ノルウェー服飾業界が日本市場に進出するうえでの可能性と、マーケティング調査」を主要テーマとした今回の講習会は、駐日ノルウェー王国大使館と、ノルウェー企業の海外市場への展開・事業開発等に対するコンサルティングサービスを提供するイノベーション・ノルウェーとの協力のもと実現された。

 講演会では、ノルウェーファッション研究所からGisle Mardal氏、ファッションビジネス専門紙 繊研新聞から粟田 真里奈氏、ノルウェー在住の日本人ファッション・ジャーナリストで服飾ショップAntiに勤める入山りこ氏、イノベーション・ノルウェーから ホーコン・クリステンセン氏、駐日ノルウェー王国大使館からは仙波亜美氏、ノルウェー子ども服ブランドJumina代表の Elisabeth G. Rognmo氏が、講師として、それぞれの異なる目線から見た日本のファッション市場の一面を紹介した。

ノルウェー発のスポーツアパレルメーカー

「ヘリーハンセン」が日本で受け入れられた理由

 講演で何度も話題にでたのは「ヘリーハンセン(HELLY HANSEN)」だ。防水・防寒服を中心としたノルウェー発のスポーツアパレルメーカーで、日本市場への参入に成功したノルウェーの大手ブランドのひとつとなっている。今年2012年4月21日には、原宿のキャットストリート沿いにフラッグシップストアがオープンした。

 ノルウェーファッション研究所のMardal氏は、ヘリーハンセンが日本で受け入れられた大きな鍵のひとつとして、アメリカーやヨーロッパとは相違する「北欧」らしさを、日本市場の嗜好にあわせながら新しいコレクションをリリースしたことを挙げた。

「ノルウェー」というアイデンティティを

詰め込んだプロモーション活動を

 駐日ノルウェー王国大使館の仙波氏は、日本の少子高齢化の現状と、日本ではいわゆる「シルバー世代」が大きな購買層となっていることを説明。「ノルウェーのアイデンティティ」を強調したプロモーション活動をすることなどをノルウェーのファッション業界の聴講者に勧めた。

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 繊研新聞の粟田氏は、ノルウェーのファッションブランドメーカーの日本における潜在性について解説。最近の日本では、「アウトドア・ライフ」や「ノルディック・ファッション」を特集するファッション雑誌が増加傾向にあり、イッタラやマリメッコを代表するような「北欧」や「スカンジナヴィア」スタイルに日本市場は注目しているなどと述べた。

 また、ノルウェーの服飾業界が日本で開催されるファッションメッセに参加する上でのアドバイスをいくつか挙げ、講演の参加者たちは「日本のファッション・メッセ会場はどういうものか」強く興味を示していた。

ノルウェーのファッションブランドは

日本の「かわいい」文化などに対する理解と研究を

 日本とノルウェーのファッション市場と文化に詳しい入山氏は、「今日のジャパニーズ・ファッション・キーワード」として日本の「かわいい」文化に関するスピーチを披露。また、ノルウェーのファッション業界が日本に進出する際は、母国ノルウェーで通用した自分たちのマーケティング戦略を100%推し進めるのではなく、日本の市場や販売代理店からの声やアドバイスも聞き入れることを勧めた。

ノルウェーのデザインに、

「ちょっとした日本のエッセンス」を加える必要性

 イノベーション・ノルウェーのクリステンセン氏は、ノルウェーと日本のライフスタイルには共通点が多いこと、しかし、そのうえで「かわいい」文化など、「ちょっとした日本のエッセンス」を加える必要性があると説明。また、日本の「蒸し暑い湿気」など、ノルウェーのデザイナーが服をデザインする上で考慮にいれることを忘れがちな日本との天候の違いのことを指摘。蒸し暑さから、日本人はノルウェー人に比べて、「重たい」クオリティーのものを避ける傾向にあると述べた。

ノルウェー人から見た日本のファッション観

 日本のファッション・メッセに参加経験がある、ノルウェーの子どもブランド服Jumina代表のRognmo氏は、ノルウェー人の価値観からみた日本のファッション市場について独自の経験を語った。Rognmo氏は、「子ども服」市場に関して、日本ではノルウェーに比べて、働く「親」よりも、金銭的・時間的に余裕がある「祖母」の世代が孫たちの服の購入の決定権に大きく関わっていること、また、家族は労働に1日の多くの時間を割いており、買い物に費やす時間はほんのわずかということを説明。

まだまだ規模の小さいノルウェーブランドが

一企業で日本市場に侵入するのは難

 ほかに、日本人の「フランス」ブランド好き、日本語という「言語」がビジネスで大きな障害になること、渋谷と原宿など「場所」ごとに異なるファッションスタイルなど、ノルウェーの服飾業界人が日本に来たときに驚くであろう点を、Rognmo氏が自身の経験から語った。また、小さなノルウェーのファッションブランドが一企業で日本という巨大な市場に入り込むことはかなりの困難を要すること、よって、今後Rognmo氏はほかのノルウェーブランドと協力体制をとりながら、再度日本のファッション業界に挑戦したいと意欲を見せた。

 講演の最後には、ノルウェー服飾業界の出席者からの質問が寄せられ、有意義なかたちでの意見交換会となった。

ーNFIによる今回の講習会についての記事「Vårmøte i NFI med fokus på Japan」

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