[Jaan x Tippling Club] 2人のKrug Ambassades の一夜限定特別ディナーへ
プレステージシャンパンメゾン、Krug(クリュッグ)。その、世界でも数少ないアンバサダーとして選ばれている、JaanのKirk Westawayシェフと、Tippling ClubのRyan Cliftシェフが、一夜限りのスペシャルディナーを行う、ということでお邪魔してきました。
Jaanはミシュラン1ツ星とアジアのベストレストランで42位、Tippling Clubはアジアのベストレストランで27位という、どちらも今勢いのある、注目のレストラン。
スイスホテルの70階に位置し、マリーナベイサンズの絶景が望めるJaan。
ロマンティックな夜景を背景に、それぞれのシェフがシグネチャーメニューを繰り出す、特別な一夜となりました。
まずはアミューズ。
Charred Peppers
Ryanシェフから2品。まずは、4年前に初めてお邪魔した時からあるシグネチャー、炭入りの軽い衣でさっくりと揚げたパプリカに、わさび醤油のエマルジョン。炭入りの衣で揚げてあるので、表面を焦がしたパプリカ、のような印象に。しっかり火が通って甘みが増したパプリカに、焦げ感と近い凝縮感のある濃厚なたまり醤油のようなコクのある醤油。重たくなりすぎないよう、わさびを効かせて。
もう一つは、Nori Roll。
ご飯を巻いた海苔巻きを、軽く素揚げにして、スダチの香りを纏わせたもの。上には、シーアスパラガスを少し大きくしたような野菜、シーバナナが乗っています。
日本食材や日本料理も大好きだというRyanシェフ、海苔の磯の香りを生かし、海水のような塩気とジューシーさがあるシーバナナを合わせた、新しい感覚の前菜。動物性のシーフードを使わない、ベジタリアン素材で寿司を表現したような一品です。
Kirkシェフは、Rabbit Spring Roll
食材を知るために、南米アマゾンのジャングルに1週間泊り込んだこともあるというKirkシェフ、アジアの食材も上手に取り入れています。こちらはウサギの肉を使った春巻。米粉のチュイルに、カレーリーフで香りをつけた「ヨーロッパの春の味」ウサギの肉、表面にはコリアンダーのクリームチーズを散らして。青ネギが、アジアのニュアンスをプラスしています。
Truffle & Foie Gras Macaron
トリュフとフォワグラのマカロン。むっちり、もっちりとしたマカロンの食感に、トリュフが香るフォワグラ。前回頂いた時より、やや甘みが控えられているように感じました。イースト、バターなど乳製品の香りなど、しっかりとボディのある、Krug Grande Cuvee Edition 163との相性が抜群。ちなみに、Krugでは2016年から、Grande Cuveeにエディション番号をつけることになり、こちらはその第1弾。ちなみに、163という数字は、Krugの創業年の1843年以来、163回目のアッサンブラージュ(ブレンド)、という意味だそう。
そしてここで、Ryanシェフの定番、
Tomato Lava Lamp。バジルのオイルの上に、トマトのクリアな旨味だけを抜き出したようなジュースを注いだもので、口の中を一旦リセット。
パンは、(この日は出てきませんでしたが)Jaanのシグネチャーでもある、卵が干し草の上に乗って出てくる演出を彷彿とさせる、巣ごもりしているような、焼きたてのカンパーニュ。
食べやすい小さめの一口大に、あらかじめ切れ目が入っているのも嬉しい。Bordierの有塩バター、海藻入りバターを添えて。
ペアリングの白ワインは、オーストリア産のgruner(グリューナー)というぶどう品種のもの。
すっきりとした青リンゴの香り、時間が経つとまろやかさが増しますが、きりりとした印象は変わりません。
コースの一品目は、KirkシェフによるTsarskaya Oyster。
マリー・アントワネットを始め、代々フランス宮廷で食べられていたという、フランス・ブルターニュのCancale産のオイスターで、ロシア皇帝がわざわざ取り寄せて食べていたことから、Tsar(ツァーリ、ロシアの皇帝)の真珠、という名前が冠された最高級品。
出汁のゼリーときゅうりの泡、甘酢に漬けたきゅうりのピクルス。横に添えられているのは、ポン酢とポメロのゼリーです。
最初、キュウリや出汁のゼリーだけを食べた時は、少し酸味が尖りすぎているかな?と思ったのですが、一口牡蠣を食べて納得。クリーミーで甘い牡蠣の味わいを、最大限に引き出すバランスに計算されていました。
続いて、貝つながりのRyanシェフによる一皿は、Razor Clams。
一口大に切ったマテ貝、同じ形に切られて食べると違いを感じる、シャキシャキしたパースニップの上に、パセリと葉緑素を乾燥させた、紙のような薄さのチュイル状のもの。薄くパリパリとした食感も楽しめるよう、食べる直前にブルターニュ産の紫ニンニクのヴルーテのようなソースをかけて。上に飾られた花は、ネギ科の花のアリッサムや、アニスのような香りのマリーゴールド、ピリッとした味わいのキャットウィスカーなど、しっかりと味わいのアクセントになっています。乳製品やガーリックの印象がはっきりしていますが、同じくパセリや葉緑素の香りも強く、バランスが取れています。クラムチャウダーを昇華させたような印象の一品。
再びKirkシェフ
Norwegian Langoustine
春のメニューでもいただいた、アスパラガスに、ラングスティーヌを合わせて。前回いただいた時には、ガーリックの花がアクセントにつけられていましたが、今回はその代わりに、一つ前のRyanシェフのガーリックの効いた皿の余韻でそのままいただく印象。
ボルディエの海藻バターをシンプルにまとったラングスティーヌ、まったりとした食感を引き出す火入れが素晴らしく、レモンをひと絞りする代わりに一葉のオキザリス、その下にはイベリコ豚で作ったスペイン産の生ハム、Joselito(ホセリート)ハム。シャンパンのオランデーズソース、パルメザンの衣をまとったホワイトアスパラガスと、シンプルに緑の香りを生かし、バターを纏わせただけのグリーンアスパラガス。横にはグリーンアスパラガスのピュレ。
Ryanシェフの、Foie Gras
下に、モラセスや凝縮したドライフルーツの甘みを持つ、デーツのピュレにクルミを混ぜたものを敷いて、コニャックが香るフォワグラのムースを絞ってあります。クリームのテクスチャーが多い中、食感のアクセント、そしてフォワグラに添えられているスパイスのゴーフレットが、フォワグラに添えられるスパイス入りのフルーツブレッドを極限まで軽くしたもののような印象。そして、様々なテクスチャーに仕上げたりんご。コンポート、コンフィ、フリーズドライ、減圧調理器具のガストロバッグを使い氷点下の温度で「調理」したという、シャキシャキしたりんご(角砂糖のような形のもの)。そしてナスターチウムの葉でピリッと全体を引き締めて。シナモン、スターアニスなど、甘い香りのスパイスが上から仕上げにかけられています。
そして、もう一つRyanシェフによる、Wild Turbot
ここで、前の皿との橋渡し役になるのは、ナスターチウム。同じく辛味系で揃えた、クレソンのソース、上には黒大根のスライスをのせた、表面を香ばしく焼き上げたTurbot。そこに、辛味を旨味で揺り戻す、日本のアオリイカと、イベリコ豚のハム、Jamon De Bellota。米粒のように細かい、同じサイズに刻み、海と山の旨味をプラスしています。手前には、アオリイカのソテー、ナスターチウムの下には、水分を補う、ジューシーなカブを添えてあります。
ここで、赤ワインは2000年のGAJAのバルバレスコ。
17年経っていますが、まだ若々しい、と言っていいほど、枯れていない凝縮味があり、ほのかなスミレのような繊細な香りはありつつも、スパイス感などもあり全体的にしなやかでふくよかな印象です。
そこに、
A4 Toriyama Wagyu
群馬県で鳥山真さんが育てている、鳥山和牛。ごく薄くスライスしてから、昆布で挟み、加圧して旨味を移します。上には、沖縄の海ぶどうが、みずみずしさと、昆布とはまた違ったトーンの海の味をプラス。その下には、同じく鳥山和牛のヒレ肉がミディアムレアのステーキ状態で提供されています。さらに、甘みと酸味が十分に乗った日本のフルーツトマト。
昆布と牛肉の強い旨味があるため、前回食べた時は塩が強めに感じたのですが、今回はとてもバランスが取れているように感じました。
Ryanシェフは、こういった旨味のボリュームが強めの味に、苦味や緑の味わいで引き戻してバランスを取るのが得意な印象があります。
昆布、トマト、牛肉、旨味の競演を、ブッラータチーズにホースラディッシュを和えたものの辛味やごぼうのような香りで、サクサクした食感の、エルサレムアーティーチョークのほのかな苦味など、尖りすぎないアクセントになっています。
Pre Dessert
プレデザート、としか書かれていなかったサプライズデザートは、一人一人の名前が容器にちゃんと書いてある、"Dr.Ryan" 処方の錠剤と、NASA認定の宇宙の香りを移した、宇宙船のカード。
実際に宇宙服から採取した香りを再現したという香りは、どこか、白檀に焦げた金属の香りが混ざったような香り。この香りを嗅ぎながら、マサラカレーに使われるというスパイスが入ったシャーベットを火星の石のような形に仕立てたデザートをいただく、Ryanシェフの真骨頂、というべき、遊び心溢れる演出です。
そして、そのストロベリーチーズケーキの錠剤からイチゴ繋がりのバトンを受け取った、
Kirkシェフによるワイルドストロベリーのデザート。
Wild Strawberry
今が旬の爪の先ほどの小粒のイチゴで、独特の甘い香りと、「ほわっ」とした儚い食感があり、個人的にも大好きなイチゴ。その他にも、白イチゴや、コンポートにしたイチゴ、乾燥させて、しっかりとした甘みと酸味を楽しめるチュイル状にしたイチゴなど、様々なイチゴが組み合わされていて、私のようなイチゴ好きにはたまらない一品。そして、真ん中はなんと、ネパール産のTimut Pepper のソルベ。辛味はさほど強くなく、むしろ柑橘のようなすっきりとした香りを感じます。どこかホッとする、バニラクリームを挟んだ卵たっぷりの生地、そして少し米粉が入ったメレンゲは食感のアクセントにも。
Kirkシェフは、アジアのアクセントをヨーロッパのスタイルに自然に取り入れるのがとても上手だと感じます。
Coconut
キッチンで絞りたてのココナッツミルクをアイスクリームに仕立て、下にはタピオカ。上には、ココナッツミルクを、ココナッツオイルが分離するまで6時間煮詰め、オイルを取り除いて残ったキャラメル状のものを凍らせ、すりおろしてかけたもの。カフィライム果実の皮をアクセントに。
食後の小菓子
Ryanシェフは、
Pork & Cocoa
豚肉の塩漬けにチョコレートをかけた、甘さと塩辛さ、スモーキーさ、豚肉の脂分など、中枢神経を刺激する旨味をぎゅっと集めたもの
Praline Cannnelloni
薄いフィロをカネロニ風に仕立て、中に濃厚なナッツ感のあるプラリネアイスクリームを詰め込んだもの。
Kirk シェフは、
サクサクの絞りクッキーに、クロテッドクリームを挟んだ「スコーンの再構築」と、
Almond Roche
チョコレートの中に、アーモンドとキャラメルが詰まったロシェ、
Rhubarb & Custard
フィロペストリーの上に、ルバーブとカスタードが乗ったタルト。
と、いつものJaanの落ち着く締めくくり。
二人のクリュッグアンバサダーの競演、遊び心があり、実験的なRyanシェフ、アジアのエッセンスをうまく取り入れつつ、エレガントなモダンフレンチを作り上げるKirkシェフ。それぞれに個性の違う二人の味が、まるで一つの物語を紐解くように、味の構成要素というチェーンで一皿一皿が繋がっていて、次の味の扉が開いていく、そんな印象を持った素敵なコラボレーションでした。
<DATA>
■Jaan x Tippling Club, Four Hands Dinner
イベント日時:2017年6月12日(終了)
■ Jaan (ジャーン)
営業時間:ランチ 12:00~13:45(L.O)、ディナー 19:00~21:45(L.O)、無休
住所:Level 70, Equinox Complex Swissôtel The Stamford, 2 Stamford Road, Singapore 178882
電話: +65 6837 3322
アクセス:MRTシティーホール駅直結
筆者
シンガポール特派員
仲山今日子
趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。
【記載内容について】
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