[マカオ]人気中国料理シェフを迎えた新生Wing Lei Palaceへ!
ミシュラン二つ星、Asia's 50 Best Restaurants 35位のマカオのCity of Dreamsにある中国料理のレストラン、Jade Dragonの人気シェフ、Tam Kwok Fung シェフが、Wynn Palaceのレストラン、Wing Lei Palaceのヘッドシェフに就任。お披露目のイベントにお邪魔してきました。
2ヶ月前に就任以来、新しいアイデアを練ってきたというTamシェフ。前日にスタートしたばかりという、新しいメニューをいただいて来ました。
ウェルカムティーは、中国緑茶に、金木犀やバラを入れたもの。
そして、Wynnのハウスシャンパンは、SalonとDelamotteということで、ここでSalon 2006を。蜂蜜のニュアンスのある、きりりとしたブランドブラン。
Barbecued suckling pig top with caviar willed with minced shrimps
香ばしくカリッとした豚の皮の下には海老のすり身、そしてゴマをまぶし、上には、少し魚の香りがあるものの、強すぎない、イラン産のキャビア。
コーンのような甘みのある、マコモダケのような、台湾産のWater Bambooと呼ばれる野菜が添えてあります。
Wok-fried razor clam
スコットランド産のマテ貝の器の上には、マテ貝の身、シャキシャキした百合根、雲南省で取れたジロール茸をニンニクで炒めたもの。みずみずしいネギを添えて。
この後の3皿に合わせたのが、ギリシア・サントリーニ島のワイン。海に近いので、少し塩のニュアンスがあるのだとか。固有品種のアシルティコを使っていて、梨を思わせるようなフルーティでさっぱりとした味わい、後味に少し苦味が残ります。
Braised fish broth with fish maw and vegetables
グルッパの骨、さらに、5cmほどの大きさのコハダの仲間の魚、梭羅魚を出汁にスープを取り、グルッパの骨、中国湯葉、カブ、ネギ、生姜などを入れ、コクを出すために若いヘチマや春雨、大きな鱈の浮き袋Yellow croakerという魚の身などをスープに入れています。魚の脂の濃厚さがあり、ほんのり生姜と胡椒、ごま油がきいていて、上には揚げた干し貝柱が旨味を加えています。
Tamシェフが使っている梭羅魚。(Photo by Anthony Ng )
ベースの魚のスープは、その時に市場にある旬の魚で取る、というのも、Tamシェフのこだわりだそう。このスープは、他の野菜料理などにも使われます。
Hot and sour seafood soup
こちらもTamシェフのシグネチャーのスープ。ホタテのスライスや毛ガニを使ったサンラータン。上にははんぺんのような柔らかい卵白が乗っています。
豆板醤やチリウォーターを使ったスープは、中国黒酢だけでなく、バルサミコ酢を加えて、味わいに少し洋風のアクセントを加えているのがTamシェフらしいアレンジ。
Crispy sea cucumber
まるで天ぷらのような一皿。焦がし醤油を思わせる香ばしい衣は、干したヒラメの粉と、イカスミが入っていて、柔らかく調理されたなまこの中には海老のすり身が入っています。西洋の粒マスタードを添えて。もう一皿は、ポメロの繊維質の皮を、海老の卵の入った、アワビの出汁で煮てあります。
松の司の250本限定の日本酒は、メロンのような香りで、クリーンで綺麗な日本酒。酸が低めの白ワインのように楽しめます。
こちらはサプライズメニュー。マカオのローカルフードで、卵白で作った茶碗蒸しの上に、カニの身とスープをかけたものがありますが、それをTamシェフ風にアレンジ。
Tamシェフは、洋風の味の作りが上手く、しっかりとボティのある味。この卵白の茶碗蒸しも、卵白だけでなくミルクを入れてアレンジ、ローカルフードの場合はウォータークラブと呼ばれる地元産のカニを使うのが通常ですが、それを、フランス産のブルーロブスターにしてあります。ロブスターの卵、ナッティな味わいの36ヶ月熟成のイベリコハムも入れて。また、食材だけでなく調味料もグレードアップ。20年熟成のHau Diaoと呼ばれる中国酒を贅沢に使っています。まるでキャラメルのような香ばしさのあるソースでした。
そして、ここで出て来たのは、丸ごとのキスのような身質の獅頭魚、"Lion head croaker"という魚のフライ。
コーンスターチにニンニク、五香粉、唐辛子の粉などを混ぜたものをつけて揚げてあります。「頭から食べられるから、そのまま丸ごとかじって。小さな魚だけど、豊かな味わいがあるでしょう」とTamシェフ。Tamシェフは毎朝市場に行き、その時に見つけた良い食材を毎回メニューに取り入れるのだとか。メニューになかったこの魚も、そんなサプライズの一つ。
Roasted rack of New Zealand lamb
伝統的な窯で、ライチの木を使って焼いた後、西洋のオーブンの低温で15分休ませたラム肉はとても柔らかく、スモーキーでクミンなどのスパイスが効いています。スモークの印象と相まって、インドのタンドーリを思わせる味付け、とついつい感じたのですが、中国でも中央アジアに近い地域では、クミンを多く使うそうです。麻辣の添え物で、また違ったスパイシーさをプラス。コースの後半、こういったパンチのある味で、お腹がいっぱいなのになぜか食べられてしまう、という効果もありそうです。
とても気に入ったのが、このラムと、スイス最古のワイナリーによる、珍しいスイス産のシラーズ100%のオーガニックワインとのペアリング。ウールのような動物性の香りがあり、どこかミントのような、メントール系の清涼感も感じます。ミントとラムの香りの相性は良いもの。とてもよく合っていました。
Vegetable fried rice with lychee wood roasted goose and seasonal black truffle
アヒルも、ラムと同じ伝統的な窯を使い、ライチの木で焼き上げています。ローストしたアヒルも、火が入りきらないところで、野菜のチャーハンを作ってその中に埋め込み、蒸し焼きにすると同時に、アヒルの脂を吸わせて、どちらも美味しく仕上げる、というもの。
赤身の鳥のアヒルに合わせたワインは、キャンディのようなフルーツ感のリオハ。
そして、マッドクラブを使ったクラブヌードル。
カニ、焦がしネギ、生姜などと炒め合わせたマロニーと。
Baked sago pudding with taro paste
カスタードプリンには、スイートポテトやタピオカを入れて。程よい甘みでするりと食べられるプリンでした。
スペインの柿のデザート。
生の柿は砂糖を乗せて、バーナーであぶり、表面をブリュレのように飴の層を作ってあります。タヒチ産のバニラビーンズを使ったクリーム、
タロのピュレ、キャラメル味のライスパフ、 クッキークランブルと共に。
そして、最後には、まるでフランス料理店のような、デザートトローリー。
「フランスのお菓子でも、アジアのフレーバーを使って、ここらしく仕上げています」とTamシェフ。ふんわりとした口どけの栗と小豆のマカロンのクオリティも高く、思わずびっくり。お聞きすると、マカオのWynn Resortのペストリーの責任者、Yoann Mathyさんは、元ジョエル・ロブションで働いていたそうで、デザートトローリーの完成度の高さにも納得。
以前のJade Dragonの時よりも、フランス料理など、洋風料理の影響が強く感じられました。さらに、Wynn Lei Palaceでは、より一層季節の食材に寄り添って、以前よりももっとピュアな、季節の移り変わりに合わせた料理を作るつもりでいるとか。
「中国料理の季節感とは、中国漢方の発想による使うものの違い。例えば、夏場には体を冷やすと言われている冬瓜を使ったり、冬は肉を多く使い、スープにはとろみをつけるなど、中国料理というと、テクニックで季節を表現してきた。ただ、もっと季節の食材を使って、季節感のある中国料理を作っていきたい」と語ります。
例えば、中国には同じ鶏肉でも、品種によって、フライに使う鶏肉と、茹でる料理に使う鶏肉の種類が違うなど、食材の違いによって、調理方法を変えるということは行われているので、食材によって調理を変える、というのは、よく行われていること。それを、季節による食材の味の違いにフォーカスして変えていきたい、と考えているそう。
また、印象的だったのは、例えば中国の上質な酒を料理に使うなど、伝統的な味わいを昇華させているだけでなく、フランス料理に使われる上質な食材、ブルーロブスターやトリュフなどを、積極的に取り入れていること。また、味わいの構成要素も、茶碗蒸しのような卵料理にミルクを加えたり、中国黒酢にバルサミコ酢を加えたりと、味わいの上でも、西洋的なバランスをとって、ワインにも合うように工夫していること。「料理においてエレガンスは大切。デザートトローリーも、そんな考えから導入した」とTamシェフ。
新しい中国料理のファインダイニングの形が、これからどうなっていくのか、とても楽しみです!
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■Wing Lei Palace
営業時間:ランチ 11:30~15:00(月曜〜土曜)、10:30〜15:30(日曜、祝日)、ディナー 17:30~22:30、(無休)
住所:Wynn Palace, Av. da Nave Desportiva, Macau
電話: +853 8889 3663
https://www.wynnpalace.com/en/restaurants-n-bars/fine-dining/wing-lei-palace
筆者
シンガポール特派員
仲山今日子
趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。
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