映画・大仏廻国 幻の特撮映画の現代リメイク版がパリなどヨーロッパで上映
(映画ライター・高橋ヨシキさんによるポスター)
1954年に『ゴジラ』が公開される20年前、当時の最新技術を使い撮られた日本最初期の特撮映画がありました。1934年に公開された『大佛廻國・中京篇』(以下『大仏廻国』)です。内容は、人々の祈りに応じて立ち上がった愛知県東海市にある聚楽園大仏が、名古屋およびその近郊を歩くというもの。その後の日本の怪獣映画などにつながった作品です。
同作は特撮映画で有名な監督の円谷英二を映画界に引き入れた師である枝正義郎監督によって作られました。円谷はその後『ゴジラ』で特殊技術を『ウルトラマン』で監修を担当するなど、特撮の神さまと言われています。しかし『大仏廻国』は第二次大戦戦中および戦後の混乱でフィルムが散逸しました。現在では、当時の映画雑誌や新聞記事からしか映画の内容を知ることができません。そのため同作は「幻の特撮」と呼ばれています。
しかし、その『大仏廻国』を何とか復活させたいというリメイク企画が、映画監督の横川寛人さんを中心に立ち上がりました。2018年にはそのクラウドファンディングが成功。作品の製作が進み東京などで上映披露が行われました(地球の歩き方ニュース&レポート「戦前の幻の映画がついにリメイク『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』舞台挨拶」)。その現代にリメイクされた作品『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』が、5月13日と19日にパリで上映されます。
(『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』で再現された聚楽園大仏が動くシーン)
『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』は、大仏が歩き出すという1934年版のコンセプトは踏襲しつつも、物語自体は全く新しいものになっています。ただし一部でオマージュ的に1934年版のコンセプトも含んでいます。
(『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』に出演する宝田明さんと撮影する横川監督)
例えば、1934年当時の日本は、第一次大戦時の好況からその後に起きた不況の閉塞感、満州事変から日中戦争へと進む流れの中で国によって社会が鼓舞されていく空気、三原山での投身自殺ブームなどがありました。1934年版の『大仏廻国』では、そこにヒントを受けた描写が含まれており、横川監督はそれら状況が一部で今の日本と重なる雰囲気でもあると解釈。『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』に、それら社会性を入れ込んでいます。
今回ヨーロッパで公開されるバージョンは、以前日本で上映が行われた作品に追加撮影分を加えた海外長尺版となっています。
(『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』に出演する元NMB48・岩田桃夏さん)
さて、その『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』のパリ上映は5月に2回、2カ所で行われます。横川監督が登壇しアフタートークも行われる予定です。日本語での予約は『大仏廻国』公式サイトの予約フォームで申し込み可能。各会場の担当者へメールでも予約できます。
■2019年5月13日(月)20時
場所:Association culturelle franco-japonaise de Tenri
8-12 rue Bertin Poirée 75001
入場料:5ユーロ
要予約:resa@tenri-paris.com
■2019年5月19日(日)11時30分
場所:Cinéma Le Grand Action
5 Rue des Écoles 75005 Paris
入場料:5ユーロ
要予約:info@shurakuen.org
(5月19日の上映会場はパリの老舗映画館グラン・アクション)
『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』はパリで上映を行った後、イギリスのオックスフォード、ドイツのデュッセルドルフで上映が予定されています。また6月1日には、1934年版『大仏廻国』で動く大仏のモデルとなった聚楽園大仏がある、愛知県東海市・聚楽園にて披露されます。
聚楽園とは、中京地方で活躍し晩年に聚楽園大仏を建立した実業家・山田才吉が経営していた、旅館・聚楽園の跡地です。現在はその大部分が東海市の公園になっています。聚楽園大仏も旅館・聚楽園の敷地の一角に造られました。
(名古屋駅前の高層ビル群を背景に聚楽園に植わる木々から顔を出す聚楽園大仏)
クラウドファンディングで立ち上がった日本の特撮企画がヨーロッパでどのような反応を受けるのか楽しみですね。
筆者
フランス特派員
守隨 亨延
パリ在住ジャーナリスト(フランス外務省発行記者証所持)。渡航経験は欧州を中心に約60カ国800都市です。
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