「はんざきの森」に棲むオオサンショウウオ ~真庭市(旧湯原町)~
今月は湯原温泉を紹介していますが、温泉の入口に「はんざき橋」という橋があり、ここを渡ると「はんざきの森」という場所があります。
この森には「はんざきセンター」を中心に「はんざき大明神」「はんざきミュージアム」があります。
はんざきというのは、大山椒魚(オオサンショウウオ)のことで、身体を半分に裂いても生きているほど生命力が強いことからそう呼ばれていてます。
湯原の渓流に生息する大山椒魚は全国的にも珍しく、町では長寿のシンボルとしてマスコットキャラクターとしても親しまれています。
温泉街のあちらこちらに"はんざき"が顔を出しているので探してみてくださいね。
また、はんざきは中国、近畿地方の清流に生息する巨大な両生類で世界最大の両生類として知られています。「生きた化石」とも呼ばれ学術上の価値も高く国の天然記念物に指定されています。
ここがハンザキセンターという大山椒魚の飼育施設です。
中では水槽の中で歩くはんざきや骨格標本などが展示されています。
無料の施設でスタッフの方がいらっしゃらず写真撮影の確認が取れなかったので、こちらの真庭市の観光WEBで中の様子をご覧ください。 → ★
井伏鱒二の「山椒魚」という短編小説では、棲家の岩屋でじっとしているうちに成長しすぎて、岩屋から出られなくなってしまった山椒魚の悲嘆を描いていましたが、実際に見た山椒魚(はんざき)は、こちらが近寄ると顔をあげてゆっくりと私の前にやって、小さな目でじっと見つめてくれる好奇心旺盛な生き物でした。
(中には動かないものもいましたが!)
野生の大山椒魚は、ゆったりとした動きのわりに獲物と認識すると、素早い動きで指を噛むそうなので要注意です。
コンパクトな施設ながら、このセンターを見て回るだけで、湯原に生息するはんざきやその歴史などを学ぶことができました。お盆ということもあり子供連れのファミリーが次々と訪れていました。
このセンターの隣には古くから地元の人々が祀るはんざき大明神という祠があります。
漢字で書くとこんな文字です。
山椒魚を祀った神社というのはここだけではないでしょうか?
この祠のことは、江戸時代に編纂された『作陽誌』という古文書の中に記録されているそうです。
ザックリと説明すると戦国時代の頃、三井彦四郎という若者が村人から恐れられていた大はんざきを退治しますが、彦四郎をはじめ一族が死に絶えてしまいます。はんざきの祟りと考えた村人たちは、その祟りを鎮めるために祀ったといいます(センターの中に詳しい物語が紹介されています)。
毎年8月8日に神主と僧侶を呼び祝詞と お経を唱えて祟りを治めているそうです。このお祀りはいまもはんざき祭りという形で残り、湯原温泉の夏の風物詩となっています。
ご神木の楠も根本がふたつに分かれた立派なものでした。
湯原の地には昭和8年の夏、与謝野晶子・鉄幹夫妻も来られて、十数種の短歌を詠んでいます。そのうちの三首がはんざきにまつわる短歌でした。
山椒魚三尺なるを湯のあるじ 抱きて示しぬ地の謎のごと 寛
水槽の山椒魚おば抱き上ぐる 裸體の人を山風が吹く 晶子
山椒魚棲める渓とも思われず 若き男女の岩湯にあれば 晶子
敷地内の植栽も何やらはんざきを思わせる形ですね。
また、センターの隣の敷地にははんざきミュージアムがあります。
外の駐車場には8月8日のはんざき祭りのときに町なかを練り歩く山車です。烏帽子をかぶったカラフルな子は花子ちゃん。
こちらは男の子です。
残念ながらコロナ禍で昨年に続き、今年もお祭りは中止となりました。
奇祭ともいわれるこのお祭り、いつか取材してみたいと思っています。
・住所: 〒717-0406 岡山県真庭市豊栄1515
・電話番号: 0867-62-2011(真庭市湯原振興局)
・公式サイト: 真庭観光局公式サイト
・営業時間: 9:00~17:00
・定休日: 年末年始
・料金: 無料
・駐車場: 普通車30台、バス10台
・交通アクセス:(車)米子自動車道湯原ICから約10分/(公共)JR中国勝山駅から湯原温泉・蒜山高原行きバス約35分、「湯原温泉」下車、徒歩約15分
筆者
岡山特派員
mami
岡山生まれの岡山育ち。岡山市内在住の生粋の「おかやまっ子」です。
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