64. タシケントで味わえるタタール料理はロシアと中央アジアのいいとこ取りな味!?
サローム(こんにちは)!
タタール人という民族をご存知でしょうか? おもな居住地域はロシア領内の共和国、タタールスタン共和国。しかしながら宗教は主にイスラム教、彼らの言語タタール語はウズベク語やトルコ語などと同じグループのテュルク諸語...と、ウズベク人とも共通点が多い民族です。現にウズベキスタンなどの中央アジア諸国にも多くのタタール人が住んでいるのです。かつては商人としてロシアと中央アジアを行き来して交易活動を行っていたことでも知られ、まさにロシアと中央アジアの狭間で生きてきた民族といえるでしょう。
といってもなかなか日本人にはなじみの薄い民族ですが、東京の代々木上原にある立派なモスク「東京ジャーミイ」を設立したのは、実はロシア革命から逃れ東京にやって来たタタール人コミュニティ。そして最近は有名フィギュアスケート選手を多く輩出し、あのザギトワ選手もタタール人。そう聞くと少し親近感が沸いてきませんか?タタールスタン共和国やタタール人の情報を網羅した『タタールスタンファンブック』というマニアックで貴重な書籍も近年出版され、(あくまでニッチな一部界隈の中でですが)にわかにタタールが注目を浴びてきたと感じます。
私自身も以前からタタールという民族に興味がありました。独立している「スタン系」諸国をすでに制覇したので、次はタタールスタン共和国などロシア内の「スタン系」にも行きたい、と思っていたのです。そして2年半前に青年海外協力隊員としてタシケントに住んでいたとき、この町にタタール料理店があるのを発見しました。もちろん行ってみざるを得ないでしょう。
そのお店の名はカフェ・イルミラ。中央アジアやロシアではよくあることですが、カフェと名乗りながらもその実態は立派なレストランです。
とはいえもちろんタタール料理など今まで食べたことはありません。私の知る限り日本全国を探してもタタール料理レストランはなく、日本人にとっては激レア料理なのです! 日本国外で沖縄料理専門店を訪れるような感覚でしょうか。
メニューも店員さんもロシア語のみで詳しい料理の説明が分からず、とりあえずタタールっぽいものパジャールスタ(お願いします)、と何とか注文したのでした。
料理の印象をひとことで言うと、ロシア料理と中央アジアのいいとこ取り。当たり前といえば当たり前なのですが、料理もタタール人という民族のポジションをしっかり反映していたのです。お肉は大ぶりで美味しく、スパイスの使い方も絶妙。それでいてウズベク料理の特徴である脂も控えめで日本人でも食べやすいお味でした。
あれから2年、再度タシケントに住むことになり、またタタール料理を楽しみたい...と思っていたところ、以前の場所から引っ越したもののまだ営業しているという情報を聞いて再訪してみました。
前の店構えよりかなり大きくなり、若干ディープで入りにくさがあった以前と比べるとウェルカム感が増したように感じます。
店内もこの通りで、まるでウズベク人民家でよく見るブドウの木の下にいるよう。ロシア伝統の湯沸し器、サモワールなども飾られています。
メニューはロシア語のみ、店員さんもロシア語しか通じないのは以前と同じ。明らかにウズベク系ではない顔立ちのおばさんが店員でしたが、聞きそびれましたがやはりタタール人なのでしょうか。かつてはアジア系の顔立ちに近かったであろうタタール人ですが、ロシア人との通婚が進んだ結果、現在はロシア人と見た目が変わらない顔立ちの人も多いとのこと。
タタールスタン共和国の首都の名が冠されたカザンサラダ(Салат «Казань»)と、前回も注文したタタール風ラム肉ポテト添え(Ягненок по Татарское с картошкой)、チェブレキ(Чебуреки)の3つを食べてみます。
カザンサラダは野菜とチキンをマヨネーズで和えた一品。しかしながらこの国のレストランでは地名が付いたサラダをよく見ますが、おそらく実際そこで食べられてはいないであろう創作風サラダばかりなのです。ちらほら見る日本サラダというものも、野菜と牛肉を醤油で和えた日本でお目にかかれない代物ですし。実際にタタールスタン共和国やカザンに行かれた方は、このようなサラダが出てきたかどうかぜひ教えてください(笑)
タタール風ラム肉は肉をステーキのように厚く焼いたもので、柔らかくて美味しくビールが進みます。
そしてこのチェブレキこそがタタール名物料理。肉などの食材を大きな薄い皮で包んで揚げた、サクサク食感が印象的な食べ物です。このお店では肉、チーズ、トマトチーズ、ジャガイモの4種類がありました。包み揚げというとこの国ではウズベクサモサをイメージしてしまいますが、それより大きいのに脂少な目で食べやすい!
私はまだ少人数でしか行ったことがありませんが、大人数で行けばさらにいろいろ料理を楽しめるはず。さらに週末の夜に行けば、またお客さんたちが陽気に踊っているのを目にするかもしれません。
日本ではまずお目にかかれないタタール料理、ただ美味しいだけでなく中央アジアをより深く知るためにもおすすめの民族料理です。
それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで!)
■カフェ・イルミラ Kafe Ilmira
- 住所
- 210/3 Sultonali Mashxadi ko'chasi, Toshkent
- 電話番号
- +998-98-127-3131
- 営業時間
- 11:00~23:00(予告なく変更となる可能性あり)
- アクセス
- 地下鉄プーシキン駅またはブユク・イパク・イューリ駅からタクシーで約5分、またはOltintepa ko'chasiバス停から徒歩10分
- https://www.instagram.com/cafe_ilmira/
筆者
ウズベキスタン特派員
伊藤 卓巳
根っからのスタン系大好き人間です。まだまだ知られていないウズベキスタンの魅力や情報を、サマルカンドより愛をこめてお伝えします!
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