スペインでワインやオリーブオイル、黒トリュフの生産者を訪ねてみよう
スペイン旅行の楽しみは名所めぐりだけではありません。サッカー観戦やフラメンコ鑑賞のほか、バルやレストランでおいしい食べ物に舌鼓を打つ、サンティアゴ巡礼路を歩くなど、楽しみ方は無限大。今回はワインとオリーブオイル、そしてトリュフのツーリズムについてお話します。
スペイン全土にワイナリーが点在
まずはじめに、なぜスペインでワインとオリーブオイルとトリュフなのか。スペインのワイン生産量は、イタリア、フランスに次ぐ世界3位。オリーブオイルは1位で世界の生産量の約半分を占め、そして黒トリュフはフランスに続き世界2位と、それぞれの生産大国なのです。また、どれも観光アクティビティのひとつとして機能しており、テイスティング方法も確立されているという共通点もあります。
スペイン語でワインツーリズムのことはenoturismo(エノツリスモ)といいます。スペインでは今から3000年以上前からワインの生産が始まっていたそうで、ほぼ全土にワイナリーが点在しています。20世紀後半からは質より量だった生産から質を重視するようになり、世界で注目されるようになりました。
作り手さんに注いでもらうワインはワイナリー訪問の醍醐味
栽培されているスペイン固有のブドウの品種は多々ありますが、主だったものは、赤ワインならテンプラニーリョやガルナチャ、ボバル、カリニェナ、メンシア、モナストレルなど、白ワインだとアルバリーニョやベルデホ、マカベオ、モスカテル、ゴデーリョなど。それ以外に外国産の品種も栽培されています。同じ品種でも気候や地形、土壌によって個性の異なるワインになるので、スペインのワインの風味はバラエティに富んでいます。
多くのワイナリーがワインツーリズムの一環でビジターを受け付けていて、実は私も何度か行ったことがあります。ブドウ畑では品種や土壌、栽培について、醸造所では生産工程の説明を聞き、最後にお待ちかねのテイスティングタイムというプログラムが一般的です。話を聞いた後に作り手さん自らに注いでもらうだけで、ワインがよりおいしく感じるので不思議なものです。
スペインは世界一のオリーブオイル生産国
オリーブオイルもまたワイン同様に紀元前1000年頃にフェニキア人がイベリア半島にもたらしたと考えられています。古代ローマの時代には、オリーブオイルはイベリア半島の主要な輸出品目でした。現在では、世界で生産されるオリーブオイルの約半分はスペイン産が占めるほどのオリーブ大国です。ワインに少し遅れ、21世紀に入ってからはこちらも量より質を重視するようになり、ただの植物油ではなくグルメ食品に分類されるオリーブオイルも多々あります。
オリーブオイルツーリズムはスペイン語ではoleoturismo(オレオツリスモ)と呼ばれ、近年多くの生産者がビジターを受け入れるようになりました。ワイン同様、畑では品種や土壌、栽培の話、搾油所ではどうやってオリーブオイルをつくるのかの説明があり、健康効果に関する話も聞けるかもしれません。ワインやオリーブオイルは収穫体験ができるところもあります。
ぜひ体験してみたいオリーブオイルテイスティング
訪問の最後には、きっとテイスティングタイムもあることでしょう。まずは香りを嗅ぎ、青草やリンゴなどの香りを感知、それからスプーン一杯くらいを口に含んでゆっくり味わうのです。「油を飲むの?」と驚かれるかもしれませんが、高品質のエキストラバージンオリーブオイルなら口に油臭さがのこることもなく、ゴクリと飲めてしまうんです。たいていはパンも一緒に出てきますので、パンにつけておいしさを味わうこともできます。
それまでスーパーで安いオリーブオイルを使っていた私が初めておいしいものに出合ったときは、「今まで買っていたものはいったいなんだったのだろう?」と驚きました。皆さまにもぜひ体験いただきたい驚きです。
トリュフツーリズムは新しい観光形態
続いては、トリュフツーリズム。スペイン語でtrufiturismo(トゥルフィトゥリスモ)といい、これは比較的新しい形態になります。というのも、もともとトリュフは自生しているものだったのですが、今は栽培農家が増え、市場に流通するトリュフの90%は栽培されたものとなったからです。スペインのトリュフは基本的に黒トリュフで、主にナバーラ、サラゴサ、テルエル、ソリア、ログローニョなどの北東部で栽培が盛んです。高価な食材ゆえ、diamante negro(黒いダイヤモンドの意)と呼ばれています。
このトリュフツーリズムは、私も半年ほど前に初めて体験しました。お邪魔した農園では、トリュフが寄生しやすいセイヨウヒイラギガシの苗木を育てていたのでその説明を受け、その後は実際にトリュフ豚とトリュフ犬がトリュフを探すところを見学させてもらいました。ワインと比べるとトリュフはまだ身近なものではないので、ぼんやりとしかわかっていなかったのですが、どんなふうに栽培し、どんなふうに採るのかがわかり勉強になりました。トリュフを買った後の保存方法や簡単なレシピも教えもらったので、早速ひと粒買い、家でおいしくいただきました。また別の場所では、トリュフテイスティングのレクチャーを受け、香り、触感、そして見た目で評価することも知り、まさに目から鱗でした。
締めはトリュフ料理に舌鼓
産地には必ずトリュフ料理のおいしいレストランがあるので、知識を身につけた後には食べに行くことをおすすめします。
日本語ベースのツアーが少ないのが玉にキズ
この3つのツーリズムの問題点を挙げるとすると、なかには英語でも実施しているところもありますが、スペイン語だけのところも多いということでしょうか。どうしても説明内容をしっかり理解したい場合は、現地で日本語のガイドさんを雇うことになります。もしリベラ・デル・ドゥエロやルエダの辺りであれば、ワインに精通した日本人がワイナリー訪問をアレンジ、同行してくれますので、詳しくはこちらをご覧ください。
BUDO YA(ワイナリーツアー日本語コーディネート)
http://www.budoya.jp/
ちょっとしたうんちくが備わるだけで、ワインもオリーブオイルもトリュフも買う楽しみや味わう楽しみが大きく広がります。スペイン旅行にお越しの際は、ワインやオリーブオイル、黒トリュフのツーリズムもあわせてお楽しみくださいね。
(監修/地球の歩き方編集部)
筆者
スペイン特派員
田川 敬子
東京生まれの東京育ち。オリーブオイル専門家としてスペインと日本で活動するほか、複数のウェブサイトにスペイン情報を寄稿。
【記載内容について】
「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。
掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。
本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。
※情報修正・更新依頼はこちら
【リンク先の情報について】
「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。
リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。
ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。
弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。