フランスの超有名観光地に激似! イギリスの「セント・マイケルズ・マウント」

公開日 : 2023年06月24日
最終更新 :

1度は行ってみたい憧れの世界遺産、小島に修道院がそびえるフランスのモン・サン・ミシェル。友人曰く、パリから離れているのでけっこう行くのがたいへんなようです。

それを言うなら、イギリスの西コーンウォール地方にある「セント・マイケルズ・マウント(St Michael's Mount)」も、ロンドン(パディントン駅)からペンザンスまで、電車で5時間半もかかるので気軽に行ける場所ではありませんが“イギリスのモン・サン・ミシェル”と呼び声が高いので、リゾート地としてこれからますますにぎわうコーンウォールに行く際には、ぜひ訪れてほしい観光地です。

数々の伝説が生まれた聖地

セント・マイケルズ・マウントは「聖ミカエルの山」という名前のとおり“漁師の守護神”である、聖ミカエルが深くかかわっています。

公式ウェブサイトによりますと「495年に聖ミカエルが島の西側に現れた」という伝説をきっかけに、巡礼者や修道士、この地を崇めるようになった人々が詣でる場所として、神聖化されていったそうです。

島にまつわる逸話も多く、アーサー王物語の基礎を作ったとされるジェフリー・オブ・モンマス(関連記事)は、アーサーがセント・マイケルズ・マウントで巨人を打ち負かした伝説を加えています(参照:C Batey, Tintagel Castle (English Heritage guidebook, London, 2011), 45.)。その後1262年の「4つの奇跡」やアーサー王時代に活躍したという設定の新キャラクター『巨人殺しのジャック(Jack the Giant-Killer)』の登場など、数々のストーリーが生まれる一方、スピリチュアルなパワースポットとしても人気が高まっていきました。

潮の満ち引きによって姿を変える潮間島

潮の満ち引きによって島への渡り方が変わってくるセント・マイケルズ・マウントへは、マラジオン(Marazion)という町から向かいます。到着したときは、まさに孤島状態でさっそくボートの列に並びました。運賃は片道大人£2.8、子供£1.5で、並んでいる途中でスタッフから買いました。

気温の変化が激しいイギリス、前日に半袖の暑さでもこの日のように曇り、かつ海辺の強風下では一転、寒さが厳しかったです。夏でも日陰に入るとひんやりすることがあるので、常に羽織るものが必要です。いまの時期は逆に、遮るものがなく直射日光が厳しいのではないでしょうか。なにせこの日ようやくボートに乗れたのは、50分もたってからのこと!

暑くても寒くてもキツく、歩いて15分で渡れる干潮時のほうが断然効率はよいですが、どちらも体験すると島の違った姿を見ることができ、よい思い出になることでしょう。なお、いかにもいま風のトラブルですが、周辺はドローンの飛行が禁止されています。城の肖像権などの関係かな、と思いましたがウェブサイトによりますと、航空制限地域だからだそうです。この日もさっそくあったのか、列の整備をしているスタッフが無線で報告をしていました。

村への上陸と城見学

5分もたたずに島へ到着し、いよいよこのユニークな形式の村や城の見学です。セント・マイケルズ・マウントは1600年代のなかばより貴族のセント・オービン家の所有となり、1954年からはナショナル・トラスト(関連記事)にその大部分が譲渡されましたが、現在においても一家はまだ島で暮らしています。

© St Michael's Mount, National Trust
© St Michael's Mount, National Trust

ティンタジェル城(関連記事)でもそうでしたが、すぐさまスタッフが駆け寄ってきて、全体の案内をザッとしてくれるのがありがたいです。いわく「午後からは非常に混み合うので、強制ではないけれどまずは城見学を先に済ますのが賢明」とアドバイスしてくれました。

言われるがままにそうしてみると、城から出たあとの島の光景は一変。ひとりひとり入場券を携帯画面で確認する必要があるので、入口には長蛇の列ができていました。これではボートで並んだあと、上陸してもさらに並ぶ羽目になるところだったので、効率よく周れるよう教えてもらえて助かりました。

© St Michael's Mount, National Trust
© St Michael's Mount, National Trust

12世紀に建てられた城内部にも、おなじみナショナル・トラストによるガイドがおり、オービン家の豪華な食堂や銀食器、歴代家主の肖像画、図書室などに目を向けたりガイドの説明に耳を傾ける観光客の姿がありました。

日本との意外なつながり

1066年のフランス人による「ノルマン征服(Norman Conquest)」以来、島はモン・サン・ミシェルのベネディクト会修道院の支配下にあり、同島の教会と修道院は1135年に建設が始まりました(出典: “The castle’s beginnings” 2023, St Michael's Mount.)。

その後も、真紅のバラと白のバラをそれぞれ家紋にもつ、ランカスター家とヨーク家による争い「薔薇戦争(Wars of the Roses)」など、島は度重なる内乱の場となり、城は要塞化されました。

© St Michael's Mount, National Trust
© St Michael's Mount, National Trust

そのせいもあるのか、城の展示物には武器の展示もあり、なかには世界の刀に混じって、なぜか日本刀もあり「Katana〜‼︎ 」と、日本刀に大興奮する子供がいて驚きました。わが子に「なぜ刀という言葉を知っているのだろう」と聞いてみると、レゴの『ニンジャゴー』だと言っていました。ナルホド、恐るべしサブカルチャーの影響……。

© St Michael's Mount, National Trust
© St Michael's Mount, National Trust

来年の2024年まで修理中だという、日本の鎧まで本来はあるようで、説明書きによるとこれはオービン家のセント・レヴァン男爵2世が1906年、明治天皇にイギリスの最高位の勲章である「ガーター勲章(Order of the Garter)」を奉呈する一員として来日した際に贈られたものだそうです。意外なところで祖国とのつながりを見つけ、かつ人気もありそうなことを知れてうれしかったです。

庭園と城からの眺望

イギリスには4つ(ユニオン・ジャック、スコットランド、イングランド、ウェールズ)の国旗(関連記事)のほかに、一部の地方と都市にも独自の旗があることに、コーンウォールに来て初めて気づきました。

黒字に白十字の旗はコーンウォールの守護神、聖ピランの旗で、BBCの記事によりますと、毎年3月5日は「聖ピランの日(St Piran’s Day)」だそうです。ティンタジェル城でコーンウォール語があったことに驚いたばかりですが、コーンウォールにはほかにふたりも聖人がおり、うちひとりは聖ミカエルなんだそうです。

翻るピランの旗
翻るピランの旗

3人全員にそれぞれ記念日があり、聖ミカエルが漁師の守護神でもあったのと同様、聖ピランにもスズ鉱山労働者の守護神という役割も担っていたようで、コーンウォール旗(ピランの旗)は「白いスズが黒い岩間に浮かんでいる、あるいは悪から身を守る」ことを表しているそうです(参照: “The Legend of St Piran” Sep 2014, BBC.)。

その旗が、砲台のある場所で掲げられていました。大砲の照準は、マラジオンの町に合わせられています。展望はバッチリで、いつのまにか干潮になっていた海には岸へと続く道が現れ、無数の人々が歩いている光景は信じがたく、満潮時に船で渡ってきたことがまるで夢のように思えました。

聖ミカエルのブロンズ象が設置されているという教会は、ちょうど礼拝中だったので「誰でも入場可」とはありましたが、入るのははばかられました。かわりに、島の斜面に沿って1878年に初代セント・レヴァン男爵のためにデザインされたという、きれいに整えられた庭園を見下ろしました。

© St Michael's Mount, National Trust
© St Michael's Mount, National Trust

村まで降りるとカフェやアート・ギャラリー、土産店があったのでひととおり見て周り、最後にショップでお菓子とデザインに迷った末、額入りの絵を記念に買い求めました。この日はさほど好天には恵まれませんでしたが、青空に太陽が赤々と照り輝く明るい色調のこの絵が、そんな残念な気持ちを吹き飛ばしてくれました。

冬はボートの運行がなくなり、港と村への上陸が無料になること、夏は逆に入場券が必須なこと、ナショナル・トラスト会員も含めすべてに予約が必要など、季節によって解放されるエリアや条件がかなり異なり複雑なので、詳細は以下のウェブサイトを確認ください。

◼️
セント・マイケルズ・マウント(St Michael's Mount
・住所
Marazion, Cornwall, TR17 OHS
・アクセス
電車Penzance駅からバス、またはタクシーにてMarazionまで約10分
・営業時間
9:30〜17:00(土曜休み、日曜および9/2以降はガーデン閉鎖)
・入場料
城大人£15、子供(5〜17歳)£7.5、別途ガーデン入場料、併用チケットあり

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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