フランスのクルーズ会社、「ポナン」で巡る新しい日本の船旅!

公開日 : 2023年07月31日
最終更新 :
筆者 : 伊澤慶一

「ポナン」は1988年、フランスの船乗りによって設立されたクルーズ会社。現在、日本に就航する客船の中でもトップクラスのラグジュアリークルーズで、洗練されたデザインや小型客船ならではのパーソナルなおもてなし、そしてポナンだからこそ実現できるエクスペディション(冒険的)な航路が魅力です。これまでの概念を大きく変える「新しい日本のクルーズ旅」、実際に乗船した様子をレポートします。

クルーズ界のスモールラグジュアリー、ポナンの魅力とは?

132室とコンパクトな「ル ソレアル号」。ポナンの哲学を体現した美しいデザインが目を引く
132室とコンパクトな「ル ソレアル号」。ポナンの哲学を体現した美しいデザインが目を引く
全乗客が好きなタイミングで食事可能。コース料理を提供するガストロノミックレストラン
全乗客が好きなタイミングで食事可能。コース料理を提供するガストロノミックレストラン

ポナン社は13隻の客船を所有し、2023年に35周年を迎えたフランスのクルーズ会社。そのほとんどが総トン数1万トン前後、乗客・乗員定数500人以下のスモールシップで、2024年デビュー予定の世界最大客船「アイコン・オブ・ザ・シーズ(ロイヤル・カリビアン・クルーズ社)」が約25万トン、収容可能人数約1万人規模であることと比較すると、いかに小型かがわかるでしょう。

ホテル業界で言うところの「スモールラグジュアリー」であり、実際に『コンデナスト・トラベラー』誌が発表した最新のアワードで、ポナンは、「クルーズ船/500人以下の小型船部門」で世界一に選ばれています。すべての客室がオーシャンビュー&バルコニー付き(一部客船を除く)だったり、ターンダウンを含め毎日2回の客室清掃が入ったり、フルコースのガストロノミックレストランがいつでも好きなタイミングで利用できたり(大型客船では上級ダイニングは事前予約制のケースが多い)と、高級ホテル以上に快適で上質なサービスを提供してくれる、それがポナンのクルーズなのです。

「海側バルコニー付きプレステージ」のお部屋。客室は18㎡、バルコニーは4㎡ある
「海側バルコニー付きプレステージ」のお部屋。客室は18㎡、バルコニーは4㎡ある
クルーズ旅の印象を大きく左右するバルコニーの有無。ほぼ全室に付いているのが嬉しい
クルーズ旅の印象を大きく左右するバルコニーの有無。ほぼ全室に付いているのが嬉しい

私が乗船したのは「ル ソレアル号」。世界で初めてラグジュアリークラスの客船で極地(南極・北極)を旅することを前提に建造された「シスターシップシリーズ」の船で、9日間かけて九州の寄港地を巡るコースでした。

ル ソレアル号も約1トン級のサイズのため大型客船ほどの船内設備はありませんが、それでもプールやシアター、スポーツジム、スパ&ヘアサロン、ライブラリー、グッズショップ、パノラミックラウンジなどを完備。パブリックスペースは乗客数に対してゆとりをもって設計されているため、航海を通じて全般的に静かで優雅な時間を過ごすことができました。船内はアルコールのオーダーやアクティビティ参加も含め、ほぼすべてがオールインクルーシブ(一部の銘柄のワインやカクテル、またスパ&ヘアサロンメニューは有料)。乗船してからあれこれ追加オプションで悩まなくていいのもポナンの魅力です。

ラウンジは2ヵ所。Deck6のパノラミックラウンジでは毎日ピアノの生演奏が行われていた
ラウンジは2ヵ所。Deck6のパノラミックラウンジでは毎日ピアノの生演奏が行われていた
24時間利用可能なフィットネスジム。眺望のいいDeck5にあり、隣にはハマムもある
24時間利用可能なフィットネスジム。眺望のいいDeck5にあり、隣にはハマムもある

実は私、以前マイアミから10万トン以上の大型客船で旅した経験があるのですが、今回ポナンに乗船して、同じクルーズでもこんな別世界があるのかと正直驚きました。もちろん前者にも充実した設備やカジュアルクルーズならではのコストパフォーマンスなど多くの魅力があるのですが、ポナンは何をするにも少人数なので、ホスピタリティやサービスがきめ細かくて丁寧。同じ旅・冒険をするのでも、例えるなら修学旅行とプライベートツアーくらい違って、得られる体験や知識、思い出がより濃密に感じられるのです(あくまで個人的な感想)。

船尾の階段を上がったオープンバーでは、毎夕異なるカクテルテイスティングが開催
船尾の階段を上がったオープンバーでは、毎夕異なるカクテルテイスティングが開催
サンセットの美しい時間に生演奏を聴きながらカクテルタイム。ポナン乗船中、一番好きだった時間
サンセットの美しい時間に生演奏を聴きながらカクテルタイム。ポナン乗船中、一番好きだった時間

エレガントでスタイリッシュなデザイン、洗練されたエンターテインメント、そして日々提供される美食の数々。時々ここが洋上であることを忘れてしまいそうなくらい快適な宿泊環境ですが、船は巡航速度最大16ノットで港から港へ移動。これはクルーズ全般に言えることですが、遊んだり寝ていたりする間に次の目的地へと移動してくれるクルーズは、究極に効率の良い旅の手段。特に日本のような起伏が多く入り組んだ島国では、陸路を移動するより海上を移動するほうが圧倒的に便利だったりするのです。

島国日本はこの規模のクルーズ船で巡るのがちょうどいい!

小さな港でも十分接岸可能なポナンのクルーズ船。この機動力が魅力的な航路開拓に繋がっている
小さな港でも十分接岸可能なポナンのクルーズ船。この機動力が魅力的な航路開拓に繋がっている
下甑島に上陸するゾディアック。南極・北極のような過酷な条件下でも利用できる丈夫なゴムボートだ
下甑島に上陸するゾディアック。南極・北極のような過酷な条件下でも利用できる丈夫なゴムボートだ

ポナンが日本のクルーズ旅で有利なのは、大型客船が停泊できない小さな島や町の港にも着岸できる点にあります。2023年の航路でもその優位性は如実に表れていて、例えば沖縄の竹富島や座間味島、鹿児島県の喜界島、長崎県の上五島、瀬戸内の下蒲刈島や犬島といったディープな寄港地を巡る楽しさが詰まっていました。

またポナンのクルーズ船にはフランス軍が開発したエンジン付きゴムボート「ゾディアック」を十数隻搭載しており、さらに小さい港や海岸への上陸が可能。私も鹿児島県の下甑島を訪れた際にゾディアックに乗船しましたが、10人程度で乗り込むゴムボードはその移動自体、まるで上陸作戦のようなアドベンチャー感があります。ちなみにこのゾディアック、もともと軍用目的だけあって3ヵ所以上パンクしないと沈まないという非常に丈夫な作りになっています。

九州の航路では1240海里、2300kmを運航したル ソレアル号
九州の航路では1240海里、2300kmを運航したル ソレアル号
寄港地に着いてからはバスが手配されており、さらに効率よく観光地を巡っていく
寄港地に着いてからはバスが手配されており、さらに効率よく観光地を巡っていく

そもそも、なぜフランスのクルーズが日本に?と思う方もいるでしょう。実はポナンのクルーズ船は砕氷船・耐氷船仕様になっており、毎年夏には経験豊富なエクスペディションチーム同行のもと、南極・北極を訪れる極地クルーズを催行しています。

極地クルーズを行わない夏以外の間は、他の場所でもエクスペディションクルーズを企画。セーシェル諸島やオーストラリアのキンバリー、中欧のダルマチア海岸など、毎年200以上のコースで運航し、これまで訪れてきた寄港地の数はなんと400以上もあるそうです。独自の冒険と体験が楽しめる航路が揃う中、今は日本を巡るコースが世界的に大人気とのこと。2024年も3〜5月にかけて沖縄や瀬戸内、九州を巡るコースが発表されており、海外からの申し込みが非常に多くなっている状況だそうです。

下甑島では早朝の到着にもかかわらず、島民の方々が大漁旗を手に盛大に歓迎してくれた
下甑島では早朝の到着にもかかわらず、島民の方々が大漁旗を手に盛大に歓迎してくれた
奄美大島で行われた歓迎のクロマグロ解体ショー。寄港地でのおもてなしも感動のひとつ
奄美大島で行われた歓迎のクロマグロ解体ショー。寄港地でのおもてなしも感動のひとつ

そして、この規模のクルーズ船で日本を巡るのがちょうどいいと言えるもうひとつの理由、それは訪問する地域への影響を最小限に抑えられる点にあります。現在、観光地ではオーバーツーリズムの問題が懸念されており、小さな島や町はどうしても多くの観光客を一度に対応するのが難しく、海外の富裕層を誘致するにしても見合った宿泊施設がないケースが見受けられます。その点、ポナンのクルーズであればホテルの問題もないですし、乗客定員は最大でも250名程度なので観光地に過大な負荷をかけることもありません。

またポナンはすべての船が「クリーンシップ認定」を受けており、環境保護にも力を入れていることで知られています。例えば、ディーゼル(もしくはLNG)と電気のハイブリッドエンジンを積むことで、停泊中や有人地域では電力のみに切り替え。排出ガス削減のため船の平均速度は12ノットに制限したり、海水から飲料水を作るシステムを導入し、年間100万本近く、合計30数トンものペットボトルを削減・節約したりするなど、さまざまな工夫を行っています。今回、各寄港地で熱烈な歓迎を受けましたが、それらはポナンが示す持続可能なツーリズムに対する期待の表れだったのかもしません、

※以下は九州の「世界遺産の大自然と祈りの島めぐりクルーズ」寄港地を紹介

屋久島では体力に合わせて観光内容を選択。少人数グループに専属ガイドが付いて白谷雲水峡を歩いた
屋久島では体力に合わせて観光内容を選択。少人数グループに専属ガイドが付いて白谷雲水峡を歩いた
奄美大島では「黒潮の森マングローブパーク」でカヤックを体験
奄美大島では「黒潮の森マングローブパーク」でカヤックを体験
サンゴが隆起してできた喜界島。港近くのスギラビーチでもこの透明度!
サンゴが隆起してできた喜界島。港近くのスギラビーチでもこの透明度!
日本3大トンボロ(陸繋砂州)のひとつがある上甑島。また下甑島には断崖の絶景も多い
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上五島の石造りの教会、頭ケ島天主堂。周辺集落は世界遺産に登録されている
上五島の石造りの教会、頭ケ島天主堂。周辺集落は世界遺産に登録されている

タラップを上ればそこはフランス! ポナンならではの非日常。

ラウンジのティータイムではラデュレのマカロンが振る舞われた日も。なんて贅沢!
ラウンジのティータイムではラデュレのマカロンが振る舞われた日も。なんて贅沢!
メインダイニングでのディナー。アミューズから冷・温前菜、メイン、デザートまでフルコースを堪能
メインダイニングでのディナー。アミューズから冷・温前菜、メイン、デザートまでフルコースを堪能
船長主宰のウェルカムパーティとフェアウェルパーティはドレスアップして参加を!
船長主宰のウェルカムパーティとフェアウェルパーティはドレスアップして参加を!

これまで色々とポナンの魅力について触れてきましたが、私が考えるポナン最大の魅力、それはバカンスをこよなく愛するフランス人が作った船であること、だと思っています。

朝食ではおいしいバゲットにボルディエのバターが添えられ、ラウンジでのティータイムではなんとラデュレのマカロンが食べ放題だった日も。メインダイニングではフレンチの巨匠アラン・デュカス氏が率いる「デュカス・コンセイル」監修のもと、毎食芸術のような料理で五感を楽しませてくれます。乾杯時に開けられるのはもちろんシャンパーニュ。さらにグランクリュ格付けワインに熟成チーズまで……。港からタラップを上るだけで、そこはもうフランスなのです。

航海の最中、専属ダンサーも乗船。写真はフレンチカンカンのダンスショー
航海の最中、専属ダンサーも乗船。写真はフレンチカンカンのダンスショー
カジノナイトではブラックジャックやルーレットなど定番ゲームで全員が盛り上がる
カジノナイトではブラックジャックやルーレットなど定番ゲームで全員が盛り上がる

船内エンターテインメントの充実ぶりも、バカンス上手なフランス人ならでは。シアターで開催されるフレンチカンカンのショーや、ダンサーによるダンス教室、おもちゃの紙幣を使って楽しむカジノナイト、航海の海図オークションなど、日々のプログラムが非常に充実しており、9日間の乗船でも船内で退屈に感じることは一切ありませんでした。

日本人がメインではなく、世界中のお客様をもてなすように企画された船旅ゆえ、人によってもちろん好みは分かれると思います。ただ、わざわざヨーロッパに行かなくても遊び好きなフランス人のエッセンスを体感することができ、かつ船外では日本のディープな旅先を巡ることができる。海外からのお客様にとっても、我々日本人にとっても、ポナンは今までなかった新しい日本のクルーズ旅を創出してくれたと言えるでしょう。

エクスペディションガイドとのディナー。通訳同席も可能なので心配無用
エクスペディションガイドとのディナー。通訳同席も可能なので心配無用
日本・韓国支社長でエクスペディションリーダーの伊知地亮氏も日本航路には必ず乗船
日本・韓国支社長でエクスペディションリーダーの伊知地亮氏も日本航路には必ず乗船

他にもシアターではエクスペディションガイドや専門家による旅レクチャーが開催され、南太平洋やキンバリー、北極、南極など、ポナンが就航する世界の魅力的な旅先を紹介。これは知的好奇心がくすぐられ、まるで世界を旅しているかのような感覚で非常に楽しく参加できました。

世界の優れたエクスペディションガイドと一緒に旅できるのもポナンの魅力。各アクティビティで彼らのガイドに助けられるだけでなく、船内では少人数で一緒にプライベートディナー(完全予約制)も取ることもできます。彼らから直接おすすめの航路や船外での活動、最新の自然研究などを聞くことができて、私も乗船中このプライベートディナーには2回も参加させていただくほど素晴らしい機会でした。ポナンに乗船する方で、特に冒険的な旅が好きな方にはぜひおすすめしたいと思います。

最終日のダンスパーティ。乗客同士、旅を通じて距離が縮まるのもポナンの旅ならでは!
最終日のダンスパーティ。乗客同士、旅を通じて距離が縮まるのもポナンの旅ならでは!

2024年も既に日本航路を発表しているポナン。主に就航するのは2020年にデビューしたばかりの「ル ジャック カルティエ」です。客室数は全部で92とさらにプライベート感が高まり、船内の水面下のラウンジで海中の景色が楽しめる「ブルーアイ」や、船からカヤックなどの乗り降りがより簡単な「ハイドロリックプラットフォーム」、さらに船尾には「インフィニティプール」が備わるなど、最先端の設備が自慢のクルーズ船になっています。

料金は7 泊8日で一人当たり€5040〜。ビジネスクラスで行くような贅沢なフランス旅行と比べたら変わらない金額で叶うポナンのクルーズ。「フランス船で日本を巡る」というこれまでにない新しい旅を、ぜひあなた自身で体験してみてください!

ポナンクルーズ
https://www.ponant.jp/

※当記事は、2023年7月24日現在のものです

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
(関連記事)https://www.arukikata.co.jp/web/catalog/article/travel-support/

筆者

トラベルエディター

伊澤慶一

70ヵ国ほど旅してきましたが、ベタにハワイと軽井沢が好きです。

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