【スコットランド】ゴルフの聖地で楽しむ18ホールパッティングコース「ヒマラヤThe Himalayas」

1860年以前、セントアンドリュースのキャディーが、ゴルファーたちを待っている時間に自分たちが楽しめるようにとパッティング専用のコースをつくりました。混んでいない時には、そこで若い婦人たちがパッティングを楽しむこともあったそうです。
多くの婦人たちはゴルフクラブの会員である父や兄と共に夏の間をセントアンドリュースで過ごしていましたが、その当時は若い婦人たちが楽しめるレクレーションといえば、クリケット、バドミントン、アーチェリーなどしかありませんでした。
キャディーたちは自分たちのつくったパッティングコースを避暑で訪れる婦人たちが使用することを快く思わなかったため、婦人たちのためにある権力者が洗濯物を干す場所として使っていた土地を買い取り、有名なゴルフコースデザイナーのオールドトムモリス（Old Tom Morris)が「ミニチュアリンクスコース」として9ホールのパッティング専用コースをデザインし、1867年にセントアンドリュースレディースゴルフクラブ（St Andrews Ladies Golf Club)が発足しました。

最初の試合は1867年に行われました。優勝者には金のペンダント、準優勝者には銀のブローチが賞品として与えられ、現在に至るまで優勝賞品はアクセサリーがメインだったそうです。
会員数はあっという間に200人を越えました。1900年代には女性会員数は400人を超え、新たに設けられた男性会員も200人以上になったそうです。この場で多くのカップルが誕生したそうですよ。
毎年4月から9月までの毎週水曜日の午後は大会が催され、木曜日の午前中はまた別の大会が催されるほどの大人気でした。

世界大戦中の閉鎖期間後、残念ながら会員数は次第に減少し、経済的に困窮することになります。
1920年にはこのユニークなパッティング専用コースは一般開放されることになり、現在に至っています。
現在このコースは一般人の間で大人気になっていて、ひっきりなしに人が訪れているのをみると、最も利益を得ているのは現在コースを所有しているセントアンドリュースの町かもしれません。

「ヒマラヤ」はセントアンドリュース　オールドコース（St Andrews Old Course)とウェストサンド（West Sand）ビーチの間、セントアンドリュースクラブハウスの手前に位置しています。
オールドコースからクラブハウスに向かって歩く小道の左手にあり、アクセスしやすく、景色も最高。パッティングをしながらオールドコースでプレーする人々が見え、海も見え、クラブハウスやホテル、有名な歴史的なパブ「ジガーイン（The Jigger Inn）」も見えます。

パッティングのコースといっても平らな部分はほとんどなく、セントアンドリュースの7つのゴルフコースと同様（いや、恐らくそれ以上に）に、凹凸だらけのグリーンが特徴です。凹凸の場所や傾斜を見て、想像力を働かせながらのパッティングは、なかなか奥が深いです。

実際に行ってきました。行ったのは8月の土曜日のお昼ごろ。混んではいますが混みすぎて動かないってほどではないようです。
受付に行くと「予約してますか？」と聞かれました。ウェブサイトで時間の予約ができ、特に週末は混雑するので事前に予約をしていったほうが確実ですが、私たちは予約をしていませんでした。
「予約していません。」というと、「少し待っていてください。入れるスロットがあるか調整してみます。」と言われ、10分ほど待ちました。
待っている間に見ていると、子供を3人ほど連れた家族連れ（合計6人ほど。）が1ホール目に向かっています。1グループ4名まで、とされているので「これは時間がかかるかな。」と思っていると、その打ち方を見て驚きました。野球のバットを振り回すようにパターを大振りし、見事な空振り。「あぁ、これは時間がかかるどころではないぞ。」と思っていると、結局そのグループは係の人に18ホールコースの隣にある、初心者用の9ホールコースに移動するように言われていました。

私たちは4人グループです。2人がゴルフ経験者。2人は全くの初心者です。貸パターとボールは料金に含まれます。
まずは全くの初心者の一人が打ちました。どういうわけか打ったボールは凹凸を超え、コロコロと真っ直ぐホールに向かって転がり、見事にホールインワン。ビギナーズラックです。いきなりの快挙に最初から大盛り上がりでした。

18ホールを4人で十分楽しんで、かかった時間は1時間ほどでした。
普通のゴルフコースではパットは平均2打です。たまに3パットをすると「あぁ、だめだ。」と落ち込みます。つまりこの18ホールのパッティング専用コースでは36打というのが理想ですが、なかなかそうはいきません。
先ほどいきなりホールインワンを決めた彼は、その後どんどんパット数を重ね、結局は4位の57打。優勝者は43打でやはりゴルフ経験者が勝利を収めました。

ゴルフは初心者にはかなり難しいスポーツで、いきなりコースに出てプレーするのは無理です。しかしこのパッティング専用コースであれば、初心者でも、子供でも、高齢者でも、ゴルフを一緒に楽しむことができます。
次回は筆者の孫たちもここで一緒にゴルフができるかな、と思っています。