『地球の歩き方 愛知』制作の片隅から担当ライターが思うこと、ガイドブック秘話

公開日 : 2023年08月24日
最終更新 :

8月10日に『地球の歩き方 愛知』が発売されました。地球の歩き方国内版ではシリーズ10冊目となる本書の制作秘話や、当時感じていた期待と不安を、ライターで参加した私目線で少しだけ書こうと思います。

愛知編を制作する上での期待と不安

五反田にある地球の歩き方編集部(学研ビル)の入口フロア
五反田にある地球の歩き方編集部(学研ビル)の入口フロア

『地球の歩き方 愛知』と私の関わりは、2022年夏にさかのぼります。地球の歩き方が、東京を皮切りに北海道や京都などを取り上げ始め、それらがメディアでも注目を集めていた頃、地球の歩き方のパリ編やフランス編などを担当している由良プロデューサーから「守隨さんご相談が」と連絡が入りました。

同プロデューサーとは、パリ編などと関連して前からやり取りはしていたのですが、基本的に現場で作業を共にするのは、長年パリ編やフランス編の編集業務を担当しているオフィスギアの方々。何だろうなと思ったら「地球の歩き方で愛知を作る企画が」「一度打ち合わせを」との内容でした。

愛知県出身の私としては、長年関わってきた地球の歩き方で地元を取り上げられるという嬉しさがある一方で、他の国内都市のシリーズがきちんと出版後に成果を出している手前、「愛知を出して大丈夫かな」という若干、地元のポテンシャルに対する不安もあり……。とにかく、愛知県のことに携われるということで、二つ返事で協力させてもらうことにしました。

ちょうどパリから日本に戻っている時だったので、その後すぐに東京・五反田にある地球の歩き方のオフィス内で、最初の打ち合わせ。プロデューサーと編集プロダクションであるカピケーラ代表の佐藤さん、そして私の三人で、完全な手探り状態から話し合いをして、おぼろげながら何となくの形とネタを出し、その後もメールなどで思いついた点などを共有しつつ、少しずつ形が見えてきました。

何度か愛知へ戻り取材を実施

名鉄・高浜港駅前の巨大な鬼瓦
名鉄・高浜港駅前の巨大な鬼瓦

私が取材として本格的に動き始めたのが、翌2023年1月。由良さんと、愛知編の編集を主に担当することになったカピケーラの野副さんが、私がちょうど日本へ一時帰国しているタイミングで、愛知に来ることになりました(この時点で、日本にいる他の担当ライターさんたちはすでに動いていました)。

名古屋市内および高浜の掲載スポットを巡りつつ取材。1月に野副さんと訪れたのは、今池にある中屋パンや熱田にある三洋堂新開橋店、有松宿、高浜市で三州瓦(鬼瓦など)を作る最年少鬼師の伊達由尋さんなど。中屋パンは懐かしさと美味しが合わさったリピートしたくなる商品でしたし、三洋堂新開橋店はとても立派な本屋で驚き、有松宿はの趣をあらためて感じ、鬼師の伊達さんは若く才気溢れて輝いていました。

中屋パンの外観
中屋パンの外観

仕事で愛知県の魅力を再認識する作業をしてみると、潜在的に魅力的を抱えた地域であることに間違いはないと思ったのですが、ただSNSなどでその魅力を紹介しても、どうも反応が薄く……。「本当に大丈夫かな」という思いはまだ私の心に引っかかりつつも、私も本格的に取材を始めました。

私が、再びパリから日本へ戻り、実際に現地などを巡り始めたのは春からです。地域としては知多半島、奥三河、犬山などを訪れつつ、歴史に関する部分については、昔の文献を調べたりして内容の確認を進め、原稿を提出。その後、校正などを経て8月10日の発売日を迎えました。

実際に歩いて人と話してみる

犬山の厳骨庵の暖簾
犬山の厳骨庵の暖簾

ライターさんによって、それぞれのやり方はあるとは思いますが、今回私がとにかくこだわったのは「歩く」こと。以前訪れたことがあったり、勝手知ったる場所でも、可能な限り現地へ赴き、歩き、お店などに顔を出してその人たちと対面で話してみて、その地域やスポットの雰囲気を本に閉じ込めたいと思いました。

実際歩いてみると、本やインターネットでは探せなかったような、掘り出し物の情報を拾えたりします。そういうものは私側で正誤の確認をした後に、積極的に本文に入れ込んだり、少しニッチな情報である場合はページ下部の「Info」欄に、はみ出しネタとして載せました。

岡崎の伊賀八幡宮は正面からまっすぐに道が続く
岡崎の伊賀八幡宮は正面からまっすぐに道が続く

行く先々でその場所の人と話をしていると、その人やお店の意外な背景も見えてきます。

たとえば、犬山の城下町で安くて美味しいと人気の五平餅屋「山田五平餅店」のご主人は、元・毎日新聞の記者さんで、新聞社を辞めた後は、当時まだ現在のような形ではなかった犬山城下町の盛り上げに尽力したことを知りました。

岡崎市の伊賀八幡宮の宮司さんとは、予定外に1時間半も話し込んでしまって(そのため後ろの予定が押しました!)、その際に今、神社周辺の工事をする際も、当時から続く北極星を崇める北辰信仰に基づき行うようにしているなど、ただ訪れただけでは見逃しがちな情報も教えてもらいました。

愛知の人が納得するものを作りたい

東海市にある聚楽園大仏の前で
東海市にある聚楽園大仏の前で

ガイドブックを眺めていていつも思っていたのが、「もうここ知ってるよ」とか「またこのお店ね」ということ。もちろんそれら定番スポットは外せないものではあるものの、県内の人も読んでいて楽しいかといったら、少し別の問題かもしれません。

県外から愛知県を訪れる人にも有用で、かつ県内の人も読んでいて楽しいものになれば、「何もない」と地元の人にも言われがちな愛知県を、見直してくれるきっかけになるのではと思っていました。

発売日以降、『地球の歩き方 愛知』の売れ行きは良さそうですし、実際にできあがった愛知編では、どこまで私たちが目指したことが達成できているかは分かりませんが、そう感じてくれる人が一人でも多くいれば嬉しいです。

筆者

フランス特派員

守隨 亨延

パリ在住ジャーナリスト(フランス外務省発行記者証所持)。渡航経験は欧州を中心に約60カ国800都市です。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。